冴えないおっさんが没落貴族に異世界転生~売れ残りの悪役令嬢を妻にめとって世界征服目指します~

masa

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空にビジネスを描く人

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 人々が沿道から歓声を上げ、音楽隊がラッパを吹き鳴らし、どこからか紙吹雪が舞って、涼しい風の中を夫婦そろって凱旋していた。

「……あらまー……」
「どうしたのです、セラ」
「……いや、なんでもない」

 歓声にどのように応えたら良いか分からず、適当に天皇陛下っぽい感じでにこやかに手を振ってみると観客が余計騒いでしまった。観客達の顔を見ていると、あまり知り合いがいない。

「なあ、エリザ」
「はい」
「ホロンの人口は今どれくらいになるだろう」
「約二千万人、と聞いておりますわ」
「二千万……」
「あなた様がおられない間にたくさんの他領土を吸収いたしました。鉱山の開発も順調に進み、開発過程で生まれた魔力プールからはパイプラインを通して、魔力の枯渇する他領土に供給しておりますわ」
「……おかしいな、二年前はたしか、木造建築と田畑が目立つ小さな街だった気がするが」
「もちろんそういった場所もまだありますけれど、有力だった農家の多くは領土の端のほうで大規模経営をするようになりましたわ」
「……一年でこんなビル建てられるのか」
「魔法建築士をたくさん雇いましたし、買い占めた領土から工員を募れば人手は十分足りましたよ」
「ふむ……魔力って、すごいのだなぁ」
「何をいまさら」

 なんかもうどうでも良い気分になっていた。振り返れば、遠くの方に巨大宮殿みたいなものがあって、どうもそれがホロン城らしかったのだが、面影があまりなくて、いまいちピンとこない。

「あ、そうそう、二ヶ月ほど前、追加で領土を拡張した折りに、父の領土規模を上回りましたのよ。もちろん経済規模も」
「はぁ、父上の」
「……なにを呆けているのですか、もっと喜びなさい、あなたの領土がかつてない栄華を見せているのですよ」
「分かっている、分かっているが、しかし……」

 予定されていたコースを最後まで凱旋すると、やがて車は路肩に寄せられて止まり、そこにはものすごい数の黒服SPが待機していた。

 俺とエリザが降りていくと、SPのリーダーらしき恰幅の良い男が挨拶をした。それからクラウスに業務内容の確認がてら様々な報告をしていた。

「さ、行きましょうか」

 エリザ案内の元、新生ホロンのメインストリートをゆっくり練り歩いた。そこには庶民向けの店もいくつかあったが、どちらかといえば高級ブティックや一面ガラス張りの大型美術館とか、ドアマンのいる宝石店のほうが目立つような、衛生的に美しく、景観に優れ、なおかつ高級感のある風景が広がっていた。

 俺は定期的にそういった敷居の高そうな店に連れ込まれて、それと一緒にがたいの良すぎるSPも入って、きっと店員も迷惑していたことだろう。妻は気まぐれに店を変えるから、どこに行っても予約などしていなくて、クラウスはその度に店の者に頭を下げていた。

「――さて、次はどういたしましょう」
「そうね、次はシザース通りにしましょう。昼食もそこで」
「かしこまりました」

 必ずロールスロイス的な長―い車が行く先々で待ち伏せしていて、長距離の移動にはそれを使った。俺は車窓から街の風景を見渡して、ぼーっとしていた。俺の知るホロンはいったいどこに行ってしまったのだろうかと、嬉しいような、寂しいような、動揺した気分でいたのだ。

「……え?」

 上空を、飛行機が飛んでいるのが見せた。一瞬俺は慌てふためき、街の雰囲気も相まって、俺はもしかして現代に帰ってきたのではないかという錯覚にとらわれた。

「え。飛行機?」
「……あら、よくご存じで」
「……ホワーイ?」

 彼女は翼竜による輸送を常々疑問視していたらしい。かといって大量の荷物を転移魔法でどこかに送りつけるのは貴重な長距離転移用魔力結晶を消費してしまうので、それを産業として毎日やるのは非効率だと考えたエリザは、安価な魔力液で飛行するマシーンがあれば便利だという結論に達し、それを技術者集団に依頼して作らせた。

「飛行する機械ですから、飛行機、という、安直な名付けをしたのは技術者の方でしたけれど、急いで作らせた割にはなかなかの複雑で高度な出来映えでしたのよ。荷物だけではなく、人を乗せて旅行業をも担わせることが出来そうです」
「航空産業もやるつもりなのか」

 俺があきれたように言うと、彼女は軽くうなずいた後、俺の耳に口を近づけて、クラウスに聞こえないようにしてささやいた。

「……ここだけの話ですが、この国の貴族はまだ革命後も既得権益や従来の慣習にしがみついている阿呆ばかりですから、今のうちに新しいビジネスを多面的に展開していれば、いつか巨万の富につながりますわ」
「な、なるほど。うん、なるほど、いいんじゃないかな。(これはとんでもない嫁をもらったのかもしれない……)」

 海外からのVIPが仲良く談笑しながら食事を取る超有名料理店で、何だかよく分からない芸術性に富んだ昼食を食べて、それからまた車に乗せられて、街に出た。


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