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1話
しおりを挟む告白されればそいつをことを自然と気にするようになる、というのは本当だ。
高2の春、同じ部活のひとつ下の男に告白された。後輩から告白されたことも初めてだったが、何より同姓のやつに告白されたことが驚きだった。
同姓にもかっこいいと褒められたことは何度もあったし、身長も高く、女子からも別に人気がなかった訳ではない。それでも、男からも好意を寄せてもらえる程の魅力があったんだな、と少し嬉しくなった。
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「祐希さん、俺、1番好きな先輩って聞かれたら祐希さんって答えようと思ってます。」
全てはこの言葉から始まった。
俺たちが所属する部活は、結構な強豪だった。全国常連、そのスポーツをしている者ならば、俺たちの高校の名前を知らないやつはいないんじゃないかってほどだ。
そんな部活だが、新入生歓迎会では毎年変な恒例があった。
それは、「先輩からの質問コーナー」だ。
新入生歓迎会が行われるのは5月の末で、4月から入学して部活に参加している1年生にとっては、まだ先輩たちは遠い存在なのかもしれない。先輩との距離を縮めるために作られたものらしいが、肝心の先輩たちからの質問の内容といえば「1番怖い先輩は?」とか「優しい先輩ベスト3」なんかだ。
後輩からすればたまったもんじゃない。俺の時もあったが、嫌な質問をされて泣いているやつもいた。(どんな質問だったかは忘れた)
新入生歓迎会は、ホテルのビュッフェを貸し切って行われる。俺はサラダを盛り付けながら、1年生が気の毒だ、と考えていた。すると1年生の七瀬が話しかけてきた。
「俺がやりましょうか?」
意外だった。それまでの2ヶ月弱、ほぼ話したことのない後輩だった。特別後輩と仲良くするタイプでもなかったが、後輩とはそれなりに話すようにしていた。ただ、七瀬とはあまり話してこなかった。苦手だったからだ。
七瀬の母親が監督の教え子らしく、随分前から推薦入学が決まっていたらしい。それに伴い何度も練習を訪れていたようで、先輩からも監督からもかなり気に入られているようだった。
俺には厳しい先輩でも、七瀬には優しくする。嫌いとまではいかないが、あまり関わりたい存在ではなかった。だから避けていたのだ。
なんで急に話しかけてくるんだ、と思った。
「自分のだしいい。保護者のとかを入れてやって。」
後輩に向かって大人気ない、ぶっきらぼうな返事だったと思う。
すると七瀬は俺に向かってこのセリフを言った。
「祐希さん、俺、1番好きな先輩って聞かれたら祐希さんって答えようと思ってます。」
「え?俺?」
大して話したこともない、少し苦手だった後輩に、1番好きな先輩と言われる意味がわからなかった。手を止めて七瀬を見る。七瀬はいたって真剣な顔をしていた。
「はい、俺、祐希さんにめっちゃ憧れてるんすよ!かっこいいじゃないすか、1年からレギュラーで、めっちゃクールで!」
クールというのは、幼い頃からよく言われた言葉だ。でも俺はクールじゃない。ふざけるのが大好きだし、普段はおちゃらけていると思う。ただ、プレー中に喜びを顔に上手く出せないだけだ。
「クールじゃない。てか、お前全然喋ったことないじゃん。なんで?」
「え、わかります?目の保養?てか、憧れってか、とにかく!俺は1番祐希さんが好きなんすよ!」
「あ、ありがとう…」
俺はなんて言えばいいのかわからなくなって、急いでサラダを盛り付け自分の席に戻った。席に戻ってからなんでだろうともう一度考えたが、思い当たる節がなくてやめた。
結局、七瀬への質問は「好きな先輩」ではなかった。俺はホッとしたような、残念だったような変な気持ちになった。
帰り際、七瀬が「残念だったすね、ちゃんと祐希さんっていう準備してたのに」なんて話しかけてきた。なんて返したのかは覚えていない。ただ、苦手意識を持っていたやつに好意を向けてもらっていたことを申し訳なく思ったのはよく覚えている。
その日から俺は、七瀬がなぜ俺を1番好きな先輩と言ったのか考えるようになり、自然と七瀬を意識するようになった。
もちろん、恋愛対象としてではなかったが。
事が大きく動いたのは、夏。
俺たちは2人で遊ぶことになった。しかも、俺からの誘いで。
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