特殊ダンジョンを攻略していたおっさんが知らない間に世界一のハンターになっていた件について

masa

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おっさん、嫉妬してしまう

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とあるホテルの地下駐車場に車が止められた。

「ここ、ですか」
「ええ、新宿ギルドは、T―24というホテル直下に現れたダンジョンの攻略をつとめていただいているパーティが、そのホテルに直接宿泊いただける施設となっております」
「あのT―24ですか!」
「あのって、どの?」
「岡田さん知らないんですか? もともと青ダンジョンだったのが、一気に黄ダンジョンに変色した、いま東京でもっとも活発なダンジョンの一つなんですよ!」

 黄ダンジョンというのは、入り口が黄色に染まっているということ。内部の環境や生態系に変化が見られると、それにダンジョンが反応して、入り口の色味が変わることがごくまれに生じるらしい。ちなみにT―24とは、Tokyoで24番目に発生したダンジョン、という意味だ。

「黄色ってことは、上から5つ目じゃないか」
「そうなんです、非常に危険です!」
「万全を期するにはパーティが必要かもしれないなぁ」
「あとで私が何人かご紹介いたしましょう」
「あ、そんなことまで、……よろしくお願いします」

 中に入ると、元高級ホテルだけあって、壁には大理石が用いられ、そしてかなり大人びた雰囲気のエントランスが現れた。ロビーには何人か宿泊客がうろうろしている。

「あれ、ハンターなんですよね」
「ええ、あの、奥から二番目の座席に座っておられる、ポロシャツ姿の男性は、日本ハンターランキング7位の、如月純一郎さまです」
「キャーッ、あこがれの如月さんだぁ! サインもらわなくっちゃ!」

 ほのかが全力ダッシュで如月とやらのところに駆け寄り、鞄からサイン色紙とペンを取り出して渡した。

「――はい、できあがり」
「あ、ありがとうございますっ、一生大事にしますね」
「ハハハ、そうかい、ところで君、凄くかわいいね、名前は?」
「わたしですか? えっと、棚橋――」
「――ほのか!」

 大門寺さんがチェックインの手続きをしてくれているあいだに、俺は二人の方に小走りで向かい、無礼を詫びた。

「すみません、連れの者がいきなり」
「いえ、別に。慣れてますから」
「見てみて岡田さん、如月さんのサイン!」

 サインは非常に崩した字体で書かれていて、あからさまに手慣れていた。如月は近くで見ると非常にすかした奴で、どことなく王子様っぽい、雰囲気イケメンというやつだった。

「……なーんだ、男連れか……」
「え?」
「僕はこれで失礼しますよ」

 如月はロビーの椅子から立ち上がると、トレードマークであるらしい青く染めた髪をかき上げ、颯爽と立ち去っていった。

「……今あいつ、男連れって」
「いやぁーーっ、かっこいいなぁ如月さん!」

 ほのかはまだ呑気にサインをもらったことを喜んでいて、手続きが終わった大門寺さんに見せびらかしに行っていた。俺はなんとなく、こう思った。

「なんか、嫌な感じの野郎だ」

 あんな優男が日本ハンターランキング7位だって? 若いうちからぼろ儲けしやがって、チックショー! ……でも、どうせめっちゃ強いんだろうなぁ、俺みたいなおっさんじゃ、到底かなわないんだろう……。けっ、くそったれ!

◇◇

 旧新宿セントラルワシントンホテル、現新宿ギルドは、客室300を誇り、築80年を越える伝統を持つ。一度大規模なリニューアルを果たして、現代的な内装を手に入れたが、時折のぞかせる木製のアンティーク製品や建築様式が、かつての老舗の面影を見せている。

「おぉ、いい部屋じゃないか」

 落ち着いた、シックな雰囲気の部屋を用意してもらった、ほのかはひとつ上の階の部屋をあてがわれていた。国家ハンターライセンス(日本)を手に入れると、自動的に日本ハンターランキングに名前が掲載される。

大都市圏において活躍する国家ライセンス所有者は、自身のキャリアアップのために、自分が担当するダンジョンで腕を振るい、ランキングを競う。俺とほのかは飛び入りでランキング入りしたから、とうぜん最下位からのスタートになる。

国家ライセンスカードに記された俺の順位は、1407位。免許証のごとく、顔写真入りで、やる気のなさそうな、弱々しいおっさんの顔が映っていて、外枠は白い。

本当なら地域ライセンスどまりで、地元でこつこつダンジョンを攻略し、少ない給料ながらも、仲間とゆっくり絆を深めていく予定だったから、今から考えても信じられない。

「はぁ、ずいぶん買いかぶられたもんだ……」

 あんまり働かないとライセンス剥奪になる。基本給は450万で、そこから出来高だ。つい最近まで無職の無人島プレイヤーだったことを考えれば望外の待遇。いろんな保険もついてくる。悪くないが……

 俺は興味本位で如月のことをスマホで調べてしまった。

「……い、い、一億二千万……だと……」

 それが如月の年収だった。つまり一億円プレーヤー。とある画像には、満面の笑みで、ブラックカードにキスしていやがる。ライセンスカードの外枠の色はダンジョンの入り口の色味と対応していて、具体的には、上から、

 黒 金 銀 赤 黄 茶 ピンク 紫 グレー 青 緑 白

 となっている。俺のライセンスはもちろん白枠だ。そしてランキング上位になると、その戦闘スタイルから、二つ名がファン投票でつけてもらえる。

「そ、双剣の王子様だぁ……??」

 奴はアイドル的な人気を誇っていた。売れないホストみたいな見てくれのくせに、なんて野郎だ。しかし、実績は十分で、もともと名家の坊ちゃんだった如月は、家の金で、一般人には購入できない高価な防具と武器を揃え、圧倒的資産力でのし上がっていた。

 テレビ出演も多数、実力派イケメンハンターとして女性人気高し……。そこまで読んで、俺は自分の取り柄のなさを悟った。

「とにかく、ここからクビにされないように頑張らねぇと……」

 真っ白なベッドに仰向けになりながら、スマホの画面を見つめ、そうつぶやいた。


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