冥界の仕事人

ひろろ

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第五章: 新人仕事人 恋模様

どこに行きます?

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 旅行に誘われ、各自が行き先の案を出し合うことになり、あおいの頭に浮かんだのは、第3の門にいるタマキに聞こうという事だった。


 タマキ先輩なら、色々と旅行に行っていそうだから、教えてもらえるだろう。


 もう仕事が終わった頃かな?
 あっ、帰っていたらどうしよう。
 家を知らないし、急いで行こう!


 第3の門に到着し、ロッカールームに入ってみる。


「失礼します……」


  着替え中の人に悪いので、そろりそろりと隅を歩いて、タマキを探す。


「ああ、あおいさん!どうしたの?」
 

 タマキの方があおいを見つけ、声をかけてくれた。


 あおいは、個人旅行に行く予定だと話し、どこに行ったら良いか相談しに来たと話した。


「第3の門の事務所の中には、トラベル部というのがあって、冥界の団体旅行の企画をしているの。

そこに資料があるから、一緒に行きましょう」


 と、タマキが教えてくれたのだった。


「えー、ここで団体旅行の企画をしていたんですね!

私、企画に意見があって、探そうと思っていました。丁度、良かった」


  タマキと事務所に行こうと、廊下を歩いていたら、前からタマミが歩いてきたことに気づいた。


 あおいは、立ち止まる。


「あら、あおいさん、久しぶりね。

  今日は、どうしたの?」


「ご無沙汰しています。

今日は、旅行の計画をしようと、資料を見に行くところなんです……」


 あっ!蓮さんと旅行に行く事は、内緒にした方がいいよね。


だって、蓮さんの彼女さんだものね。


いくら、リッチ君が一緒とはいえ、いい気分はしないでしょ。


「旅行に行くの?誰と?」


 ひぃ、鋭い質問ですね、タマミさん!


 あなたの彼氏さんと、なんて言えませよっ!


「お、オストリッチ君と行きます」

私は、リッチ君とも一緒に行くから、嘘は言っていません。


「あぁ、あのダチョウさんね。ふふふ、楽しんできてね」


 タマミは、安心したかのように、機嫌良く笑った。


「タマミさん、お疲れ様。
 さあ、あおいさん、行くわよ」


「はい、タマキ先輩」


 タマキの一言で、あおいはタマミから解放されたのだった。


「タマミさんは、この前、蓮さんから思わせ振りな態度をされて、凄く舞い上がっていたのよ。

でもね、何でも舞妓姿の写真が欲しかっただけらしく、写真を撮られただけだったって!

しかも、その写真を他の人に、あげるって言われたらしいの。

なんだか、タマミさん気の毒ね。ふふ」

 
 えっ?マジで?


 もしかして、あの手紙はラブレターとかでは、なかったの?


 えっ、えっ?


「じゃあタマミさんは、蓮さんの彼女さんではないんですか?」


 あおいは、タマキにストレートに聞いてみた。


「ええ、違うわよ!
写真が欲しい、なんて手紙を貰えば、誰でも自分に、気があると思っちゃうわよね?

蓮さんって、魔性の男なの?怖いわー」


「多分、女心は分かっていないと思います。天然だと思います」

 
「うわっ、あれが天然なんて!
ぞっとするわ!
タマミさんが、可哀想よ!ふふ」

 
 そんな風に言って……タマキ先輩、楽しそうですね、喜んでいますよね。

 
 それから、事務所内のトラベル部に入って行き、タマキは帰った。

 
「すみません。お願いがあるのですが、旅行の資料を見せてもらっても、よろしいですか?」


 あおいがトラベル部の人に許可をもらい、資料を見て、気になる所をメモ取ったりした。

 
 よし、これくらい調べればいいか。


「あの、ありがとうございました。

それと、また、お願いなのですが……

団体旅行の行き先のリクエストです。
若い人向けの、テーマパークとか行けたらいいなぁ とか思っています。

どうかご検討下さい。
よろしくお願いします。
お邪魔しました」


 トラベル部の男性スタッフは、あおいのことを図々しい娘と思ったが、言われてみれば、確かにいつも年配者向けの旅行しかなかった、と気がついた。

  
 蓮とタマミが、何でもない関係だと知り、あおいの心は、スッキリと澄み渡る青空のようで、元気に掘っ建て小屋……いやログハウスへと戻って行ったのだった。

 ………………

 その日の夜。


 トントン


 ドアノックの音がした。


「リッチ君、誰か来たよ」

 オストリッチがドアを開けると、蓮がいたのであった。

「蓮さん、どうしたんですか」

「やあ、オストリッチ君、急に来て悪いね。旅行先を考えていたら、3人で話した方がいいかなって思って、来てしまいました」


 蓮さんだ……。

 私、蓮さんのことを諦めなくてもいいんですよね?
 私、頑張っちゃいますから!


 あおいが、どう頑張るのかは、蓮もオストリッチも知らないことである。


 その後、3人は行き先決めで揉めたが、結局、蓮が持ってきた案に収まったのであった。
 

「じゃあ、2人とも ここで文句ないね?

 で、いつ行くかだけど、あおいちゃんの里帰りが済んでから行こうね」


「えーー!先に行かないんですか」

 あおいは、物凄い不満顔である。


「まあ、旅行はその後で楽しく行こうよ。まずは、家族の顔を見て来なさい」


 これで、直ぐにでも里帰りをするだろう。我ながら、いいアイデアだな。

 孝蔵さん、褒めて下さいっ!

 蓮は、心の中で自分を褒めた。


 翌日、あおいは、仕事の空き時間に第7の事務所に個人旅行の申請をしに行ったのである。


 個人旅行の場合は、乗り物が空いていればいつでも行けるらしい。


 手続きは、事務員の玲子がしてくれた。

「では、明後日、1泊2日の旅ですね。

 到着ロビーの外に川があるのはご存知ですよね?

 その川を渡って、あっ、橋がございます。渡って小道を歩けば、配車センターの車乗り場があるので、その車に乗って下さい」


「私、車の免許は持っていません。
 乗れません」


「大丈夫です。運転手がいますから。

 どうぞ良い旅をして下さい」

 ………………

 個人旅行の当日である。

 就業許可証は、持ったし、よし!

「リッチ君、行ってきます」

 あおいは、作務衣に草履、いつものポシェットというスタイルである。

 制服以外は、これしか持っていないのであった。

 蓮さんとの旅行の時は、なんとか衣装を用意しないとな、タマキ先輩に相談しよう。


 事務センターの建物の裏側、警備部の前を通り、ぐるっと回った到着ロビーの脇辺りに位置する川に出た。
 
「こんな所に橋があったのか、知らなかったな」


 川の向こうは、石垣があって、花が沢山植えられていて綺麗である。


 橋を渡ると、車乗り場という看板を見つけたのであった。


 行ってみると、まるでタクシーのような車が沢山置かれていたのである。


 車の上に冥界と書いてある行灯あんどんがあって、乗り場とある所に行くと、車のドアが開いた。
 
 この車に乗れってことかな?
 じゃあ、就業許可証を見せよう。


「よろしくお願いします」

 あおいが運転手に就業許可証を見せた。


「こちらこそ、宜しくお願いします。
 額に札を貼りますから、お乗り下さい」


 先に貼ってから乗ればいいと思うけど、車に乗るのが先なんだね。


 運転手があおいの額に札を貼った。

 その途端、視界がグラグラとして、記憶が頭の中を走馬灯のように駆け巡り始めたのであった。

 
「水島 あおい さん、これより自宅へ向かいます。発車します」


 車は、宙に浮いたかと思った瞬間、ジェットコースターのようなスピードで走り始めたのであった。


 キャァー!

 なんだ、これー!

 怖いよ!


 私、瞬間移動が出来るから、これ乗らなくてもいいんじゃないですかー?


 あおいは、心の中で叫ぶのである。

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