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第四章: 新人仕事人
辛い仕事
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プルプルプルッ
外は明るいが、深夜に鳴り響くモバリスの音。
「リッチ君、起きて!
仕事だよ!えーと、担当地区の本日の予定者は2名。
これから行く場所は……ロゼ山?
ロゼ山のどこに行けばいいんだろう?
リッチ君、山に行くんだよ!
場所が漠然としているから、どうすればいいんだろうね?
ねえ、起きてよ!
よく、立ったままで寝ていられるね」
「うーん?おはようごじゃいます……」
オストリッチは、寝ぼけながら着替えている。
「ちょっと、リッチ君、頭!ヘルメットは被らないで!帽子を被ってね」
「うん……」ゴツン。
オストリッチは、壁にぶつかった。
「ちょっと、リッチ君、大丈夫?
これから私達は、山に行くんだから、しっかりしてよ」
ロゼ山と言われても、行ったところで蓮に会える保証はない。
オストリッチと合流できるかも分からない。
トントン
「2人とも、おはよう」
あっ、蓮さんの声だ!
あおいは、急いでドアを開けた。
「ロゼ山だけでは、合流が難しいから私が連れて行く、オストリッチ君おいで」
挨拶する前に早口で言われ、オストリッチと行ってしまった。
あおいは、外で茫然となっていたら、すぐに迎えに来てくれたのだ。
「あおいちゃん、お待たせ。
さあ、すぐに行くよ。おいで!」
「はい……」
あおいは直立不動のままで、抱きしめられたから、蓮が不審に思う。
「どうしたの?私にしがみつかないの?
移動中に落ちたら大変だから、手を私の腰に回して!早く!」
「はいっ!」
あおいは、思いっきり蓮を抱きしめた。
もう、蓮さんのことを諦めようとしているのに!切ないな……。
深夜の ロゼ山入口から、脇に入った場所に着いた。
当然、真っ暗だ。
先に待っていたオストリッチが、
蓮の所に飛んで来て言う。
「こんな所に予定者がいるんですか?
真っ暗で、何処にいるか見えません」
「この眼鏡を掛けてみて……あっ、オストリッチ君には、サイズが合わないね……後で衣料樹の所に行こう」
あおいは、蓮から眼鏡を渡されて掛けてみた。
暗闇でも明るく見えるようになる、という不思議な眼鏡らしいのだ。
「 ! 」
きゃあっ!と声を上げるのを我慢し、息を飲む。
足が、ガクガク震えてきている。
「どうしたの?お姉さん」
オストリッチが心配そうに聞いた。
獣道から外れた斜面の、木の上の方から、ぶら下がるシルエットを見たのだ。
「これは、突発的な事だから、死神が札を貼るだけで精一杯なんだ。
既に幽体離脱をして、どこかへ移動してしまっているようだ。
さあ、この辺りに幽体離脱した男性がいるはずだから、3人で捜そう。
オストリッチ君は、見えなくて危ないから、あおいちゃんと手を繋いで」
あおいは、蓮の後ろを歩きながら、蓮が右側を、あおいは左側を見て捜す。
眼鏡を掛けているから、夕方くらいの明るさの様に、見えている。
それでも、木の根っこがあちこちにあったり、伐採の跡や穴もあったりして、歩くのは大変だった。
「どこに行っちゃったんだろう?」
あおいが左側を見ながら呟くと、
「いた!あそこの木の下に座っている」
と蓮が言った。
男性は、こちらに気がつき、逃げようとする。
「待て!怖がらなくていい!我々は、死者の国の者だ!あなたを冥界に送る為に来たのだ」
蓮が男性を捕まえて、早口で言ったのである。
すると男性は泣き崩れた。
「やはり、僕は死んでしまったのか……。
どうしよう、妻と子ども達を残して勝手な事をしてしまった……。
お願いです。僕を戻して下さい。
一時の気の迷いでした!
まだ、死ねません」
男性が、蓮にすがったのだ。
あおい とオストリッチも、望みを持ちながら蓮を見る。
蓮は、残念そうに首を横に振った。
「甲本 武史さんですね?あなたは、その考えを早く持つべきでした。
ロープを掴んだその瞬間に、思い留まってくれていたら……。
いや、やめましょう。
こんな事を言っても、どうする事も出来ません」
蓮は、ぎゆっと唇を結び。
一瞬、上を見上げ、男性に向き直る。
「では、これより、生前にあなたが行なってきた事を調査して冥界へ送ります。
忘れた記憶でも、分かってしまいます。
では、額を失礼します」
暗闇の山中にモバリスの音が、不気味に響いている。
もし、私が調査員になれたとしても、こんな山の中を1人きりで、死者を捜すとかって、怖くて無理だ!
「あなたは、自ら命を絶ってしまったので、あなたの声を家族へと届けることはできません。
何か家族へ残した物は、ありますか?」
男性は、はっとした顔をした。
発作的にここへ来てしまって、何も残していないと言う。
蓮は、時計を見る。
もう時間がない。
「あなたの所持品にメモする物があれば、今、直ぐ書いて下さい。
幽体離脱したばかりなら、まだ書くことができるかもしれない!
もう、迎えのエレベーターがやって来るから、急いで」
えっ?いつもは、蓮さんがエレベーターを呼んで、来るのに?
まだ、エレベーターをこちらから呼んでいないのに、来てしまうってこと?
あおいとオストリッチは、不思議に思っていた。
男性は、自分のいた場所に戻りビジネスバックの中から、メモ帳とボールペンを出し書いた。
すると、男性の後ろに煙と共に、冥界エレベーターが現れたのだ。
「甲本武史さん。
もう旅立ちの時になってしまいました。
書いたメモを鞄に戻して下さい。
もう、この世とお別れです」
男性はメモをしまい、覚悟の顔付きになった。
「天か地獄か裁きの時。
冥界の扉よ、開け!」
男性は、蓮に軽く背中を押され、中に入って行った。
そして、こちらに向き直ると、涙を流し、ありがとう と言った。
あおい とオストリッチは、必死に涙を堪えている。
今、言葉を発したら、全て涙声となる気がして、2人は、口を真一文字に結んでいた。
蓮は、黙って深くお辞儀をして、見送る。
2人も黙ってお辞儀をした。
静かに扉が閉まり、エレベーターが消えた。
「蓮さん、どうしてエレベーターが勝手に来たのですか?」
もう少し時間があれば、きちんとお別れの言葉が書けたのに、と思ったオストリッチが聞いた。
「突発的に起こった事に対しては、死者のデーターを冥界に送ってから、規定の時間が過ぎたら、自動で迎えのエレベーターがくるシステムになっているんだよ」
大事故とかで、現場が混乱してエレベーターを呼ぶ作業も大変になって、そうなったらしい、と蓮が教えてくれた。
今回、データーを送る前に 書きおき の確認をすれば良かったと、反省をする蓮なのだった。
あの男性は、自殺者だから、緑札になるのは間違いない。
きっと、厳しい旅をするだろう。
どうか何とか乗り越えて、少しでも罪が、軽くなりますようにと、蓮は願うばかりだった。
男性が 厳しい旅をして いる頃、ようやく その亡骸が発見されたのだ。
男性の遺留品の中から、メモが見つかった。
“のりこ ごめん しあわせいのる”
殴り書きで、書いてある文字。
奥さんが、泣きながら言う。
「あなた無しで、どうやって、幸せになれると言うの!帰って来てよ!
ただいまーって、帰って来て……」
奥さんは、このメモを小さく折りたたんで、御守り袋に入れた。
どうか私と子ども達を守ってね。
蓮を含めて、調査員をやっている者達は、この人を助けたい と思う経験があるのだ。
時に辛さに耐えながら、仕事をしているのである。
誰かがやらなくてはならない仕事だから、誇りを持ってしているのであった。
外は明るいが、深夜に鳴り響くモバリスの音。
「リッチ君、起きて!
仕事だよ!えーと、担当地区の本日の予定者は2名。
これから行く場所は……ロゼ山?
ロゼ山のどこに行けばいいんだろう?
リッチ君、山に行くんだよ!
場所が漠然としているから、どうすればいいんだろうね?
ねえ、起きてよ!
よく、立ったままで寝ていられるね」
「うーん?おはようごじゃいます……」
オストリッチは、寝ぼけながら着替えている。
「ちょっと、リッチ君、頭!ヘルメットは被らないで!帽子を被ってね」
「うん……」ゴツン。
オストリッチは、壁にぶつかった。
「ちょっと、リッチ君、大丈夫?
これから私達は、山に行くんだから、しっかりしてよ」
ロゼ山と言われても、行ったところで蓮に会える保証はない。
オストリッチと合流できるかも分からない。
トントン
「2人とも、おはよう」
あっ、蓮さんの声だ!
あおいは、急いでドアを開けた。
「ロゼ山だけでは、合流が難しいから私が連れて行く、オストリッチ君おいで」
挨拶する前に早口で言われ、オストリッチと行ってしまった。
あおいは、外で茫然となっていたら、すぐに迎えに来てくれたのだ。
「あおいちゃん、お待たせ。
さあ、すぐに行くよ。おいで!」
「はい……」
あおいは直立不動のままで、抱きしめられたから、蓮が不審に思う。
「どうしたの?私にしがみつかないの?
移動中に落ちたら大変だから、手を私の腰に回して!早く!」
「はいっ!」
あおいは、思いっきり蓮を抱きしめた。
もう、蓮さんのことを諦めようとしているのに!切ないな……。
深夜の ロゼ山入口から、脇に入った場所に着いた。
当然、真っ暗だ。
先に待っていたオストリッチが、
蓮の所に飛んで来て言う。
「こんな所に予定者がいるんですか?
真っ暗で、何処にいるか見えません」
「この眼鏡を掛けてみて……あっ、オストリッチ君には、サイズが合わないね……後で衣料樹の所に行こう」
あおいは、蓮から眼鏡を渡されて掛けてみた。
暗闇でも明るく見えるようになる、という不思議な眼鏡らしいのだ。
「 ! 」
きゃあっ!と声を上げるのを我慢し、息を飲む。
足が、ガクガク震えてきている。
「どうしたの?お姉さん」
オストリッチが心配そうに聞いた。
獣道から外れた斜面の、木の上の方から、ぶら下がるシルエットを見たのだ。
「これは、突発的な事だから、死神が札を貼るだけで精一杯なんだ。
既に幽体離脱をして、どこかへ移動してしまっているようだ。
さあ、この辺りに幽体離脱した男性がいるはずだから、3人で捜そう。
オストリッチ君は、見えなくて危ないから、あおいちゃんと手を繋いで」
あおいは、蓮の後ろを歩きながら、蓮が右側を、あおいは左側を見て捜す。
眼鏡を掛けているから、夕方くらいの明るさの様に、見えている。
それでも、木の根っこがあちこちにあったり、伐採の跡や穴もあったりして、歩くのは大変だった。
「どこに行っちゃったんだろう?」
あおいが左側を見ながら呟くと、
「いた!あそこの木の下に座っている」
と蓮が言った。
男性は、こちらに気がつき、逃げようとする。
「待て!怖がらなくていい!我々は、死者の国の者だ!あなたを冥界に送る為に来たのだ」
蓮が男性を捕まえて、早口で言ったのである。
すると男性は泣き崩れた。
「やはり、僕は死んでしまったのか……。
どうしよう、妻と子ども達を残して勝手な事をしてしまった……。
お願いです。僕を戻して下さい。
一時の気の迷いでした!
まだ、死ねません」
男性が、蓮にすがったのだ。
あおい とオストリッチも、望みを持ちながら蓮を見る。
蓮は、残念そうに首を横に振った。
「甲本 武史さんですね?あなたは、その考えを早く持つべきでした。
ロープを掴んだその瞬間に、思い留まってくれていたら……。
いや、やめましょう。
こんな事を言っても、どうする事も出来ません」
蓮は、ぎゆっと唇を結び。
一瞬、上を見上げ、男性に向き直る。
「では、これより、生前にあなたが行なってきた事を調査して冥界へ送ります。
忘れた記憶でも、分かってしまいます。
では、額を失礼します」
暗闇の山中にモバリスの音が、不気味に響いている。
もし、私が調査員になれたとしても、こんな山の中を1人きりで、死者を捜すとかって、怖くて無理だ!
「あなたは、自ら命を絶ってしまったので、あなたの声を家族へと届けることはできません。
何か家族へ残した物は、ありますか?」
男性は、はっとした顔をした。
発作的にここへ来てしまって、何も残していないと言う。
蓮は、時計を見る。
もう時間がない。
「あなたの所持品にメモする物があれば、今、直ぐ書いて下さい。
幽体離脱したばかりなら、まだ書くことができるかもしれない!
もう、迎えのエレベーターがやって来るから、急いで」
えっ?いつもは、蓮さんがエレベーターを呼んで、来るのに?
まだ、エレベーターをこちらから呼んでいないのに、来てしまうってこと?
あおいとオストリッチは、不思議に思っていた。
男性は、自分のいた場所に戻りビジネスバックの中から、メモ帳とボールペンを出し書いた。
すると、男性の後ろに煙と共に、冥界エレベーターが現れたのだ。
「甲本武史さん。
もう旅立ちの時になってしまいました。
書いたメモを鞄に戻して下さい。
もう、この世とお別れです」
男性はメモをしまい、覚悟の顔付きになった。
「天か地獄か裁きの時。
冥界の扉よ、開け!」
男性は、蓮に軽く背中を押され、中に入って行った。
そして、こちらに向き直ると、涙を流し、ありがとう と言った。
あおい とオストリッチは、必死に涙を堪えている。
今、言葉を発したら、全て涙声となる気がして、2人は、口を真一文字に結んでいた。
蓮は、黙って深くお辞儀をして、見送る。
2人も黙ってお辞儀をした。
静かに扉が閉まり、エレベーターが消えた。
「蓮さん、どうしてエレベーターが勝手に来たのですか?」
もう少し時間があれば、きちんとお別れの言葉が書けたのに、と思ったオストリッチが聞いた。
「突発的に起こった事に対しては、死者のデーターを冥界に送ってから、規定の時間が過ぎたら、自動で迎えのエレベーターがくるシステムになっているんだよ」
大事故とかで、現場が混乱してエレベーターを呼ぶ作業も大変になって、そうなったらしい、と蓮が教えてくれた。
今回、データーを送る前に 書きおき の確認をすれば良かったと、反省をする蓮なのだった。
あの男性は、自殺者だから、緑札になるのは間違いない。
きっと、厳しい旅をするだろう。
どうか何とか乗り越えて、少しでも罪が、軽くなりますようにと、蓮は願うばかりだった。
男性が 厳しい旅をして いる頃、ようやく その亡骸が発見されたのだ。
男性の遺留品の中から、メモが見つかった。
“のりこ ごめん しあわせいのる”
殴り書きで、書いてある文字。
奥さんが、泣きながら言う。
「あなた無しで、どうやって、幸せになれると言うの!帰って来てよ!
ただいまーって、帰って来て……」
奥さんは、このメモを小さく折りたたんで、御守り袋に入れた。
どうか私と子ども達を守ってね。
蓮を含めて、調査員をやっている者達は、この人を助けたい と思う経験があるのだ。
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