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4話
しおりを挟む2人で遊びに行った日から、七瀬は俺にさらに話しかけてくるようになった。
以前まであまり話していなかった先輩後輩が急に仲良くなれば周りも不自然に思うようで、「お前ら急に仲良くなったな」と言われることが多くなった。
それに対して、七瀬はすごく嬉しそうだ。
「はい!俺が祐希さん大好きなんすよ!」
いらんことを言うな。
高校から最寄りの駅まで七瀬と一緒に帰るようになっていた。
同期の1人が、「お前らできたんじゃないのか」なんて冷やかしてきた。七瀬がすかさず「俺の片思いです!」と言う。俺が恥ずかしくなった。
ある日の練習終わり、駅に着いて別れを告げる際、七瀬が訳の分からないことを言い出した。
「祐希さん、なんで俺たち帰る方向が逆なんでしょうか。」
「は?知るか。」
「俺も祐希さんと一緒に電車で帰りたかったです。」
「はいはい、また明日な。」
俺が背を向けるとすぐに、七瀬が俺を腕を掴んだ。こいつはすぐ腕を掴むな、と苦笑しながら振り返る。
「汗かいたから汚いぞ。」
「…祐希さん、それ前も言ってました。」
「あぁ、あの時な。いいから、手、離せ。」
「嫌です、だって、離したら祐希さん帰っちゃうでしょ」
七瀬は顔を俯けながらごにょごにょと言った。夕日が逆光となり表情が見えない。俺が顔を覗き込みながら「どういうこと」と返すと、七瀬は少し顔を上げた。
「もうちょっと喋りませんか。」
ホームのベンチに同じ方向を向いて2人で座り、暗くなるまで話した。電柱に虫が集まっている。
話すと言っても、七瀬が俺に質問するばかりで俺は質問にしか答えていない気がする。それでも七瀬は満足したようだ。
その日の夜、俺はベッドに寝転がりながら掴まれた腕を見ていた。あいつが俺のことを好きなのはわかった。けどそれは先輩としてという意味じゃないのか。恋愛として、俺の事を好きになるだろうか。
もし、恋愛として好きだったら、俺はどうすべきだ。別に嫌ってわけじゃない、けれど俺は七瀬のことをそんな風に見れるんだろうか。
あーだこーだと考えていると、携帯がなった。七瀬からだった。
通知の文面を読んで、顔が熱くなるのがわかった。
「祐希さんが好きです」
「直接言おうと思ったけど無理でした」
「別にどうなりたいとかじゃないです」
「忘れてください」
今日、直接告白するつもりだったんだろうか。
というか、「忘れてください」ってなんだ。俺はどういう返事をしたらいい。
顔が熱い。思考が追いつかなかった。どうすべきなんだろう。
ずっと天井を見つめながらどう返すべきかを考えていたが、結局寝落ちしてしまっていた。
朝に返すつもりだったのに、寝坊したせいで携帯を触る時間がなかった。最悪だ。これじゃ無視してるみたいだ。
俺たちの学校は携帯が持ち込み禁止だったため、結局七瀬に顔を合わすまで返信できなかったことになる。
部活前、七瀬と顔を合わせたが、七瀬は話しかけてこなかった。部活中も全く話しかけてこない。(そもそも部活中に話すタイミングはそれ程ない)
部活後、俺はいつも通り七瀬と駅まで帰るつもりで支度をしていた。しかし、七瀬が下級生に混じって「お疲れ様です」と帰って行く姿が見えた。
どういうつもりだ。
俺は急いで帰り支度をし、体育館を飛び出した。
思えば、話しかけるのはいつも七瀬からだった気がする。俺からあいつに何かしてやれていただろうか。あいつは俺に緊張しながらも必死に俺と関わろうとしたんだ。けれど俺はいつも受け身だ。勇気を出して伝えてくれた想いを、あいつの気持ちを踏みにじっちゃダメだ。
七瀬の後ろ姿が見えた。
俺は七瀬の名前を呼んだ。
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