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プロローグ
4.執務室での合図
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午前11時30分。藍の執務室は、顧問弁護士との面談が終わり、静寂を取り戻していた。
怜は、藍が席を立つとすぐに、使用済みのコーヒーカップを片付け、新しいミネラルウォーターをデスクに置いた。藍は席に戻るなり、革張りの椅子に深く身を沈め、目を閉じた。
「疲れたな」
その声は、朝とは違う、張り詰めた緊張が解けた、素直な疲労を滲ませていた。怜は、ふと藍の腰元に視線を向けた。スーツのズボンは、完璧に着こなされている。しかし、怜にはその奥にある、わずかな違和感が感じられた。
(そろそろ時間だ……)
朝の交換から約5時間半。マニュアルでは、昼食前後の交換が推奨されている。もし、藍が席を立つことなく長時間我慢し続ければ、それは「失敗」につながる。怜はそれを恐れた。それは藍の「完璧な自己管理」が崩れることでもあり、怜自身の管理責任の放棄にも繋がりかねない。
しかし、怜から声をかけることは許されない。藍からのサインを待つしかない。
怜は、デスクの横に立ち、静かに待機した。藍は相変わらず目を閉じ、深く息を吐いている。
その時だった。
藍の右手が、上着のポケットにゆっくりと入った。そして、微かな金属音が、静まり返った執務室に響いた。
藍の指が、デスクの隅に、小さな銀色のクリップを静かに置いた。
カチリ。
それはあまりにもさりげなく、誰にも気づかれない、二人だけの秘密の合図だった。
怜の心臓が、ドクンと大きく脈打った。待ち望んでいた、そして恐れていた瞬間だ。
藍は、目を開けることなく、低い声で命じた。
「怜。午後の資料を、『交換』してくれ」
「はい、承知いたしました」
怜は一瞬ためらうことなく、落ち着いた声で返答した。この時、動揺を見せてはならない。プロの「付き人」として振る舞うこと。
怜は素早く執務室を出て、収納室へ直行した。昼間用の薄型、しかし吸水力に優れたおむつと、清拭に必要な用具一式を、誰にも見られないよう、黒い薄手のトートバッグに収めた。
執務室に戻ると、藍は既に、鍵をかけていた。
「入るぞ」
怜はノックをし、ドアを開けた。
室内の空気は、先ほどまでとは少し違っていた。藍は、椅子に座ったまま、ネクタイを緩め、スーツの上着を脱いでいた。シャツ一枚の姿になった彼は、怜に向かって静かに微笑んだ。
その微笑みは、怜が朝見た自信に満ちた表情とも、昨夜の無防備な寝顔とも違っていた。それは、全てを諦め、全てを委ねる、甘受の表情だった。
「ごめん。我慢の限界が来た。オンライン会議が長引いてな……」
「お気になさらないでください。すぐに済ませます」
怜は、手に持ったバッグをデスクの上に置いた。藍は、ゆっくりと立ち上がり、机の後ろの空間へ移動した。ここは、棚とデスクに囲まれた、死角となる場所だ。
藍は、ズボンのベルトに手をかけ、躊躇なくスラックスと下着を膝まで下ろした。
(っ……!)
怜は、再度、自分の憧れの先輩が、最も無防備な状態になるのを見た。
昼間用とはいえ、ズボンの中で膨らんだおむつが、怜の目に飛び込んでくる。それは、朝の交換時よりも、明らかに重く、そして強く熱を持っていた。
「頼む」
藍は、壁に手を付き、怜に背中を向ける形で、静かに立った。まるで、罰を受ける子供のように。
怜は、朝とは比べ物にならない緊張と高揚感の中、彼の前に跪いた。
怜は、藍が席を立つとすぐに、使用済みのコーヒーカップを片付け、新しいミネラルウォーターをデスクに置いた。藍は席に戻るなり、革張りの椅子に深く身を沈め、目を閉じた。
「疲れたな」
その声は、朝とは違う、張り詰めた緊張が解けた、素直な疲労を滲ませていた。怜は、ふと藍の腰元に視線を向けた。スーツのズボンは、完璧に着こなされている。しかし、怜にはその奥にある、わずかな違和感が感じられた。
(そろそろ時間だ……)
朝の交換から約5時間半。マニュアルでは、昼食前後の交換が推奨されている。もし、藍が席を立つことなく長時間我慢し続ければ、それは「失敗」につながる。怜はそれを恐れた。それは藍の「完璧な自己管理」が崩れることでもあり、怜自身の管理責任の放棄にも繋がりかねない。
しかし、怜から声をかけることは許されない。藍からのサインを待つしかない。
怜は、デスクの横に立ち、静かに待機した。藍は相変わらず目を閉じ、深く息を吐いている。
その時だった。
藍の右手が、上着のポケットにゆっくりと入った。そして、微かな金属音が、静まり返った執務室に響いた。
藍の指が、デスクの隅に、小さな銀色のクリップを静かに置いた。
カチリ。
それはあまりにもさりげなく、誰にも気づかれない、二人だけの秘密の合図だった。
怜の心臓が、ドクンと大きく脈打った。待ち望んでいた、そして恐れていた瞬間だ。
藍は、目を開けることなく、低い声で命じた。
「怜。午後の資料を、『交換』してくれ」
「はい、承知いたしました」
怜は一瞬ためらうことなく、落ち着いた声で返答した。この時、動揺を見せてはならない。プロの「付き人」として振る舞うこと。
怜は素早く執務室を出て、収納室へ直行した。昼間用の薄型、しかし吸水力に優れたおむつと、清拭に必要な用具一式を、誰にも見られないよう、黒い薄手のトートバッグに収めた。
執務室に戻ると、藍は既に、鍵をかけていた。
「入るぞ」
怜はノックをし、ドアを開けた。
室内の空気は、先ほどまでとは少し違っていた。藍は、椅子に座ったまま、ネクタイを緩め、スーツの上着を脱いでいた。シャツ一枚の姿になった彼は、怜に向かって静かに微笑んだ。
その微笑みは、怜が朝見た自信に満ちた表情とも、昨夜の無防備な寝顔とも違っていた。それは、全てを諦め、全てを委ねる、甘受の表情だった。
「ごめん。我慢の限界が来た。オンライン会議が長引いてな……」
「お気になさらないでください。すぐに済ませます」
怜は、手に持ったバッグをデスクの上に置いた。藍は、ゆっくりと立ち上がり、机の後ろの空間へ移動した。ここは、棚とデスクに囲まれた、死角となる場所だ。
藍は、ズボンのベルトに手をかけ、躊躇なくスラックスと下着を膝まで下ろした。
(っ……!)
怜は、再度、自分の憧れの先輩が、最も無防備な状態になるのを見た。
昼間用とはいえ、ズボンの中で膨らんだおむつが、怜の目に飛び込んでくる。それは、朝の交換時よりも、明らかに重く、そして強く熱を持っていた。
「頼む」
藍は、壁に手を付き、怜に背中を向ける形で、静かに立った。まるで、罰を受ける子供のように。
怜は、朝とは比べ物にならない緊張と高揚感の中、彼の前に跪いた。
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