冥界の仕事人

ひろろ

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第五章: 新人仕事人 恋模様

旅館に行こう!

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 「お姉ちゃん、まだ朝じゃないの?」


「え、まだ夜中だからね。
もう少し、寝ようね」


  朝になれば、旅行に行けるから、オストリッチは、興奮して、すぐに目覚めてしまうのだ。
………………
 
 トントン


「おはよう!オストリッチ君、あおいちゃん!」


 はっ!朝だ!しまった!


「はーい、すみません。少し待って下さーい」


 作務衣を着て寝ていて、そのままの格好で出掛けるのだが、せめて、髪を整えておきたかった……。


 ポシェットを斜めに掛けた あおいは、立ったままで寝ている オストリッチを起こし、急いで扉を開けた。


「おはようございます、蓮さん……」


「 ! 」


「代わりに仕事に出てくれる人がいたから、僕もきちゃったよ!


 寝ぼけていたオストリッチも驚いた。


「あの、弱い人だ……」


 思わず、声に出してしまったオストリッチだった。


天界の魔物騒動時に駆けつけてくれたけれど、やられてしまった事を思い出したのだ。


「ちょっと、リッチ君!何言っているのっ!もう、失礼でしょ!
優さん、すみません」


  慌てて あおいが謝った。


「うん、本当の事だしな……。
ツルノ君を助けられなくて、結局、紅鈴さんが魔物を倒したんだし。

弱くてごめんね、僕は、優です。

名前の方を覚えてほしいな」


「あ、すみません、すみません。
 僕、寝ぼけて変なことを、言っちゃいました……あのぉ、気になったのですが、僕は、オストリッチです」


「ツルノ オストリッチ君でしょ?」


 優は、悪びれずに言った。


「そうです!鶴のオストリッチです」


「ツルノ君の方が呼びやすいから、僕はそう呼んでもいいかな?」


 オストリッチは、何故、ツルノ君になるのか不思議だったが、了解したのだった。


「2人とも、優が突然 参加することになって、すまないな。
コイツ、自分も行くってしつこくてさ」


 あおいは、2人で遊園地に行ったことを蓮には、知られたくないと思っていたから、微妙な気持ちでいた。


「さあ、そろそろ出発するから、集合場所の確認をするよ」


「あっ、今、メモを用意します」


 オストリッチは、そう言うと、紐付きメモ帳を頭から掛け、ヘルメットを被り支度をした。


「じゃあ、確認が済んだから、行こう!
 みんなが離れ離れになるといけないから
 
2人組で行こう。

優は、オストリッチ君と、あおいちゃんは私と行く」


 と、蓮が言った。


「あおいちゃん、おいで」


 いつものように蓮があおいを呼んだので、行こうとしたら、あおいの手を優が掴んだ。


「僕たち、2人一緒に行くから。
先に行っているよ」

 
「えっ、優、勝手な行動をするなっ!」


 まったく、自分勝手なんだから!


「じゃあ、オストリッチ君おいで。
 行こう!」


 「はい、お願いします」

………………

 黄金色した銀杏いちょうの並木道があおいと優を出迎えてくれている。

 手を繋いで、ここまで来た2人だったが、あおいから手を離した。


「私は、蓮さんと来るはずだったのに、どうして蓮さんに反抗したんですか?

喧嘩をしたんですか?」


「喧嘩?してないよ。
だって、僕たちが一緒に来る方が自然だからだよ。

あおいちゃんも、そう思うでしょう」


 あおいには、一緒に来ることが自然だと言う意味が、わからない。


ただ、何か誤解がある気がした。


「もしかして、私たちが……」と、あおいが言いかけた。


「はい、お待たせ。いい所でしょ?」


 そこへ蓮が到着して、話しは中断してしまった。


「この並木道を通って、宿に行くよ。
この先に小さな滝があって、綺麗だから歩いていこう」


「蓮さん、ここに来た事があるのですか?」


「ああ、そうだよオストリッチ君。
ここは、私のお気に入りの場所だ。
 
いい所だから、君達にも来てもらいたかったんだ」


 4人で銀杏の並木道を通り、脇にある舗装されていない山道に入ると、水の音が聞こえてきた。


「早くこっちに来てみて!
リッチ君、小さな滝だよ!
本当に綺麗だね。秘密の滝を見た気分!
穴場だったりしてね。
特した気分になれるよ」


「わあ、本当だぁ、山から勢い良く水が流れて、下の川に合流していますね」


 あおいとオストリッチは、真っ直ぐに走って橋の上から、山の上方から流れる小さな滝を見ている。


「ねっ!2人とも、綺麗だろう?
優も早く来いよ」


「へー、高低差があまりない、可愛い滝だけど景色が綺麗ですね。

ところで、蓮さん、宿って、ホテルですか?空室にとまるんですよね?」


「優、大丈夫だよ。
旅館だけど、部屋は1つ取ってある」


 あおいは、ギョッとした!


 部屋は、1つだけ?マジか?


 私も同じ部屋なの?


それとも……。


「もしかして、私の姿が見えないからって、他の女性客と相部屋にするつもりですか?」


「えっ一緒じゃダメだった?
だって、オストリッチ君と一緒に住んでいるから、平気だと思っていたんだ。

1つと言っても、2間あるから、大丈夫だと思うけど、まずければ、空いていたら部屋を取るよ?」


「はい、聞いてみて下さい。お願いします」


 蓮さんって、私のこと女の子と思ってないのかな?なんだかショックだな。


「蓮さん、部屋を取ったって、言いましたか?

僕たちは、姿が見えないはずだし、会話もできないのに、どうやって予約をしたんですか?」


「さすが優だね!目の付け所がいいね。

 実は、5年前くらいに、これから行く旅館の女将さんと知り合って、先日、予約に来たんだよ。

女将さんは、かなりの霊感の持ち主で、裏の顔は、凄腕 霊能者なんだ。

だから、私の姿が見えて、会話もできるんだ。
きっと、皆んなの姿も見えるさ」


「その女将さんは、怖い人なんですか?
 僕、化け鶴って、思われないですか?」


 蓮は笑って、大丈夫だよと言った。


「さあ、宿に行こう」


 蓮を先頭に、一行は足取り軽やかに進む。


 山道から、先程 通ってきた銀杏の並木道に、繋がっていると思われる道路に出ると、“川のほとり温泉”の ノボリが道の両側に立てられいた。


「えー!あれがそうですか?」


「そうだよ、あおいちゃん。
あれが、川のほとり温泉だよ。
大きい旅館でしょう?」


 3階建ての和風造りの建物と、いくつかの離れの部屋があり、裏側には林がある。


「ようこそいらっしゃいました」


 女将があおい達に気がつき、挨拶をした。


 淡い黄色に紅葉したモミジがあしらわれた着物を着た、若い女将がお辞儀をして、出迎えてくれたのだ。
 
 
 近くにいた仲居が、不審に思い言う。


「女将、どうしましたか?誰もいませんよ。疲れたんじゃないですか?」


「あっ、そうね。
疲れているのかしら?少し休むわね」

 
 女将は、そう言いながら、自分の腰の所で手招きをする。


 蓮は、あおい達の方を向き、皆、着いて来いという合図をした。


「あおいちゃん、結構 素敵な所で良かったね」

 
「そうですね、優さん。良かったです。ねぇ、リッチ君?」


「どんな、お部屋かな?ワクワクします。さあ、行きましょう」


 あおいもワクワクしながら、笹のある小道を歩いて行く。
 
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