冥界の仕事人

ひろろ

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第四章: 新人仕事人

なるほどね

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 第3の門では、よこしまで淫らな事をしてきたかどうか、又は その罪の重さを調べ有罪、無罪の判断をするのである。


 お水を出すだけなのに、何故、この衣装に着替えないといけないの?


緑札用の方だけ着替えるって、何か訳でもあるのかな?


 この大きな袋には、孔雀みたいな大きな羽というか、背中に背負う翼が入っている。黄色だ。


 これを背負えと言うなら背負う。


それくらいなら、“まっ、いいか”だけど、これは、無理です!


 水着のビキニよりも、更に露出がある物なんて、貧相な身体の私が着れるわけないよっ!


 袋から出したが、見なかった事にして、すぐにしまった。


 あおいは、スタッフルームにいるタマキの元へと行く。


「あのぅ、タマキさんが着ているみたいな服はないのでしょうか」


 タマキは、きらびやかなチャイナドレスを着ていた。


 なのに!私のは、どう見てもサンバカーニバルの衣装にしか見えない!


「えっ、あなたに渡したはずでしょ?
袋は、どうしたの?」


 ひぃ、なんか怒っていますか?
 でも、無理なんですよ!


「あっ、あの、サイズが合わなそうなんです。私、胸が無いので……」


 はあ、屈辱的だー!絶対、自分で言いたく無い言葉だー!


「そうなの?若い子が来たら、着せてあげようかと思って、衣料樹いりょうじゅ様に頼みにいったのに、残念!

 私がもう少し若ければ、着たんだけど」


「えー、そんな、きっと似合うと思いますよ。着てみて下さい」


「そうねー、今度、皆んなでカーニバルごっこする時に、着ようかな」


 やっぱ、着ないんかい!


 カーニバルごっこ?何それ?
そんな遊びを本気で、する気ですか?


「じゃあ、あなたには……これね」


 タマキさんは、不満な顔。


衣装が沢山 掛けてあるクローゼットから、1つ出して渡された。

 
 それは、レースのフリフリが付いている黒いワンピースだった。


 三段切り替えになっているスカートがふんわりしていて、可愛いのである。


 これがロリータファッションのゴスロリってやつかな?


 これ、気に入った!可愛い!
 

「おっ、可愛いね!次は私も着ようかなー!」


 タマキさんが褒めてくれた!ふふふ


「今から私たちは、お色気作戦を開始するんだからね。

 ここに来た人たちが、如何いかに邪悪で、ふしだらかという事を調べる為に着替えたの。

 もしも、死者が私たちの身体に触れたら、ブザーが鳴り、鬼が現れて宗帝王様の所に連行されるようになっているの」


 えー、それが目的で皆さん、かなりのセクシー衣装を着ているって事ですかー!


「それからね、横の方にある個室テーブルを選んだ人は、要注意だからね。

 良からぬ事を考えている人が多いから!
 1人より3、4人のグループになると気持ちが大きくなるから、ボディタッチしてくる率が高いからね!」


「もしかして、わざと触らせるように仕向けるって事ですか?」


「あおいさん、人聞きが悪い事言わないで!悪い事をしてきた人でも、本当に反省していたら、理性を持つでしょう?

ここでは、罪を悔いているのかどうかも判断しているんです!」


 わっ!ヤバ、怒らせちゃった?


「タマキさん、すみません。

 よく、わかりました。私、頑張ります」

……………

 薄暗い中に交互に光る緑と赤の電飾が花畑を思わせる。


 各テーブルの天井には、スポットライトがあって、テーブルをほのかに照らしていた。


 緑札の人々は、ここに来るだけでも酷い目に遭ってきているから、心身共に疲れきって、しゃがみ込んでいる人もいる。


「座るのは、順番にご案内致します。

 並んでお待ち下さーい」


 タマエさんが大きな声で言っている。


 緑札の誰もが早く座りたいと思っているのであった。


「あー、疲れたぁ!あたしはもう死にそうだよ。ちょっと、先に座らせてくれないかい?」


「あっ、いけません。お待ち下さい」


 タマエさんの制止の声も聞かずに、
 後ろの方にいたお婆さんが出てきて、勝手に座った。


「あれ、注意しなくていいんですか?」


「もう、座っちゃったからいい。

 これは、減点だからね」

 
「減点?」
 

「第1の門で、その人のデーターを見て仮に点数がつけられているんだけど、各門でも審査、判断されていて、減点されたり、たまに加点されたりするんだよ。

 ……で、今の人は減点だね」


 減点されて規定の点数まで下がると地獄行きになってしまうらしい。
 

「並んでる人もしっかり見ていて!女性の死者に、ちょっかいを出す人も、逆のパターンもあるから注意して!

 まあ、鬼が見張っているけどね!」


「げっ、そんな事もあるんですか!
 タマキさん、あっちこっち見て回らないといけないんですね?」


「そうよ!気配りが大事なの!
 飲み終わった人がいたら、速やかに移動を促して!次の死者を案内する。

 でも、基本、男女別々に座らせてね!

さっきみたいに勝手に座ってしまったら、仕方がないけどね。

さあ、色々説明をしてきたけど、ここからは緑札の方もお客様と思って接客しましょう。

 あなたは、少し様子を見ていてね」


 男性スタッフは、いつものスーツだけど白札の時よりも優しく、物腰柔らかな接客のような気がする。


 お婆さんに手を差し出し、エスコートしている。


 えっ?これは、こちらから触れているんだよね?ブザーは、鳴らない。
良かった!紛らわしい!
 

 椅子を引いてあげて、座ってからのー、おしぼりを広げて渡す。大きなお世話じゃないのか?まっ、いいか。


 それで、こっちの男の先輩は……。


 ええと、おばちゃんに水を手渡し してからのー、しゃがんで同じ目線で“美味しいですか?” 攻撃じゃー!

おばちゃん、たまらず先輩の肩に手を置いて“美味しいよ” 返しだー!

 さあ、この行為はいいのか?許されるのか?どうだ? 

 ブザーは鳴らない!

 良かった、許されたー!


 あおい は、頭のなかで、ひとり実況中継をやっていたのだった。


 はぁ、見ているだけで疲れたよ。


 タマキ先輩は、どこ? あ、いた!


 自然に、からへと、あおいの中で変換されていた。


  タマキ先輩は、スラリとした脚をチラリと見せながら、水を載せたトレイを持って、テーブルに向かっていた。


  客に水を出していると、隣に座っていた客が先輩の太ももを触った!


 あっ!何、あの男!


 ピン ポン!


 よしっ、ブザーが鳴った!


  先輩が、触った客に「こちらへどうぞ」とニッコリと笑ったから、客は勘違いして付いて行く。


 そこに鬼が来て、客は連れて行かれた。


 なるほどね!これが、お色気作戦か。


 あおいは、客からカウンターが見えないように、衝立ついたてがしてある所に立っていた。


「お嬢ちゃん、可愛いね。いくつ?」


 あおいの目の前に、いつの間にか、おじさんがいて、

ゴスロリあおいの髪を撫でながら、言ったのだ。


 だがブザーは、鳴らない。


「向こうの個室にいこうよ」


 あおいの腕を掴んで、引っ張って行こうとした瞬間にブザーが鳴る。


 ピン ポン


 すかさず、タマキさんと鬼がさっと来て、男を連行して行った。


「あおいさんは、立っていただけなのに、凄いね!

 じゃあ、お水を運んでもらおうかな。

 1つのテーブル 4人掛けだから、水は4個ずつ載せて、持っていってね」

 
 コップをトレイに載せて、片手では持てないから、両手でトレイを持って……

 歩く……。

ヒールのある靴って普段から履いていないから、歩き辛い……。


 スッテン!バシャッ!


 あおいは、盛大に転んでしまった。


「まあ、大変 失礼致しました!」


 タマキがあおいに代わり、客に向かってお詫びをしたのだった。
 

 「失敗は付き物だからね。
 ここ、片付けておいて!

 今度は、さっきとは、違う席に水を運んでね」


 タマキ先輩から叱られる、と思っていたが、意外と優しくて、少し感動した あおいなのだった。

 
「いらっしゃいませ、おしぼり をどうぞ!こちらは、冥界水でございます。

 冷たくて美味しいですよ、どうぞ」


 あら、少し慣れてきたみたい。

 良かった。

 ……………

 「グレース……さん、知ってる?」


「ニャんですか?って、その前にグレースさんって言うのは、辞めて下さい。

 私は、ただの猫ですから。今まで通りで構いません。

 で、ニャんですか?優さん」


「そうは言っても……。
人型に戻った時は、凄い上から目線で話すからさぁ……話しづらいんだよね!」


 グレースは、少しイラっときて、

「だから、ニャんですか?って、聞いているんだ」と言った。


 あ、グレース、素に戻りかけたな。


「……あおいちゃんが、第3の門に異動したんだってさ!」


「ニャんだ!その事か、知っていますよ。孝蔵さんが、どこで働いていると思っているんですか?

 冥界事務センターだから、とっくに聞いています。ニャんだ、新しい情報かと思ったから、損したニャ」


 うわぁ、この前、人型に戻ってから、腹黒グレースになった気がするよ!


「あおいさんは、まだ お給料がでニャいのかニャ?

早くスタンプを貯めて欲しいニャ。

実家に里帰りして、こっちにも来てもらいたいニャ。

そしたら、孝蔵さんが喜びますから」


 グレースは、本当に孝蔵さんが大好きなんだな。


 猫の時だけは、可愛い奴なんだけど……。
 
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