シンデレラっぽいBL

うましか

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かわいそうなシンデレラ

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 あるとき、この国の王子様が数年後に舞踏会を開きそこで婚約者を決めることになりました。もちろん2人の姉たちは王子に見初めてもらおうと努め、継母もそれをサポートするのでした。


「お前たち! そんなダンスで王子を射止められると思っているのか!?」

 パン、パン、パンと継母が激しく手拍子をとりながら姉たちを叱咤します。
 それを聞き、2人の姉はもつれそうになる脚に力を込めました。

「アンドゥ、少し先走っている! もっと音を聞き取るんだ!」

 継母の言葉に長女は力強く返事をしました。

「トロワ! 視線が下がっているぞ! やる気がないのならやめても構わないのだぞ!」
「わかってらぁ!!」

 荒々しく返しながら、次女はギラギラした瞳で前を射抜きます。
 継母が用意したダンススタジオで2人の姉が汗だくになりながら踊っているのを、扉の隙間からシンデレラが覗いていました。

「うーわ、いつもいつもよくやってられるな」

 扉を閉めてシンデレラは肩を震わせました。自分はあんなことになったら耐えられないと想像したからです。シンデレラの腕の中には取り込んだばかりのタオルがお日様の匂いを広げていました。タオルは姉たちの日々の練習で何度も洗濯をしなければならないものなのです。

「おかげでこっちは家事に追われて大変だってのに。ダンスとどっちが嫌かって言われれば、ダンスの方が嫌だけどさ。俺、運動音痴だし」

 シンデレラはため息を吐きながら、これからの行動を頭の中でイメージをしました。
 姉たちがダンスに勤しみ継母が付きっきりでその指導をしているため、シンデレラは料理洗濯掃除を毎日こなし、それ以外にも様々なことをしなければなりませんでした。
 行き帰りの馬車の手配は王子の舞踏会の日程が決まってすぐに行い、エステやネイルサロンの情報を集め予約をしたり、姉たちの体調を管理したりなど、少し例を挙げるだけでもたくさんあるのです。
 その上衣装を含めた当日のコーディネートを用意するのもシンデレラでした。デザインの勉強を独学で行い、実際にドレスを作ったのもシンデレラです。いろいろな人と膝をつきあわせ、継母や姉たちにダメだしをされながら、やっと形になったときには達成感にシンデレラが涙を流したほどでした。
 料理に関しても継母が栄養面に関して厳しく、2人の姉は偏食が激しかったため、毎日の献立に悩まされながらも工夫を凝らして日々研鑽を重ねていたのです。

 幸か不幸か、シンデレラにはそれらの才能がありました。
 ですがそのため自身のことには無頓着になり髪はボサボサ、服もどうせ汚れるからと古ぼけたダサいジャージを身につけるようになってしまいました。そのためその美しい顔はだれにも気づかれませんでした。
 また食事などを抜かれることもなく、必要経費は継母が惜しみなく出し、必要ならばシンデレラの勉強に関する本を大量に用意してくれていたため、それほど苦痛には感じていなかったことも、シンデレラにとって幸せでもあり不幸でもありました。嫌気がさして家を出たとしても、今のシンデレラの才能があればどこでも好条件で受け入れられたからです。

 シンデレラはまた今日も、3人の家族にこき使われるのでした。

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