イタチを愛する変わり者美女はわたしだけを抱きしめる

佐古橋トーラ

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第3章

わたしはイタチではないのに 2

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 アプリを開くと、まず最初にログイン画面が現れた。

 メールアドレスを登録して、パスワードも設定して、いよいよ後戻りができなくなっていく。
 まあ、もしもこれが有害な物なら、アプリが入った時点でメールアドレスなんて抜き取られてるだろうから今更だ。

 そして利用規約を適当に上から下までスクロールして[同意する]を押した。
 ここでわたしは当然の如く利用規約を読まなかった。初期登録するときの利用規約なんて全部は読まない人の方が圧倒的に多いと思うし、わたしも例外ではなかったのだ。

 少し時間が経って、死ぬほど後悔することになるのをこの時のわたしはまだ知らない。


 さて、情報の登録が一通り完了すると、いよいよアプリのタイトル画面までたどり着く。
 丸っこくて親近感がある字体で[WEASEL LOVERS]という文字が浮かび上がってきて、それを囲うようにイタチっぽい動物のコミカルなイラストが並んでいる。
 いかにもほのぼのゲームっぽいタイトル画面だ。

 はじめる、を押すと、チュートリアル的な文章が流れてきた。

『ここは、イタチを愛する人だけがご利用いただける共有場所です。経験談や写真などをシェアして、自分の同志を見つけましょう!※もしもなんらかの手違いや勘違いでアプリを入手してしまった方は、すぐにアンインストールすることを強くお勧めします。』

「イタチを愛する人だけが………そんなアプリあるんだ。」

 秋川さんが勧めてくれた物だから納得はできるものとはいえ、そんな世界が存在することが驚きだ。まあ、世の中どんなものにもコアなファンっているし、フェレットがメジャーなペットであることを考えれば信者みたいな人がたくさんいてもおかしくはない。

 少し気になるのは注意書きの方かも。
 手違いでインストールした場合は削除しろと示してある。
 そんなこと普通書くか?別にこのアプリに興味をもってインストールしたイタチ初心者(?)くらいいそうなものだけど、そういう人はお断りなのだろうか。……いや、でもこのアプリ検索しても出てこなかったんだよな。秋川さんがどうやってこのアプリを入手したのかは知らないが、そういう界隈に精通してないと見つけられない物なのかもしれない。なぜそんなものが存在しているのかについては置いておいて。
 そして問題点は、わたしがイタチを愛していないことだ。祖母の家でソラを飼っているから、まったく知らないわけじゃないとはいえ、動物そのものに興味がない。つまり、わたしはこのアプリの文面に従うなら、すぐにアンインストールしなければならないということだ。

 ………………。

 ルールは守りたい人間ではあるけど、別にわたしの感情を機械が読み取れるとも思わないし、仮にわたしがイタチ好きじゃなかったのが看破されたとしても、だからなんだという話なんだから馬鹿正直に守る必要はないか。
 何より、ここまで怪しい轍を踏んできて今更後戻りはできない。

 わたしはそのまま[次へ]のボタンを押した。

 操作説明とかがあるのかと思ったが、存外これでチュートリアルは終わりのようで、ホーム画面のようなところで放置された形になった。

 ホーム画面には、[他人の投稿を見る][自分で投稿する]の二つがあり、それ以外の機能は特にない。

 さっきの文面とこのホーム画面を見るに、このアプリはイタチ専門SNSといった感じで、ゲームとかではなく、自分のペットの写真とかたまたま見つけた野生動物をアップロードして他のユーザーと共有する場らしい。

「………いらねー。なんだこのゴミ。」

 思わず呟いてしまって、誰も聞いていないはずなのに慌てて口を塞いだ。

 でも、これが素直な感想だ。
 いやだってさ、知らないどころか調べた上で興味を持たなかった界隈のSNSとか、絶対使わないし見てるだけでも楽しくもない。
 なんかのゲーム、たとえばアニメーションのイタチを育てるやつとか、イタチ視点に立ってリアルな世界観を冒険するみたいなアドベンチャーみたいなやつなら喜んで手を出していたかもしれない。でも、ただみんなのイタチ愛を見せつけ合う場所なんてなぁ。

 わたしが一応動物好きってことになってるから秋川さんはこれを勧めてくれたんだろうけど、あいにくわたしには必要ない代物になりそうだ。

 まあ、大した容量を食うわけでもないし、ありがたく受け取ったことにしてこのまま携帯内に残しておこう。たぶん一生使わないけど。

 なんとも反応しにくいお礼を受け取ってしまったわたしだったが、持っていて損はない。話のネタくらいにはなるだろう。

 今度の今度こそ携帯の電源を切ったわたしは、大きなあくびを一回かましてベッドに潜り込んだ。

 疲れもあって、すぐに安眠の世界へと旅立ってしまったわたしは、すぐ隣で携帯の通知が鳴ったことに気が付かなかった。

 よくよく考えたら、検索しても出てこない、非公式的な入手手段しかない、こんな要素がある時点でもっと疑わなければならなかったんだろう。秋川さんから貰ったものということで油断していたのかもしれない。




《ペナルティ期限 残り6日23時間58分 期限内にポイントを入手してください。アプリに使用形跡がないとペナルティを受けます!》
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