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手紙
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飯を平らげ、汗臭い体を清めに大浴場に向かう。異光組の男四人でまっぱになって、広大な露天風呂の方へと踏みいる。いたずらなカイが湯船に飛び込んだ。
「ふぃーーっ、きーもちいー」
「飛び込み禁止って書いてあるだろ、カイ。子供かお前は」
そういってダンと俺とマッテオがそろりと湯に足をつけ、静かに肩までつかった。
「本当は肩までつからない方が良いらしい」
「へぇ、そうなのか」
「でもさぁ、肩までつかった方が湯の効能が高まりそうな気がしねーか」
「……ケースバイケース」
相変わらず意味深なのか浅はかなのかわからないマッテオの言葉を最後に、しばし沈黙が起こった。俺は空を見上げて湯の中で体を休めた。
今日も空は満天の星空で、比較的空気が綺麗なことがわかる。クリーンなエネルギーとされる魔力が主要動力の王都では、魔力の消費による公害問題など起こらないし、産業から排出される大気汚染も空気を操る専門性の高い魔法で除去している。たしか、風魔法の研究過程で生まれた特殊技術【エア】だったかな。
人の往来の激しい王都が掲げるスローガンの一つに景観保護がある。美しい街並みを保つ。そのためならばあらゆる手段を使う。例えば地上にせり出してきていたスラムを地下に押し込んで、王都の汚いところを見せないように隠すとか……
「痛っ……」
「どうしたセラフィム」
「背中にもダメージがあるみたいだ、初めて気づいた」
「見た目はどうだ、傷があるか?」
「いや、見た目じゃわからないな、中の筋肉が痛んでいるのかも」
「それあれだな、物理攻撃に霊力でブーストかけられたやつだ。皮膚の表面の傷は治ってるのに、体の中が痛いって言うあれ」
「あーっ、あるなぁそれ、最近直接攻撃食らってないからなつかしいぜ」
「直接攻撃はよく仕掛けられたよ、……いててっ」
「近接剣技はオリビアに習うのが良いぞ、身のこなしや実践の考え方とかは一流だから」
「ダンは何度かあいつに食らわされたんだっけか」
「そう、医務室送りにされたんだ。レイラさんに「お久ぁー」って言われたときは屈辱だったな。でもしょうがなかったんだ、獣人は身体能力が高いから、接近戦に巻き込まれたときは分が悪すぎる」
「ははっ! あれはやばいよなぁ! 人間の動きじゃねーんだもん、おかしいだろ」
「……(激しくうなずく)」
「へぇ、オリビアって相当手練れなんだな」
世間話に花を咲かせていると、室内浴場との間のスライドドアが開かれて、背後から声がかかった。
「み、みんなぁ~」
舌っ足らずな声に振り返る。病み上がりのチャーチルだった。
「おう、チャーチル、気絶明けの気分はどうだ」
「う、うるさいなぁ、突っ込まないでよ」
「うひひ、三回戦で防具越しに頭どつかれて意識不明とか、どんだけ鈍くさいんだよ、ぷくくっ」
「カイ、それ以上言うとチャーチルが泣いてしまうよ」
「泣かないっ、僕はこれから強くなるんだもん、ふんだ」
「回避できなかったのか」
「う、うん、逃げ回っていたんだけど、追いつかれて、やむなしだったよ。防具フル装備だから、なんだか動きづらくって」
「あぁ、たしかにな、それで上級者は機動性の良い薄着の霊力軽減衣服を着るようになるんだよ、そうだよな、カイ」
「いぇーす、オフコース。でも本格的な戦場だとそれなりに防具は着けるぜ。まぁ、部分的にだけどな。機動性を損なわない程度に、だ」
隣にいたダンが俺の肩を持った。
「早くニンフの加護を使えるようにならないといけない。でも、今日はゆっくり休め。焦ることはないさ」
「分かってる」
それから部屋に戻ると、リゼはいなくて(グレナダと士官学校内部のカフェでガールズトークにいそしんでいた)、代わりにオリビアが待っていた。俺に話があるとかで、チャーチルは眠気が抑えきれずにさっさと布団に入って寝てしまった。
三階にある自動販売機らしき飲料提供マシン(エナジードリンクっぽいものばかりが売られている)、の前の椅子に俺とオリビアが座った。
「何か飲むか」
「いや、いい。湯上がりに筋力強化のドリンクを飲んだから」
「そうか、ではさっそく、これを」
オリビアが制服の懐から取り出したのは一通の手紙だった。
「……うっ、まさかこれは」
「お前の実家からだ」
「やはりか……」
受け取ると、差出人の欄にエリザ・ボナパルトの文字が記されていた。
「ふふふ、新婚の嫁さんからか」
「あ、後で読もう」
俺はいやらしい目で見てくるオリビアを一度にらみつけてから、話とはこれだけか、と聞いた。貴族としてのプライベートを垣間見られた気がして、少々かんに障った。おのれ騎士見習い、おのれ士官学校、同じ生徒とはいえ、我々貴族に対して少々敬意が足りないのではないか?
「そう邪険にするな。ちょっと感想を聞きたかったのだ。実戦訓練の感想をな」
「……感想ね。とにかく力不足も甚だしい、としかいえない」
「当然だ。つい最近までタダの貴族だったのだからな。お勉強ばかりしていても、実戦ではクソの役にも立たない」
「明日は早めに切り上げるよ。それから君にニンフの扱いを教わりたい。それと、剣技のほうも」
「分かった。なら、ほかの二人も一緒に連れてこい。切り上げるタイミングは五回戦あたりにしてくれ、私がそのあたりでいつも訓練を終えているから」
「分かった、みんなには俺から伝えておくよ。きっとチャーチルもリゼも、オリビアの個人レッスンが必要だと思っているだろう」
「ふん、レッスンね。貴族の好みそうな表現だ。しかし、私の稽古はそんなに甘くないぞ」
オリビアはそこからまた所用があって帰りが遅くなるといい、一人階段を降りていった。昨日もそうだったが、かなり深夜になってから部屋に戻ってきて、軽くシャワーを浴びてから寝床につく。何をしているのだろうか。
ルームリーダーと別れてから、俺はおとなしく部屋に戻り、ほかの二人が寝静まった頃を見計らって意を決し、手紙を開いた……
「ふぃーーっ、きーもちいー」
「飛び込み禁止って書いてあるだろ、カイ。子供かお前は」
そういってダンと俺とマッテオがそろりと湯に足をつけ、静かに肩までつかった。
「本当は肩までつからない方が良いらしい」
「へぇ、そうなのか」
「でもさぁ、肩までつかった方が湯の効能が高まりそうな気がしねーか」
「……ケースバイケース」
相変わらず意味深なのか浅はかなのかわからないマッテオの言葉を最後に、しばし沈黙が起こった。俺は空を見上げて湯の中で体を休めた。
今日も空は満天の星空で、比較的空気が綺麗なことがわかる。クリーンなエネルギーとされる魔力が主要動力の王都では、魔力の消費による公害問題など起こらないし、産業から排出される大気汚染も空気を操る専門性の高い魔法で除去している。たしか、風魔法の研究過程で生まれた特殊技術【エア】だったかな。
人の往来の激しい王都が掲げるスローガンの一つに景観保護がある。美しい街並みを保つ。そのためならばあらゆる手段を使う。例えば地上にせり出してきていたスラムを地下に押し込んで、王都の汚いところを見せないように隠すとか……
「痛っ……」
「どうしたセラフィム」
「背中にもダメージがあるみたいだ、初めて気づいた」
「見た目はどうだ、傷があるか?」
「いや、見た目じゃわからないな、中の筋肉が痛んでいるのかも」
「それあれだな、物理攻撃に霊力でブーストかけられたやつだ。皮膚の表面の傷は治ってるのに、体の中が痛いって言うあれ」
「あーっ、あるなぁそれ、最近直接攻撃食らってないからなつかしいぜ」
「直接攻撃はよく仕掛けられたよ、……いててっ」
「近接剣技はオリビアに習うのが良いぞ、身のこなしや実践の考え方とかは一流だから」
「ダンは何度かあいつに食らわされたんだっけか」
「そう、医務室送りにされたんだ。レイラさんに「お久ぁー」って言われたときは屈辱だったな。でもしょうがなかったんだ、獣人は身体能力が高いから、接近戦に巻き込まれたときは分が悪すぎる」
「ははっ! あれはやばいよなぁ! 人間の動きじゃねーんだもん、おかしいだろ」
「……(激しくうなずく)」
「へぇ、オリビアって相当手練れなんだな」
世間話に花を咲かせていると、室内浴場との間のスライドドアが開かれて、背後から声がかかった。
「み、みんなぁ~」
舌っ足らずな声に振り返る。病み上がりのチャーチルだった。
「おう、チャーチル、気絶明けの気分はどうだ」
「う、うるさいなぁ、突っ込まないでよ」
「うひひ、三回戦で防具越しに頭どつかれて意識不明とか、どんだけ鈍くさいんだよ、ぷくくっ」
「カイ、それ以上言うとチャーチルが泣いてしまうよ」
「泣かないっ、僕はこれから強くなるんだもん、ふんだ」
「回避できなかったのか」
「う、うん、逃げ回っていたんだけど、追いつかれて、やむなしだったよ。防具フル装備だから、なんだか動きづらくって」
「あぁ、たしかにな、それで上級者は機動性の良い薄着の霊力軽減衣服を着るようになるんだよ、そうだよな、カイ」
「いぇーす、オフコース。でも本格的な戦場だとそれなりに防具は着けるぜ。まぁ、部分的にだけどな。機動性を損なわない程度に、だ」
隣にいたダンが俺の肩を持った。
「早くニンフの加護を使えるようにならないといけない。でも、今日はゆっくり休め。焦ることはないさ」
「分かってる」
それから部屋に戻ると、リゼはいなくて(グレナダと士官学校内部のカフェでガールズトークにいそしんでいた)、代わりにオリビアが待っていた。俺に話があるとかで、チャーチルは眠気が抑えきれずにさっさと布団に入って寝てしまった。
三階にある自動販売機らしき飲料提供マシン(エナジードリンクっぽいものばかりが売られている)、の前の椅子に俺とオリビアが座った。
「何か飲むか」
「いや、いい。湯上がりに筋力強化のドリンクを飲んだから」
「そうか、ではさっそく、これを」
オリビアが制服の懐から取り出したのは一通の手紙だった。
「……うっ、まさかこれは」
「お前の実家からだ」
「やはりか……」
受け取ると、差出人の欄にエリザ・ボナパルトの文字が記されていた。
「ふふふ、新婚の嫁さんからか」
「あ、後で読もう」
俺はいやらしい目で見てくるオリビアを一度にらみつけてから、話とはこれだけか、と聞いた。貴族としてのプライベートを垣間見られた気がして、少々かんに障った。おのれ騎士見習い、おのれ士官学校、同じ生徒とはいえ、我々貴族に対して少々敬意が足りないのではないか?
「そう邪険にするな。ちょっと感想を聞きたかったのだ。実戦訓練の感想をな」
「……感想ね。とにかく力不足も甚だしい、としかいえない」
「当然だ。つい最近までタダの貴族だったのだからな。お勉強ばかりしていても、実戦ではクソの役にも立たない」
「明日は早めに切り上げるよ。それから君にニンフの扱いを教わりたい。それと、剣技のほうも」
「分かった。なら、ほかの二人も一緒に連れてこい。切り上げるタイミングは五回戦あたりにしてくれ、私がそのあたりでいつも訓練を終えているから」
「分かった、みんなには俺から伝えておくよ。きっとチャーチルもリゼも、オリビアの個人レッスンが必要だと思っているだろう」
「ふん、レッスンね。貴族の好みそうな表現だ。しかし、私の稽古はそんなに甘くないぞ」
オリビアはそこからまた所用があって帰りが遅くなるといい、一人階段を降りていった。昨日もそうだったが、かなり深夜になってから部屋に戻ってきて、軽くシャワーを浴びてから寝床につく。何をしているのだろうか。
ルームリーダーと別れてから、俺はおとなしく部屋に戻り、ほかの二人が寝静まった頃を見計らって意を決し、手紙を開いた……
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