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第四章
3.好きだ【3】
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「メル」
声と共に顔を上げたヴォルです。
突然のその行動に倒れそうになった私は、そのままヴォルに背中を受け止められるようなかたちで抱き留められていました。
っ?!──驚きのあまり、息を呑みます。ち………、顔が近いですよ。
「メル」
「……はい」
再度名を呼ばれました。
熱い視線に尻込みしながらも、何とか返事をします。──私達……何故こんなにも見つめ合ったりしているのです?
「は~い、そこまで」
「「っ!?」」
今度はヴォルと二人して息を呑んで、声の聞こえた方を見ます。──何故かベンダーツさんですね。
って言うか、いつからそこにいたのですか。壁に背を預けるようにして立っていたベンダーツさんは、未だに眼鏡を外しています。
そして左頬は先程より酷く腫れて色が黒くなっていました。
「ここを何処だと思ってんの。いちゃこらするなら、部屋に帰ってからにしろって」
「……ベンダーツさんって……」
「言うな」
眉根を寄せ、大袈裟に溜め息を吐きながら迷惑そうに片手を振るベンダーツさんです。
確かに廊下でする会話ではありませんでした。人目につくので、ベンダーツさんは心配して声を掛けて下さった筈です。──言い方は不器用ですが。
その対応に口を開きかけた私の言葉を遮ったヴォルは、そのまま私の肩を抱いて踵を返しました。
「アイツは性格が悪いんだ」
その後にボソリと呟いたヴォル。でもベンダーツさんには聞こえたようで、すぐに後ろから声がぶつけられます。
「俺よりお前だろ。人に文句を言う暇があったら、自分の女くらい喜ばせろよ」
「っ!?」
背中に投げ掛けられたベンダーツさんの言葉に、ヴォルが息を呑みました。──あれ?赤い?
「ヴォル、顔が赤いです?」
「う、煩いっ」
「ふぎゃっ!」
酷いです。頭を押さえ込まれました。結構な強さだったですよ。
すると後ろから、クククッと笑い声が聞こえました。
「ソイツは照れてんですよ、メルシャ様。まぁ、頑張ってください」
「は、はぁ……」
この──片眼鏡を外した──バージョンのベンダーツさんは、はっきりいって良く分からないです。でも、ヴォルと親しい感じがしました。
いえ、過去に目の前で繰り広げられていたのは喧嘩でしたけどね。──しかも、結構激し目の。
「……ったく、あのお節介は……」
廊下を行きながら、ブツブツと呟いているヴォルです。でもその瞳には怒りはなく、戸惑いや羞恥が見えました。
そのせいでしょうか、いつもよりとても近くに感じます。何故ですかね?……あ、感情が豊かに見えるからですか。──何だか嬉しいです。
「何を笑っている?」
あ……、気付かれてしまいました。
少しだけ目を細めたヴォルに真っ直ぐ視線を向けられます。
「ヴォルはベンダーツさんと仲が良かったのですね?何だか、ヴォルのお兄さんって感じがしましたよ」
「誰が……。あんなのが兄なら俺はグレてる」
僅かに目を見開いた後、フイッと視線を逸らされました。
フフフッ、グレたヴォルって簡単に想像出来てしまいますね。
「それより腹が減った」
「えぇ、私も少しお腹が空きました。ガルシアさんが首を長くして待っていますね」
「そうだな。だが、またあっちでも文句を言われそうだ」
少しうんざりとした表情をするヴォルの腕を私は撫でます。──頭は届かないので、近い『腕』なんですけどね。
しかしながら夕食は済ませていたのですが、その後のお茶を前にベンダーツさんから呼ばれた私達でした。そして精神的疲労からか、小腹が空いてしまったのです。
こういうことが度々あると、逆に食べ過ぎて肥ってしまいそうですね。
声と共に顔を上げたヴォルです。
突然のその行動に倒れそうになった私は、そのままヴォルに背中を受け止められるようなかたちで抱き留められていました。
っ?!──驚きのあまり、息を呑みます。ち………、顔が近いですよ。
「メル」
「……はい」
再度名を呼ばれました。
熱い視線に尻込みしながらも、何とか返事をします。──私達……何故こんなにも見つめ合ったりしているのです?
「は~い、そこまで」
「「っ!?」」
今度はヴォルと二人して息を呑んで、声の聞こえた方を見ます。──何故かベンダーツさんですね。
って言うか、いつからそこにいたのですか。壁に背を預けるようにして立っていたベンダーツさんは、未だに眼鏡を外しています。
そして左頬は先程より酷く腫れて色が黒くなっていました。
「ここを何処だと思ってんの。いちゃこらするなら、部屋に帰ってからにしろって」
「……ベンダーツさんって……」
「言うな」
眉根を寄せ、大袈裟に溜め息を吐きながら迷惑そうに片手を振るベンダーツさんです。
確かに廊下でする会話ではありませんでした。人目につくので、ベンダーツさんは心配して声を掛けて下さった筈です。──言い方は不器用ですが。
その対応に口を開きかけた私の言葉を遮ったヴォルは、そのまま私の肩を抱いて踵を返しました。
「アイツは性格が悪いんだ」
その後にボソリと呟いたヴォル。でもベンダーツさんには聞こえたようで、すぐに後ろから声がぶつけられます。
「俺よりお前だろ。人に文句を言う暇があったら、自分の女くらい喜ばせろよ」
「っ!?」
背中に投げ掛けられたベンダーツさんの言葉に、ヴォルが息を呑みました。──あれ?赤い?
「ヴォル、顔が赤いです?」
「う、煩いっ」
「ふぎゃっ!」
酷いです。頭を押さえ込まれました。結構な強さだったですよ。
すると後ろから、クククッと笑い声が聞こえました。
「ソイツは照れてんですよ、メルシャ様。まぁ、頑張ってください」
「は、はぁ……」
この──片眼鏡を外した──バージョンのベンダーツさんは、はっきりいって良く分からないです。でも、ヴォルと親しい感じがしました。
いえ、過去に目の前で繰り広げられていたのは喧嘩でしたけどね。──しかも、結構激し目の。
「……ったく、あのお節介は……」
廊下を行きながら、ブツブツと呟いているヴォルです。でもその瞳には怒りはなく、戸惑いや羞恥が見えました。
そのせいでしょうか、いつもよりとても近くに感じます。何故ですかね?……あ、感情が豊かに見えるからですか。──何だか嬉しいです。
「何を笑っている?」
あ……、気付かれてしまいました。
少しだけ目を細めたヴォルに真っ直ぐ視線を向けられます。
「ヴォルはベンダーツさんと仲が良かったのですね?何だか、ヴォルのお兄さんって感じがしましたよ」
「誰が……。あんなのが兄なら俺はグレてる」
僅かに目を見開いた後、フイッと視線を逸らされました。
フフフッ、グレたヴォルって簡単に想像出来てしまいますね。
「それより腹が減った」
「えぇ、私も少しお腹が空きました。ガルシアさんが首を長くして待っていますね」
「そうだな。だが、またあっちでも文句を言われそうだ」
少しうんざりとした表情をするヴォルの腕を私は撫でます。──頭は届かないので、近い『腕』なんですけどね。
しかしながら夕食は済ませていたのですが、その後のお茶を前にベンダーツさんから呼ばれた私達でした。そして精神的疲労からか、小腹が空いてしまったのです。
こういうことが度々あると、逆に食べ過ぎて肥ってしまいそうですね。
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