君の無垢な檻(ケージ)

はるるん

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第一章 飼いならし

1.慣れと羞恥心

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 怜の生活は「付き人」の業務と、秘密の介助を中心に回るようになった。
 ​藍の「着用義務」は、週に数回ある長時間の会議や、移動の困難な出張時など、「失敗が許されない」状況で徹底されていた。その頻度は、初めのうちは週に2~3回程度だったが、怜が介助に慣れ、藍がその完璧さに依存し始めるにつれて、徐々に増えていった。
 ​執務室での交換は、今や二人にとって日常の儀式と化していた。
 ​ある日の午後。
 藍は、海外支社とのテレビ会議を終えたばかりだった。疲労と集中力の反動か、藍はデスクで深く椅子にもたれかかり、疲れた顔でクリップの合図を出した。
 ​「怜。頼む」
 ​いつものように、怜はドアに鍵をかけ、静かに藍の前に跪く。
 ​藍は、ズボンを下ろすと、少し恥ずかしそうに顔を背けた。以前は無表情だったが、怜が慣れてきたことで、藍の中の羞恥心が逆に出てくるようになっていた。
 ​(先輩は、俺に甘え始めているのか……)
 ​怜は、藍のおむつを引き抜いた。その瞬間、藍が小さく呻き声を漏らした。
「……っ、今日は、ちょっと熱いな」
 ​「申し訳ありません。すぐに冷やします」
 ​怜は、濡れたタオルで素早く、しかし優しく清拭を行った。藍の肌は熱を持ち、怜の指先が触れるたびに、びくりと震える。その振動が、怜の心臓に直接伝わってくるようだった。
 ​「俺が、こんな風に、他人に体を晒して世話をされるなんてな……」
 ​藍は、悔しさと諦めが混ざったような声で呟いた。
 ​「俺も、まさか、藤堂におむつを交換される日が来るとは思わなかった」
 ​その言葉は、怜にとっては強烈な特権の再確認だった。この行為は、単なる介護ではない。それは、絶対的な主従関係の構築であり、秘密の共有が生み出す、異常なまでの親密さだった。
 ​「先輩が、俺をここに置いてくれたからです。これは俺の職務です」
 怜は、あえて「職務」という言葉を強調した。
 ​「職務、か……」
 藍はそう言って、天井を見つめた。
 ​「でも、お前の手は、職務にしては、優しいな」
 ​藍の言葉に、怜の胸がドクンと鳴った。
 ​その手で、清涼感のあるクリームを藍の敏感な部分に塗り込む。その動作一つ一つが、怜にとっては、藍の無防備な核心に触れることだった。
 ​(優しい? それは、俺が先輩を大切に扱いたいからだ)
 ​その感情が、単なる「憧れ」や「義務感」ではないことを、怜は自覚し始めていた。それは、藍の弱さを愛でるような、歪んだ愛情に近いものだった。
 ​新しいおむつをつけ終え、藍がズボンを上げている間、怜はふと気がついた。最近、藍は、交換が必要ない時でも、クリップの合図を出すことが増えていた。それは、単に「気持ちをリセットしたい」という理由だったが、怜には、藍が「怜に触れてほしい」と求めているように感じられた。
 ​(先輩は、俺の奉仕に、飼いならされ始めている)
 ​怜は、使用済みのものを片付けながら、そんな確信にも似た感情を抱いた。この関係は、もう引き返せないところまで来ている。
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