君の無垢な檻(ケージ)

はるるん

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第一章 飼いならし

2.週末の誘い

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 ​藍の生活に深く入り込むにつれ、怜は藍の「完璧さ」が、いかにこの秘密の上に成り立っているかを痛感していた。外では一分の隙も無い実業家だが、家にいる藍は、徐々に怜に対して無意識の依存を示すようになっていた。
 ​週末。藍は基本的に自宅で過ごすことが多かった。普段は滅多にしないカジュアルな服装で、リビングのソファに深く腰掛け、書類に目を通している。
 ​「怜、ちょっといいか」
 ​藍が声をかけた。
 ​怜が近づくと、藍は視線を書類から上げることなく、小さな声で呟いた。
「今日の夜、急な来客があるかもしれない。取引先の人間だ」
 ​「承知いたしました。何かご用意するものはありますか?」
 ​「ああ。で、『着用義務』だが……」
 ​藍は、わずかに眉をひそめた。
 ​「来客がいる間は、絶対に席を外せない。だから、完全に防備しておきたい」
 ​藍は、言葉を選んでいるようだった。「完全に防備」とは、より吸水量の多い、厚手のおむつを着用したいという意味だ。
 ​怜は、藍の要求に、妙な満足感を覚えた。藍が、他人との接触という社会的な緊張を乗り切るために、自分(怜)の介助による「白い鎧」を必要としている。
 ​「承知いたしました。来客の30分前に、交換の合図をいただけますか?」
 ​「ああ。……いや、待て」
 ​藍は書類を脇に置き、怜の目を真っ直ぐ見た。
 ​「来客の前に、一度風呂に入りたい。お前もだ」
 ​突然の提案に、怜は戸惑った。
 ​「俺も、ですか?」
 ​「ああ。お前、いつも汗を流して働いているのに、シャワーだけで済ませているだろう。風呂に入れ。ついでに、俺の介助も頼む」
 ​藍の自宅には、大きな浴槽と、広々としたバスルームがあった。しかし、入浴時の介助は、マニュアルには記載されていなかった。
 ​「お風呂、ですか。あの、どこまで介助を……」
 ​藍は、ふっと笑った。その笑みは、どこか悪戯っぽい色を帯びていた。
 ​「どこまでって、全部だ。着替えから、最後の仕上げまで、全部な」
 ​「最後の仕上げ」が何を意味するか、怜にはすぐに理解できた。つまり、入浴後、誰にも見られずにおむつを着用させること。それは、これまでで最も親密な状況での介助になる。
 ​「……わかりました」
 ​怜の心臓は、激しく鼓動していた。風呂場という密室。裸の先輩。そして、自分の手による着用義務。
 ​「じゃあ、午後7時に風呂場に来い。準備しておけ」
 ​藍はそう命じると、再び書類に視線を戻した。しかし、その耳が、わずかに赤くなっているのを、怜は見逃さなかった。藍もまた、この新しい儀式に対して、多少なりとも緊張と期待を抱いているのだ。
 ​怜は、これから訪れる密室での介助を想像し、乾いた喉を鳴らした。この関係の支配構造が、また一段と深まろうとしている。
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