冥界の仕事人

ひろろ

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第六章: 新人仕事人 修行の身

出発します

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 あおいは、いつもの作務衣にベルトと草履、ポシェットの中にはタオルを入れて、第4のスタッフ宿泊施設に来ている。


「おはよう、あおいさん。迎えに来てくれてありがとう。いよいよ、旅行当日になったのね!

 はぁー、なんかドキドキしちゃう……。
 どんな旅行になるかしら」


 ドキドキしているのは、第4の門で、あおいの教育係をしていたアサオだ。


「アサオさん、私のスタンプが溜まるまで大変お待たせしてしまい、すみませんでした。

それでは、車乗り場に移動します」


「あっ、あおいさん、就業許可証を持ったわよね?
あれがないとタクシーに乗れないからね。あるわね?」


「ありまーす。
では、行きまーす」

 すっ……

 すとん


「きやっ、着いたのね?

 うん?あれ?

ここって、第4の車乗り場だわ!」


「えっ?
車乗り場って他にもあるんですか?」


「そうよ!
配車センターの車乗り場に行くには、三途の川を渡らないと行けないでしょう?

 だから車乗り場は、第2から第7までの各門にあって、お迎えタクシーを呼ぶってわけ」


「えー、三途の川がネックになっているんですね」


「まあね。大切な川だから、仕方がないけど。

でも、聞いてよ!
このお迎えタクシーに乗るために、スタンプを1つ使うんだから!
もったいない!

それなのに、第2の人はズルいのよ。

道先案内人の鳥に頼んで、スタンプを使わないで、川を渡っているのだもの。

それに第1の人は、歩いて行けるから羨ましいわ。

でも、ま、今日は、あおいさんに連れて行ってもらえるから、私はラッキーです。

さっ、あおいさん、配車センターの近くにある車乗り場にお願いします」


 あおいは、アサオを抱きしめ、再度 瞬間移動をした。


 着いた所は、車乗り場の少し手前。


橋を渡った所だった。


「この矢印に進んで、木で囲われている中の方に入ると、車乗り場があるはずです。

 あった、アサオさん、あそこがそうです 」


 ブォン……キキィ!


 冥界という行灯あんどんをつけたタクシーが横に止まり、助手席のドアが開いた。


「馬鹿っ、違うだろう!
後部座席のドアを開けるんだ」


 カチャッ!


 後部座席のドアが開いた。


「お乗りください」


 あれ?どっかで聞いた声だ。


「早く 乗ってください」


 はっ!これは座布団くんのフレーズだ!


「わあ、リッチ君!なんで?
まさか、リッチ君が運転するのー?
大丈夫なの?」

 
 お姉ちゃんを喜ばせようと、内緒にしていたのにぃ!


僕に失礼じゃないかっ!


まったく、もう!

 
「お客さん、早く乗ってくださぁい」


 オストリッチは、乱暴に言った。


「コラ、オスト!失礼だぞ!

お客さん、新人が失礼しました。
 就業許可証をお出し下さい」
 

 助手席の男性が言い、オストリッチに受け取れというように、合図を送った。

 
 オストリッチの隣に座っているのは、本日の指導員 マサルである。


 マサルは、自分の額に指を指し、オストリッチに教えている。


「うん?あっ、そうか。
額に貼るんだった……」


 オストリッチは、あおいの札を額に貼ってあげて、アサオにも札を貼った。


 その瞬間、2人は、生前の記憶を取り戻した。


「運転手さん、旅行申請書に書いた所に全部、いってもらえますか?」


 アサオが確認をすると、オストリッチは考え込んだ。
 

  そうなんだよね……。

お姉ちゃん達は2泊3日で、あっちこっちと移動が激しいから、全部、行かれるか分からないけど……。


 一応、ナビに全て 打ち込んでおいたから行けるとは思うけど……。


 いいのかな?OKしていいのかな?


 オストリッチは、マサルに許可を仰ぐように視線を向けた。


「ああ、きっと何とかなるでしょう。
 行くだけ行ってみましょう」


 マサルは、軽く言ったのだった。


 軽っ!オサル先輩、ちゃんとに考えたのかな?


 まあ、僕の腕の見せ所ですね!


 僕、頑張ります。


「出発しまーす!」


 オストリッチは、張り切って言った。

 
 乗員一同に緊張が走る。


 ずこん、ずこん……んがぁーー


「オストー、アクセルは丁寧にふめーー」


「了解でーす」


 ゴーーーゴーーーゴーーー


「ギャアー」「ギャアー」「きゃあ………」


 2人と1羽が悲鳴をあげている……。


 あおい とアサオは気を失っている……。


「オストー!起きろっ!お前が気を失ってどうするんだっ!」


 ゴツン!


 オストリッチは、マサルから愛の一撃を貰って、目を覚ました。


「おお、やばかった!
危うく、目をつぶってしまうところでした」


 オストリッチは、とぼけて言った。


「人間界の上空を走るのは、気持ちがいいだろう?

あっ、そこの交差点では他の冥界タクシーが来ないか、注意しろよ。

そうだ、いいぞ。
もうすぐ、目的地だな」


「はい」


 オストリッチは、返事だけは一人前なのだ。


 これから向かう先は、2人が事前に打ち合わせをして、綿密に計画を立てた場所だ。


 アサオは、第3のトラベル部に通い、全国の名水を調べ尽くしていたのだった。

…………………


「すまんな、グレース。
あおいの我儘わがままに付き合わせて!」

 
 グレースの姿を見て、孝蔵が心から謝った。


「本当ですよっ!
冥界出身の知り合い猫だからって、わざわざ、あおいさんがここまで来て、頼むし……。

孝蔵さんに頼まれたら、嫌と言えません。

 ニャぜ、私がこんニャ物を背負わニャければニャらニヤいのでしょう」


 グレースは、空のペットボトルが沢山入っているリュックを背負って、外に出ているのだ。


 キキキィ。


 孝蔵の家に冥界タクシーが到着した。


 タクシーの窓から、あおいが声をかける。


「おじいちゃん!元気だった?

 無理なお願いをして、ごめんね。
 グレースを借ります。

 グレース、早く乗って!じゃあ、またね」


 あおいが超早口で言った。


「お爺さん、また、来ますね。さようなら」


 オストリッチも挨拶をして、車を発進させた。


 ずこん、ずこん、ブォーン


 冥界タクシーは、飛び去ったのだった。


「はあ?久々の再会だったのに……。

 何だ、あの素っ気ない態度は!

 急いでいるのは分かるが、あおいの態度は酷いぞ!

 ん?ツルノ君が運転していたのか?」


 孝蔵もグレースも優も、オストリッチの名前は、ツルノだと思っているのだ。


 しかし、オストリッチは、それでも構わない、と思うようになった。


「アサオさん、次はどこに行くんでしたっけ?」


「ふふふ、これから名水を集めます。

先ずは、フジヤマにある神社に行って、御神水を汲みます。

 皆さん、ご協力をお願い致します」


 協力は惜しまないけど、御神水を飲んでも今の私たちには、効果がないのに……。


でも、アサオさんが、満足して冥界に帰れたら、それでいい。


 みんなに迷惑を掛けてしまって、申し訳ないけれど……。


私は、こうして旅をしているだけで、ワクワクするし、楽しいんだ。


 痩せる水か……生きているときに欲しかったな。


オストリッチが運転する冥界タクシーは、痩せる水を求めて飛んで行くのだった。
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