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3話
しおりを挟む「祐希さん、今日はやっと遊べますね!」
朝の第一声がそれで、俺は頭を抱えた。
あれから3週間、俺は七瀬と2人で何をすれば良いのかあれこれと考えたが良い案が浮かばず、結局ショッピングモールに行くことにした。
その日の午前練習では七瀬は一段と調子が良かった。一方俺は「集中しろ」と怒鳴られる始末。何が違うって言うんだ。
練習後、皆が帰って行く中俺たち2人は最後まで残り、1番最後に体育館を出た。
七瀬は、2人きりになってから急にたどたどしくなった。その態度に、こっちが気まずくなる。
「七瀬、あんなに楽しみにしてたのにどうしたんだ。」
「…緊張してます、めちゃくちゃ。上手く喋れなかったらすみません。」
顔を赤らめて話す七瀬に、こいつ俺に恋愛感情を持っているんじゃないかと思った。これが初めて、七瀬の感情を感じ取った時だった。
不思議と引くとかそういう感情は一切なく、ただなんで?と思った。俺は男だし、好きになる要素も特に思い当たらない。
「七瀬、顔赤い。」
俺がそういうと、七瀬は顔をカバンに埋めて隠した。これは完全に、図星だろ。
不覚にも、照れる姿を可愛いと思ってしまったことに少し焦る。
ショッピングモールの最寄りの駅まで、七瀬はずっと顔を埋めたままだった。一言も発さない。なんだこいつは、と若干呆れていた。
特にしたいこともなかった俺たちは、ただブラブラと服なんかを見て回った。終始緊張していた七瀬だが、後半は頑張って話しているようだった。
することがなくなりモール内のカフェで駄弁っていた時、七瀬が急にお願いがあると言い出した。
「何、お願いって」
「…俺と、写真撮ってくれませんか!」
「写真?いいけど」
そんなこと、わざわざお願いだなんて言わなくてもなんぼでも撮ってやるよと笑うと、七瀬はよっしゃー!と大きな声を出した。
写真を撮る時七瀬は相当緊張していたようで、写りが悪かったみたいだ。俺が写真を送ると、俺ぶっさと呟いていた。
「祐希さん、俺、写真じゃ写り悪いみたいで、プリクラ撮ってくれません?」
「は?」
正直この提案にはかなり抵抗があった。男二人でプリクラなんてどんな状況だ。けれど七瀬の顔を見ると、断りづらくなって結局撮ることにした。
プリクラは写りが良かったようで、その後はすごく上機嫌だった。祐希さん、このプリクラ一生の宝物にしますね!なんて喜んでいる。今見直すと、微妙な距離感がなんとも言えないプリクラだった。
その後は適当にUFOキャッチャーなんかをして時間を潰した。そろそろ帰るか、とゲームコーナーを出ると、宣伝をしている映画(最終興行収入2位となったあの有名なアニメーション映画)があり、ふと立ち止まった。
「祐希さん、これ興味あるすか?」
「うん、これは観たいと思ってる」
「俺と見に来ません?」
驚いて七瀬を見ると、また顔を赤らめてはいたが、真っ直ぐにこちらを見ていた。今日一日緊張していたやつが、こんなにも頑張って俺を誘ってくれていることに少し嬉しくなった。
「いいよ、また2人で来よう」
俺がそういって笑うと、七瀬はさらに顔を赤らめて手で顔を覆った。
ショッピングモールを出て駅まで歩いていると、七瀬に腕を掴まれた。
「びっくりした、汗かいたんだし汚いぞ」
「そんなこといいんです、祐希さん今日はありがとうございました。俺、めっちゃ態度悪かったですよね。すみません。俺ね、今日半日憧れの人と過ごせるってわくわくして昨日も全く寝れなかったんです。俺が緊張してるの見て、祐希さんがリードしてくれてんの感じて、申し訳なさと嬉しさでぐちゃぐちゃでした。俺今なら後悔なく死ねそうです!」
「…遺言?」
「違います!死なないっすよ!ただ俺、ほんとに勘違いしそうで!」
「何が言いたいのかよくわからんけど、とりあえず俺も楽しかった。ありがとう。次の時はちゃんと喋ってくれよ。」
七瀬は「次」という言葉に少し顔を赤らめ、頑張ります!と意気込んだ。
七瀬と別れ、1人になった電車で、俺は自分がふわふわとしていることに気づいた。まるで、恋をしている時みたいな感覚だ。
まさかな、と思いながらも、自分に向けられた真っ直ぐな好意に喜んでいる自分がいるのも事実だった。
俺はその日の夜、全く眠れなかった。
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