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第四章: 新人仕事人
好きな場所って、あるよね。
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ザー、キュッキュッ、ザー……。
今日は、コップ洗い担当だ。
タマキ先輩とタマミさんと3人で、洗っている。
カチャ カチャ 、ザー ザー、つるっ!
ガチャン!
「やばっ、割っちゃった……。すみません」
「あおいさん!いくつめだと思っているの?しっかり持って、洗いなさい!」
「はい、タマミさん、すみません」
タマミさんは、いつも厳しい。
「まあ、次からは慎重に洗いなさいね」
「はい、タマキ先輩」
タマキ先輩は厳しいようでいて、実は優しい。
タマキ先輩に認めてもらえるような後輩になりたいと、あおいは思うようになっていたのだった。
「あおいさん、宗帝王様がお呼びです」
事務スタッフが呼びに来た。
ひぃ、3個めのコップを割ったことが、もうバレたのかな?
……………
「ただ今、戻りました。はーー」
所長室から戻ってきた あおいは、長い溜息をついた。
「何?どうしたの?」
あおいの様子が気になったタマキが聞いた。
「あと少しで、異動になると言われました。ここで、頑張ろうと思っていたからショックなんです」
「えっ……もう?
随分、早いじゃない!じゃあ、サンバカーニバルイベント早くやらないとね!
ねえ、タマミさん?」
「タマキさん、本気で言っています?
あおいさんが信じちゃいますよ?
何たって、あの衣装を試着する為に、持って帰ったんですもの。
で、あおいさん、試着してみてどうでしたか?」
タマミがあおいに聞いた。
「はあ、残念ですが、似合いませんでした」
「そうなのぉ?残念。じゃあ、タマエさんに着せようかな。ねっ、タマミさん?
それで、あおいさんは、どこに行くことになったの?」
「取り敢えず、第7の門 事務所に行くらしいです。
でも、異動日がはっきりしていないので、それまで頑張ります!
あのぉ、タマキ先輩、私、着たい衣装があるんですが!」
……………
あおい とタマキは、電車に乗り第2の門駅まで行き、脱衣場まで歩いていた。
2人は、緩やか坂道を下り脱衣場のスタッフ専用通路に入り、緑札スタッフールームの外にある衣料樹を目指している。
「ここの責任者のダツエ様に御挨拶してから、衣料樹様にお願いしましょう。
ダツエ様は、どこにいるかしらね?」
「きっと、緑札専用囲いの前に いると思います」
「えっ?あなた、ダツエ様を知っているの?タツエ様ではなく、お婆さんのダツエ様だけど?」
「はい、少し知り合いって、程度ですが」
あおい達は、緑札の囲いにやって来た。
「あっ、もしかして若い娘じゃないかい?」
振り向くと、トミエさんがいた。
「やっぱ、そうだ!何だ?冥界事務員の格好しているね。もう、働いているのかい?
だったら、ここへと来れば、また、こき使ってやったのにさ」
トミエの言葉を聞いたタマキは、ギョッとした。
あおいさん、もしかして、ここで働いていたの?
だとしたら、凄い根性の持ち主ってことね。
「トミエさん、お久しぶりです。
あの、ダツエ婆様は、いますか?
第3の門で使う服を、衣料樹様にお願いしようと来ました」
「へえ、第3の門にいるのかい。
ちょっと待ってな。ダツエ婆は、濁流側にいるからさ。今、呼ぶよ」
トミエは、そう言うと浅瀬側の見張り台に登り、マイクを使う。
「ダツエ婆さまー!お客です!来て下さーい」
げっ、これマイク放送だから、第2の門 入口にまで聞こえているよっ!
「トミエさんは、相変わらず豪快な人だね」
とタマキが小声で言った。
すると、ダツエ婆様からの返事が、
「何だー?用があるならー、こっちに来なー!」
これまた、濁流側の見張り台からのマイク放送返しだ。
結局、2人は、三途の川の端っこまで歩いて行くことになったのだ。
「ダツエ婆様!あおいでーす!」
あおいは、嬉しそうに手を振りながら、ダツエ婆の元へと行く。
そこには、川から上がりクタクタになった、緑札の者があちこちに転がっていた。
その者たちを、海パンの鬼が引っ張り、囲いの中に連行している。
「おや、娘じゃないかぁ!元気だったか?
今日は、何だ?手伝いにきたのかえ?」
「いえ、違います」
あおいは、即座に否定をする。
また、こき使われたら、たまらないよ!
早いところ、用件を言わないとね!
2人は、無事にダツエ婆の許可をもらい、衣料樹の前に来たのだった。
「さあ、あおいさんスーツを脱いで!
下着は、そのままでいいから。
さあ、呪文を唱えるからね。早く脱いで」
「えっ!嫌です、ここは囲いの無い外ですよ!恥ずかしくって、できません」
「誰も見ていないって!早くして!パッと脱ぎなさい!これ先輩命令ね」
あおいは、渋々、脱ぎ衣料樹様にお願いをしたのだった。
「へえ、あおいさんの服、可愛い!これ素敵だね。いいね、私もテニスウェアにしよう!
あおいさん、はい、脱いで、仕舞うから!もう一枚出してもらって!」
「また脱ぐんですかー?先輩は、どんなのがいいですかー?」
「超ミニスカとパンツにフリフリフリルが付いたのがいい!白ね」
先輩、すっごいノリノリだね。
あおいがイメージしたテニスウェアに満足したタマキであった。
帰り道、あおいは以前から、気になっていた事を聞いてみる。
「先輩、サンバの衣装って誰かがイメージして出した物ですよね?
誰が着たんですか?」
「言うと怒られちゃうかな?
内緒だけど、タマミさんだよ!
タマミさんに命令して出してもらったの!
だから、あの黄色いのはタマミさんのお気に入りのはずね!」
うわっ!あの厳しいタマミさんが、あれを着たんだ!ぶぶっ!
本人には、知らない振りをしておこう。
……………
それから数日が過ぎ、宗帝王様に再び呼ばれた。
「あおいさん、明日から第7に行ってもらいます」
「えっ?あ、明日から?
どうしてこんなに早く、違う所に行かないといけないのでしょうか?
コップを3個 割ってしまったからですか?
それとも、おしぼりの洗濯を失敗して、ボロ雑巾にしたからですか?
白札用の店で、蛍を捕まえて遊んだから?
緑札用の店でお客を怒らせたから?
失敗ばかりしましたけど、ここが好きでした……」
あおいの目から、涙が溢れている。
宗帝王は、オロオロするばかりだ。
「あ、あおい君、そんな失敗は関係ないですよ!
あなたの度胸の良さには、驚きました!
緑札の方の脅しにも屈しないことも、聞いていますよ!
そんなあなたは、第7に行って活躍した方がいいのです」
良し、我ながら上手いこじつけが出来た!
秦広王から破廉恥なことをさせるな!と怒りの電話がきたからなどと、言えるわけない!
しかし、うちにとっては、いい人材だったのに!実に惜しい!
それなのに、泰山王は あおいさんの受け入れを渋ったらしいが。
それでも、猫の手も借りたという第7の事務方たちに押し切られ、あおいさんが行く事になったのであるが、秘密にしておこう。
あおいが明日から、違う場所へ行くと知った仲間たちは、緑札用ウォーターバーで、衣装のままで、皆んなで写真を撮った。
客の切れた一瞬が、奇跡的にあったからだ。
別れ際にもらった集合写真の裏には、“いつでもおいで!”の文字があったが、
写真の中で一際目立つ存在がいたのだった。
タマミさん、サンバカーニバルの衣装がとってもお似合いです。
サイズはピッタリですね。
私とタマキ先輩は、テニスウェアだけど、先輩は胸がぱつんぱつんだった。
スタイル抜群だから、私のサイズでは、無理がありましたね!すみません。
タマエさん、ゴスロリ衣装が可愛いです。
男性イケメン スタッフの皆さんも優しくしてくれて、ありがとうございました。
これにて、第3の門での新人仕事は、終了となったのであった。
………………
「リッチくーん、ただいまー」
ほら、写真を貰ったんだよ!
見て、見て!」
「お帰りなさーい!
写真?わっ、黄色い鳥がいる!
綺麗な鳥ですねー!
とても、美しいです!」
「………」
同じ衣装を着たけれど、
私に美しいとか言ってなかったよね?
「ふんっ」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「知らないよっ!さて、川で水でも浴びてくるかなー」
こうして、日の暮れない夜は更けていくのであった。
今日は、コップ洗い担当だ。
タマキ先輩とタマミさんと3人で、洗っている。
カチャ カチャ 、ザー ザー、つるっ!
ガチャン!
「やばっ、割っちゃった……。すみません」
「あおいさん!いくつめだと思っているの?しっかり持って、洗いなさい!」
「はい、タマミさん、すみません」
タマミさんは、いつも厳しい。
「まあ、次からは慎重に洗いなさいね」
「はい、タマキ先輩」
タマキ先輩は厳しいようでいて、実は優しい。
タマキ先輩に認めてもらえるような後輩になりたいと、あおいは思うようになっていたのだった。
「あおいさん、宗帝王様がお呼びです」
事務スタッフが呼びに来た。
ひぃ、3個めのコップを割ったことが、もうバレたのかな?
……………
「ただ今、戻りました。はーー」
所長室から戻ってきた あおいは、長い溜息をついた。
「何?どうしたの?」
あおいの様子が気になったタマキが聞いた。
「あと少しで、異動になると言われました。ここで、頑張ろうと思っていたからショックなんです」
「えっ……もう?
随分、早いじゃない!じゃあ、サンバカーニバルイベント早くやらないとね!
ねえ、タマミさん?」
「タマキさん、本気で言っています?
あおいさんが信じちゃいますよ?
何たって、あの衣装を試着する為に、持って帰ったんですもの。
で、あおいさん、試着してみてどうでしたか?」
タマミがあおいに聞いた。
「はあ、残念ですが、似合いませんでした」
「そうなのぉ?残念。じゃあ、タマエさんに着せようかな。ねっ、タマミさん?
それで、あおいさんは、どこに行くことになったの?」
「取り敢えず、第7の門 事務所に行くらしいです。
でも、異動日がはっきりしていないので、それまで頑張ります!
あのぉ、タマキ先輩、私、着たい衣装があるんですが!」
……………
あおい とタマキは、電車に乗り第2の門駅まで行き、脱衣場まで歩いていた。
2人は、緩やか坂道を下り脱衣場のスタッフ専用通路に入り、緑札スタッフールームの外にある衣料樹を目指している。
「ここの責任者のダツエ様に御挨拶してから、衣料樹様にお願いしましょう。
ダツエ様は、どこにいるかしらね?」
「きっと、緑札専用囲いの前に いると思います」
「えっ?あなた、ダツエ様を知っているの?タツエ様ではなく、お婆さんのダツエ様だけど?」
「はい、少し知り合いって、程度ですが」
あおい達は、緑札の囲いにやって来た。
「あっ、もしかして若い娘じゃないかい?」
振り向くと、トミエさんがいた。
「やっぱ、そうだ!何だ?冥界事務員の格好しているね。もう、働いているのかい?
だったら、ここへと来れば、また、こき使ってやったのにさ」
トミエの言葉を聞いたタマキは、ギョッとした。
あおいさん、もしかして、ここで働いていたの?
だとしたら、凄い根性の持ち主ってことね。
「トミエさん、お久しぶりです。
あの、ダツエ婆様は、いますか?
第3の門で使う服を、衣料樹様にお願いしようと来ました」
「へえ、第3の門にいるのかい。
ちょっと待ってな。ダツエ婆は、濁流側にいるからさ。今、呼ぶよ」
トミエは、そう言うと浅瀬側の見張り台に登り、マイクを使う。
「ダツエ婆さまー!お客です!来て下さーい」
げっ、これマイク放送だから、第2の門 入口にまで聞こえているよっ!
「トミエさんは、相変わらず豪快な人だね」
とタマキが小声で言った。
すると、ダツエ婆様からの返事が、
「何だー?用があるならー、こっちに来なー!」
これまた、濁流側の見張り台からのマイク放送返しだ。
結局、2人は、三途の川の端っこまで歩いて行くことになったのだ。
「ダツエ婆様!あおいでーす!」
あおいは、嬉しそうに手を振りながら、ダツエ婆の元へと行く。
そこには、川から上がりクタクタになった、緑札の者があちこちに転がっていた。
その者たちを、海パンの鬼が引っ張り、囲いの中に連行している。
「おや、娘じゃないかぁ!元気だったか?
今日は、何だ?手伝いにきたのかえ?」
「いえ、違います」
あおいは、即座に否定をする。
また、こき使われたら、たまらないよ!
早いところ、用件を言わないとね!
2人は、無事にダツエ婆の許可をもらい、衣料樹の前に来たのだった。
「さあ、あおいさんスーツを脱いで!
下着は、そのままでいいから。
さあ、呪文を唱えるからね。早く脱いで」
「えっ!嫌です、ここは囲いの無い外ですよ!恥ずかしくって、できません」
「誰も見ていないって!早くして!パッと脱ぎなさい!これ先輩命令ね」
あおいは、渋々、脱ぎ衣料樹様にお願いをしたのだった。
「へえ、あおいさんの服、可愛い!これ素敵だね。いいね、私もテニスウェアにしよう!
あおいさん、はい、脱いで、仕舞うから!もう一枚出してもらって!」
「また脱ぐんですかー?先輩は、どんなのがいいですかー?」
「超ミニスカとパンツにフリフリフリルが付いたのがいい!白ね」
先輩、すっごいノリノリだね。
あおいがイメージしたテニスウェアに満足したタマキであった。
帰り道、あおいは以前から、気になっていた事を聞いてみる。
「先輩、サンバの衣装って誰かがイメージして出した物ですよね?
誰が着たんですか?」
「言うと怒られちゃうかな?
内緒だけど、タマミさんだよ!
タマミさんに命令して出してもらったの!
だから、あの黄色いのはタマミさんのお気に入りのはずね!」
うわっ!あの厳しいタマミさんが、あれを着たんだ!ぶぶっ!
本人には、知らない振りをしておこう。
……………
それから数日が過ぎ、宗帝王様に再び呼ばれた。
「あおいさん、明日から第7に行ってもらいます」
「えっ?あ、明日から?
どうしてこんなに早く、違う所に行かないといけないのでしょうか?
コップを3個 割ってしまったからですか?
それとも、おしぼりの洗濯を失敗して、ボロ雑巾にしたからですか?
白札用の店で、蛍を捕まえて遊んだから?
緑札用の店でお客を怒らせたから?
失敗ばかりしましたけど、ここが好きでした……」
あおいの目から、涙が溢れている。
宗帝王は、オロオロするばかりだ。
「あ、あおい君、そんな失敗は関係ないですよ!
あなたの度胸の良さには、驚きました!
緑札の方の脅しにも屈しないことも、聞いていますよ!
そんなあなたは、第7に行って活躍した方がいいのです」
良し、我ながら上手いこじつけが出来た!
秦広王から破廉恥なことをさせるな!と怒りの電話がきたからなどと、言えるわけない!
しかし、うちにとっては、いい人材だったのに!実に惜しい!
それなのに、泰山王は あおいさんの受け入れを渋ったらしいが。
それでも、猫の手も借りたという第7の事務方たちに押し切られ、あおいさんが行く事になったのであるが、秘密にしておこう。
あおいが明日から、違う場所へ行くと知った仲間たちは、緑札用ウォーターバーで、衣装のままで、皆んなで写真を撮った。
客の切れた一瞬が、奇跡的にあったからだ。
別れ際にもらった集合写真の裏には、“いつでもおいで!”の文字があったが、
写真の中で一際目立つ存在がいたのだった。
タマミさん、サンバカーニバルの衣装がとってもお似合いです。
サイズはピッタリですね。
私とタマキ先輩は、テニスウェアだけど、先輩は胸がぱつんぱつんだった。
スタイル抜群だから、私のサイズでは、無理がありましたね!すみません。
タマエさん、ゴスロリ衣装が可愛いです。
男性イケメン スタッフの皆さんも優しくしてくれて、ありがとうございました。
これにて、第3の門での新人仕事は、終了となったのであった。
………………
「リッチくーん、ただいまー」
ほら、写真を貰ったんだよ!
見て、見て!」
「お帰りなさーい!
写真?わっ、黄色い鳥がいる!
綺麗な鳥ですねー!
とても、美しいです!」
「………」
同じ衣装を着たけれど、
私に美しいとか言ってなかったよね?
「ふんっ」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「知らないよっ!さて、川で水でも浴びてくるかなー」
こうして、日の暮れない夜は更けていくのであった。
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