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2話
しおりを挟む新入生歓迎会以来、七瀬は俺によく話しかけてくるようになった。一方で俺は、少し苦手意識を持ったままだった。しかし好意を向けてくれる人に対して、半端な態度はしてはいけないと、俺の中の良心が働いた。おかげで少しはましな態度をとるようになっていた。
七瀬は犬みたいなやつだと思った。
俺と話している時はまるでしっぽを振っているかのような喜びようだ。逆に俺が無意識で素っ気ない態度をとってしまったあと、ふと七瀬を見ると凄く落ち込んでいるのがわかる。
ほんとに、俺を慕ってくれてるんだな。
段々と七瀬の観察が日課になり、七瀬を面白い、可愛らしいと思うようになった。俺が七瀬に抱いていた苦手意識はただの妬みだったんだと気づき、恥ずかしくなった。
6月の中旬、練習試合があった。
俺はスタメンで、殆どの試合に出場した。一日の終わりになるにつれて身体が思うように動かなくなってくる。
「祐希さん、大丈夫ですか?疲れてるように見えますけど。チーム1走るの早くて体力お化けって言われてるのに、一日中試合してたらやっぱ疲れるんすね!」
「はぁ?俺そんなこと言われてんの?」
七瀬は疲れている俺を冷やかしに来たのか、それとも気を紛らわせてくれようとしたのかわからなかったが、少し身体が軽くなったような気がした。
七瀬は1年生ということもあり、試合にはほとんど出ていなかった。一日中立ちっぱなしで審判の方が疲れそうだ。
ラストの試合前の集合で、レギュラーのほとんどが交代するよう告げられた。恐らく疲労しているのが見え見えだったのだろう。俺も交代だった。
代わりに入るメンバーが告げられる中、七瀬の名前が上がった。活躍するチャンスじゃないか、と声をかけようと七瀬を見ると、なんだかビビっているような顔をしていた。
「七瀬、ビビってんのか?」
「…俺、スタメンで出るの、高校入ってから初めてです。所詮練習試合ですけど、めちゃくちゃ緊張します。祐希さんにはわかんないですよね。」
七瀬はそう言ってからすぐにしまったという顔をした。
こいつ、意外とメンタル弱いのか。新しい一面を見れたと思った。
「俺も別にずっとレギュラーだったわけじゃない。緊張もするし、上手くいかないことの方が多いよ。でもせっかくもらったチャンスは思い切りやんないとな。」
我ながらいいことを言ったと思う。七瀬の顔が少し明るくなった。本当に分かりやすいやつ。
俺はほんの出来心で、どんな顔をするのだろうと興味本位でこんなことを提案してしまった。
「お前がこのセット大活躍だったら、次の土曜の午前練習の後2人でどっか行く?」
七瀬の顔がパァっと明るくなった。
「ほんとですか!?後からなしなんて言わないでくださいよ!俺、頑張りますから!」
ちょっと七瀬にやる気出させるつもりが、とんでもないことを言ってしまったのかと少し焦った。
七瀬はそのセット、見たことないようなプレーを連発して、大活躍だった。監督もコーチも周りのやつらも驚いていた。七瀬がまさか、俺と遊ぶためにこんなに力を発揮できるなんて思わなかった。
参ったな。俺から提案したものの、こんなに大活躍だと逃れようがない。帰りの駅までの道で、七瀬は「来週行きましょうね」と満面の笑顔で話しかけてきた。
来週の土曜、何しようか。
その1週間は、嫌でも七瀬のことを考えなきゃいけなかった。
けれど運悪く(?)、次の土曜は一日練習に変更になり、その次の週は合宿となり、結局俺たちが2人で遊ぶのは3週間後となる。
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