冥界の仕事人

ひろろ

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第四章: 新人仕事人

オストリッチの知らない秘密

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 どういうわけか、生前から知り合いだった蓮さん。


 瞬間移動を教わって、いつの間にか蓮先生と呼ぶようになっちゃったな……。


 蓮さんの手は冷たくて気持ちがいい、もしかして、私の手が火照っているのかもしれない。
 

 だって、顔が火照って、ドキドキする感じがするもの。


蓮の後ろ姿を見上げながら、灯火の小道を歩いていると、蓮が突然止まった。


「ほら、この蝋燭は随分、短いだろう?

 炎が小さくなっているから、この人は、もうじき亡くなってしまう」


  蝋燭の下の方に 名前と生年月日が書いてある札が付いている。


 蝋燭が短くなり、札が蝋燭立てにかかって、もうすぐ水に浸かりそうになっていたのである。


 えっ……聞いてはいたけど、改めて蝋燭を見ると神妙な心地になる。


 さっき、道を走ってしまったけど、小道を通る時は、もっと慎重に静かに歩かなければならなかったと知る。


 そうか、私が不用意に走り出したから、蝋燭の火を消してしまう事を懸念して、蓮さんが迎えに来てくれたんだな。


「ほら、この辺を見てごらん」
 

「この周辺の蝋燭は、苗字が同じだろう?家族で固まっているんだ。

だけど、結婚したりすると、神様が蝋燭立てごと、移動させるんだよ」


「えー!じゃあ離婚したら、また移動ですか?」


「それは、大変だからしないらしいよ。
 再婚する人だけを移動させるんだ」


 それじゃあ、蝋燭は離婚相手の側にあるかもしれないんだ……複雑な気分だ……。


「結婚、再婚も多いでしょうから、神様も大変なんですね」


「新しい命の蝋燭も神様が用意するんだよ。

 まあ、神様は1人じゃないからね。

 ここに来ると、たまに会うかも知れないから、礼儀を忘れずに!」
 

「神様って、会ったら、すぐに分かりますか?」 


「うーん、変身していることが多いからなー!

 普通と違うと思ったら、だいたい神様だと思っていいよ」


 何だそれ?
 

普通と違う?変身?
 

意味がわからない!

 
「あの、蓮……先生、仕事が一緒になったから、前みたいに“蓮さん”で、いいですか?」


「もちろん、かまわないよ」


 瞬間移動すれば、この狭い小道を歩かずに済むのだが、蓮は あおいに説明する為、わざわざ歩いて通っているようだ。


 しかも、あおいが転んで蝋燭を倒したりしないように、手を引いて。


 ……互いにそう思って、歩いているはずだったが、既に生命の泉を出てしまい、階段を下りているのである。


2人は、まだ手を繋ぎ、黙ったまま歩いている。


  はっ、ここは階段だ!


もう蝋燭はないけど?


 蓮さんは、まだ手を離さないでいる。


何で?


 うーん、まっ、いいか!


 私は、このままでもいいから、黙っていよう。


 そして、とうとう死神管理棟に着いてしまったのだった。


 建物の前には、見慣れた顔が!


「あー!蓮先生、会いたかったです!
蓮せんせーい!蓮先生」


 パタパタ


「どうして、手を繋いでいるんですか?」


 嬉しそうに飛んできた、オストリッチの質問である。


「あー、忘れてた」


 あおいの手を、パッと離した蓮だった。


 は、忘れてた?なんか蓮さん、天然なのか?


「リッチ君、どうしてここに?」


「お姉さんこそ、どうしているんですか?
僕は、今日から、うぉっほん!
蓮先生の補佐なんですぅ」


 とても嬉しそうに話しているオストリッチなのだった。


「私も、蓮さん・・の補佐なんだよ」


「えっ!お姉さんも?」


 蓮先生が僕だけを指名してくれたと思ったのに……。


 それに、お姉ちゃん、蓮さんなんて呼んで、ずるい!僕もそうする!


 オストリッチは、不満そうな顔をしている。


「オストリッチ君、よく来てくれた。
 今日から、よろしく頼みます」


「はいっ、蓮さん・・

 こちらこそ、よろしくお願いします」


 むっ、リッチ君も蓮さんって言った……。


「オストリッチ君、これがモバリスだよ!あ、そのヘルメットは、いつも被らないとダメなの?」


 オストリッチは、座布団も籠も背負っていないが、いつものヘルメットは被っていたのだ。


「秦広王様から、頭を守りなさいと言われています。でも、取ります」


「 ! 」


 ヘルメットを取ったオストリッチの頭は、産毛がかろうじてあるが、はげかけていたのだ。


 それを見た蓮は、帽子を用意するまで、ヘルメットを被りなさいと言った。


「えっ?被っていていいんですか?
どうしてですか?」


「オストリッチ君、もしかして知らないの?
あっ、そうか……じゃあ、ネクタイを締めよう」


 話しを変えた蓮は、オストリッチの首にグレーのネクタイを締めてあげた。


「蓮さん、ありがとうございます」


 オストリッチは、とても嬉しそうな顔で言った。


  プルプルプルッ


 モバリスが鳴っている。


「さあ、仕事だ!

気を引き締めていこう。

モバリスの住所に行くんだ。

あおいちゃん、わかるね?
オストリッチ君もいいね?さあ、出発」


「はいっ」


 あおいもオストリッチも元気に出発したのだった。

……………
 
ここは、第1の門 道先案内スタッフルームである。


「えっ、マジか?」
 

思わず、スワンが言った。


「わっ、馬鹿!そんな言葉、言うな!
 秦広王様に聞こえるぞ!」


 とホークが、焦って注意をした。


「そう言う、あなたも言葉が悪いですよ」


 オストリッチが調査員の仕事をする為、異動すると聞き、自分たちに雑用が増えるのではないかと、話しをしているところだ。


「オストリッチが、瞬間移動が出来るからって、道先案内人の他に、配達の仕事が増えたからな。

これから、どうする?」


「 ! スワン、来てる……そこ」


 小声でホークが言うから、指差す方向を見てみると秦広王様が外窓から中を覗いていたのである。


 スワンがガラッと窓を開ける。


「秦広王様、何か御用ですか?」


「お、オストリッチは、もう居ないのであるか?」


 挨拶もせんで、行ったのであるな……。


 何だ……。


「ああ、オストリッチの後釜は、少し時間がかかるが、考えておるから、安心したまえよ」


「本当ですか!ありがとうございます」


 2人は、揃って言った。


「それとな、言葉遣いは、いつでも丁寧にしたまえよ!
特にホークは、気をつけたまえよ」


 地獄耳の秦広王は、少しくらいの離れた場所なら、声が聞こえるのだった。


  秦広王は、そう言い残し、仕事に戻って行った。


「新しい鳥が来るのでしょうか?
 ねえ、ホークさん」


「ええ、きっと鶴なんでしょうね、スワンさん。秦広王様は、私たち鶴がお好きみたいですからね」


「時間がかかるそうですから、気長に待ちましょう。ね、ホークさん」


「2人だけなのに、この会話は疲れます。ねぇ、スワンさん」


 こうして、ギクシャクした会話は、暫く続いたのだった。

………………

 ある病院のロビーに着いた あおいは、モバリスを見て確認する。


「病室の番号は……506か、急ごう」


 506号室のドアの前では、あおいを待つ蓮とオストリッチがいた。

 
 あおいちゃん、辿り着くのだろうか?


 自分が連れて来た方が、仕事がはかどる気がするのだが……。


「すみません、蓮さん、リッチ君、お待たせしました!」


 「では、行くから見ているんだよ」


 そう言うと、蓮は病室のドアを開けて入った。


 生きている者には、開いたようには見えていないが、きちんとノックをして、入ったのである。


 続いて、2人も後に続いた。


 中には、ベットの横に、身体から抜け出たお婆さんが立っていた。
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