冥界の仕事人

ひろろ

文字の大きさ
58 / 109
第四章: 新人仕事人

天界の利通さん

しおりを挟む
 あおいと同じ時間に、冥界到着ロビーに着いた“品の良さそうなお爺さん”こと、利通さんは、あおいよりも先に天界に来ていて、天界のことを 色々と教えてくれた人なのだ。


 あおいは居住区に入り、自分が住んでいた場所を探していた。


 目印は、モミジの木だよね!


「あっ、ここだ!」


 私が住んでいた所は、撤去されちゃったんだ……。


 利通さん家の隣は、空き地になっていた。


 利通さん、いるかな?


「とーしーみーちーさーん」


  シーンとしている。


  残念、留守かぁ、帰ろう!


「あれ?あおいさんですか?」


 「あー、利通さーん!居ないと思って、帰ろうかと思っていました!」


「お久しぶりですね。
 最近、ボランティアで、公園の花壇の手入れをするようになって、今帰って来ました。

そのうちに、せせらぎ川の向こう側、立ち入り禁止区域の、花の植え替えがあるそうなので、行く予定なんですよ」


「えー、立ち入り禁止区域に入るんですか!どんな所なんでしょう。

花の植え替えに行くんですね。
それなら、綺麗な場所なんでしょうね」


 あおいは、立ち入り禁止区域に入ったことがないので、想像を膨らませている。


 「利通さんが、見てきたら、私にどんな所だったか教えて下さい」


「はい、教えますよ。

毎日、暇を持て余していたから、やる事が見つかって良かったです。

あおいさんは、どんなお仕事をしていますか」


「今は、幽体離脱をした人の、生前の行為を調査して、データーを冥界に送る仕事をしています。

と言っても、それは調査員の仕事で、私はその補佐なんです。

この仕事で、何かを信頼して任されるとかって、まだ無くて……」


 あおいはそう言うと、利通の玄関先の石階段に腰を下ろした。


 はぁー!


 あおいは、溜息をつきながら自分の額を膝につけた。


「もしかして、落ち込んでいますか?
誰だって、初めてがあって、上手くいかない事の方が、多いものです。
落ち込むのは、まだ早いです」


 利通も あおいの隣に腰を下ろす。


「だって、一緒に補佐になったリッチ君、あ、オストリッチ君は、瞬間移動も完璧に出来るし、子どもなのに何でも出来るし……」


「あぁ、そうなんですか……。

子どもと言っても、オストリッチ君は、既に職業に就いていたではありませんか。

仕事をする上での、コツを知っているんでしょう。

自分の弱点を知っていて、自分でカバーをしているかもしれませんよ?」


えっ?弱点?


あおいは、これまでのオストリッチとの日々を思い出してみる。


 そういえば、各門を旅していた頃、名前とかメモして、胸羽の中に入れていたな。


 あっ、今でもメモをしている……


 リッチ君、努力をしているんだね……


「初めてする仕事でも、中にはね、要領良く出来てしまう人が、たまにいる のが困りますよね?

すると、比べたり、比べられたり……ってね。

でも、そんな事は気にしない!
 今は、出来なくて、当たり前!

 向上心を忘れなければ、大丈夫です」


 「利通さーん、ありがとうございます」


 あおいは、元気とやる気が出てきたのだった。


「私、向上心を忘れないように仕事をします。励ましてくださって、ありがとうございました。

じゃあ、帰ります。また、来ますね」

 
 あおいは、すくっと立ち上がり、ベルトのバックルに軽く手を触れ消え去った。


 はっ、あおいさんが消えた!


 あなたは、凄い技を持っているじゃないですか!頑張りなさい。

………………

 あおいが帰ったその頃、蓮は第3の門前で、タマミに会っていた。


タマミは、先日の舞妓の姿でいる。


「タマミさん、無理を言ってすみません。先日、あなたが余りにも、美し過ぎて驚きました」


「えっ、そんなことないです。

 恥ずかしいわ」


 タマミは、満更でも無い笑顔で否定した。


「あのぉ、今日、舞妓さんの姿で会ってほしいと言ったのは、あなたの写真が欲しかったからです。

写真を撮ってもいいですか?」


 えっ?蓮さんが私の写真を欲しいの?


 どういう意味があるの?もしかして?


「では、撮ります。
 いいですねー!綺麗ですね。

 あっ、そのポーズいいなぁ。
 はい、お疲れ様でしたー!」


 ノリノリのタマミは、ポージングを変え、蓮はモバリスで、そんなタマミを撮りまくったのだった。


モバリスには、色々な機能があるのだ。


「いやー、素晴らしい写真が撮れました。

私の友人が、着物美人の写真を集めているもので……。

この写真も、コレクションに入れてもよろしいでしょうか?」


「はぁ?お友達に写真を渡すのですか?
 蓮さんが欲しいわけではないのですか?

何だぁ。あ、いえ!
私の写真で良ければ、どうぞ」


 何だ、蓮さんが私に気があるって、勘違いしたわ。


残念だわ。


でも、そのお友達が、カッコイイ人ならいいな……。


「タマミさん、本当にありがとうございました。

 改めて御礼をしますからね。
 
 また、来ます。じゃあ」


 用を済ませた蓮は、さっさと消えたのだった。


 えっ?えっ?どんな御礼?


 また会いに来るの?


 私をお友達に紹介する気なの?


 私、もてあそばれた気分だわっ!


どうなのよー?

 それから、タマミは 悶々とした日々を送るのであった。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...