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オールド国
錠前ちゃん
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「はいよ。ちょっと待ってな……。あと、少しでこっちのが出来き上がるのに……。仕方ない、行くか。どれどれ」
アンジが蔵の中から外へと通り抜けて出る。
皆、妖精の姿だ。
「うー、拙者、意識がとお……」
錠前は、言いかけて黙ってしまい、代わりに黒いモヤが沢山出てきたのだった。
「これは、いかんな!そこの綺麗なお嬢さん、俺の道具箱の中に大きな紙袋が数枚あるから、取り出してくれんか。
それで皆んなでな、紙袋の中にモヤをすくい入れるんだ!」
「わかりましたわ」
綺麗なお嬢さんと言われ素直に実行するルシェと、その仲間たち。
紙袋の中に黒いモヤを入れると、紙袋の底から白いモヤとなって出て行く。
「おお、これは便利な物だな!黒いモヤが害の無さそうなモヤへと変わっていく!ほほう、これはいいぞ!なっ?モロブ?」
「アンジさん、この紙袋を是非、我々に譲って下さい」
モロブも感動してアンジに頼んだが、既にアンジは集中モードになっていた。
「おお、この鍵は特殊な物だ!
この棒を曲げてエル字を作って、うん、出来そうだな!
錠前ちゃん、今、鍵を作ってやるからな。
もう少し、辛抱してな」
…………………
「出来た!待たせたね。さあ、どうかな?」
カチャカチャ!カチッ!
「よし!鍵が開いた!扉を開けてみな」
アンジが得意顔で言うと、一同はホッとした表情になり、庄三郎が扉を開けようと、ツナギ姿の人型に変身した。
この蔵は、黒い屋根瓦に白い漆喰の壁で、下方部分には黒の平瓦が貼られ、その継ぎ目を白い漆喰で盛り上げるように塗った菱形模様がある。
これは、なまこ壁と呼ばれるものだ。
そして、黒い扉の蔵の前に立った庄三郎は、呼吸を整え、両手で扉を引く。
ギギギィ、ギギギィ。
ゆっくりと重い観音扉が開いてゆく。
側に立つ外灯の明かりが、蔵の中へと差し込み、中にある金庫の存在を浮かび上がらせた。
鍵が開いた事で、錠前は感激をしている。
「ああ……やっと拙者は……ありがとう……。
早く……出よう……」
錠前の中にいる妖精は、礼を言って外に出ようとする。
その錠前の言葉を聞き、庄三郎が嬉しそうに言う。
「流石アンジさんだなっ!ありがとう。
錠前が完全な邪悪精になる前に助かって、ホント、良かったぞ!さあ、錠前よ、早く出て来い。ワシらの前に来い」
「…………」
「 ? 」
沈黙するのを一同は不思議に思ったが、扉の片側についている錠前から少し黒いモヤが出続けている事に気付いた。
「半分、邪悪精になりかけていたから、妖精の姿に戻れないようですね。これは、オバーに頼むしかないだろう」
「モロブ、その通りだな。じゃあ、早いとこ金庫と錠前をオバーの所へと連れて行こうぜ!と言うわけで、アンジさん、金庫の鍵も早く作ってくれないか」
「おい、おい、人使いが荒いな。
でも、ほぼ出来ているから、後はチョチョイのチョイだ!」
庄三郎とアンジが話していると、突然、金庫が騒ぎ始める。
「うおぉぉー!忘れ去られたものの恨み……呪ってやる……」
金庫から黒いモヤが流れ、外へと出て行く。
セロルが紙袋でモヤをすくいながら言う。
「皆さん、これはマズイです!人間に悪影響を与えてしまいます!
皆んなで、オバーさんの所へ行きましょう」
「はい!はい!セロルさん、賛成!
皆んな、早くオバーさんの所へ行こうよ」
「え?おチビちゃん、皆んなって、俺もかい?俺は、オバーが苦手だから一緒には行かないよ。今、すぐ鍵を作るから……」
「ルシェ、アンティーク影山経由でオールド国へと行くぞ!入口を用意しろ!タム、アンジの荷物を持て!」
頷いた二人は、それぞれ実行する。
「ルシェ、ご苦労さま!さあ、こちらに来て金庫を持ち上げなさい!タム、その荷物を持って、先にオバーの所へと行きなさい」
「はい、お先に!」
タムは、一旦、人型になり重い器具を持ち上げて入口に入って行く。
モロブに言われ、アンジの商売道具を持ち逃げしたのだ。
「こらっ!待て!おチビちゃん!俺の商売道具だよー!返しなさーい」
そう叫んで、アンジも入口に消えて行った。
ルシェ、庄三郎、モロブ、セロルは人型ツナギ姿になっている。
「そうだ、セロル、首からぶら下げているその袋に錠前を入れちゃえよ!
ルシェ、気合いを入れて入口まで運ぶんだぞ!行くぞ、1、2、3!」
「うっ!お、重いわ……か弱い私に持たせるなんて、酷いわ……」
(私、ねちっこいから、よく覚えておきますわよ!古狸さん、覚悟なさい)
四人も錠前と金庫と共に消えて行ったのだった。
アンジが蔵の中から外へと通り抜けて出る。
皆、妖精の姿だ。
「うー、拙者、意識がとお……」
錠前は、言いかけて黙ってしまい、代わりに黒いモヤが沢山出てきたのだった。
「これは、いかんな!そこの綺麗なお嬢さん、俺の道具箱の中に大きな紙袋が数枚あるから、取り出してくれんか。
それで皆んなでな、紙袋の中にモヤをすくい入れるんだ!」
「わかりましたわ」
綺麗なお嬢さんと言われ素直に実行するルシェと、その仲間たち。
紙袋の中に黒いモヤを入れると、紙袋の底から白いモヤとなって出て行く。
「おお、これは便利な物だな!黒いモヤが害の無さそうなモヤへと変わっていく!ほほう、これはいいぞ!なっ?モロブ?」
「アンジさん、この紙袋を是非、我々に譲って下さい」
モロブも感動してアンジに頼んだが、既にアンジは集中モードになっていた。
「おお、この鍵は特殊な物だ!
この棒を曲げてエル字を作って、うん、出来そうだな!
錠前ちゃん、今、鍵を作ってやるからな。
もう少し、辛抱してな」
…………………
「出来た!待たせたね。さあ、どうかな?」
カチャカチャ!カチッ!
「よし!鍵が開いた!扉を開けてみな」
アンジが得意顔で言うと、一同はホッとした表情になり、庄三郎が扉を開けようと、ツナギ姿の人型に変身した。
この蔵は、黒い屋根瓦に白い漆喰の壁で、下方部分には黒の平瓦が貼られ、その継ぎ目を白い漆喰で盛り上げるように塗った菱形模様がある。
これは、なまこ壁と呼ばれるものだ。
そして、黒い扉の蔵の前に立った庄三郎は、呼吸を整え、両手で扉を引く。
ギギギィ、ギギギィ。
ゆっくりと重い観音扉が開いてゆく。
側に立つ外灯の明かりが、蔵の中へと差し込み、中にある金庫の存在を浮かび上がらせた。
鍵が開いた事で、錠前は感激をしている。
「ああ……やっと拙者は……ありがとう……。
早く……出よう……」
錠前の中にいる妖精は、礼を言って外に出ようとする。
その錠前の言葉を聞き、庄三郎が嬉しそうに言う。
「流石アンジさんだなっ!ありがとう。
錠前が完全な邪悪精になる前に助かって、ホント、良かったぞ!さあ、錠前よ、早く出て来い。ワシらの前に来い」
「…………」
「 ? 」
沈黙するのを一同は不思議に思ったが、扉の片側についている錠前から少し黒いモヤが出続けている事に気付いた。
「半分、邪悪精になりかけていたから、妖精の姿に戻れないようですね。これは、オバーに頼むしかないだろう」
「モロブ、その通りだな。じゃあ、早いとこ金庫と錠前をオバーの所へと連れて行こうぜ!と言うわけで、アンジさん、金庫の鍵も早く作ってくれないか」
「おい、おい、人使いが荒いな。
でも、ほぼ出来ているから、後はチョチョイのチョイだ!」
庄三郎とアンジが話していると、突然、金庫が騒ぎ始める。
「うおぉぉー!忘れ去られたものの恨み……呪ってやる……」
金庫から黒いモヤが流れ、外へと出て行く。
セロルが紙袋でモヤをすくいながら言う。
「皆さん、これはマズイです!人間に悪影響を与えてしまいます!
皆んなで、オバーさんの所へ行きましょう」
「はい!はい!セロルさん、賛成!
皆んな、早くオバーさんの所へ行こうよ」
「え?おチビちゃん、皆んなって、俺もかい?俺は、オバーが苦手だから一緒には行かないよ。今、すぐ鍵を作るから……」
「ルシェ、アンティーク影山経由でオールド国へと行くぞ!入口を用意しろ!タム、アンジの荷物を持て!」
頷いた二人は、それぞれ実行する。
「ルシェ、ご苦労さま!さあ、こちらに来て金庫を持ち上げなさい!タム、その荷物を持って、先にオバーの所へと行きなさい」
「はい、お先に!」
タムは、一旦、人型になり重い器具を持ち上げて入口に入って行く。
モロブに言われ、アンジの商売道具を持ち逃げしたのだ。
「こらっ!待て!おチビちゃん!俺の商売道具だよー!返しなさーい」
そう叫んで、アンジも入口に消えて行った。
ルシェ、庄三郎、モロブ、セロルは人型ツナギ姿になっている。
「そうだ、セロル、首からぶら下げているその袋に錠前を入れちゃえよ!
ルシェ、気合いを入れて入口まで運ぶんだぞ!行くぞ、1、2、3!」
「うっ!お、重いわ……か弱い私に持たせるなんて、酷いわ……」
(私、ねちっこいから、よく覚えておきますわよ!古狸さん、覚悟なさい)
四人も錠前と金庫と共に消えて行ったのだった。
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