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おっさん、圧勝してしまう
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――説明によれば、ここはダンジョンの地下七階らしい。そこには空があり、気候があり、植物があった。俺の攻略していたダンジョンとはまるで違う。景色が素晴らしい。
樹海のセーフゾーンまで転移されて、そこで指導員からプレイヤーたちに簡易物資箱が配布された。中を覗けば、そまつな回復薬と、状態異常を解除する安っぽいタブレット、ターゲットを補足する千里眼のポーション、緊急避難用の戻り玉、討伐完了を知らせる角笛、そして素材回収キットが入っていた。
「大型の物資箱はなくてね、まあ、地域のダンジョンなんてそんなもんさ、国が卸してくれないんだ。結構貴重らしくてね、製法も非公開ときたもんだ。ま、たまにこのハンター育成センターからもプロが出るし、日本で有名になったら、もっと環境の整った都会のダンジョンを攻略しなさい」
指導員はターゲットの特徴を言わないまま、ゴリラの亜種だから、がんばってね、といい残し、戻り玉を地面に叩きつけ、白い煙の中に消えた。センターに戻ったのだ。
「はぁ? グリーンゴリラの亜種だって!? ムリに決まってんだろお」
「もうだめだ、帰りてぇ」
「何頭いるか知らないけど、一匹でも総がかりじゃないと倒せないわ」
悲観する声がそこかしこで聞こえる。俺はそのグリーンゴリラとやらは見たことがない。かなりの強敵らしく、俺は緊張が高まった。ごくり……とつばを飲み、持ってきた心眼猫のヘルムをかぶり、意識を集中させる。
「岡田さん、どうしたんですか?」
俺に千里眼ポーションなんていらない。心眼猫のヘルムの効果で、ターゲットの位置を感覚的に割り出せる。
「……見つけた」
「え?」
「この簡易物資箱、全部あげるよ」
「えっ、え」
ほのかに、俺についてくるように指示して、俺はさっそく走り出した。周りの貧相なハンターどもがいうには、グリーンゴリラの数は複数いると思われるが、しかし試験の性質上、数に限りがある。早めに見つけて戦闘に入るのがいい。先手必勝だ。
「そんなに急いで、どうします――はぁっ、もっと、――作戦とか練ったり」
「――ふっ、――っふ、先に――相手の状況を確認するぞ、――ふっ」
木々の間を駆け巡りながらしゃべっていると、道中で小さな爆弾虫を発見した。テントウムシみたいな見た目だが、死の間際に爆発する特徴がある。ほのかがすかさず捕まえて、素材回収キットに放り込んだ。
「よしっ! 一匹ゲットですね、うんうん、順調な気がします」
「ははは、そうだな、あとで使えるかもしれない。じゃ、また走るぞ」
「またですかぁ、私走るの遅いのにぃ!」
「ほかのやつに先超されちゃうだろ」
俺の目的はあくまで試験の合格だ。ミッションはグリーンゴリラ亜種の討伐のみ。樹海探索の依頼を受けているわけでもなし、ピクニック気分じゃないぜ、こちとら。
初めて見るステゴザウルスのような恐竜や、珍妙な虫たち、様々な色の薬草はさておき、しばらく走っていると、俺の捕捉しているグリーンゴリラが移動し始めた。うまくこちらに近づいてくれている。
「――止まれ」
「はぅっ、はい」
急ブレーキをかけて、そばの大樹の根方に隠れた。遠方に、のそのそと両手を前に垂らして、鼻息荒く歩く一頭のグリーンゴリラが見えた。
「わっ、わ、剥製は見たことあるけど、実物ははじめて見ました……」
「ぜんぜんグリーンじゃねぇじゃねぇか」
「あ、はい、亜種なので、黄色です」
短い体毛は一面黄色で、木陰から出ると日差しが当たり、ゴリラが金色に見えた。
「……あれ、強いのかな」
「はいっ、Cランクプラスです、手強いです!」
ゴリラは呑気に短草の上で寝転がり、鼻をほじりながら眠ってしまった。周りには白いチョウチョが飛んでいて、小鳥が遠くでチュンチュン鳴いている。非常にのどかな風景だ。
「……寝やがったぞ」
「チャンスですね!」
「こら、いきなり飛び出すんじゃない、ここは慎重に」
俺はひとまず小手調べに先ほどほのかが捕まえた爆弾虫を取りだして、手の中で握りつぶし、瀕死状態にしてから、ゴリラに投げつけてみた。
《――ボンっ! グホォオオオ!》
ゴリラが額を押さえてのたうち回った。あれ、額が急所なのかな。
「ひゃあっ、こっち見てます!」
「居場所を悟られたか、よし、ほのかはそっちの木の上に登って、そこから援護射撃を頼む、ハンタースクールとやらで培った戦闘技術を見せてくれ!」
「はい! 任せてください!」
《グルホォオオ!》
奇声を上げながら四足歩行で接近してくる。どれ、一太刀浴びせて、それから回避し、様子を見ようか。
俺は太刀を抜き、軽く振って、斬撃を飛ばした。
《――ズバンっっっ!》
……綺麗に肉と骨が切断される音がして、黄色のゴリラが二つに裂けた。
「……え」
振り返ると、木の上にまだ登り切れずに、木肌に足をかけていたほのかが、あごが外れそうな具合に大きく口を開けて、唖然としてた。
……仕方なく、角笛を吹いた。それで、最初の一匹が討伐されたのだということが、七階全域、ないし、ダンジョンの向こう側の施設職員に伝わる。
「……うん、帰ろうか、ほのか」
「お、岡田さんって、……すごい人だったんですね、……やっぱり」
俺たちは仲良くそろって、戻り玉を地面に落とした……
樹海のセーフゾーンまで転移されて、そこで指導員からプレイヤーたちに簡易物資箱が配布された。中を覗けば、そまつな回復薬と、状態異常を解除する安っぽいタブレット、ターゲットを補足する千里眼のポーション、緊急避難用の戻り玉、討伐完了を知らせる角笛、そして素材回収キットが入っていた。
「大型の物資箱はなくてね、まあ、地域のダンジョンなんてそんなもんさ、国が卸してくれないんだ。結構貴重らしくてね、製法も非公開ときたもんだ。ま、たまにこのハンター育成センターからもプロが出るし、日本で有名になったら、もっと環境の整った都会のダンジョンを攻略しなさい」
指導員はターゲットの特徴を言わないまま、ゴリラの亜種だから、がんばってね、といい残し、戻り玉を地面に叩きつけ、白い煙の中に消えた。センターに戻ったのだ。
「はぁ? グリーンゴリラの亜種だって!? ムリに決まってんだろお」
「もうだめだ、帰りてぇ」
「何頭いるか知らないけど、一匹でも総がかりじゃないと倒せないわ」
悲観する声がそこかしこで聞こえる。俺はそのグリーンゴリラとやらは見たことがない。かなりの強敵らしく、俺は緊張が高まった。ごくり……とつばを飲み、持ってきた心眼猫のヘルムをかぶり、意識を集中させる。
「岡田さん、どうしたんですか?」
俺に千里眼ポーションなんていらない。心眼猫のヘルムの効果で、ターゲットの位置を感覚的に割り出せる。
「……見つけた」
「え?」
「この簡易物資箱、全部あげるよ」
「えっ、え」
ほのかに、俺についてくるように指示して、俺はさっそく走り出した。周りの貧相なハンターどもがいうには、グリーンゴリラの数は複数いると思われるが、しかし試験の性質上、数に限りがある。早めに見つけて戦闘に入るのがいい。先手必勝だ。
「そんなに急いで、どうします――はぁっ、もっと、――作戦とか練ったり」
「――ふっ、――っふ、先に――相手の状況を確認するぞ、――ふっ」
木々の間を駆け巡りながらしゃべっていると、道中で小さな爆弾虫を発見した。テントウムシみたいな見た目だが、死の間際に爆発する特徴がある。ほのかがすかさず捕まえて、素材回収キットに放り込んだ。
「よしっ! 一匹ゲットですね、うんうん、順調な気がします」
「ははは、そうだな、あとで使えるかもしれない。じゃ、また走るぞ」
「またですかぁ、私走るの遅いのにぃ!」
「ほかのやつに先超されちゃうだろ」
俺の目的はあくまで試験の合格だ。ミッションはグリーンゴリラ亜種の討伐のみ。樹海探索の依頼を受けているわけでもなし、ピクニック気分じゃないぜ、こちとら。
初めて見るステゴザウルスのような恐竜や、珍妙な虫たち、様々な色の薬草はさておき、しばらく走っていると、俺の捕捉しているグリーンゴリラが移動し始めた。うまくこちらに近づいてくれている。
「――止まれ」
「はぅっ、はい」
急ブレーキをかけて、そばの大樹の根方に隠れた。遠方に、のそのそと両手を前に垂らして、鼻息荒く歩く一頭のグリーンゴリラが見えた。
「わっ、わ、剥製は見たことあるけど、実物ははじめて見ました……」
「ぜんぜんグリーンじゃねぇじゃねぇか」
「あ、はい、亜種なので、黄色です」
短い体毛は一面黄色で、木陰から出ると日差しが当たり、ゴリラが金色に見えた。
「……あれ、強いのかな」
「はいっ、Cランクプラスです、手強いです!」
ゴリラは呑気に短草の上で寝転がり、鼻をほじりながら眠ってしまった。周りには白いチョウチョが飛んでいて、小鳥が遠くでチュンチュン鳴いている。非常にのどかな風景だ。
「……寝やがったぞ」
「チャンスですね!」
「こら、いきなり飛び出すんじゃない、ここは慎重に」
俺はひとまず小手調べに先ほどほのかが捕まえた爆弾虫を取りだして、手の中で握りつぶし、瀕死状態にしてから、ゴリラに投げつけてみた。
《――ボンっ! グホォオオオ!》
ゴリラが額を押さえてのたうち回った。あれ、額が急所なのかな。
「ひゃあっ、こっち見てます!」
「居場所を悟られたか、よし、ほのかはそっちの木の上に登って、そこから援護射撃を頼む、ハンタースクールとやらで培った戦闘技術を見せてくれ!」
「はい! 任せてください!」
《グルホォオオ!》
奇声を上げながら四足歩行で接近してくる。どれ、一太刀浴びせて、それから回避し、様子を見ようか。
俺は太刀を抜き、軽く振って、斬撃を飛ばした。
《――ズバンっっっ!》
……綺麗に肉と骨が切断される音がして、黄色のゴリラが二つに裂けた。
「……え」
振り返ると、木の上にまだ登り切れずに、木肌に足をかけていたほのかが、あごが外れそうな具合に大きく口を開けて、唖然としてた。
……仕方なく、角笛を吹いた。それで、最初の一匹が討伐されたのだということが、七階全域、ないし、ダンジョンの向こう側の施設職員に伝わる。
「……うん、帰ろうか、ほのか」
「お、岡田さんって、……すごい人だったんですね、……やっぱり」
俺たちは仲良くそろって、戻り玉を地面に落とした……
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