『婚約破棄されたけど、あなたより優秀な竜王が拾ってくれました』

ソコニ

文字の大きさ
8 / 15

第8話「王国の策略と王太子の焦り」

しおりを挟む

ハインツベルク王国の王宮では、緊急の会議が開かれていた。

「レスフォード公爵令嬢の失踪から既に二週間が経過した」

カギ鼻の老人、アシュレイ宰相が厳しい表情で議会の面々を見回した。

「捜索隊は北の森の隅々まで探したが、令嬢の痕跡は見つからず、別荘は全焼していた」

「恐らく野獣に襲われたのでしょう」レスフォード公爵が冷静に言った。「不運な事故です」

「本当にそれだけでしょうか?」アシュレイ宰相は意味深に尋ねた。「公爵、なぜ令嬢を護衛なしで辺境に」

「反省のためです」公爵は答えた。「婚約破棄という恥辱を受けた娘には、自省の時間が必要でした」

「しかし結果として、貴公の娘は行方不明となった」

「遺憾に思っています」公爵の表情に悲しみは見られなかった。

会議室の扉が勢いよく開き、一人の若者が入ってきた。

金髪に碧眼、端正な顔立ち——エドワード王太子だ。

「アリアはまだ見つからないのか?」

彼の問いに、場が静まり返った。

「王太子、この会議はまだ——」

「答えよ、宰相」王太子は険しい表情で言った。

アシュレイ宰相は小さくため息をついた。

「いいえ、殿下。まだ見つかっておりません」

「捜索を続けろ。全ての騎士団を北の森に送れ」

「それは無理な話です」レスフォード公爵が口を挟んだ。「北の森は広大で、危険な魔獣も多い。既に娘は死んだものと…」

「それを決めるのは私だ」王太子は冷たく言い放った。「アリアを見つけ出せ」

公爵の顔が僅かに歪んだ。

「殿下、失礼ながら」アシュレイ宰相が慎重に言った。「どうして突然、レスフォード令嬢にそこまで執着されるのですか?つい先日まで婚約を破棄されたばかりなのに」

エドワード王太子の目が鋭く宰相を捉えた。

「全てを話そう」彼は低い声で言った。「国宝の『竜の封印石』が消えた」

会議室に衝撃が走った。

「何ですって?」レスフォード公爵が立ち上がった。「いつの話です?」

「アリアが失踪した翌日のことだ」王太子は厳しい表情で続けた。「宝物庫が侵入者によって荒らされ、封印石だけが持ち去られた」

「まさか…アリアが?」公爵は目を見開いた。

「断定はできん」王太子は言った。「だが、タイミングが怪しい。それに、彼女の失踪直前、封印石が反応を示したという報告があった」

「反応?」

「そう、数百年ぶりの反応だ」王太子の目が鋭さを増した。「封印石は竜の血を感知するという伝説がある。もしアリアが…」

「冗談でしょう?」公爵が笑った。「私の娘が竜の血?そんなはずはありません」

「確かめるためにも、彼女を見つけ出さねばならない」王太子は断固として言った。

その時、会議室の扉が再び開き、一人の女性が入ってきた。

黒髪に紫の瞳、美しいが冷たい雰囲気を漂わせる女性——カミラ・ロスマリーだ。

「失礼いたします」彼女は優雅に一礼した。「お話を聞いていました。私にもご意見があります」

「カミラ」王太子の表情が少し和らいだ。「何か考えがあるのか?」

「はい」彼女は微笑んだ。「北の森の向こうには、伝説の『竜の国』があるという古い言い伝えがあります」

「竜の国?」アシュレイ宰相が眉をひそめた。「それは子供の寝物語だ」

「いいえ」カミラは自信を持って言った。「私の家に伝わる古文書には、千年前、竜族と人間の間に生まれた子供の記録があります。その子は後に北の森の向こうに消えたとされています」

「そして?」王太子が促した。

「もしアリア・レスフォードが本当に竜の血を引いているなら、彼女は北の森の向こう、竜の国に行った可能性があります」

会議室に静寂が広がった。

「ばかげた話だ」レスフォード公爵が怒りを含んだ声で言った。「竜など存在しない」

「それなら、どうして封印石が反応したのですか?」カミラが挑戦的に尋ねた。「そして、失踪と盗難が同時に起きたのは偶然でしょうか?」

公爵は反論できずに黙った。

「カミラの説を検証しよう」王太子が決断した。「北の森の奥に何があるのか、徹底的に調査する」

「殿下」カミラが一歩前に出た。「私も同行させてください。私の家に伝わる知識が役立つはずです」

「許可する」王太子は頷いた。

「王太子、思慮が足りません」アシュレイ宰相が諫めた。「もし本当に竜族が…彼らは危険です。古い伝説では、竜族は恐ろしい力を持つとされています」

「だからこそだ」王太子の目に決意の色が浮かんだ。「もしアリアが竜族と接触しているなら、国の安全に関わる」

カミラの唇に、小さな笑みが浮かんだ。

------

会議の後、王太子の私室。

エドワードは窓辺に立ち、遠くの北の森を見つめていた。

「殿下、計画通りに進んでいます」

後ろからカミラの声が聞こえた。

「アリアは本当に竜族と接触していると思うか?」エドワードが振り返らずに尋ねた。

「可能性は十分にあります」カミラは静かに近づいてきた。「私の調査では、レスフォード家には古くから不思議な言い伝えがありました。血筋に竜の力が眠っているという…」

「だとすれば、なぜ私は彼女の才能に気づかなかったのだ?」王太子の声には悔しさが混じっていた。

「アリアの力は眠っていたのでしょう」カミラは意味深に言った。「私が彼女を目の前で貶めなければ、彼女は平凡な令嬢のまま、殿下の王妃になるところでした」

「それを防いでくれたことには感謝している」エドワードは言った。「だが今、彼女が竜族の力を手に入れたとすれば…」

「危険です」カミラの顔が厳しくなった。「封印石を持ち去ったのも彼女だとすれば、彼女は既に敵となっています」

「いや、まだわからん」王太子が振り返った。「彼女を取り戻せれば、この状況を挽回できる」

「取り戻す?」カミラの顔に不満の色が浮かんだ。「私があなたの婚約者になると約束したではありませんか」

「状況が変わった」エドワードは冷静に言った。「もしアリアが本当に竜の力を持つなら、彼女を味方につけるべきだ。王国の力として」

カミラの目に怒りが浮かんだが、すぐに冷静さを取り戻した。

「もちろん、殿下のご判断に従います」彼女は優雅に一礼した。「ただ、忘れないでください。アリアが本当に竜族と手を組んでいるなら、彼女はもう以前のような従順な令嬢ではないでしょう」

「それは…わかっている」

「彼女が王太子様を恨んでいれば、復讐を望むかもしれません」カミラは意味深に言った。「私たちは用心しなければ」

「だからこそ、私自身が彼女を取り戻さねばならない」エドワードの目に決意の色が浮かんだ。「明日、北の森への遠征の準備を整えろ」

「はい、殿下」

カミラは部屋を出ると、廊下で待っていた男に近づいた。影に隠れた顔は見えないが、その姿勢から身分の高い人物だとわかる。

「計画通りです」彼女は小さな声で言った。「王太子は北の森へ向かいます」

「よくやった」男の声は低く、冷たかった。「あの森には危険がいっぱいだ。もし王太子に何かあれば…」

「王位継承権は次の王子に移りますね」カミラの目が冷たく光った。「そして私は…」

「約束通り、次の王子の婚約者となる」男は言った。「ただし、全ては竜の少女次第だ。彼女が本当に竜の力を持っているなら、我々の計画は変更せねばならん」

「心配いりません」カミラは自信たっぷりに言った。「たとえアリアが竜の力を得たとしても、彼女は所詮、田舎育ちの平凡な令嬢。私のような上級貴族に比べれば、何の価値もありません」

「過信するな」男は厳しく言った。「竜の力は侮れん。古の記録によれば、半竜の血を引く者は、最強の魔法使いをも凌ぐ力を持つという」

「では、どうすれば?」

「彼女を生け捕りにする」男は冷酷に言った。「そして、その力を我々のために利用するのだ」

二人の陰謀を月明かりだけが静かに照らし出していた。

------

一方、竜の国では——

私は訓練場で剣を振るっていた。既に二週間が経過し、体の動きは初日とは比較にならないほど良くなっていた。

「よし、その調子だ」

ザイファーの声には、以前のような冷たさはなかった。

「ありがとうございます」

私は息を整え、剣を構え直した。向かい合うエレナの動きを見極め、彼女の攻撃を受け止める。

「見事だ!」エレナが喜びの声を上げた。「アリア様、先週はまだ受け止められなかったのに!」

訓練を見守っていたレオンハルトが拍手した。

「アリア、素晴らしい成長ぶりだ」

彼の褒め言葉に、胸が温かくなった。

「レオンハルトのおかげです」私は微笑んだ。「皆さんが教えてくださるから」

訓練が終わると、レオンハルトが近づいてきた。

「アリア、少し話があるのだが、付き合ってくれるか?」

「はい、もちろん」

彼に導かれ、城の高い塔へと向かった。そこからは竜の国全体が見渡せる絶景だった。

「美しい…」思わず呟いた。

「気に入ったか?」レオンハルトは微笑んだ。「ここは私がよく考え事をする場所だ」

「何かあったのですか?」私は彼の表情の変化に気づいて尋ねた。

レオンハルトは少し距離を置いて立ち、北の方角を見つめた。

「人間界から情報が入った」彼は静かに言った。「エドワード王太子が貴女を探している」

「え?」驚きで言葉を失った。「どうして?彼は私を捨てたはずなのに…」

「彼は『竜の封印石』が盗まれたことに気づいたようだ」

「竜の封印石?」

「千年前、人間と竜族の戦いの後、竜族の力を封じるために作られた石だ」レオンハルトは説明した。「その石が反応を示し、そして消えた。王太子は貴女と関連があると疑っている」

「でも、私はそんな石を盗んでいません」

「もちろんだ」彼は優しく微笑んだ。「石が消えたのは、貴女の血が目覚めたからだ。貴女の中に眠っていた力が、封印を解いたのだ」

「私の中に…?」

「そう」レオンハルトの目が真剣になった。「だが、これは王太子にとっては、貴女が危険な存在になったということだ。彼は貴女を取り戻そうとしている」

その言葉に、胸が冷たくなった。

「彼は…私を利用したいの?」

「恐らくな」レオンハルトは厳しく言った。「人間の王たちは常に力を求める。貴女の力は、彼らにとって垂涎の的だ」

私は空を見上げた。人間界から来てまだ二週間。だが、もう元の世界には戻れないと感じていた。

「私は戻りません」静かに、しかし強い決意を込めて言った。「ここが私の居場所です」

レオンハルトの目に驚きの色が浮かんだ。次いで、その表情が柔らかくなった。

「アリア…」

彼が一歩近づいてきた。その目には、今まで見たことのない感情が宿っていた。

「私もそう願っていた」彼の声は低く、情熱的だった。「貴女にずっとここにいてほしい」

「レオンハルト…」

風が二人の間を吹き抜けた。レオンハルトは静かに手を伸ばし、私の頬に触れた。その手の温もりが心地よかった。

「アリア、貴女は特別だ」彼の声は囁くように柔らかかった。「単なる半竜の末裔としてではなく、一人の女性として」

私の心臓が早鐘を打ち始めた。彼の言葉に込められた意味を理解するのに、時間はかからなかった。

「私も…レオンハルトを特別に思っています」

勇気を出して言った言葉に、彼の目が喜びで輝いた。

「本当か?」

「はい」私は頷いた。「あなたは私を救ってくれた。私の価値を教えてくれた。そして…」

言葉が途切れたが、彼は待ってくれた。

「そして、初めて私を大切にしてくれた」

レオンハルトの顔が近づいてきた。その目には、抑えきれない感情が溢れていた。

「アリア、人間の王が貴女を取り戻そうとしても、私は決して手放さない」

それは宣言だった。竜王の誓いだった。

「私も、もう二度と王太子のもとには戻りません」私も強く言った。「私の居場所は、ここ。あなたの側です」

レオンハルトの唇が、ゆっくりと私の額に触れた。その唇の温もりが、全身に広がっていくようだった。

「これからの戦いは困難かもしれない」彼は静かに言った。「だが、貴女と共にならば、何も恐れることはない」

「私も、あなたと一緒なら恐れません」

私たちは互いを見つめ、そして二人の間に新たな絆が生まれたことを感じた。

婚約破棄され、追放された私。だが今、私は竜王に選ばれ、そして私自身も彼を選んだ。

これが本当の「運命」なのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話

鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。 彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。 干渉しない。触れない。期待しない。 それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに―― 静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。 越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。 壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。 これは、激情ではなく、 確かな意思で育つ夫婦の物語。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!

❤️ 賢人 蓮 涼介 ❤️
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。 「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」 冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。 さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。 優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。

時間を戻した元悪女は、私を捨てた王太子と、なぜか私に夢中の騎士団長から逃げられません

腐ったバナナ
恋愛
王太子アルベルトの婚約者であったユミリアは、前世で悪女の汚名を着せられ、騎士団長ギルバートによって処刑された。 しかし、目を覚ますと、処刑直前の自分に時間が戻っていた。 ユミリアは、静かに追放されることを目標に、悪女の振る舞いをやめ、王太子から距離を置く。 しかし、なぜか冷酷非情なはずの騎士団長ギルバートが、「貴殿は私の光だ」と異常な執着を見せ、彼女を絶対的に独占し始める。

平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」  その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。  王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。  ――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。  学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。 「殿下、どういうことでしょう?」  私の声は驚くほど落ち着いていた。 「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

もうあなた達を愛する心はありません

❤️ 賢人 蓮 涼介 ❤️
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。 差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。 理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。 セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。

処理中です...