冥界の仕事人

ひろろ

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第一章: はじまり

閻魔大王様は…… ☆

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 キィ。

「失礼しま……す」

 あおいが扉を押して部屋へと入るが、誰もいない……。


 四畳半くらいの部屋の正面は鉄格子で、外には檻のような通路が2つに分かれて続いている。
 

 通路の中や外には、ジャージの鬼がウロウロしている。


 外を見るように、鉄格子にピタリとつけた机と椅子が置いてある。

その机の前方上に人の頭程の大きさの枠が開けてあって、外の人と会話が出来るようになっている。


 部屋の片隅には衝立があり、その奥にスタッフたちがいるようだ。


 扉から入ってすぐの所には、黒いソファが外に向けて置いてある。


 そして、何より目を引いたのは机に置いてある大きな球体なのだった。


 「リッチ君、この部屋でいいんだよね」

「はい、所長室って書いてあったし、間違いないはずです」

 
「どうしようか、この中で待つ?
ソファに座る?たまには、座ってお茶したいな」


 あおいは喉も乾かないが、ほんの少しだけ人間界と同じ気分になりたかったのかもしれない。

 もう友達と一緒にお茶することもないのだと思うと寂しくなった。


 ウッンン!


「 ! 」

「 ! 」

(ひぃー、人がいたっ!どうしよう、リッチ君!)と目で訴える あおいであった。

 ソファを覗き込むと、アイマスクをした男性が横になっていて、起き上がろうとしていた。


「わぁ、いたんですね!失礼しました!」

 オストリッチが慌てて謝った。


「ああ、いや、こちらこそ来るのを知っていたのに、横になってしまって申し訳なかった」


 そう言って、立ち上がった。

 長い黒髪を無造作に後ろで束ねていて、黒い法服を着ている。

 カッコいい顔……好みのタイプだ……。

 あおいは、うっとりとした。

 オストリッチが小声で「あいさつ」と言う。


「は、初めまして!わ、私は金の 、み、水島あおゆ、ちがう、あおいです」

 ふー!なんとか言えた……。
 もしかして、とても若い人なのかな?

 背も高いし、顔も美形でシワもなく、肌がピチピチしている感じ。

「僕は道先案内人のオストリッチと申します。この通行許可証に判子を頂きたくて、伺いました」


「私は、この第5の門 所長の閻魔大王です。第4の門 所長と同じで地獄行きの者達と緑札の者を裁いています。

 この水晶には、生前の罪が映し出されます。
 嘘なんて絶対につけません。

 ただね、これをじっと見ていると目が疲れます。で、横になって目を休めていたというわけです」


「これが水晶なんですか、綺麗ですね。

この水晶で、白札の人達を見ないんですか?」


「各門からのデーターを基にスタッフ達が審問します。

まあ、怪しければ私の所へ来ることになります」


 ピポン、ピポン


 突然、音が鳴った。


「すまない、少し待って下さい」

 机の方の椅子に座ると、水晶に両手をかざし、集中する。


 すると、水晶に映像が映し出された。
 手をかざすのをやめ、水晶と繋がれたパソコンの様な物のキーを押した。

 この映像を第6の門へと送っているのだ。


 水晶を見つめる閻魔大王の顔が、険しくなっていくのがよくわかる。


間もなくして、鬼に連れられた人が閻魔大王の前に立った。


 とても疲れきった様子で、立っているのもやっとな感じの 中年の女性が自分の氏名を言っている。

 今まで見ていた緑札よりも、深い緑色の札を貼っていた。


 「あなたは、自分が何をしたか分かっていますか?」


「私は、何も悪い事はしていません。
さっきの所でも、悪い事をやってきたなって言われたけど、何の事だか……」

「あなたの職業は?」

「訪問介護をしています」

「あなたは、個人的に利用者の所へ行かなかったか?」

 女性はドキッとした。


「あなたは、利用者のお金を引き出してから何をした?」

「……」

「答えなさい」

「頼まれて引き出しただけです!本当です!その中からチップを貰っただけです」


「本当にそれだけか?利用者のお爺さんは、どうなった?」


「 どうして、お爺さんだって知っているんですか?」

「いいから、利用者はどうなったか言え!」

「な、亡くなりました……でも、私は、関係ないですから!本当です!」


 閻魔大王が片眉を上げて、睨むように女性に視線を向けた。


「本当か?お前がチップだと言うのは、かなりの大金だったはず!金に目が眩んで利用者を殺害したのではないか?

 そして、逃亡する時に事故を起こし、ここへやって来た……のではないか?」


 「はぁ?何言ってんのよ!そんな事、してないわよ!」


「やいやいやいやい、まだしらを切る気か?知らぬ存ぜぬ言ったって、この水晶が御見通しだ!

 さっさと、白状しやがれ!」


 あれ?なんか時代劇の文句みたいな……。

 閻魔大王様は、時代劇を見てたことがあるのかな?

 あおいは、ふと思ったのだった。


「追って、沙汰を出す。首を洗って待っておけ!さあ鬼よ!右側通路へ連れて行けぇ!」


 言い方 、古っ!完璧、時代劇だよ!


 バン!


 閻魔大王は、女性の書類に勢いよく判を押す。

 “行先”

黒縄こくじょう地獄”



 チラッと閻魔大王様を見たら、やりきった満足の顔をしている……。


 ついでにリッチ君の顔を見たら、両翼を頬?に当て、目を輝かせている……。


 もしや憧れているの?


 今後のリッチ君が心配な気がするよ。


「さて、お待たせしてすまなかった。
通行許可証を出して下さい、判を押しましょう」


 ペタン!


ははぁーとばかりに頭を下げ、両翼を上に挙げて通行証を受け取るオストリッチなのであった。


第5の門を出る時に2人で、通行証裏面に押してある判を見た。

  第1が鶴、脱衣場が脱の文字、第2が虎、第3が乱の文字、第4が天秤……


「第5は ……この花、何の意味があるのでしょうか?」


 オストリッチは、首を傾げる。


「あっ、この花、きっと桜だと思う」


あおいは、孝蔵の家で見た時代劇に“桜吹雪の刺青”が出てきたのを思い出した。

 その時代劇が大好きな閻魔大王が、第5の門の判子にしたに違いないと決めつけたのである。


「さくら?僕は見たことがないです。
綺麗な花なんですか?」

「えっ、冥界には桜の木はないの?

とっても綺麗なんだよ。見せてあげたいなー!」


「今度、先生に本を見せてもらいます。

それでは、次に行きましょうか」


「うん。また、お願いします」


 それは、あおいが座布団に座った時だった……。


「ちょとー、ちよっとー、待ってー」


 微かに呼び止める声が聞こえてきたのだった……。


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