冥界の仕事人

ひろろ

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第三章: 見習い仕事人

逃亡者を追え!

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  ここは、どこだ?
冥界のエレベーターで降りて来たものの、どこに着いたのか さっぱりわからなかった。

「せっかく、生き還ったのに!
 迷子だなんて、情けないぜ!」

車がすれ違うのもやっとの道路の片側に田畑があって、もう片方には家並みがある。

 どの家も、先祖代々住んできたという感じの家が多い。

「人が歩いてねえな!……ったく、いい大人が迷子だなんて、恥ずかしくて言えやしねぇけど、このまま歩いていてもバカだしな」


 おっ、あそこに人がいる!


「こんにちは。立派なお庭ですね!

 ちょっとお尋ねしますが、こちらは何ていう所なのでしょうか」


 男はそう言いながら、庭の中に入って行った。

 そこの家のあるじは、怪訝けげんな顔をしたが親切に教えてくれたのである。

「えー、本当に?うわ、困ったなー!

 全くの逆方向に来ちゃいましたよ!

 困ったな……駅まで、どうしよう」

 家の敷地に置いてある車をちらりと見ながら言っている。

「はぁ、そうですか……」

 主は そう言うと、座って草取りをはじめた。

「あぁ、困ったなー!近くに駅までのバス停はありますか?うん?あれ、小銭がないや」


「ここで、そんな事を言われても困りますよ……」


 親切な主でも、居座る男に腹が立ち言葉がキツくなったのである。

「 ! 」

  この男!!!

  額に緑札!!!

「あ、すみません、お気を悪くさせてしまって……」

 と言いながら、男が主の肩に手を置いた。

「うわぁ!………」

 男は、肩に手を着いたままよろけて、主に乗っかってしまった。


「?あれ?おっさんがいない!」


 まあ、車をちょっと借りよう!

 車に鍵が置いてあるじゃないか!

「不用心ですね、ちょっと借りるだけですよ」
 
 男は、車に乗り込みエンジンをかけた。
  
「フニャーァ、よく寝たニャー!」

 隣の家のカーポートの上で、寝ていたグレースがエンジンの音に気がついた。

「孝蔵さん、出掛けるのかニャ?

 変だニャ、いつも私に声を掛けて行くのに……」


 今、車が動こうとしている瞬間、グレースは気がついた!

「違う!孝蔵さんじゃないっ!」


 グレースは、毛を逆立て下へと降りたが、車は出て行ってしまった!


 どう頑張っても車には、追いつけない!
 人型であれば、孝蔵を助ける事ができたのにと、グレースは猫になった事を後悔した。

 どうしたらいい?

 礼人さんに連絡するには、冥界に行くしかニャい!

 いつも用のニャい時に蓮や優が来て、肝心ニャ時にこニャい!

 金庫へ急げ!

戸締りニャんてしてられニャい!

……………

 冥界事務センター内

 到着ロビー係りには、事務机が10台 椅子が10脚置いてあり、休憩するためのソファとテーブルもある。

 あおいは、ソファに座って休憩していたが、ふと考えた。

 私の帰る場所って、仕事が終わって帰る場所ってあるの?


 見習い初日だというのに、結構、こき使われている気がする!

 今、やっと休憩をさせてもらっている。

 もしかして、ここに寝泊まりとか?

「あのぉ、ユウコさん、仕事が終わったら、私はどこに行けばいいのか知っていますか?」

「あー、そうねー、従業員宿泊施設があるけど、確か満室だったかしら?

 ちょっと事務に聞いてみるから、待っていて」

 もしかして、住む場所がないとか?
 えー、それってヤバイ……。

 あおいは、公園暮らしになるのかと心配なのだった。

 そもそも、公園があるのかどうかも心配なのであった。


「おはようございます!第1の門からのお届け物です」

 聞き慣れた声の方を見ると、オストリッチが立っていたのだ。

「リッ、あっ、オストリッチ君!
 どうして、ここへ来たの?」

 興奮した あおいが大きい声で聞いた。


「あおいさん、勤務中だから静かに話しなさいね。さっきの話しだけど、やっぱり満室なんですって、今日は私の所に来なさい」


「はい、すみません。ユウコさん、ありがとうございます。お願いします」

 荷物を事務員へと渡したオストリッチの所へ、あおいは急いで行く。


 「リッチ君、配達の仕事もするの?」

「お姉さん、ここで働いていたんだね!

 僕たち道先案内人の仕事自体は、少ないから色んな事をしているんです」


「そっか……頑張って……。

 あっ!リッチ君、部屋、何部屋ある?」

「えっ?部屋?僕のうちってこと?」

「そうそう!ひと部屋?ふた部屋?」

目をキラキラさせて聞く あおいなのであった。


 その時、更衣室側からシュッと飛び込んでくる灰色の物が見えた!

「事務長は、いるかー?」


「今日は、第7の門に出張です。

 あら、グレースちゃん。

 お久しぶりね!

 どうしたの?急いでいるの?いつもと違うわね?」


「ノリタケ!孝蔵さんが憑依されて、連れ去られた!礼人さんに連絡してくれ!」
 

「えっ?孝蔵さんが?大変!

 連絡してみるけど、向こうも大変だと思うんだよね!

 今日、逃亡者がいて……」


 ニャんだって!逃亡者だと?

 ここはニャにやってんだよ!

「グレース?グレースなの?なんでここに?」


「あおいさん!ここにいたんですね!

 孝蔵さんが……」


「コウゾウさん?コウゾウさん……あれ?誰だっけ?その人がどうしたの?」


 もう忘れてしまったのか……。
 はっ、そんニャ事は、どうでもいい!

「ここの従業員が憑依されて行方不明にニャりました」


「グレース、礼人さんに連絡しました。
 捜索するそうです」


「私も捜索したいが、この通り猫の姿だから、瞬間移動ができる者を借りたいニャ……」


「それ無理ですよ!瞬間移動ができるのは、死神と調査員くらいですから!

 今頃、逃亡者を探しているはずですよ!
 瞬間移動ができる人は、ここには居ないです」

 ノリタケがきっぱりと言った。

「はい、僕、瞬間移動ができます」


「えー!ダチョウくん、できるの?」

 何回も会っているはずのノリタケがダチョウと言ったのだ!


「僕、鶴ですよっ!

 ここに来る時も 瞬間移動で来ました」


「はい、私もできます」

 あおいも負けじと言ったのだった。


「えー!あおいさん、そんな芸ができるのね?人は見かけによらないのねー」


 ユウコさんが褒めてくれた!

 などと 密かに喜ぶあおいなのだった。

 それって芸じゃないだろう!と心の中で、突っ込みを入れるノリタケだったのである。

……………
 
秦広王と事務長に許可を取り、1匹と1羽と1人が従業員用の冥界エレベーターに乗って、人間界へと降りた。

 瞬間移動でと言う2人からの申し出をグレースは、やんわりと断り ひとまず無事に人間界に行かなくてはと考えたのだ。

  これ以降は、面倒なので1匹と1羽と1人は、3人とさせていただこう。
 
 
「さあ、着きました!ちょっと後ろに下がって下さい!助走をつけて、えいっ」

 グレースが内扉に体当たりして開けた。

 更にもう一枚、グレースはつま先立ちをして倒れるように押すと片側の扉が開き

 仏壇みたいな金庫から3人が出てきた。


「あー、痛いニャ!これだから、あまり冥界には行きたくニャいんだニャ」


「グレース、私たち 何をすればいい  の?」


「僕たちにできることがありますか?」

 
 グレースは、勿論あると答え 冥界で貰ったメモを2人に見せた。

「孝蔵さんに憑依したのは、きっと逃亡者です!

 ただの勘ですが、この住所に行ってみましょう」


「はいっ」


「あっ、私はグレースです。猫です。

 よろしくお願いします」


「僕、鶴のオストリッチです。よろしくお願いします」


「私は、ご存知の通り あおいです。
 よろしくお願いします」


 ピッ、ポワン

 
 久々の犬顔座布団の登場である。

「お乗り下さい」


「ニャんだ?これ?」


「お乗り下さいっ!早くして!」


「乗れと言っても、グラグラ動いちゃう!わぁ、大変だー!」


「グレースさん、座って下さい!

 重っ!重いけどぉ、がんばるぞぉ!」


「えっ、ここ家の中だよ!リッチ君、飛ぶなら外に出ないと!玄関の戸が閉まっているでしょ?」


「開けっ放しでーす。心配いりませーん」

 心配をするあおいに軽く答えたグレースだったのである。

 開けっ放しで行くつもり?

 先に玄関を出た2人の後に玄関を閉めて、追うあおいであった。

 「ツルノ君、お願いします」


「うん?ツルノ??うんしょ、うんしょ、がんるぞぉー」


 ふっ……ん


 すっ……


 こうして3人は、逃亡者を追いかけて行ったのである。
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