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貰ったモノ
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「気をつけてな~」
と父はいつも通りのいってらっしゃいをする。「はい」
俺も同じく素っ気なくいってきますをする。バス停まではだいたい徒歩で15分くらい。いつも7時20分発のバスで高校に通っている。しかし「眠い、ダルい、めんどくさい」こいつらは、気持ちのいい朝を台無しにしてくれる。
バス停に着くといつもとおんなじだ。同じ高校の生徒に、よく見るおじさん、OLとかいろいろ。
「ダァ~」
俺は崩れ落ちるように椅子に座る。
「抗太郎、またダルそうだなぁ」
数少ない友人が声をかけてきた。俺とこいつはまともにあいさつなんてしないのだ。
「当たり前や~ん」
とスマホをいじっている友人に愚痴でも言わんばかりの勢いでこれまたダルそうに言う。
「ハハッ」と友人は鼻で笑ってくれる。
ブゥーン、ブーブゥーン。
「おっ、バイクだ。暴走?」
「んなわけないだろ」
大抵、バカみたいなことを言うのは俺だ。こんなふうにくだらない会話を毎日している。
(いつか飽きるんだろうな~)
そんなことを考えながら話しているとバスは予定通りに来てしまう。大幅に遅れてくれたら学校短くなるのになぁ~。
バスに乗ったらまず椅子に座って、隣にカバンを置く。それからカーテンを閉めてスマホを取り出す。あとは学校に着くまでスマホをいじったりボーッとしたりするだけ。勉強はしない。ちなみに通っているのは島の高校だから、着くまでに結構時間がある。
『なんとかクリアしましたね!マネージャー!』
そう画面の中から、黒髪ロングのアイドルが俺に笑顔で話しかけてくる。
(おっ、レベル上がった。うっし!!ゲームっていいよな~。)
現実ではこんな見た目で全くモテないが、二次元や妄想なら俺は…とまぁ、こんなふうにアニメとかマンガが大好きである。
(趣味聞かれた時、これ言いづらいんだよなぁ)
そんなことを考えながらふと前を見ると、学校まであと半分もない所まで来ていることに気がついた。スマホさえあれば時間が経つのはあっという間だ。
(さて、続き続き)
特にワクワクすることなく、スマホに目を送った瞬間、
「ドゴンッ、バリバリーッガンッ、ドガッ、ガジャーン!!!」
一瞬だった。何でかはわからない。自分の乗っているバスが大きく吹き飛ばされたんだろう。そんな気がする。
けれど、そんなことはどうでも良かった。
多分、沈んでいるのだろう。
ああ…落ち着く。 とてもが心地いい…。
どこか涼しくて、とても暗い。目を開けているのかすら分からないほどに。
『キ……ミ…ノ』
(何だ?何か聞こえて…)
『キ…ミノ…ホ…シィ…』
「えっだ、誰だ?」
確かに何か聞こえる。 誰かの声。
男の子か女の子かよく分からない。
幼いこどもの声。
『キミ…ノ…ホ…シイモ…ノハ…ナ…ニ?』
少しノイズのようなものが入ってくるが、聞き取れないほどではない。
「欲しい“モノ"?」
『キ…ミノ…ホ…シイ…モノ…ハナ…ニ?』
「君の欲しいものは何か」そう誰かが尋ねてきている。
(俺の欲しいもの…?)
分けがわからない。なぜそんなことを聞いてくるのか?いったい誰がしゃべっているのか?
それに、俺の欲しいものって…なんだ?
さっきまで落ち着いていた頭がぐちゃぐちゃになっていく。
何だ? 何が? 何を? …?
混乱している俺に痺れを切らしたのか、また同じ質問が飛んでくる。
『ホシ…イ…モ…ノ…ハナニ?』
欲しいもの。
友人?いや、片手で数えれるくらいだがちゃんといる。彼女?いや、できたとしてもどうせ嫌われる。裏切られるに決まっている。ならやっぱりお金か?金さえあればしたいことは何でもできる。けれど、それでいいのだろうか?俺は楽に生きれさえすれば正直それでいい………そうか!それでいいんだ!俺の欲しいものは
「俺の欲しい“モノ”は…何でも楽にこなせる力だ!!」
そして、それを聞いた誰かが
『ジャ…ア…コ…レ…アゲ…ル…ネ。』
真っ暗でよく見えない。でも、なんとなく腕を体の前に出した。少し光って見えた気がする。
紫色?の糸?みたいなものに俺の出した手のひらが触れた。 視界が何かに染まった…
俺は仰向けになっていた。
白い天井、横からは光が射している。
「んっ、まぶしい…」
(病院…?えっ…?)
一瞬混乱したがこういう時は大抵、病院だろう。
普通ならここで起き上がるんだろう。けれど、俺は簡単にそれができない。ケガをしているわけでも、体が麻痺して動かないというわけでもない。これは中学生時代からなんだが、朝目を覚ますとなぜか頭が痛いのだ。だから、起き上がるのは目を覚ましてから4、5分経ってからだ。
(ほぼ毎日なのに慣れないなぁ~)
と、いうことで早速ナースさんをお呼びしますか。キレイな美女来い!!!とか念じながらナースコールのボタンを親指でしっかりと押す。
すると、あらビックリ真珠の如くひかり輝く頭のおじさんっぽい美女が来てくれましたー。そして後ろにはベテランの看護婦さんっぽい人が…。
(いやっ、別に期待はしていなかったよ?そんなことあったりしてーって思っただけだから。本当だよ?)
「おぉ…目を覚ましたのか!!!良かった…良かった…」
体から力が突然なくなったように、ひざから崩れ落ちるおじさん。目には涙浮かばせている。後ろのベテランさんも喜んでいるようだ。
「あ、あのー…」
「あっ、くっ、すまない。泣くような立場ではないな私は。」
そう言いながら雑に目を拭いている。
(えー、そんな泣くほどじゃなくない?)
「フー。起きたばかりだろうがいくつか質問させてくれ。」
息を整えてそう言った。
(いきなり医者らしくなったな。)
「あーはい。」
「ではまず、君の名前と生年月日は?」
「えー、渡村抗太郎…で2023年9月6日生まれです。」
「よしっ、ここはどこかわかるか?」
「病院?」
「そうだ、なぜ君がここにいるかわかるか?」
そういえば、そうだ。驚くほど普通に受け入れていた。
「えーっと、確かバスに乗ってていきなりガシャンって。」
(ああ、そうだ!事故だ。それでバスが…って俺、よく考えたら無傷!?あれっ?そういや…)
俺は自分の右手を見た。しっかりと覚えている。あの吸い込まれるような暗さと、気持ち良さ。
そして……声、紫の糸。
混乱しているような俺を見て、医者は優しそうな声で
「あぁ、君の乗っていたバスは土砂崩れに巻き込まれたんだ。そしてバスは勢いよく飛ばされた。結果、抗太郎くんは意識を失ってこの病院に運ばれた。3日前にね。無傷だったのが何よりも幸運だ。」
俺はふぅ~んとでも言うように頷く。正直どんな反応が正解なのか分からない。それに、それを聞いてまた新たな疑問がわいてきた。
(バスが勢いよく飛ばされるような事故で無傷?意識を失っていた?なら、あの時見たのは?それに他にバスに乗っていた人は?)
余計に混乱してきた。シートベルトはしていなかった。だから多少なりとも傷の一つや二つは付いているはずだ。
「さすがに混乱するだろう。まぁ難しい話は後にして、とりあえず飯でも食べるといい。腹減っているだろう?」
「ああ、はい少し。」
(よくわかったな。このおじさんはエスパーか何かだろうか。)
医者のおじさんは後ろの看護婦さんに「抗太郎くんに温かいご飯を」と言って
「少し待っててくれ。すぐに飯を持ってくるからな。」
そう言いながら二人とも病室から出ていく。
(あっ、そういやあいつは無事か?)
数少ない友人のことをすっかり忘れていた。
(まっ、どうせ大丈夫か。ていうか俺、3日間くらい意識なかったのか?やべ……)
俺は甘かった。
現実はそう上手くはいかないことを、よく知っていたはずなのに。
それからご飯を食べた。食べてる途中で父親が来た。姉は来ていない。仕事だろう。
「おおっ抗太郎良!かった~無事で。ご飯美味いか?」
「うん、まあ。」
「ハッハッハッ、そうかそうか。もう驚いて腰抜かしたぞ事故って聞いて。」
と、父親はしゃべってくる。
この人は嬉しいと思っているだろうか?それともその逆か。いや、葬式をせずにすんだから嬉しいのだろうか?
こんなふうに父と話して、医者と話して、いろいろ質問責めされてめんどくさかった。それから警察が二人来た。別に何か犯罪を犯したわけじゃないが妙に緊張した。
覚えている限りの事故当時の状況とかを聞かれた。すると一人の刑事さんが
「しかし、本当に悲しいですね。」
「まさか生存者が一人だけとは…」
「アハハハ……」
俺は反射的に苦笑いしてしまった。
「まあでも、君だけでも生きててくれて良かった。全員死亡なんて悲しすぎますから。では、我々はこれで。また何かあったら伺います。お元気で。」
「はい、ありがとうございました。」
二人が出ていった。
ひどく悲しいわけじゃない。嬉しいわけでもない。何かは感じているはずだけどよくわからない。
(俺一人だけ…。じゃああいつは死んだのか。
俺、よく友人失くすなぁ。にしても頭痛いなー。)
「ハァ~」
小さくため息をする。
“声”のことはさすがに言わなかった。言っても、なんだそれ?ってなるだけだ。ちなみに俺が無傷な理由はあちらも分からないらしい。
(まさか“声”のせい?だとしたらいったい何で?)
今日はよく疑問が浮かぶな。でもバスに乗っていた人たちは、全員死んだということがわかった。一つ疑問が晴れた。
さて、もう夜中の11時だ。ベッドに横になってはいるが、よく寝付けない。やっぱり疑問がまだ残っているからか。傷のことは置いとくとして一番気になるのはやっぱりあの“声”だ。幼い子供の声。
(あれはいったい誰だったんだ?それに確か、欲しいものがどうとか言ってたな。それから“これ”あげるって……。)
「“これ”ってなんだ?」
思わず声が出た。そう、あの声の主は確かに何かを俺にくれた。
『俺の欲しい“モノ”は…何でも楽にこなせる力だ!!』
そして、紫色の糸みたいなものが伸びてきて俺はそれに手を伸ばした。
(あれは、いったい………)
「グッ!?!?」
いきなり激しい頭痛に襲われた。
何かたくさんの情報が押し流されてくる。
独りの世界。 知らない情景。
知らない言葉。 何もかもが遠い。
光も影も。 空も大地も。 色も形も。
何もかもがグチャグチャになってゆく。
頭痛が止むのに5秒もかかってなかった。
けれど、とても長く感じた。
「ハァ…ハァ…ハァ…今の…は…?」
よく分からなかった。
けれど、納得した。
“ 声 ” からもらったモノは
そう、紛れもない
“ 力 ” だった。
と父はいつも通りのいってらっしゃいをする。「はい」
俺も同じく素っ気なくいってきますをする。バス停まではだいたい徒歩で15分くらい。いつも7時20分発のバスで高校に通っている。しかし「眠い、ダルい、めんどくさい」こいつらは、気持ちのいい朝を台無しにしてくれる。
バス停に着くといつもとおんなじだ。同じ高校の生徒に、よく見るおじさん、OLとかいろいろ。
「ダァ~」
俺は崩れ落ちるように椅子に座る。
「抗太郎、またダルそうだなぁ」
数少ない友人が声をかけてきた。俺とこいつはまともにあいさつなんてしないのだ。
「当たり前や~ん」
とスマホをいじっている友人に愚痴でも言わんばかりの勢いでこれまたダルそうに言う。
「ハハッ」と友人は鼻で笑ってくれる。
ブゥーン、ブーブゥーン。
「おっ、バイクだ。暴走?」
「んなわけないだろ」
大抵、バカみたいなことを言うのは俺だ。こんなふうにくだらない会話を毎日している。
(いつか飽きるんだろうな~)
そんなことを考えながら話しているとバスは予定通りに来てしまう。大幅に遅れてくれたら学校短くなるのになぁ~。
バスに乗ったらまず椅子に座って、隣にカバンを置く。それからカーテンを閉めてスマホを取り出す。あとは学校に着くまでスマホをいじったりボーッとしたりするだけ。勉強はしない。ちなみに通っているのは島の高校だから、着くまでに結構時間がある。
『なんとかクリアしましたね!マネージャー!』
そう画面の中から、黒髪ロングのアイドルが俺に笑顔で話しかけてくる。
(おっ、レベル上がった。うっし!!ゲームっていいよな~。)
現実ではこんな見た目で全くモテないが、二次元や妄想なら俺は…とまぁ、こんなふうにアニメとかマンガが大好きである。
(趣味聞かれた時、これ言いづらいんだよなぁ)
そんなことを考えながらふと前を見ると、学校まであと半分もない所まで来ていることに気がついた。スマホさえあれば時間が経つのはあっという間だ。
(さて、続き続き)
特にワクワクすることなく、スマホに目を送った瞬間、
「ドゴンッ、バリバリーッガンッ、ドガッ、ガジャーン!!!」
一瞬だった。何でかはわからない。自分の乗っているバスが大きく吹き飛ばされたんだろう。そんな気がする。
けれど、そんなことはどうでも良かった。
多分、沈んでいるのだろう。
ああ…落ち着く。 とてもが心地いい…。
どこか涼しくて、とても暗い。目を開けているのかすら分からないほどに。
『キ……ミ…ノ』
(何だ?何か聞こえて…)
『キ…ミノ…ホ…シィ…』
「えっだ、誰だ?」
確かに何か聞こえる。 誰かの声。
男の子か女の子かよく分からない。
幼いこどもの声。
『キミ…ノ…ホ…シイモ…ノハ…ナ…ニ?』
少しノイズのようなものが入ってくるが、聞き取れないほどではない。
「欲しい“モノ"?」
『キ…ミノ…ホ…シイ…モノ…ハナ…ニ?』
「君の欲しいものは何か」そう誰かが尋ねてきている。
(俺の欲しいもの…?)
分けがわからない。なぜそんなことを聞いてくるのか?いったい誰がしゃべっているのか?
それに、俺の欲しいものって…なんだ?
さっきまで落ち着いていた頭がぐちゃぐちゃになっていく。
何だ? 何が? 何を? …?
混乱している俺に痺れを切らしたのか、また同じ質問が飛んでくる。
『ホシ…イ…モ…ノ…ハナニ?』
欲しいもの。
友人?いや、片手で数えれるくらいだがちゃんといる。彼女?いや、できたとしてもどうせ嫌われる。裏切られるに決まっている。ならやっぱりお金か?金さえあればしたいことは何でもできる。けれど、それでいいのだろうか?俺は楽に生きれさえすれば正直それでいい………そうか!それでいいんだ!俺の欲しいものは
「俺の欲しい“モノ”は…何でも楽にこなせる力だ!!」
そして、それを聞いた誰かが
『ジャ…ア…コ…レ…アゲ…ル…ネ。』
真っ暗でよく見えない。でも、なんとなく腕を体の前に出した。少し光って見えた気がする。
紫色?の糸?みたいなものに俺の出した手のひらが触れた。 視界が何かに染まった…
俺は仰向けになっていた。
白い天井、横からは光が射している。
「んっ、まぶしい…」
(病院…?えっ…?)
一瞬混乱したがこういう時は大抵、病院だろう。
普通ならここで起き上がるんだろう。けれど、俺は簡単にそれができない。ケガをしているわけでも、体が麻痺して動かないというわけでもない。これは中学生時代からなんだが、朝目を覚ますとなぜか頭が痛いのだ。だから、起き上がるのは目を覚ましてから4、5分経ってからだ。
(ほぼ毎日なのに慣れないなぁ~)
と、いうことで早速ナースさんをお呼びしますか。キレイな美女来い!!!とか念じながらナースコールのボタンを親指でしっかりと押す。
すると、あらビックリ真珠の如くひかり輝く頭のおじさんっぽい美女が来てくれましたー。そして後ろにはベテランの看護婦さんっぽい人が…。
(いやっ、別に期待はしていなかったよ?そんなことあったりしてーって思っただけだから。本当だよ?)
「おぉ…目を覚ましたのか!!!良かった…良かった…」
体から力が突然なくなったように、ひざから崩れ落ちるおじさん。目には涙浮かばせている。後ろのベテランさんも喜んでいるようだ。
「あ、あのー…」
「あっ、くっ、すまない。泣くような立場ではないな私は。」
そう言いながら雑に目を拭いている。
(えー、そんな泣くほどじゃなくない?)
「フー。起きたばかりだろうがいくつか質問させてくれ。」
息を整えてそう言った。
(いきなり医者らしくなったな。)
「あーはい。」
「ではまず、君の名前と生年月日は?」
「えー、渡村抗太郎…で2023年9月6日生まれです。」
「よしっ、ここはどこかわかるか?」
「病院?」
「そうだ、なぜ君がここにいるかわかるか?」
そういえば、そうだ。驚くほど普通に受け入れていた。
「えーっと、確かバスに乗ってていきなりガシャンって。」
(ああ、そうだ!事故だ。それでバスが…って俺、よく考えたら無傷!?あれっ?そういや…)
俺は自分の右手を見た。しっかりと覚えている。あの吸い込まれるような暗さと、気持ち良さ。
そして……声、紫の糸。
混乱しているような俺を見て、医者は優しそうな声で
「あぁ、君の乗っていたバスは土砂崩れに巻き込まれたんだ。そしてバスは勢いよく飛ばされた。結果、抗太郎くんは意識を失ってこの病院に運ばれた。3日前にね。無傷だったのが何よりも幸運だ。」
俺はふぅ~んとでも言うように頷く。正直どんな反応が正解なのか分からない。それに、それを聞いてまた新たな疑問がわいてきた。
(バスが勢いよく飛ばされるような事故で無傷?意識を失っていた?なら、あの時見たのは?それに他にバスに乗っていた人は?)
余計に混乱してきた。シートベルトはしていなかった。だから多少なりとも傷の一つや二つは付いているはずだ。
「さすがに混乱するだろう。まぁ難しい話は後にして、とりあえず飯でも食べるといい。腹減っているだろう?」
「ああ、はい少し。」
(よくわかったな。このおじさんはエスパーか何かだろうか。)
医者のおじさんは後ろの看護婦さんに「抗太郎くんに温かいご飯を」と言って
「少し待っててくれ。すぐに飯を持ってくるからな。」
そう言いながら二人とも病室から出ていく。
(あっ、そういやあいつは無事か?)
数少ない友人のことをすっかり忘れていた。
(まっ、どうせ大丈夫か。ていうか俺、3日間くらい意識なかったのか?やべ……)
俺は甘かった。
現実はそう上手くはいかないことを、よく知っていたはずなのに。
それからご飯を食べた。食べてる途中で父親が来た。姉は来ていない。仕事だろう。
「おおっ抗太郎良!かった~無事で。ご飯美味いか?」
「うん、まあ。」
「ハッハッハッ、そうかそうか。もう驚いて腰抜かしたぞ事故って聞いて。」
と、父親はしゃべってくる。
この人は嬉しいと思っているだろうか?それともその逆か。いや、葬式をせずにすんだから嬉しいのだろうか?
こんなふうに父と話して、医者と話して、いろいろ質問責めされてめんどくさかった。それから警察が二人来た。別に何か犯罪を犯したわけじゃないが妙に緊張した。
覚えている限りの事故当時の状況とかを聞かれた。すると一人の刑事さんが
「しかし、本当に悲しいですね。」
「まさか生存者が一人だけとは…」
「アハハハ……」
俺は反射的に苦笑いしてしまった。
「まあでも、君だけでも生きててくれて良かった。全員死亡なんて悲しすぎますから。では、我々はこれで。また何かあったら伺います。お元気で。」
「はい、ありがとうございました。」
二人が出ていった。
ひどく悲しいわけじゃない。嬉しいわけでもない。何かは感じているはずだけどよくわからない。
(俺一人だけ…。じゃああいつは死んだのか。
俺、よく友人失くすなぁ。にしても頭痛いなー。)
「ハァ~」
小さくため息をする。
“声”のことはさすがに言わなかった。言っても、なんだそれ?ってなるだけだ。ちなみに俺が無傷な理由はあちらも分からないらしい。
(まさか“声”のせい?だとしたらいったい何で?)
今日はよく疑問が浮かぶな。でもバスに乗っていた人たちは、全員死んだということがわかった。一つ疑問が晴れた。
さて、もう夜中の11時だ。ベッドに横になってはいるが、よく寝付けない。やっぱり疑問がまだ残っているからか。傷のことは置いとくとして一番気になるのはやっぱりあの“声”だ。幼い子供の声。
(あれはいったい誰だったんだ?それに確か、欲しいものがどうとか言ってたな。それから“これ”あげるって……。)
「“これ”ってなんだ?」
思わず声が出た。そう、あの声の主は確かに何かを俺にくれた。
『俺の欲しい“モノ”は…何でも楽にこなせる力だ!!』
そして、紫色の糸みたいなものが伸びてきて俺はそれに手を伸ばした。
(あれは、いったい………)
「グッ!?!?」
いきなり激しい頭痛に襲われた。
何かたくさんの情報が押し流されてくる。
独りの世界。 知らない情景。
知らない言葉。 何もかもが遠い。
光も影も。 空も大地も。 色も形も。
何もかもがグチャグチャになってゆく。
頭痛が止むのに5秒もかかってなかった。
けれど、とても長く感じた。
「ハァ…ハァ…ハァ…今の…は…?」
よく分からなかった。
けれど、納得した。
“ 声 ” からもらったモノは
そう、紛れもない
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