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龍王と狐の来訪者
22話目 どちらまで
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睨み合う2人。大衆たちの目の前だというのに先ほどまでの熱気は嘘みたいに冷え込んでいる。温度差で風邪引きそう。不意に青年の背後でバギン!っと雷が落ちたかのような身の竦む異音が轟いた。
音の正体は、王と呼ばれるべき老人の持つ偃月刀の柄尻部分。所謂、石突きが固い石畳の床を叩き割っていたからだ。
彼の怒号にも似たその行動に呑まれたのか、姫も青年も二の句を告げず言葉を失っている。
かく言う俺も腰が抜けて、姫から落ちまいと彼女の頭に必死にしがみついていた。別にびびったわけではないんだけどね。音に驚いただけだから
時に。驚いただけで、びびりとか怖がりとか揶揄される風潮があるけれど、酷く心外だと思う。寧ろ大きな音を聞いて何の反応もないって生物としてヤバくないですか?きちんと耳掃除してる?五感の一つが鈍いとサバンナで生き延びれないよ!
よしよし、これだけ自己弁護を重ねれば俺の尊厳は無事守られただろう。これで守れないなら、意義ありってことで弁護士でも呼んで弁護して貰うしかアルデンテ。
「人目が多いのう。場所を変えようか。儂に付いて参れ」
結局、老人が踵を返して建築物の中へと入って行くまで、俺たちは静かについて行くことしかできなかった。
ーー
ーーー
アルタートゥームと呼ばれるこの世界でも最高最大を誇るこの建造物はヴルカーンと呼ばれているらしい。
明らかにこの世界とミスマッチのテクノロジーで形造られたアーチファクトリーの入り口を潜ると、静寂が支配する大広間と奥には二階へと繋がるであろう階段と扉が見られた。
「《似ているな。雰囲気‥‥というか、空気が。淡雪ちゃんが居たあの場所に》」
どうしてかあの白い空間を思い出してしまう……あれ?誰かに今視られてる。女の子は視線に敏感だが、龍もでしたか。上から見られてるが誰だろう。
空を仰ぐと思わず目眩を引き起こしてしまう程に只々高いという事を改めて思い知らされる。
「255階、あるみたいですよ」
こそりと姫が耳打ちしてくれた。ニーゼン鉄道の業務用階段が確か400階段分で11000段。その半分でも5000階段あると考えていいだろう。膝の軟骨と魂が1日で全部すり減りそう。
大広間の奥に続く階段へと向かう老人の靴が大理石の上でコツンコツンと音を小気味良く響かせている。
流石に何階も駆け上がるのは結構キツいだろう。姫も俺と同じ事を思ったのか、隣の玉藻ちゃんへ視線を寄越す。
「心配ない。上へ招いてくれる奴がおるからのう」
「《上に招く?》」
玉藻ちゃんに足早と老人の後へと続くと、姫も観念した様子でついて行く
「かぐや!!!」
一階エントランス中央付近で老人が突然足を止めたかと思うと大声疾呼で誰かを呼んだ。エントランス全体が震えるほど響き渡る声量が反響して何倍にも大きくなる。一つ言わせてくれ。他人の間近で大声を出すと大声が凶器として認定されて暴行罪が成立する場合があるらしいから、大声を出すのは控えるべきだと思う。
「‥‥‥ういーす。なんすかー?」
少しのタイムラグを置いて、老人の厳格な呼びかけに反応を示したのは、酸が抜けた清涼飲料水のように気が抜けている甘ったるい女性の声だった。女性の声は明らかに壁から聞こえてくる。流石異世界。壁が喋るのか。壁に耳あり、口もありってか。
「最上階の部屋を一つ使う。ゲートを開けろ」
「えぇーっ、めんど……。そんな睨まないで下さいよ。はいはいわかりましたよーっ。全くもう人遣いが荒いんだから」
大理石を偃月刀でドンドンと叩かれる事に嫌気が差したのか、声の主が渋々といった感じに了承すると、階段の先の大きな扉が開き、俺たちを包む様に光が照射される
「最上階の255階まで4名様と1匹ご案なーい」
光に包まれた姫の体が一瞬浮いた。姫だけではない。老人、切れ目、玉藻ちゃん。誰もが一様に重力に逆らい何かに引き上げられるようにフワリと持ち上がって扉に吸い込まれた。
「《え》」
窓からは最上階に相応しい荘厳な情景が広がっていた。強い光に呑まれ視覚情報が途切れたと思ったら、次の瞬間には部屋の中に全員が着いていたのだ。何をいってるかわかんないだろ。俺もわからん。
体験して何だが、何をされたのかわからない。もしかしたら、恐ろしい片鱗を味わったのかもしれない。
超スピードなのか。はたまた幻覚なのか
混乱している俺を他所に、ただの一人も取り乱すことなく全員が部屋に設置された高級そうな椅子にかける
「《お手洗いにいってきまーす》」
話し合いは、ルールとマナーを守って楽しくやりたいのだが、何処と無く空気が重苦しい。めんどくさいので退席して探検でもしようと姫の頭を離れたら、尻尾をがしりと掴まれた。
「どちらまで?」
「《あの、ちょっと、うん!うんこ!
しかも。アナコンダよりも太く、金魚のフンよりもキレが悪い、最悪なやつを、な!》」
「……」
「《……》」
知らなかったのか?大事な話し合いからは逃げられない
音の正体は、王と呼ばれるべき老人の持つ偃月刀の柄尻部分。所謂、石突きが固い石畳の床を叩き割っていたからだ。
彼の怒号にも似たその行動に呑まれたのか、姫も青年も二の句を告げず言葉を失っている。
かく言う俺も腰が抜けて、姫から落ちまいと彼女の頭に必死にしがみついていた。別にびびったわけではないんだけどね。音に驚いただけだから
時に。驚いただけで、びびりとか怖がりとか揶揄される風潮があるけれど、酷く心外だと思う。寧ろ大きな音を聞いて何の反応もないって生物としてヤバくないですか?きちんと耳掃除してる?五感の一つが鈍いとサバンナで生き延びれないよ!
よしよし、これだけ自己弁護を重ねれば俺の尊厳は無事守られただろう。これで守れないなら、意義ありってことで弁護士でも呼んで弁護して貰うしかアルデンテ。
「人目が多いのう。場所を変えようか。儂に付いて参れ」
結局、老人が踵を返して建築物の中へと入って行くまで、俺たちは静かについて行くことしかできなかった。
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アルタートゥームと呼ばれるこの世界でも最高最大を誇るこの建造物はヴルカーンと呼ばれているらしい。
明らかにこの世界とミスマッチのテクノロジーで形造られたアーチファクトリーの入り口を潜ると、静寂が支配する大広間と奥には二階へと繋がるであろう階段と扉が見られた。
「《似ているな。雰囲気‥‥というか、空気が。淡雪ちゃんが居たあの場所に》」
どうしてかあの白い空間を思い出してしまう……あれ?誰かに今視られてる。女の子は視線に敏感だが、龍もでしたか。上から見られてるが誰だろう。
空を仰ぐと思わず目眩を引き起こしてしまう程に只々高いという事を改めて思い知らされる。
「255階、あるみたいですよ」
こそりと姫が耳打ちしてくれた。ニーゼン鉄道の業務用階段が確か400階段分で11000段。その半分でも5000階段あると考えていいだろう。膝の軟骨と魂が1日で全部すり減りそう。
大広間の奥に続く階段へと向かう老人の靴が大理石の上でコツンコツンと音を小気味良く響かせている。
流石に何階も駆け上がるのは結構キツいだろう。姫も俺と同じ事を思ったのか、隣の玉藻ちゃんへ視線を寄越す。
「心配ない。上へ招いてくれる奴がおるからのう」
「《上に招く?》」
玉藻ちゃんに足早と老人の後へと続くと、姫も観念した様子でついて行く
「かぐや!!!」
一階エントランス中央付近で老人が突然足を止めたかと思うと大声疾呼で誰かを呼んだ。エントランス全体が震えるほど響き渡る声量が反響して何倍にも大きくなる。一つ言わせてくれ。他人の間近で大声を出すと大声が凶器として認定されて暴行罪が成立する場合があるらしいから、大声を出すのは控えるべきだと思う。
「‥‥‥ういーす。なんすかー?」
少しのタイムラグを置いて、老人の厳格な呼びかけに反応を示したのは、酸が抜けた清涼飲料水のように気が抜けている甘ったるい女性の声だった。女性の声は明らかに壁から聞こえてくる。流石異世界。壁が喋るのか。壁に耳あり、口もありってか。
「最上階の部屋を一つ使う。ゲートを開けろ」
「えぇーっ、めんど……。そんな睨まないで下さいよ。はいはいわかりましたよーっ。全くもう人遣いが荒いんだから」
大理石を偃月刀でドンドンと叩かれる事に嫌気が差したのか、声の主が渋々といった感じに了承すると、階段の先の大きな扉が開き、俺たちを包む様に光が照射される
「最上階の255階まで4名様と1匹ご案なーい」
光に包まれた姫の体が一瞬浮いた。姫だけではない。老人、切れ目、玉藻ちゃん。誰もが一様に重力に逆らい何かに引き上げられるようにフワリと持ち上がって扉に吸い込まれた。
「《え》」
窓からは最上階に相応しい荘厳な情景が広がっていた。強い光に呑まれ視覚情報が途切れたと思ったら、次の瞬間には部屋の中に全員が着いていたのだ。何をいってるかわかんないだろ。俺もわからん。
体験して何だが、何をされたのかわからない。もしかしたら、恐ろしい片鱗を味わったのかもしれない。
超スピードなのか。はたまた幻覚なのか
混乱している俺を他所に、ただの一人も取り乱すことなく全員が部屋に設置された高級そうな椅子にかける
「《お手洗いにいってきまーす》」
話し合いは、ルールとマナーを守って楽しくやりたいのだが、何処と無く空気が重苦しい。めんどくさいので退席して探検でもしようと姫の頭を離れたら、尻尾をがしりと掴まれた。
「どちらまで?」
「《あの、ちょっと、うん!うんこ!
しかも。アナコンダよりも太く、金魚のフンよりもキレが悪い、最悪なやつを、な!》」
「……」
「《……》」
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