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第2章 「君を愛することはできない」と真実の愛を貫いたら全てを失いました……愛ってなんだろう?

第7話

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「すまない……今はこれが精一杯」
「ううん、とっても嬉しいわ」

 王都から少し離れた湖畔に、ひっそりたたずむ小さな教会で二人だけの式を挙げることにした。


「それに、湖畔の教会は趣があって素敵よ」
「私は本当に情け無い男だ」

 普段着で式に臨むカミアに己の不甲斐なさを呪いたくなる。
 ああ、せめてカミアに純白のドレスを着せてあげたかった。


「もう、大事なのは私達の愛でしょ?」
「カミア……絶対に幸せにしてみせる!」

 私達は手に手を取り合って教会へと足を進――

「ちょぉっと待ったぁ!!!」

 ――もうとして待ったをかける聞き覚えのある声。


「「モ、モリカ(様)!!!」」

 振り向けばヤツがいた!?

 なんと私の元婚約者モリカ・イルノアがにっこり笑って立っていたのだ‼

「ど、どうして君がここに?」
「シナーフ様がご結婚されると耳にしまして――」

 えっ、どこから情報を得てるの?

「――みなさんと一緒にやって来ましたの」

 しかも、背後にずらりと令嬢が並んでいるんですけどぉ!?

「『キシュホーテ貴腐人の会』一同で『真実の愛…その後観光ツアー』を組んで」
「なんだその怪しげな会と聞き捨てならないツアーは!」
「お二人の愛の目撃者として私達すっかり意気投合しまして」

 よく見ればみんな婚約破棄の時に中庭で見た顔触れではないか!

「真実の愛をあまねく世に知らしめる『キシュホーテ貴腐人の会』を創設いたしましたの」
「まさか知らしめる真実の愛と言うのは⁉」
「もちろんシナーフ様とカミア様の崇高な愛!…ですわ」

 完全なさらし者じゃねぇか⁉

「なんせ貴腐人達の間でお二人は常に話題を独占しておりますから」

 背後の令嬢達も祈るようなポーズでウンウンと頷いているが……

「平民となった私達の話題など面白くもないだろ」
「何を仰います、地位を捨ててまで貫かれた真実の愛こそ語り継がれるべき伝説!」

 やめてぇ!
 語り継がないでぇ!

「キシュホーテの貴腐人でお二人の愛を知らぬ者はモグリですわ」
「どこまで話が広まってるんだ!?」
「私達が伝道師となって広めておりますから……国中?」

 お願い広めないでぇ!

「お二人の美しい愛を描いたアイノ・リカルモ先生の薄い本を使って」

 令嬢全員がばっと手にした薄い本……贈呈ですと渡された表紙は咲き誇る薔薇の中で抱き合う私とカミアに似た男女(?)のイラスト。

「もちろんヒーローのモデルはシナーフ様でヒロインはカミア様ですわ」

 それヒーローじゃなくてピエロだろ!

「モリカ会長、どちらもヒーローなのでは?」
「カミア様を攻めにしても面白いと思いますわ」
「何を言うの。シナ×カミは絶対正義ですわ」
「あら、カミ×シナも斬新でよくありません?」
「絶対シナーフ様が左側です!」

 令嬢達が何かよく分からん用語で盛り上がっているが、これだけは分かる……腐ってやがる。
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