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第四章 花火大会と海の家
第43話 色々なことがあった長い一日が終わった
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春陽と雪愛が二人で話している頃。
瑞穂達は、春陽達のいるところからは少し離れた場所で、四人で夕日を眺めていた。
瑞穂達女子三人は綺麗だと感想を言い合っている。
そんな中、悠介だけは無言だった。
春陽、頑張れ、とそればかりが頭を駆け巡る。
春陽からは駄目だった時のフォローを頼まれたが、そんなことは全く考えていない。
悠介から見れば、今回の告白は十分にうまくいく可能性があると思うからだ。
それでも心配してしまうのが止められないのはそれだけ春陽のことを大切に思っているからだろう。
もちろん、友人として、だが。
悠介が春陽と雪愛の結末に気を揉んでいると、瑞穂達の会話が聞こえてきた。
「ゆあち、大丈夫かなー」
「そうだね。うまくいくといいなぁ」
「ははっ。やっぱ二人にもわかった?」
「それはわかるよー。みずっちはとっくに知ってたみたいだけどー?」
「だね。雪愛ちゃん、決心したんだよね?」
「うん。昨日ちょっと相談されてね」
皆、雪愛が春陽に告白するつもりであると気づいており、それがどうなるか心配していた。
「三人とも何の話してんだ?」
悠介は三人の会話は聞こえたが、その意味がわからない。だから訊いてみることにした。
「雪愛が一大決心して今頃頑張ってるだろうからみんな心配してるの」
「?だから、なんで白月が頑張るんだ?」
「さえきち、察しが悪すぎだよー」
未来の言葉に香奈もコクコクと頷いている。
「いや、そんなこと言われても……。だってきっと今頑張ってるのは春陽だぞ?白月が頑張ることなんてないだろ?」
「はぁ?雪愛がどれだけ悩んで決めたと思ってるの?それなのに、なんで風見が頑張るのさ。風見は自分の気持ちを正直に言うだけじゃない」
「?それが一番大変なんだろ。ってか、なんでそのこと芝田が知ってるんだ!?俺だってさっき聞いたばっかなのに」
絶妙に噛み合っているようで噛み合っていない、そんな会話がなされていた。
瑞穂と悠介は互いに相手の言い分が納得いかず、言い合いを続けている。
それも仕方がないかもしれない。
なぜなら、瑞穂は雪愛から、悠介は春陽からそれぞれ直接その想いを聞いているのだから。
友人としてはどうしても熱くなってしまう。
すると、そんな二人の会話を聞いていた香奈が何かに気づいた。
「ねえ、瑞穂ちゃん、佐伯君。二人って今何の話をしてるの?」
「何言ってるの香奈。そんなの雪愛が頑張ってるってさっきから言ってるじゃない」
「だからなんでそうなるんだよ。頑張ってるのは春陽だっての」
「うん。だからね、二人とも何を頑張ってるって言ってる?」
「雪愛が告白しようとしてることに決まってるでしょ」
「はあっ!?告白しようとしてるのは春陽だろ!?」
瑞穂の言葉に驚き、つられて悠介も言ってしまう。
そして、悠介の言葉に瑞穂も目を大きくする。
「えっ!?ちょっと待って。どういうこと?」
「えっと、たぶんだけど、雪愛ちゃんと風見君、二人とも今告白しようとしてるんじゃないかな?」
「「っ!?」」
「なるほどー、そーいうことかー」
未来が納得、という感じで言う。
「……マジかよ。そんなことってあるのか?」
「……それはこっちのセリフなんだけど。じゃあ何?あの二人はしっかり両想いで、どっちかがちゃんと告白できればそれで万事解決ってこと?」
悠介と瑞穂は互いに目を遣り、今までの心配は何だったんだと揃ってため息を吐いた。
こうして、瑞穂達はこれから戻ってくる雪愛と春陽が、現状維持か告白成功かの二択で、失敗だけはないということがわかったのだった。
皆の心配事が一気に無くなった。そして戻ってきたとき、二人は今のままか、それとも新しい関係を築いているか、ちょっと楽しみに思うのだった。
それからは四人で和やかに雑談に興じた。
一方、春陽と雪愛は並んで浜辺を歩いていた。
二人の手はいわゆる恋人繋ぎで繋がっている。
悠介達がいるはずの場所へと向かっているところだ。
「今頃瑞穂達心配してるんだろうなぁ」
ふと雪愛がそんなことを言った。
雪愛を見ると、笑みを浮かべているため、よくないことではなさそうだ。
「何かあったのか?」
「ふふっ。私、瑞穂に自分の気持ちのこと相談してて、今日春陽くんに気持ちを伝えるって言ってたから。春陽くんのところに行く前には未来も香奈も私が何しようとしてるか気づいたみたいで」
「なるほど。そういうことなら、悠介のやつも今頃心配してるかもしれないなぁ」
「どうして?」
「いや、これから雪愛に気持ちを伝えるから、駄目だったときはフォロー頼むってお願いしちゃったからさ」
空いている手を後頭部にやる春陽。
「そうだったんだ。でも駄目じゃなかったよ?」
雪愛はいたずらっぽい笑みを浮かべて春陽の顔を覗き込む。
そんな雪愛に春陽も小さく笑う。
「ああ、そうだな。けど、それなら早く戻った方がいいかな?」
「んー、そうだけど、ゆっくり歩きたい気も……」
雪愛の言いたいことは春陽にちゃんと伝わった。
「俺も同じ気持ちだよ。じゃあ悠介達には悪いけど、このままのペースで行こうか」
「うん!」
二人は目を合わせ笑い合う。
そんな会話をしながらも、二人の歩く速度が遅い訳ではない。
皆を待たせているのは事実のため、普通の速度で歩いている。
ただ、早歩きや小走りをしない、というだけだ。
たったそれだけのことでも今の二人にとっては幸せに満ちた大切な時間だった。
「あっ!雪愛!風見!」
最初に見つけたのは瑞穂だった。
春陽達に向けて大きく手を振っている。
瑞穂の声が聞こえ、手を振る瑞穂の姿、そしてこちらを見る悠介達も視界に収めた春陽と雪愛は、お互い顔を見合わせ、くすっと笑みを浮かべると、そっと繋いでいた手を解き、皆のもとへと向かうのだった。
「待たせてしまってごめんなさい」
開口一番雪愛がそう言うと、瑞穂達三人が雪愛を囲むようにして、四人で話し始めた。
時折歓声が聞こえることから、雪愛に色々と聞いているようだ。
春陽はそんな雪愛達を優しい目で見ていた。ちょっと恥ずかしいのは堪える。
一方、悠介はそんな春陽に近づき、満面の笑みで春陽の肩をバシッと叩いた。
「よかったな、春陽」
結果は聞かない。
二人の態度を見れば、どうなったかは明白だからだ。
「ああ、ありがとな」
春陽も笑みを浮かべてお礼を言った。
二人にはこれくらいのやり取りで十分だった。
その後、六人は水平線の彼方に消えていく太陽を眺め、民宿へと帰っていった。
民宿に戻った六人は、男子と女子にそれぞれ分かれた。
けれど、考えることは同じだったらしくすぐにそれぞれお風呂に向かい、入口の前でばったり出くわした。
春陽と悠介は慣れた様子で入浴し、普通に出てきたが、女子はここでもガールズトークに花を咲かせていた。
夜にもお喋りするつもりのため、皆核心には触れないが、それでも話題は尽きない。
もちろんその中心は雪愛だ。
結局、女子四人がお風呂を出たのは、春陽達よりも一時間は遅かった。
夕食は啓蔵の計らいで、六人プラス啓蔵で食べることになった。
瑞穂達よりも先に民宿へと戻っていた啓蔵は、宿泊客の食事の準備をしており、戻ってきた瑞穂達に食事時間をどうするか聞いた。その際に、春陽達も一緒に皆で食べることもできると提案したところ、ぜひ、ということで決まったものだ。
場所は一番広い啓蔵の部屋で、瑞穂達はその部屋を見たとき、そのあまりの可愛さにテンションを上げていた。
特に、可愛いもの好きの瑞穂が一番目を輝かせていた。
お風呂上りということで、皆浴衣を着ており、雪愛の湯上りで火照った顔の浴衣姿に春陽は鼓動が高鳴り、一瞬見惚れてしまった。
気持ちを確かめ合ったからか、今まで以上に雪愛を意識してしまうようだ。
しかし、それは春陽だけではない。
雪愛もまた、春陽を強く意識してしまい、初めて見る春陽の浴衣姿にカッコいいと頬を染めていた。
大きな座卓には、所狭しと海の幸が並んでおり、どれも美味しく、皆大満足の夕食となった。
食後は、皆で花火をして楽しんだ。
なんと啓蔵が用意してくれていたのだ。
海の家でのサービスといい、食事の豪華さといい通常の宿泊客には考えられないサービスの数々だが、悠介から話を聞いた時から考えていた啓蔵なりの叔父としての気遣いだった。
悠介の同級生にいい思い出を作ってほしいと考えた結果だ。
途中、春陽と雪愛が寄り添って、線香花火をしていたときのこと。
線香花火が終わって、立ち上がった時、偶然にも春陽と啓蔵の視線が合ったかと思えば、啓蔵は、春陽にウインク付きでサムズアップをした。
これには春陽もつい苦笑いを浮かべてしまった。
どうやら、啓蔵は、先ほどの食事の時からこの花火の間までに、春陽達の様子から何かを察してしまったらしい。啓蔵は心の機微というか、雰囲気の変化に敏感なのだ。
夜になり、春陽達とも別れた瑞穂達は今、布団が敷かれた部屋で雪愛を質問攻めにしていた。
雪愛は顔を赤らめながらも皆の質問に答えている。
「でも、本当よかったね、雪愛」
「ありがとう、瑞穂」
このやり取りも何度目だろうか。
瑞穂からしてみれば、何度でも言いたいのかもしれない。
「風見っちってさー、ゆあちの前だとイケメンぶりに磨きがかかってるよねー」
「あっ、それ私も思った。お昼の時に雪愛ちゃんを守るようにして背中に庇ったときとか、パーカー羽織らせたりしたときとか。雪愛ちゃんのこと大切なんだなぁって」
「~~~っ、そ、そうかしら!?」
昼の出来事を思い出しながら話す香奈の言葉に顔の赤みが増す雪愛。
言われて、思い出してしまったようだ。
何とか平静を装おうとしている。しかし―――。
「それに、雪愛に告白するのもすごい勇気だと思うよ。私達は雪愛の気持ち聞いてたけど、風見は知らなかったわけだし。まあ雪愛の態度はあからさまだったと思うけどね?」
「だねー。ゆあちが今まで告白を全部断ってるのは知っててもおかしくないもんねー。風見っちのこと、他の男子とは明らかに違う扱いだったとは思うけどー?」
「ふふっ。お弁当とか、水族館とか、色々あったもんね?」
瑞穂、未来、香奈から揶揄うように言われた雪愛には、平静を装うことは不可能だった。
「もうっ。わかったから!それ以上言わないで」
雪愛を除く皆で一しきり笑い合った後、瑞穂が意を決したように口を開いた。
「私もね、皆に言いたいことがあって。……私さ、実は和樹…、新条と付き合ってるんだ。今まで黙っててごめん!」
手を合わせ、頭を下げる瑞穂。
雪愛と春陽のことが全員の知るところとなった今、瑞穂は、自分のことも皆に伝えようと考えた。
未来も香奈も驚きこそすれ、黙っていたことを怒ったりはしなかった。
そこからは、話題が瑞穂達のことと雪愛達のことの二つになり、夜遅くまでお喋りは続いた。
深夜になるにつれ、特有のハイテンションで内容がどんどんディープになっていったのはご愛嬌だ。
だが、その結果、瑞穂も雪愛も色々と暴露することになるのだった。
瑞穂達は、春陽達のいるところからは少し離れた場所で、四人で夕日を眺めていた。
瑞穂達女子三人は綺麗だと感想を言い合っている。
そんな中、悠介だけは無言だった。
春陽、頑張れ、とそればかりが頭を駆け巡る。
春陽からは駄目だった時のフォローを頼まれたが、そんなことは全く考えていない。
悠介から見れば、今回の告白は十分にうまくいく可能性があると思うからだ。
それでも心配してしまうのが止められないのはそれだけ春陽のことを大切に思っているからだろう。
もちろん、友人として、だが。
悠介が春陽と雪愛の結末に気を揉んでいると、瑞穂達の会話が聞こえてきた。
「ゆあち、大丈夫かなー」
「そうだね。うまくいくといいなぁ」
「ははっ。やっぱ二人にもわかった?」
「それはわかるよー。みずっちはとっくに知ってたみたいだけどー?」
「だね。雪愛ちゃん、決心したんだよね?」
「うん。昨日ちょっと相談されてね」
皆、雪愛が春陽に告白するつもりであると気づいており、それがどうなるか心配していた。
「三人とも何の話してんだ?」
悠介は三人の会話は聞こえたが、その意味がわからない。だから訊いてみることにした。
「雪愛が一大決心して今頃頑張ってるだろうからみんな心配してるの」
「?だから、なんで白月が頑張るんだ?」
「さえきち、察しが悪すぎだよー」
未来の言葉に香奈もコクコクと頷いている。
「いや、そんなこと言われても……。だってきっと今頑張ってるのは春陽だぞ?白月が頑張ることなんてないだろ?」
「はぁ?雪愛がどれだけ悩んで決めたと思ってるの?それなのに、なんで風見が頑張るのさ。風見は自分の気持ちを正直に言うだけじゃない」
「?それが一番大変なんだろ。ってか、なんでそのこと芝田が知ってるんだ!?俺だってさっき聞いたばっかなのに」
絶妙に噛み合っているようで噛み合っていない、そんな会話がなされていた。
瑞穂と悠介は互いに相手の言い分が納得いかず、言い合いを続けている。
それも仕方がないかもしれない。
なぜなら、瑞穂は雪愛から、悠介は春陽からそれぞれ直接その想いを聞いているのだから。
友人としてはどうしても熱くなってしまう。
すると、そんな二人の会話を聞いていた香奈が何かに気づいた。
「ねえ、瑞穂ちゃん、佐伯君。二人って今何の話をしてるの?」
「何言ってるの香奈。そんなの雪愛が頑張ってるってさっきから言ってるじゃない」
「だからなんでそうなるんだよ。頑張ってるのは春陽だっての」
「うん。だからね、二人とも何を頑張ってるって言ってる?」
「雪愛が告白しようとしてることに決まってるでしょ」
「はあっ!?告白しようとしてるのは春陽だろ!?」
瑞穂の言葉に驚き、つられて悠介も言ってしまう。
そして、悠介の言葉に瑞穂も目を大きくする。
「えっ!?ちょっと待って。どういうこと?」
「えっと、たぶんだけど、雪愛ちゃんと風見君、二人とも今告白しようとしてるんじゃないかな?」
「「っ!?」」
「なるほどー、そーいうことかー」
未来が納得、という感じで言う。
「……マジかよ。そんなことってあるのか?」
「……それはこっちのセリフなんだけど。じゃあ何?あの二人はしっかり両想いで、どっちかがちゃんと告白できればそれで万事解決ってこと?」
悠介と瑞穂は互いに目を遣り、今までの心配は何だったんだと揃ってため息を吐いた。
こうして、瑞穂達はこれから戻ってくる雪愛と春陽が、現状維持か告白成功かの二択で、失敗だけはないということがわかったのだった。
皆の心配事が一気に無くなった。そして戻ってきたとき、二人は今のままか、それとも新しい関係を築いているか、ちょっと楽しみに思うのだった。
それからは四人で和やかに雑談に興じた。
一方、春陽と雪愛は並んで浜辺を歩いていた。
二人の手はいわゆる恋人繋ぎで繋がっている。
悠介達がいるはずの場所へと向かっているところだ。
「今頃瑞穂達心配してるんだろうなぁ」
ふと雪愛がそんなことを言った。
雪愛を見ると、笑みを浮かべているため、よくないことではなさそうだ。
「何かあったのか?」
「ふふっ。私、瑞穂に自分の気持ちのこと相談してて、今日春陽くんに気持ちを伝えるって言ってたから。春陽くんのところに行く前には未来も香奈も私が何しようとしてるか気づいたみたいで」
「なるほど。そういうことなら、悠介のやつも今頃心配してるかもしれないなぁ」
「どうして?」
「いや、これから雪愛に気持ちを伝えるから、駄目だったときはフォロー頼むってお願いしちゃったからさ」
空いている手を後頭部にやる春陽。
「そうだったんだ。でも駄目じゃなかったよ?」
雪愛はいたずらっぽい笑みを浮かべて春陽の顔を覗き込む。
そんな雪愛に春陽も小さく笑う。
「ああ、そうだな。けど、それなら早く戻った方がいいかな?」
「んー、そうだけど、ゆっくり歩きたい気も……」
雪愛の言いたいことは春陽にちゃんと伝わった。
「俺も同じ気持ちだよ。じゃあ悠介達には悪いけど、このままのペースで行こうか」
「うん!」
二人は目を合わせ笑い合う。
そんな会話をしながらも、二人の歩く速度が遅い訳ではない。
皆を待たせているのは事実のため、普通の速度で歩いている。
ただ、早歩きや小走りをしない、というだけだ。
たったそれだけのことでも今の二人にとっては幸せに満ちた大切な時間だった。
「あっ!雪愛!風見!」
最初に見つけたのは瑞穂だった。
春陽達に向けて大きく手を振っている。
瑞穂の声が聞こえ、手を振る瑞穂の姿、そしてこちらを見る悠介達も視界に収めた春陽と雪愛は、お互い顔を見合わせ、くすっと笑みを浮かべると、そっと繋いでいた手を解き、皆のもとへと向かうのだった。
「待たせてしまってごめんなさい」
開口一番雪愛がそう言うと、瑞穂達三人が雪愛を囲むようにして、四人で話し始めた。
時折歓声が聞こえることから、雪愛に色々と聞いているようだ。
春陽はそんな雪愛達を優しい目で見ていた。ちょっと恥ずかしいのは堪える。
一方、悠介はそんな春陽に近づき、満面の笑みで春陽の肩をバシッと叩いた。
「よかったな、春陽」
結果は聞かない。
二人の態度を見れば、どうなったかは明白だからだ。
「ああ、ありがとな」
春陽も笑みを浮かべてお礼を言った。
二人にはこれくらいのやり取りで十分だった。
その後、六人は水平線の彼方に消えていく太陽を眺め、民宿へと帰っていった。
民宿に戻った六人は、男子と女子にそれぞれ分かれた。
けれど、考えることは同じだったらしくすぐにそれぞれお風呂に向かい、入口の前でばったり出くわした。
春陽と悠介は慣れた様子で入浴し、普通に出てきたが、女子はここでもガールズトークに花を咲かせていた。
夜にもお喋りするつもりのため、皆核心には触れないが、それでも話題は尽きない。
もちろんその中心は雪愛だ。
結局、女子四人がお風呂を出たのは、春陽達よりも一時間は遅かった。
夕食は啓蔵の計らいで、六人プラス啓蔵で食べることになった。
瑞穂達よりも先に民宿へと戻っていた啓蔵は、宿泊客の食事の準備をしており、戻ってきた瑞穂達に食事時間をどうするか聞いた。その際に、春陽達も一緒に皆で食べることもできると提案したところ、ぜひ、ということで決まったものだ。
場所は一番広い啓蔵の部屋で、瑞穂達はその部屋を見たとき、そのあまりの可愛さにテンションを上げていた。
特に、可愛いもの好きの瑞穂が一番目を輝かせていた。
お風呂上りということで、皆浴衣を着ており、雪愛の湯上りで火照った顔の浴衣姿に春陽は鼓動が高鳴り、一瞬見惚れてしまった。
気持ちを確かめ合ったからか、今まで以上に雪愛を意識してしまうようだ。
しかし、それは春陽だけではない。
雪愛もまた、春陽を強く意識してしまい、初めて見る春陽の浴衣姿にカッコいいと頬を染めていた。
大きな座卓には、所狭しと海の幸が並んでおり、どれも美味しく、皆大満足の夕食となった。
食後は、皆で花火をして楽しんだ。
なんと啓蔵が用意してくれていたのだ。
海の家でのサービスといい、食事の豪華さといい通常の宿泊客には考えられないサービスの数々だが、悠介から話を聞いた時から考えていた啓蔵なりの叔父としての気遣いだった。
悠介の同級生にいい思い出を作ってほしいと考えた結果だ。
途中、春陽と雪愛が寄り添って、線香花火をしていたときのこと。
線香花火が終わって、立ち上がった時、偶然にも春陽と啓蔵の視線が合ったかと思えば、啓蔵は、春陽にウインク付きでサムズアップをした。
これには春陽もつい苦笑いを浮かべてしまった。
どうやら、啓蔵は、先ほどの食事の時からこの花火の間までに、春陽達の様子から何かを察してしまったらしい。啓蔵は心の機微というか、雰囲気の変化に敏感なのだ。
夜になり、春陽達とも別れた瑞穂達は今、布団が敷かれた部屋で雪愛を質問攻めにしていた。
雪愛は顔を赤らめながらも皆の質問に答えている。
「でも、本当よかったね、雪愛」
「ありがとう、瑞穂」
このやり取りも何度目だろうか。
瑞穂からしてみれば、何度でも言いたいのかもしれない。
「風見っちってさー、ゆあちの前だとイケメンぶりに磨きがかかってるよねー」
「あっ、それ私も思った。お昼の時に雪愛ちゃんを守るようにして背中に庇ったときとか、パーカー羽織らせたりしたときとか。雪愛ちゃんのこと大切なんだなぁって」
「~~~っ、そ、そうかしら!?」
昼の出来事を思い出しながら話す香奈の言葉に顔の赤みが増す雪愛。
言われて、思い出してしまったようだ。
何とか平静を装おうとしている。しかし―――。
「それに、雪愛に告白するのもすごい勇気だと思うよ。私達は雪愛の気持ち聞いてたけど、風見は知らなかったわけだし。まあ雪愛の態度はあからさまだったと思うけどね?」
「だねー。ゆあちが今まで告白を全部断ってるのは知っててもおかしくないもんねー。風見っちのこと、他の男子とは明らかに違う扱いだったとは思うけどー?」
「ふふっ。お弁当とか、水族館とか、色々あったもんね?」
瑞穂、未来、香奈から揶揄うように言われた雪愛には、平静を装うことは不可能だった。
「もうっ。わかったから!それ以上言わないで」
雪愛を除く皆で一しきり笑い合った後、瑞穂が意を決したように口を開いた。
「私もね、皆に言いたいことがあって。……私さ、実は和樹…、新条と付き合ってるんだ。今まで黙っててごめん!」
手を合わせ、頭を下げる瑞穂。
雪愛と春陽のことが全員の知るところとなった今、瑞穂は、自分のことも皆に伝えようと考えた。
未来も香奈も驚きこそすれ、黙っていたことを怒ったりはしなかった。
そこからは、話題が瑞穂達のことと雪愛達のことの二つになり、夜遅くまでお喋りは続いた。
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