俺とお前、信者たち【本編完結済み/番外編更新中】

知世

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番外編(小ネタ、小話、小説)

幸せの在り処『社 自由』

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な、長い…!

社視点が書きやすくて、つい…。

次は、彼方関連の番外編を更新します。


愛が転校してくる前の、穏やかで幸せな日常。

…なんか、奏が社のお嫁さん状態になってます。

「俺たちは結婚していたのか。知らなかった。…いや、待て。式を挙げていないぞ。そもそも、まだプロポーズをしてない。物事には順序が…」「ちょっと待て。おかしいだろ。まずは疑え」「えっ。…自分の常識をか?」「違う。そっちじゃない」

社は若干慌てて、奏は否定する…そんな姿が、浮かびました。





「…終わった」

学会で発表する論文を書き終わり、誤字脱字がないか、最終チェックする。

「……問題ない」

論文を鞄に仕舞い、もう一度出席日時の確認をした。

その際、時刻が目に止まる。

「おや、もうこんな時間か」

十八時だ。雪見と夜ご飯を食べる前に、風呂に入っておこう。

…夕食は、雪見…好きな人と過ごせる貴重な時間だ。

嬉しくて、頬が緩む。


以前は、栄養補助食品(サプリメントやゼリー)・栄養調整食品(固形タイプ)や、栄養ドリンクが俺の食事だった。

食事は栄養を摂取できれば十分で、拘りはなく、腐っていなければ、何でも良かった。

けれど、俺の不摂生―栄養のバランスは良いんだが…。やはり、忘れてしまうのが悪いんだろうな―を心配した雪見に「せめて、一食だけでもいいから、ちゃんと食べろ。いつか倒れるぞ」と言われた時、(これは雪見と一緒に過ごせるチャンスかもしれない)そう閃いた俺は、「じゃあ、雪見も一緒に食べてくれないか?俺がもし忘れていたら、声を掛けてほしいんだが…。駄目かな?」お願いした。

雪見が承諾してくれたので、予定が合わない日以外は、共有ルームである、自室のリビングで、食堂からテイクアウトした料理を、一緒に食べている。

朝食と昼食は、お互い時間が合わない為、夕食のみだ。

…食事が楽しみになったのは、雪見がいてくれるからだ。


今まで、食事は手間取る時間でしかなかった。

家族は好きだが、食事中に浮かんだアイディアをメモしていると、注意されて、強制的に中断させられていた。

人を救う、研究の為に、必要なことなのに、何故邪魔をするんだろう…。行儀が悪いのも、作ってくれたシェフに悪いのも、分かっている。でも、人の命より大事なものはない。冷たくなっても料理は食べられるが、命は取り戻せないのに。

食事の時間は、苦痛ではないが、不満ではあった。

だから、入寮できて、これからは好きにできる!と思っていたが…予想外なことが起こった。人生は面白いな。

…まさか、好きな人と食べる料理が、こんなに美味しいなんて。

無論、突如味覚が変化したわけではなく、気持ちの問題だろう。

家族と食べていた時も、料理は美味しかった。

ただ…どこか味気なかった。

…シェフには申し訳ないんだが。作ってもらっているのに、味気ないだなんて、失礼にも程がある。本当に申し訳ない。

しかし、無意識なことで、自分ではどうしようもない。

…実家に雪見を連れて帰れたら、食事が美味しくなるだろうな。現実的ではないが。


今では、食事中、雪見しか見えていないし、雪見のことしか考えていない。だから、中断どころか、アイディアが浮かぶこともない。

たまに見つめ過ぎて、俺が自分の料理をほしいと勘違いした雪見が、口をつけていない部分を分けてくれることもある。その時は、俺も同じようにお返しをする。

…もしかしたら、俺は雪見に食いしん坊だと思われているかもしれない。


部屋を出ると、雪見が洗濯物を畳んでいた。…あ。今のは俺の下着だな。座っている近くに、タオル類や俺と雪見の服が、それぞれ畳んで置いてある。

「俺は外出しないから、畳まなくていいよ。それに、下着なんて誰も見ないし」

「ついでだから。皺ばかりある服より、多少でもマシな方がいいよ。流石にアイロン掛けまではしないけど」

「でも、雪見も疲れているだろう?俺の分は放置していいから、少しでも休んだ方がいい」

「社ほどじゃない。気にするな」

「…分かった。―いつもありがとう。助かっている。雪見には感謝してもしきれない」

「いいって。…でも、まあ、どういたしまして」

少し照れたような笑みを浮かべる雪見に、胸が温かくなる。

…ああ、幸せだなぁ。

幸せを噛み締めながら、(この時間がずっと続けばいいのに。これからも…卒業しても、雪見と共に過ごしたい)そう思った。


これも、昔、洗い物を放置していた時、雪見が洗濯してくれたことが、始まりだった。

実家では、洗濯物は使用人がしてくれるものだったから、そもそも自分でするという発想がなかった。

というより、生活の殆どが使用人の仕事だった為、寮生活は驚きの連続だったな。

「雪見、迷惑と手間をかけて、済まない。お詫びに、食事でも奢らせてくれ。欲しいものがあれば、そちらで構わない」

「いや、これくらい、別にいいよ。次から気をつけてくれたら、それで」

「ポケットマネーだから、俺のお金だ。気にしないでくれ」

「聞いているのか?…何もしない方が気にするのか…。じゃあ、ケーキが食べたい。色んな種類を買って、食べ比べてみないか?社も甘い物好きだろう」

「喜んで。…というより、それ、少し前に俺がしたいと言っていたことじゃないか?お詫びなのに、それでいいのか…?」

「ああ。俺も食べてみたい。…じゃあ、ケーキ屋には、社が行ってくれよ」

「分かった」

その後、雪見と話した。

「洗濯物か…。時間が惜しいから、人を雇おうかな。そういう有料サービスがあるんだろう?」

「まあな。でも、指定の場所に運んで、終わったら受け取りに行かないといけないぞ。追加料金で部屋まで運ぶサービスもあるけど、社は出られるのか?」

「…集中していると、無理だな。全く気付かないし、気付けない」

「俺も出られるかは分からない」

「俺の洗濯物なんだから、雪見は気にしないでくれ。…毎回使い捨てにして、服を買い直そうかな」

「うわ、勿体ない。金持ちの発想だな…。…なあ。今回は社のだけで洗濯したけど…。どうせ自分のもするし、一緒に回していいなら、ついでに洗濯するよ」

「えっ…いいのか?でも、増えた分負担になるだろう」

「社が洗い物を溜め込んだり、出し忘れてなければ、大丈夫だよ」

「そうなのか…?してもらえるなら、とても有り難いけど…(でも、世話になりっぱなしというのも…雇うわけでもないのに…雪見は絶対給料を受け取ってくれないだろうし…)」

「(社、気にしてるな…。本当についでだから、平気なのに。…あっ、そうだ!)なら、たまにでいいから、レンタルショップでDVDやBlu-ray Discを借りてくれないか?予約したら、届けてくれるんだ。直接受け取らなくても、ドアポストにいれてくれるから」

「レンタルショップ?買った方が早くないか」

「…色々見たいから、量が多いし、置き場がなくなる」

「そうか。分かった。どんなものが見たいんだ?」

「……動物もの」

「動物もの?」

「………映画とかドラマじゃない、動物番組。ジャンルは問わない」

「雪見は動物が好きなんだな」

「うん。…でも、自分で借りたら、履歴残るし、頼むの、ちょっと恥ずかしいし…あ、ごめん。社も嫌だったら、いいよ(履歴で楓にバレるかもしれないから、俺も彼方も、借りられないんだよな。凄い見たいんだけど)」

「全然気にならないよ(いつも無表情の雪見が、恥ずかしがっている…。少し頬が赤いな。…愛らしい)」

「じゃあ、交渉成立だな」

「ああ。雪見、ありがとう」

「こちらこそ。ありがとう、社」

こうして、雪見の厚意に甘えることになった。

…DVDやBlu-ray Discを借りるくらい、洗濯物をしてくれなくても、するのに。

割に合わないと思うものの、毎回画面に釘付けになる雪見を見て、喜んでくれているから、いいのかな…?とも思う。

そういえば、近頃美味しいと評判のデザートがあるらしい。取り寄せよう。


「…社?」

声を掛けられて、目の前に意識を戻す。

「ぼんやりしてたけど…。体調悪いのか?」

雪見が小首を傾げて、俺を見上げている。

風呂上がりなんだろう。変装を解いているので、整った顔がよく見える。

雪見は瞳が一等美しい。吸い込まれそうだと常々思う。

「あ、いや、体調は悪くない。雪見のことを考えていた」

「俺のこと?」

「うん。…俺は雪見のことが好きだから、よく考えているよ」

「…ありがとう。俺も社を気に入ってるよ(社は凄いな。好きとか、さらっと言えるなんて。俺はなかなか言えないな…。…たまには、俺も好きって言った方がいいんだろうか。実際、社のことは好きだし)」

「…ありがとう、雪見(また伝わらなかったな…。いや、良い方に意識してくれたらいいけど、ぎくしゃくするのは嫌だから、これでいいんだが…。…何かきっかけでもあれば、覚悟が決まるかもしれない)」





最悪のきっかけではあったけど、「雪見を守りたい。そして、これからも俺の傍にいてほしい」と強く思い、社は告白しました。

社は四番目の推しです(とはいっても、一番から四番まで僅差で、ほぼ同列なんですが)

…よく考えたら、奏と対等な関係になるのは、社だけです。

楓は気にしていないけど、奏は負い目や後ろめたさがあります。

湊は甘えん坊で、奏は庇護欲や愛着で、可愛がっています(甘える側と、甘えさせてあげる側)

彼方とは、お互いが大切だけど、恋人になったとしても、主従関係であることは一生変わりません。

社は、奏に色々お世話されてますが、奏の為に出来ることもあり、一方的に甘えることを良しとしません。勿論、甘えたり頼ったりはしますが、同じように、甘えたり頼ったりしてほしいので、無理矢理にはならない程度に、奏の希望を聞き出して、叶えてます。

社はパートナーには、お互いを尊重し、愛し合う、対等な関係を望んでいます。

(生活能力皆無などで)残念なイケメンですが、良い男です。

…彼方ルートじゃなければ、社と付き合っていた可能性が高いですね。


学園内で、奏ロスが一番だったのは、社だろうな…。

約四年間、ずっと一緒にいたのに、いきなり一人部屋になって…。

龍も愛がいなくなって、自分の部屋に戻るし…。

生活能力ゼロな社を、面倒見の良い龍は気にかけてくれますが、お互いにお通夜状態…。

つ、辛い…!

…だ、大丈夫!大学で再会するから!ちゃんと帰ってくるからね!


余談ですが…。この話を書き終わった後、「いつ結婚したんですか?」と言ってしまいました。

いや、奏がナチュラルなお嫁さん過ぎて、つい。

…うん。社に、破滅フラグ(死亡フラグ?)が…。

だって、確実に、楓に目を付けられるでしょう、これは(彼方は、奏が自主的にやってることだし、傷付けているわけじゃないから、大丈夫そう。あ、けど、社が寝ぼけて、奏を抱き枕にして一緒に眠ったことは、知られたらヤバイかも…)

…ダイジョウブダイジョウブ。ハハハ。

悪いこと一切してないし、人の命を救う為に、一生懸命頑張ってるから、大丈夫。

社、幸せになれ。

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