冥界の仕事人

ひろろ

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第四章: 新人仕事人

下積み生活

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 あおいは、思い出していた。

 以前、オストリッチと初めて来たこの場所のことを……。

 あの時は、こうだったんだよね……。

 ………………

うわっ、真っ暗!


 えっ、いきなりトンネル?


 今まで明るい廊下を、歩いていたはずなのに……。


 怖くて立ち止まっていると、前方にいるオストリッチから声を掛けられた。


「お姉さん、大丈夫です。こっちに来て下さい」


 その言葉を信じ、7歩ほど歩くと広い場所に出た。


 暗闇にいくつもの提灯ちょうちんが吊るされ、その下にテーブルと椅子が並べられて、まるでビアガーデンのようで、客なのか?テーブルは満席に見えた。


 座っている客?の側には、蛍が飛び交い幻想的な雰囲気があった。


 なんて綺麗なんだろう、写真が撮れないのは残念だなぁ。


 そんな風に、あおいは思ったのだ。


 それから、席を待つ人の列の横を通過し、スタッフに通行許可証を見せ、奥の方にある通路に入った2人なのだった。

……………

 思い出に浸っていた あおいは、ハッとした。


 そうだ、今は1人だ。


しっかりしないと!


 それにしても、相変わらず提灯の灯りと蛍のコラボが、幻想的で綺麗だな。


 あおいは、就業許可証をスタッフに見せて中に入ろうとした。


  わぁ、このスタッフさん、すっごい美人だなー!


ネームプレートにタマミとある。


「あら?あなたは、白札専用の通路を通って来たのね?

 今度からは、スタッフ専用通路があるからそちらを通って下さいね。

 宗帝王様は所長室においでになります。
 どうぞお通り下さい」


「すみません。次から気をつけます。ありがとうございます」


 早速、失敗しちゃった!


 あおいは、冥界事務センター で着ていたパンツスーツをそのまま着用し、ネームプレートもそのままであるが、スカーフだけは返却してきている。


 ついでに研修中のバッチも返してきていた。


 あおいが所長室に入って挨拶をする。


「宗帝王様、お久しぶりです。

あおいです。

この度、第3の門に配属されました。

これは、就業許可証です。
 
どうぞ宜しくお願い致します」


 宗帝王様は、若く色白で背が高く、顔の作りは整っているが、額がかなり広いところが、ちょっぴり残念だ。


「おっ、あおい君、待っていたぞ。

 君にピッタリの仕事だと、閻魔大王からの推薦と幽現王から話しを聞いて、ここへと呼んだんだ!」


「えっ?推薦があったんですか?
一体、どんな仕事なんでしょうか?」


「ああ、簡単な仕事だ!お水を配るウエイトレスだ」


 ああ例の、“美男美女が配る”というアレか!


 やだっ、閻魔大王様ったら、私を美女だなんて推薦してくれちゃって!


 そんな事ないのにぃ!


 あおいは、嬉しさが顔に丸出しになっている。


  あおい君が男達にからまれ易いと聞いて、ピッタリだと推薦されたのが、そんなに嬉しいとは……。


まあ、やる気があるのが一番だな!

………………

 ここのスタッフは、男女ともネクタイやスカーフは無く、襟を大きく広げていて、胸ポケットに小さな白薔薇の造花を差しているのである。

「はい、開襟にして、この薔薇を差して、それと新人マークのバッチもね」


「ありがとうございます」


 渡してくれたのは、私の教育担当のタマキさんだった。


 この人も美人だよね。


て言うか、美形揃いなんですけど。


 私、大丈夫かな? 心配になってきた。


 「あおいさん、こっちに来て!
 今日は、白札専用にいてもらうから。

ここは、ウォーターバーと言って死者が水を飲む場所なの。

長い旅路の途中にあって、唯一、ホッとできる場所でしょうから、白札の方をお客様という気分で、おもてなしをしましょう。
わかったかしら?」

 ざっくりとした説明だけど要するに、ここが無料の水専門店で先輩たちは、ウエイターやウエイトレスをしているってことね!


「あおいさん、少し待っていてね」


 タマキさんは、外に行ったみたいだ。


 あおいは、お店の隅で、先輩たちの動きを観察する。


 なるほど、男性イケメンスタッフは、カッコ良く振る舞うのかぁ。


 女性のお客様の髪の乱れを直してあげてる!!そんな事、するのぉ!


 美女スタッフは、笑顔を絶やさずに姿勢を正し、腰を振って歩く。


 来たお客様には、おしぼりを渡すのね!
それから……

お客様を相席にして、どんどん入れ替えをスムーズにして、並ばせないように気を配るのか。

なるほど……うんうん。


  あれ?私と同じように、隅の方に鬼がいる。


 赤、青ジャージに黒いエプロンをしている。雰囲気を壊さないようにしているのかもしれない。


「あおいさん、こっちに来て」


 おっ、私の出番かな?


「はーい」


 あおいは、カウンターの方に招かれ、行ってみる。


「ここは、コップを洗うところで、向こうが、おしぼりを洗う洗濯機で、洗い終わったら外に干してね」


 あれ?もしかして、外に干してね!って言われた?


 コップを洗っている人は、男性イケメン3人でやっている。


洗濯をしている人は、見えなかった。


 そうか、ウエイトレス デビューには、下積みが必要なのか。


 私は“おしぼり洗い"をするんですね?


 了解です。


「誰もが通る受付改札場は、砂が飛んでくる所だから、汚れを気にしている方が多くて。

それで、おしぼりを出すことにしたの。

温かいおしぼりで、癒されるって、好評なんだから!」


「えっと、私は タオルを洗って干せばいいですか?」


「良くわかったね!その後の工程は、干した物を畳んで濡らして保温器に 入れて完成だからね。

今、外でタマエさんがタオルを干しているから、手伝ってあげて!」


「はい、かしこまりました」
 

 タマキと一緒にカウンターの中に入る。


 2個のカウンターが直角に繋がっていて、中に入ると白札用の部屋と緑札用の部屋が見えるが、白札からは緑札の方は見えないし、その逆も見えないようになっていた。
 

 あおいは、驚いた。


「えー!もしかして、そこは悪人達の緑札用の席ですか?」


 その通り!とタマキが教えてくれて、おしぼり もコップも、緑札用もまとめて洗うことも教えてくれたのだった。


 緑札の部屋は、白札用とは雰囲気もスタッフの服装も違う。


 えーーー!嘘、あんな格好をするのっ?


 引き気味のあおいだったが、タマキが先に行くので、急いでついて行く。


 白札用カウンターの奥のドアを開けると、外へと出た。


 そこでは、タマエがタオルを干していた。


 タマキは、タマエにあおいを託し、他へと行ったから、その後は、タマエの指導を受け、一緒におしぼりの用意をしている。


 タマエさんて、可愛いくて、

 ほんわかした感じの人だな。


「タマエさんは、いつも おしぼりを用意しているんですか?」


「ううん、これは交代でしているの。今日が私の番だったのよ。

コップ洗いも 皆んなで、交代でやっているの」


  そっか、よし!コップ洗いも おしぼりも何でも頑張ります!


「あおいさん、おしぼり用意終わった?白札専用ウォーターバーに戻って来て」


「はい、タマキさん」
 

  それから暫くは、隅の方で見学をしていたのだった。

……………

 今日は、コップ洗いかな?

 あおいが出勤して、ロッカールームに行くと、タマキから袋を渡された。


「これに着替えてね」


 あおいは、ワクワクしながら、袋の中から服を取り出して見る。


「 ! 」


 これ着るの?私が?


 「……まぁ、いいかっ!着るしかない」


  でもさ、超恥ずかしいよー!


 助けて、リッチくーん!
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