龍王転生〜転生したら魔導師ってのに出待ちされてた件について〜

波動砲

文字の大きさ
113 / 141
龍王と魔物と冒険者

109話目

しおりを挟む
シュウがパチリと目を開けて最初に目に入ったのは知らない天井だった。

「ここ、どこだ…?」


まるで見覚えのない部屋。彼が上体を起き上がらせると怪我で僅かに身体が痛み、それと同時に此処に至るまでの記憶を詳細に引き出しながら整理していく。
ふと、かけられた毛布に重みを感じて、その箇所を見ると例の助けた女の子が頭を置いて寝息を立てていた。体の至る所に包帯が巻かれており、どうやら怪我の看病をしてくれていたようだ。


「そっか俺、この子を庇ってそれで……どれくらい寝てたんだ。いったい」


ふと窓の外を見る。今いる此処は随分と大きな建物らしい。外に広がる景色が巨大なバルディアを一望できたからだ。
状況がまるで理解出来ずに背中からは嫌な汗が流れ頭では警鐘が鳴り響く中、考えを巡らせ、そして止めた。害するつもりがあるなら、拘束もされずにこんな所にいるわけがないからだと思ったからだ。
彼女に毛布をかけた後に部屋の外へと出ることにした。あてもなく散策する。魔物たちの居住地にしては随分としっかりとして立派だと感じた。奥の部屋から光が漏れ出ていた。そして其処から聞き覚えのある冒険者たちの声がした。


(俺以外にもいるのか!?)


勢いよく扉を開けると其処には驚きの光景が広がっていた。
信じ難いことであるが、本来なら交わらない立場の冒険者と魔物たちが酒を呑み同じ釜の飯を食べ轡を並べてまるで友のように親交を深めていたのだ。


「おおっ!シュウさん、目ぇさましたんですね!ボナードさんから聞きましたよ!ハンチョーにやられたんですよね!あのヤロー」


「イートとフード?お前たちなんで生きて……」


「話すと長くなっちまうが、まあこの弟と一緒に戦ってたら俺たちマトローナ姐さんに気に入られちまって、こうして命拾ったわけさ。でもこうしてまた会えて嬉しいぜ。シュウさんよ」


「お前たちが面白いのは認める。けど勘違いしないで欲しい。さっきから言ってるがアヤメ様から殺すなって指示が降った。ただそれだけのことよ」


イートに姐さんと呼ばれた灰色の髪の少女マトローナはうんざりしたように溜息を吐きながら、蚊のように呟くが彼らの耳には入っていないようだった。シュウは嬉しい反面まるで手下のように彼女に酒を注ぐ彼らの様は何とも異様であるとしか言えず、戸惑わなかったといえば嘘となってしまう。


「んなツレねえこと言わないでくださいよ。ここにある料理ほとんど俺らが作ったんですぜ?飯タキでもザツヨーでも何でもしますんでおソバに置いてくださいって!」


「……さっきからこの調子なんだ。聞くところによるとお前の連れなんだろう。はやく何とかしろ!」


「なんとかしろって言われても……」


そんなマトローナたちの隣の席を見ると、通常の猪頭族オークよりも体躯が大きく鎧を着込んだ武人のようなオークシンドゥラが"頂きの塔"所属のブラウン班長と共に酒をあおるように呑んでいた。


「オレはこのバルディア一の酒豪だと自負していたが、そのオレとここまでやり合えるとはな。ドワーフというのも侮れん」


「まだ樽を3つ開けた程度で弱気ですなシンドゥラ殿。勝負はこれから、でしょう?」


「ふ ブラウン殿、今日はとことん飲むぞ」


はたまた隣では奇妙なアンデットのラーズと土色の小さな龍エウロバが"殺し回る狩人"のハイネ班長と班員のラオフェンと仲良くテーブルゲームをしながら歓談していた。


「へぇ。それでラーズさん枢機卿にまで上り詰めたのに殺されて塚人ワイトになったんだ!可哀想。」


「オマエタチ2人ノ生イ立チも同ジクライ悲惨ニ感ジタガナ」


「励ましてくれるの、エウロバ君めちゃくちゃ可愛い!なでなでしたげる!
そういえば、私の知り合いに従魔士の子がいるんだけど、エウロバ君の事絶対気にいると思うんだよね。紹介してもいい?」


「マア、好キニシロ」


「ウギギギ。罰ゲームで最下位が一つ自分のことを話す。これであわよくば慰めてもらえると思ったのに、なんで手前が撫でられてるんだ!許せぬ!許せぬぞ!エウロバァァァ!」


「血涙ヲ流ス程悔シガルナヨ……」


「そこまで言うなら仕方ありません。次のゲームでラーズさんが1番なら、この私ラオフェンが人肌脱いで、投げキッスしてあげます」


「嫁入り前の娘がそこまで!正気なのラオ!」


「余興ノゲームデソコマデヤルカ。冒険者恐ルベシ」


「吐いた唾は飲み込めぬぞラオフェン嬢。卓につけ。
吾輩、この一戦に魂を賭ける」


「賭ケルナ。アーカーシャ様ニ捧ゲロ」


はたまた隣ではウサギの見てくれをした森の薬師と呼ばれる魔物マギルゥと"嘘付樹"所属のウタ班長が席を共にしていた


「マギルゥさんのおかげであいつらが助かりました……
この御恩は一生忘れません」


「分かった。もう分かったから。その件り、もう6回目だから。だから、ほら、飲め。」


「いいえ!アナタは何も分かってない。僕にとってあいつらは家族同然なんです!もう一回話しますけど────」


「んがー!誰か助けてくれ!」


残った最後の席には黒の妖精アヤメと魔狼フェンリルと"怪物たちの檻"班長トーチカ。そして宝人族のボナードがいた。彼が自分の隣に座れと言わんばかりにポンポンと隣を叩く


「怪我の程度は大丈夫か?」


「思ったよりは……。
トーチカさんたちはどうして?」


「それは」


「僕が連れてきた。彼が"僕たちの王様"の友達だっていうからね」


王。その言葉にシュウは内心ギョッとした。全ての生き物は本能的に強い者に従うものだが、特に魔物たちはその傾向が強い。力の信奉者と言ってもいい。1人のリーダーの下に種を越えて団結する。かつての初代魔王に付き従った者たちのように。
この場にいる多種多様な魔物たちはそのどれもが特異である。魔狼などは特にその筆頭だろう。
そして強ければ従うとはいっても、時と場合次第では逆転してしまう程度の差ではない。絶対に敵わないと思わせる。つまり別次元の力量が無ければ成立しないのだ。
だとするなら、その者はいったいどれほどの────。


「新たな魔王、だとでも」


「アーカーシャ様が始祖天魔の眷属である魔王如きと同列に語られるのは癪ですが、まあそこはいいでしょう」


「如きって…」


「それよりも、問題はこれね」


アヤメが懐から手の平サイズに収まる綺麗な鉱石をテーブルに置いた。目にした事は無くても誰もが分かった。これが目的の物であると。


「龍脈の力を長年蓄え続けた鉱石マナジウム。カグラ様から与えられた知識で知ってはいるけど、狙いはコレね。」


「これが……。そうだ。それ目的で俺たちは此処にきた。けど荒事にするつもりはない。穏便にいこう」


「穏便ね。調べてみた所埋蔵されてる鉱床はかなりの量だった。それこそ数十年では掘り尽くせないほどある。ならどの程度渡せば満足する?1割?それとも半分?違うわよね。痛い目にあいたくなけれ全部寄越せ。
言葉を取り繕っても言っていることはそういうことだ」


アヤメは冷ややかに嗤った。まるで人の欲望を見透かすように。伏し目がちにトーチカも苦笑する。否定はなかった


「そうだな……」


「お前たち冒険者は他人の国から許可なく勝手に資源を奪うことは出来るのか?」


「いや、それは採掘権の許可を取ってから」


「それを我々にはしないの?」


「……」


「以前にアーカーシャ様から国家の三要素というものを教えてもらいました。その土地に帰属意識のある民と強制的に従える主権とその効力が及ぶ領土が在れば国として成り立つと。
で、あるならば、誰が認めなくても、今やこのバルディアは一つの国と私たちは考えている。」


「魔物の集団を国と認めるのは……」


「既に魔王という前例がある。彼らも元は魔物と一括りにされていた筈だが」


「……それは一冒険者である俺の口からは何とも言えないよ。難しい問題だ」


「欲しいから寄越せ。それは征服者のやり方だ。容認出来ない。力を示して屈服させてみろ。敗けたから奪われる。その方が俄然納得いく。」


「大勢死ぬぞ。さっきも話したが、"略奪者たちの王"はこういった金になる依頼は絶対に手を引かない」


「……」


ボナードが手を挙げる。何か聞きたい事があるかのようだ。
そしてシュウの方に向き直る。心なしか顔がほんのり赤くなっている。


「話は変わるが、一つ聞きたい事がある。お前妹のダイヤを護ってくれたみたいだな。その点に関して礼を言う。飲みながら聞け」


「あ。はい。まあ、そうですね」


「……お前ダイヤのことどう思う?」


「どう、とは」


シュウは酒があまり得意では無いが、断るのもあれなので酒に口をつけて答える。これなら結構いけるかもしれないと飲み始めた矢先だ。


「好き、なんだろ?あいつのこと」


「え?」


「どこまで、ヤッた?」


「ぶふぅぅぅーー!??」


寝耳に水どころでは無い。
びっくりし過ぎて酒を噴き出した。


「ほら見なさい。ボナード、お前ラブロマンス系の本を読みすぎなのよ。そんなことあるわけないでしょう」


「え?でも、ヒロインを助けた主人公が男女の仲を進展させた流れでそのまま一夜を共にするって」


「お前、今酔ってるな?」


「ぶ、くくく。なんだよ、お前。そういうキャラなのか」


重苦しい空気から嘘みたいに一転して全員が明るく笑う。
やれやれ、と呆れたようにアヤメも苦笑いを浮かべた


「酒の席で無粋な話をした私たちが悪いわね、これは。
先のことは明日考えましょうか」


「そうだな。」


「改めまして、バルディア代表代理アヤメ。
貴方たち冒険者を歓迎するわ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界の「内助の功」~掃除と料理を極めた俺が、脳筋幼馴染を女王にするまで~

ありゃくね
ファンタジー
前世の記憶が目覚めたそこは、男女の貞操が逆転した異世界だった。 彼が繰り出すのは、現代知識を活かした「お掃除アイテム」、そして胃袋を掴む「絶品手料理」。 ただ快適に暮らしたいだけのマシロの行動は、男に飢えた女騎士たちを狂わせ、国の常識さえも変える一大革命へと繋がっていく。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...