冴えないおっさんが没落貴族に異世界転生~売れ残りの悪役令嬢を妻にめとって世界征服目指します~

masa

文字の大きさ
40 / 54

システムダウンに向けて

しおりを挟む
「キースって、もしかして、【千里眼】使いのキースか?」
「あ、お、俺のこと知ってるのか」
「もちろんだとも、カイの奴が試験問題のリークでお世話になってたし」
「か、カイは金を持っているからね……ギャランティはきっちりもらってるよ」
「あの、キースは【千里眼】を使えるんですよね? だったら、この動き回る古代遺跡の構造も分かるんじゃないですか?」
「そ、それが……」

 キースはとぼとぼと力なく語り始めた。「遠征」開始から今に至るまで、彼は俺やカイと同じく仲間と一緒に古代遺跡に潜入し、「フライングストーン」を探していた。そして古代遺跡の内部が移動するのを理解し、自慢の高等魔法【千里眼】を使って目的の「フライングストーン」が地下深くにあることを突き止めた。

 しかし、キースがそこに近づこうとすると、たどり着くまでに必ず遺跡が姿を変形させてしまい、どうしてもたどり着けないようになっていたのだという。

「た、たぶん古代遺跡の意思だと思う。システムの一番大事な部分を盗み取られないように、俺たちを遠ざけているんだ……」
「そうか、それは参ったな」
「……ねえ、セラフィム」
「ん、どうした、リゼ」
「かつてこの古代遺跡を管理していた者達は、どうやって最深部のシステムを整備していたのでしょうか」
「さあ、管理者だけが簡単にたどり着けるような仕組みがあったんじゃないか」
「では、たどり着く仕組みから探さないといけませんね」
「ああ、それはそうなんだが、どうしたもんかね」
「キース、あなたの【千里眼】は何回使えるんですか」
「え、そ、そうだな、俺は魔力がそ、そんなにたくさんある方じゃないし、一日三回が限度だと思う」
「私とセラフィムが魔力の援助をすれば、もっとできますか」
「う、うん、魔力さえあれば……」
「だったら、二人とも、ちょっと見てもらいたいものがあるんです、ついてきてくれますか」
「ん、分かった」

 リゼが案内してくれたのは、楕円形の空間だった。そこにはリゼが小部屋のロボットと遭遇する前に発見した、奇妙な人工物があった。黒光りする素材はどうも先ほどのロボットの外装と同じ材質らしい。支柱の先に丸い球が取り付けられてあって、ほこりをかぶっていたからそれを払うと、なめらかな球面に俺の顔が映り込んだ。

「なんだこれは」
「私にも分かりません。けれど、明らかに意味があって設置されたものですから、無視してはいけないかと思います」
「も、もしかして、古代遺跡のシステムの大事なパーツかもしれないね」
「え! これがか?」
「キース、あなたもそう思いますか」
「う、うん、だって、この空間ってかなり広いけれど、さっきの内部構造の大移動があっても、どこも変形してなかったんだろう? これは推測に過ぎないけど、も、もしや、変形させたらシステム上、都合が悪い空間がいくつかあるんじゃないかな」
「おおっ! それはありえるな!」
「リゼは俺に、「フライングストーン」じゃなくて、これを【千里眼】で探してほしいんだろう? でも一つ問題があるよ。探したからって、どうするの? 移動や変形しない空間の位置から逆算してフライングストーンに迫れるような頭の良い奴、そうそういないよ」
「……そうですよね、……だったら、……破壊、とか、どうですか」
「え?」
「もしこれがシステムの大切なパーツなら、壊すとシステムが停止したり、なにか変化が得られるのではないでしょうか」
「で、でも、それ壊せないレベルの強度だと思うけど」
「やってみましょう」

 リゼはダメもとで鞭を取りだし、霊力最大で先端の黒い球を徹底的に叩いた。けれども全くびくともしない。

「い、いちおう、俺もやるよ」

 彼は聖銃の使い手で、銃からは目にもとまらぬ早さで光の霊気弾丸が黒い球やその下の支柱に集中砲火されたが、それでもノーダメージだった。

 二人が疲れ果てて俺の方を見る。なんだ、やれってか。

「……しゃーない、あれ、やるか」

 俺は茜色の聖剣を握り、オリジナルでまだ試作段階だったある術式を披露することにした。かなり集中力を研ぎ澄ませないといけないので、二人には静寂を要求した。

「【バーミリオン……ジェット……ブリッツ】!」

 黒い球に差し向けた剣先から、極めて細く捻出された超高密度の赤い光線が飛び出した。とにかく貫通力だけを重視した危険な術式で、一歩間違えれば圧縮した霊気が爆発して、大変な事態が起こる。

 一筋の光線は黒い球に当たると、耳障りな《キィィィィィィィィィィン》という甲高い音を発しながらすさまじい硬度の物体をゆっくり貫通していった。俺は術式を正しい手順で解除し、光線を消滅させた。

《――バキっ、ピシっ、ピキピキピキ》

 ど真ん中に穴の開いた黒い球はそこから亀裂が走り、最後は砕け散った。

「ふぅ、これでよしっと」

「さすがセラフィムですね」
「うわぁ、異光組ってやばいんだなぁ」

 ぶっちゃけて言うと、この術式でダメだったらお手上げだった。すべてのものを貫通させてしまうので、本当はどのくらいの威力があるのか計りかねていたが、とりあえずこれくらいの硬さであれば大丈夫ということがわかり安心した。

《ゴウゥンン、ガッ、グイィインンン、ガクンッ、ブゥウウウン》

「また動き出したなっ」
「ひぃっ、怖ぇよお、また変なロボットが来ちまう……」
「大丈夫です、私たちがついていますから」

 前回より明らかにぎこちない空間の移動音を聞いて、俺たちは手応えを得た。空間を動かす上で不可欠な軸の一つを破壊したのだという手応えだ。

 俺たちはその調子で、キースに魔力を分け与えながら【千里眼】で近隣の黒い球の居場所を特定し、道中のロボットを上手くあしらいながら、順調に破壊工作を進めていった……


しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

処理中です...