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中学生の頃──見つめる事への目的
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この第二次性徴の頃の男女は、身体の変化が嫌でも目に見えて違ってくる。
彼の下腹部の膨らみに自然と視線が寄せられるのは、いりやが変態だから──ではないと思いたい。
だがしかし。
対するいりやの胸部の膨らみは、残念ながら成長の兆しが見えない。俗に言うまな板って言うものかな──と、小さな恐怖心が湧き上がる。
いつまで経ってもお子様体型ないりや。
ボンキュッボンに憧れるけど、おそらくバイーンとなるには人種的な違いすらありそう。それくらい、現時点では見込みがなさそうだった。
そう考えると、いつもいりやは悲しくなってくる。
少し前に声変わりをした彼。
その重低音ながらも聞き取りやすい声が何処からか聞こえる度に、いりやの耳はワンコのようにピンと立ち上がる気分でいる。
ジムのプールは声が響くから、遠くにいても空間が自然といりやのもとへ彼の声を届けてくれる。
素敵。声も好き。耳が幸せ──など、内心で興奮しているのだ。
直接的な会話だなんて、とてもじゃないけど無理無理ないりや。視線を向けて耳をそばだてるだけの、ヘタレでしかない。
その視線ですら、彼がいりやに気付いていないから出来るだけ。つまりは盗み見。
犯罪行為ではないよね、これ──と、別次元の心配はしている。
見ているだけで幸せないりやは、自分が他の同性の女友達と違う事は感じている。
そもそも、第二次性徴が来ていない。
他の皆は生理だから辛いとか、胸が大きくなってブラを買い替えなきゃとか。
周囲から年齢相応の様々な言葉が飛び交う中、いりやは自身にそういった事実がない事を口に出せなかった。
さすがに中学三年生ともなれば、現状が普通ではないといりやは気付いている。
保健体育で学んだ事柄が反映されない自分が、普通という枠から外れてしまっているのだ。
だがしかし。現時点でのいりやの体調は、他の誰も気にしていない。
気にされない事がそもそも当たり前で、いりやは他者にその事を相談するなどという思考に至らなかった。
いりやの保護者は両親が揃っているが、それだけである。
小学校三年生の頃には向けられていた両親の関心も、今では全て十歳下の弟達へ向けられていた。双子の弟達は可愛いと思うが、同時に憎くもある。
いりやがどんなに良い成績を残そうが、返ってくるのは一言ばかりの賛辞だ。うわべだけの言葉などを求めていないいりやにとって、そんな両親の反応は自身を突き放す事と同意である。
幼い頃のように抱き締めて、きちんといりやを見て欲しかった。
そんな風に渇望し続けて満たされないいりやの心は、いつの間にか彼を見つめる事で渇望する感情を満たすようになっていく。
自分へ向けられない情。そこから自分が興味をひく相手へ情を向けるべきと判断する事は、深く考えなくとも自然の摂理なのかもしれなかった。
本当に恋しているのかは分からないが、一番いりやが関心を向けている存在なのは事実である。
誰しも独りでは生きていけない。人は心の拠り所を自分以外へ求める為、孤独に苛まれると死んでしまう弱い生き物だ。
生きる意欲になるのだ。それにただ見ているだけなのだから、害にはならないだろう──と、いりやは結論付ける。
彼の下腹部の膨らみに自然と視線が寄せられるのは、いりやが変態だから──ではないと思いたい。
だがしかし。
対するいりやの胸部の膨らみは、残念ながら成長の兆しが見えない。俗に言うまな板って言うものかな──と、小さな恐怖心が湧き上がる。
いつまで経ってもお子様体型ないりや。
ボンキュッボンに憧れるけど、おそらくバイーンとなるには人種的な違いすらありそう。それくらい、現時点では見込みがなさそうだった。
そう考えると、いつもいりやは悲しくなってくる。
少し前に声変わりをした彼。
その重低音ながらも聞き取りやすい声が何処からか聞こえる度に、いりやの耳はワンコのようにピンと立ち上がる気分でいる。
ジムのプールは声が響くから、遠くにいても空間が自然といりやのもとへ彼の声を届けてくれる。
素敵。声も好き。耳が幸せ──など、内心で興奮しているのだ。
直接的な会話だなんて、とてもじゃないけど無理無理ないりや。視線を向けて耳をそばだてるだけの、ヘタレでしかない。
その視線ですら、彼がいりやに気付いていないから出来るだけ。つまりは盗み見。
犯罪行為ではないよね、これ──と、別次元の心配はしている。
見ているだけで幸せないりやは、自分が他の同性の女友達と違う事は感じている。
そもそも、第二次性徴が来ていない。
他の皆は生理だから辛いとか、胸が大きくなってブラを買い替えなきゃとか。
周囲から年齢相応の様々な言葉が飛び交う中、いりやは自身にそういった事実がない事を口に出せなかった。
さすがに中学三年生ともなれば、現状が普通ではないといりやは気付いている。
保健体育で学んだ事柄が反映されない自分が、普通という枠から外れてしまっているのだ。
だがしかし。現時点でのいりやの体調は、他の誰も気にしていない。
気にされない事がそもそも当たり前で、いりやは他者にその事を相談するなどという思考に至らなかった。
いりやの保護者は両親が揃っているが、それだけである。
小学校三年生の頃には向けられていた両親の関心も、今では全て十歳下の弟達へ向けられていた。双子の弟達は可愛いと思うが、同時に憎くもある。
いりやがどんなに良い成績を残そうが、返ってくるのは一言ばかりの賛辞だ。うわべだけの言葉などを求めていないいりやにとって、そんな両親の反応は自身を突き放す事と同意である。
幼い頃のように抱き締めて、きちんといりやを見て欲しかった。
そんな風に渇望し続けて満たされないいりやの心は、いつの間にか彼を見つめる事で渇望する感情を満たすようになっていく。
自分へ向けられない情。そこから自分が興味をひく相手へ情を向けるべきと判断する事は、深く考えなくとも自然の摂理なのかもしれなかった。
本当に恋しているのかは分からないが、一番いりやが関心を向けている存在なのは事実である。
誰しも独りでは生きていけない。人は心の拠り所を自分以外へ求める為、孤独に苛まれると死んでしまう弱い生き物だ。
生きる意欲になるのだ。それにただ見ているだけなのだから、害にはならないだろう──と、いりやは結論付ける。
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