冥界の仕事人

ひろろ

文字の大きさ
44 / 109
第四章: 新人仕事人

ウォーターバーの花魁

しおりを挟む
「おい、お嬢ちゃん!まだ、座れないのか?あれ、席が空いているじゃないか!早くしてくれ!足が痛いんだ」


 2番目に入って来た男が言った。


 ここは、第3の門にある緑札用ウォーターバーである。


 あおいは ひと通りの担当箇所を経験し今日は、ここの担当なのだった。


「お疲れのところ、すみません。順番で御案内致しますので、もう少しお待ち下さい」


 今日は割と空いていて、それほど待たせないで案内をしているのだが、少しでも待つのは嫌みたいだ。


「やっと、俺の番だな!


俺は、あそこの仕切りがある所がいいな。
座っていいんだろう?」

 
えっ?個室は、1つだけしか席が空いていない!
しかも、既に女性が3人座っている。
ドアが無くて丸見えの個室だけど、危険な男そうだから、それはダメでしょう。


「申し訳ございませんが、あちらの男性のテーブルで、相席をお願い致します」


 あおいは、言いなりにはならなかった。


「は?何だと?何処に座ろうと俺の勝手だろう?小娘は、黙ってろ」


男はそう怒鳴り、好きな席に座ってしまったのである。


店内は、一瞬 静まり返った。


 なんてムカつく男だ!


 あおいも個室の方へと行く。
相席のお客様に迷惑をかけるといけないと思ったからだ。


すると、目の前を遮る華やいだ人影が。


「いらっしゃいませぇ。
おしぼりを……。はぁい、お水をどうぞ」


 花魁おいらん姿のタマキ先輩が
 男性の前に水を置いた。


 わぁ先輩、胸が見えそうで見えない、色っぽい仕草!流石さすがです!


 因みにあおいはタマキのことを、先輩とかタマキ先輩と呼ぶようになっていたのである。


「へぇ、花魁のホステスか?
ここに来るまで、地獄を味わってきたけど、天国に着いたみたいだなー!」


「どうぞ、お飲み下さいませ。では、失礼致します……」


 えー、タマキ先輩!文句も言わないで行ってしまったー!


「おねーちゃん、もう、行っちゃたのか。

……まあ、ここに可愛い子ちゃんがいるから、いいか。

ねえ、あんた、随分若いんだね。
何で死んだんだ?事故か?自殺か?」


 男は、隣の席の若い女性に絡み、うつむく女性の顔を覗きこんだ。


若い女性は、困ったようにしている。


「すみません!他の人が待っていますから、早く飲んで下さい!」
  

 あおいは、堪らず言ってしまった。


「何だとぉ!生意気な女だなっ!
  俺を舐めやがって!」


男は、怒鳴ると同時にあおいの手首を掴み、殴ろとした。


その瞬間。


 ピン ポンと鳴った。


 赤鬼が走って来るのが見えた!


 でも、間に合わない!わっ、殴られちゃう!


「その手を離しなさい」


 しなやかな手が男のその手を叩き、あおいの手首は放たれた!


 男の殴ろうとした腕を 白い細腕がガシッと掴み、そのまま捻り上げた。


「いてて、いてーだろう!
おいっ!ねーちゃん、離せっ!このヤロー」


 男は反撃に出ようとする。


ガシッ!


そこへ走ってきた赤鬼が、無言で男を羽交い締めた。


「うちのスタッフに何をしてるんだい!
女に手を上げるなんざ、最低だね!

そんな奴は、アチキが許さないからねぇ!
とっとと、地獄に行っちまいな!
早く、連れてお行き」


 男は、赤鬼に連行された。


もちろん、減点となるのである。

 
店内から、どよめきと拍手が起こった。


何かの見世物だと勘違いをしているらしい。


他のスタッフ達は、一時的に動きがストップし、見守っていたが通常に戻る。


 タマキは、「お騒がせ致しました」と言って、色っぽくお辞儀をし、その場を収めたのだった。
 

「タマキ先輩!ありがとうございました!凄く、強いんですね」


「何とか助けようと思って、もう無我夢中だったんだから!

とにかく、あなたに怪我が無くて良かった。

まあ、あの男と違って、痛みを感じないかもしれないけど。
私の身体が勝手に動いちゃったんだよね」


「タマキ先輩、カッコいいです!」


「さあ、仕事に戻るでありんす」


 タマキ先輩は、花魁になったつもりでいるのだろうか?


 さっきの啖呵たんかは、花魁言葉ではなかったみたいだけど、タマキ先輩、素敵過ぎます!


 タマキは花魁の姿だが、下駄ではなく、スニーカーを履いていたから、俊敏な動きができたのだった。


  今日のあおいの衣装は、赤いチャイナドレスなのだが、タマキ先輩の前では、すっかり霞む衣装であることは、間違いないのである。


 やっぱ、例のサンバカーニバルの衣装くらい着ないとナンバーワンには、なれないかな?


今晩、衣装を借りて家で着てみよう!


 あおいは、いつの間にか自分がホステスになったつもりでいたのであった。
 
……………

 これを履いて……。


うっ、お尻に食い込む!


 オストリッチ宅の小部屋に、今まで機織はたおり機があったが、いつの間にか無くなり、代わりに滑り台と鏡が置いてある。


鏡は、あおいがオストリッチにリクエストしておいたのであった。


 この翼を背負って……。


鏡に映った姿は、想像していた通り、残念過ぎていた。

 
これは、着てはいけない物だ!


 この水着みたいな物は、洗濯しないとね。


リッチ君が帰って来る前に脱がなきゃ!


急げ!


 その時、ガタガタガタと音がした。


「わっ!鳥?お姉ちゃん、鳥人間だったの?黄色の鳥?ひよこ?

僕の仲間なの?知らなかった……」


 えー!


 何でそう思えるんだろう?


この姿をセクシーとか思う前に、鳥人間って、思っちゃうのかい?がっかりだ!
 

 そんな2人の姿を窓から、そっと覗く者が1名いるのであった。


 可愛いオストリッチが楽しく滑り台で遊ぶ姿を見に来たのだが……。


 これは、本物の覗き!になってしまったではないか!


2人に見つかったら、私の威厳は無くなる……そっと、立ち去ろう。


 ああ、見たくもない物を見てしまった!


あおい君は、なんという格好をしていたんだ!


ほとんど裸で、黄色い羽根つけて、あんな破廉恥な服は、けしからん!


  女性は、白い着物に黒い帯という姿が美しいのだよ。


これは、単に秦広王の好みなのだ。


 あおい君は、このまま第3の門にいて大丈夫なのであろうか?


あおいの今後が心配になってきた秦広王なのであった。

 
 そして、所長室に戻り、どこかへ電話をかける。


「もしもし、秦広王である……」

 
 その頃、あおいは次に着る服を、どうしようか と考えていた。


 今度は、何にしようかな?


 そうだ!テニスウェアなんて、どうかな?


 タマキ先輩に相談してみよう!

   
「お姉ちゃん、翼を背負っているだけだったのですか?

どうして、翼を背負っていたのですか?」


 あおいが鳥ではなかった事に、がっかりとして聞いてみたが、ふと思う。


 あっ!


もしかして、鳥の僕って、お姉ちゃんに憧れられていて、僕のような鳥に、なってみたかったのかな?
 

 ぐふふふ、いやーぁ、照れちゃうなぁ!


 とにかく脳天気な2人なのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...