こころの中の貴方

まひる

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社会人──モヤモヤする気持ち

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  ※  ※  ※  ※  ※

「ねぇ。何でかえでさんは、上の学校に行かなかったの?君なら行けたんじゃない?」
「いやぁ、俺の家はそんなに裕福じゃないんで。それに弟が二人いて、まだまだ学費が掛かるんですよ。これまで習い事をずっとさせてもらってたんで、これ以上は無理っすね」
「そうなんだぁ。でもまぁ大卒じゃ、こんな風に私達と話してくれなかったでしょ。他の大卒見て思うけど、何かプライド高そうだし」
「そうだよな。俺等高卒なめてんのかって感じするよ」
「あはは、そうそう!」

 入社から半月程したある日、管理運営部門で新入社員歓迎会がおこなわれた。
 この部署の平社員は高卒ばかりである為、事ある毎に大卒と比べられて不快な思いをしているようである。それでも大学は金銭的に負担が大きいので、親か自分が借金をかかえるよりは──と考える人が少なからずいるようだった。

 さて。飲み会といえど、まだ未成年の二人。
 それ以外はほとんどの社員がお酒を飲んでいて、会場のあちらこちらで盛り上がった会話が聞こえてくる。
 いりやは人が多い場所を好まないのだが、歓迎会だから欠席する訳にもいかず参加不可避だった。
 しかしながら、一輝のような対人関係構築スキルがない。結果は想像する程でもなく、チビチビとウーロンを飲みながら目の前の料理をつつくだけだ。

 言ってしまえばいりやの対人スキルはマイナス方向に振り切っている為、必要事項どころか重要案件以外は声を出せていない。
 今はまだ研修中だが、このままではすぐに業務にも悪影響が出るだろう。

 おろおろするいりやの様子から、気付いた一輝がいりやに問い掛けてようやく判明するといった日常だ。
 そうやって、現時点ではいりやと先輩社員の間を一輝が取り持っている。だが当然ながら、今後も継続してとなると難しい事は明らかだ。
 一輝はいりや専門の通訳者ではない。更に共通の研修が終われば、二人別々の担当補佐になるのだ。

    それにしても。今、一輝の隣に座っている二年先輩の女性なのだが──非常に一輝との距離が近い。
 先程からずっと一輝の右隣をキープしていて、それ以上に身体を寄せるように座っている。それに加え、ボディータッチが多く見えた。
 教育担当ではないので、普段はあまり接点がない先輩社員だ。しかしながら業務時間外で一輝と二人でいる所を、いりやは頻繁に見掛けている。

 対する一輝は全く気にしていないようで、その態度は他の先輩社員と接するものと変わらない。
 何なら、いりやに対する態度が一番気安いとも思われた。

(でも何だか、モヤモヤする……)

 目の前で見せられる二人のそれに、いりやは感情を上手く制御出来なかった。
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