勇者学園の最強先生〜引退した賢者の俺、落ちこぼれ生徒たちを無双させてしまう〜

神伊 咲児

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第十六話 戦士ゴック

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「最近、調子がいいようだな……デイン」

 二メートルを越える巨漢が俺を睨みつける。
 こいつの名はゴック。
 元勇者アッシュのパーティーに参加していたメンバーだ。
 こいつと会うのは五年分だろうか。昔はよく二人だけで酒を飲んだもんだ。
 背中にしょっている大きな斧はこいつのトレードマークといってもいいだろう。

「久しぶりだなゴック。元気してたか?」

 ゴックは眉を寄せる。

「何を呑気に……。どうしてこの学園に来たのだ?」
「どうしてって……。モーゼリアに頼まれたからだよ」
「ふん。女の頼みは無視できんか……。この薄情もんが」

 薄情?

「どういう意味だよ?」
「しらばっくれやがって……」

 と、苦虫を噛み潰したみたいな顔を見せる。
 なんだか空気が悪いので話題を変えよう。

「ゴックはどこのクラスを担任してるんだ?」
「俺の担当はストーン組だ。モーゼリアが学部と魔法を教えて俺が実技を担当しているんだ」
「二人担任? どんぐり組は俺一人なんだがな」
「おまえんところは生徒が四人しかいないからな。ストーン組は二十人もいるんだ。だから、担任が個別にいるんだよ」

 ふむ。

「だったら、モーゼリアと三人で酒でも飲み行くか!」
「行くわけがないだろうが! この無神経野郎!」

 なんか誤解があるな……。

「もっと話せないか? 昔みたいにさ」
「ほぉ……そんなに俺と会話がしたいのか……。だったら、俺の勝負を受けてみろ」
「なにすんだよ?」
「腕相撲さ。俺に勝ったらいくらでも話しを聞いてやるよ」
「ああ、懐かしいな。酒飲んだ時によくやってた」

 あん時はよく負けてたな。
 こいつとは明らかに筋力に差があるんだ。
 まぁ、戦士と賢者じゃあそもそもの力が違うよ。


  *  *  *


 俺たちは実技訓練場に集まった。
 俺とゴックの周囲には各自が担当するクラスの生徒たちが並ぶ。

「てんてぇ。なにやるの?」

 と、ミィは不思議そうにしている。
 対面するのはストーン組の生徒たち。

「先生同士の腕相撲対決だってよ! 面白そうじゃん!」
「ゴック先生やっちゃえええ!!」
「どんぐり組の先生なんてぶっ倒せぇええ!!」

 このギャラリーはゴックが呼んだんだ。
 その中にはモーゼリアもいた。

「ゴックさん。どうしてこんなことを?」
「ふん! 最近調子に乗ってるみたいだからな。こいつに生徒たちの前で赤っ恥をかかせてやるのさ!」
「こ、こんなことはやめてください。争いはなにも解決しませんよ」
「うるせぇ! こいつには腹が立ってたんだ!」

 うーーむ。
 なにをそんなに怒ることがあるのだろうか?
 まぁ、とにかく、この腕相撲で勝てば理由を聞けるだろう。

「デインさん。本当にやるんですか?」
「ああ……。そういう流れだからな」
「でも……。腕相撲はいつもデインさんが負けてたんじゃ……」

 と、彼女の視線は周囲を囲む生徒たちに向く。

「どんぐり組の教師がよぉお。ゴック先生に勝てるわけねぇじゃんバーーカ!」
「ゴック先生に無様に負けるのがオチね。しょせんはどんぐりだもん」
「あんな細い体でゴック先生に勝てるわけないだろ!」
「戦士と賢者で力比べして勝てるもんかよ。無能が!」

 対するはどんぐり組の女児たち。

「て、てんてぇは勝てるもん!」
「ぜ、絶対に先生が勝つよ!」
「先生は……勝つ」
「ちょっとデイン! 絶対に勝ちなさいよね! 負けたら承知しなんだから!!」

 いつの間にか、クラス対抗戦のようになっている。
 ゴックはこの展開を計算していたのか……。

「ククク。おまえが負ければどんぐり組の評判は失墜。教師が弱いんじゃ、落ちこぼれのレッテルは剥がせないなぁ~~」

 今は、G級を取得して落ちこぼれから脱出したところだからな。出鼻をくじかれるのはなんとしても避けなければならない。

「じゃあ、言っておくが……。これはとしての全力だからな」
「臨むところだ。骨が砕けても知らんぞ?」

 俺たちはテーブルの上で手を握る。
 その拳の上にモーゼリアの手が乗った。

「ではいきますよ。デイン先生対ゴック先生。全力腕相撲……。レディ……ファイト!!」

 瞬間。
 ムギュウ! っと筋肉のしなる音が響く。
 ゴックの力が俺の腕へと伝わった。
 やはり、強い。相当な腕力だ。

「おりゃぁああああああッ!! 俺を無視したことを後悔しろぉおおおおおおお!!」
「だから、知らねぇええっつってんだろがぁああああああ!!」

 俺たちの腕はピタァアっと真ん中で止まった。

「なにぃいいいい!? なんだこの力はぁあああ!?」
 魔法体術マジックアーツ。言ったろ? 賢者の全力ってさ」
「うぉおおおおおおお!! だ、だったら俺だってぇえええええ!!」

 ゴックの全身が青いオーラに包まれる。

 激流水属性体術ラピッドアーツぅうう!」

 ほぉ。水属性の付与魔法か。
 ゴックの力が増したな。
 だったら俺も。
  魔法体術マジックアーツに雷光を絡ませて。

 電撃雷光体術ボルティックアーツだ」

 周囲は水と電気が合わさってバチンと弾ける。
 強風が吹き荒れて生徒たちがよろめく。マイカは捲れ上がったスカートを抑えた。
 ゴックは歯茎が見えるくらいに顔の肉がめくれている。

「ふががががががががが! こ、この野郎ぉおおおおお!!」
「それがおまえの本気か?」
「うぉおおおおお! 負けねぇえええぞぉおおおお!!」
 
 腕の位置は以前として変わらない。
 拮抗する中、訓練場にミィの声が響いた。

「てんてぇええええ! 負けないでぇええええ!!」

 おおよ。
 どんぐり組の生徒たちのためにも、ちょっとだけ本気を出す。
 
「魔法が付与されてるなら大丈夫だろ」
「な、なんのことだ!?」
「おまえの体だよ」

 俺は全身に力を込めて体と精神を一致させた。


「うりゃ!」


 せつな。

 爆発的な力が発生する。

 ゴックの巨体は宙に浮き上がり、そのまま床に叩きつけられた。


ボコォオオオオオオオオオオオオオ……!!


 ゴックは床を突き抜けて五メートルはあろう深さまで減り込んだ。

「あ……」

 ちょっとやりすぎた。
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