334 / 515
第七章
≪Ⅶ≫コレとは何の事だ【1】
しおりを挟む「しかし、何故この娘に触れる事が出来ないのだ。私の言葉が届かない?言葉……魔力?……既婚の腕輪」
何だか考えを巡らせているようでした。
ところでこの人、神父さん(仮)ではなく多分ゼブルさん(仮)です。一人でこんなところにいますし、何やら色々と知ってそうですから。
「守護魔法……、ヴォルティ様?いや、まさか……っ。だが、これ程までの守護魔法は見た事がない。あの方の婚儀には参加させて頂いたが、奥方の素性やお顔を拝見した事はない。ベールで隠されていたし、何故か出自は秘匿とされていたからな。寵愛されている噂は事実あった……が、けれどもそれは側室の話が出る前の事」
自分の考察に入っているらしく、一人で呟いているゼブルさん(仮)でした。
しかしながら──面と向かって自分関連の噂を聞くのは恥ずかしいです。それよりも彼の独り言から、婚儀に参加したと言われていました。ゼブルさん確定です。
私はこの方を捜しに来たのですけれど、まさかの現状──肉体のみが囚われの身──でした。後でヴォルとベンダーツさんに怒られそうです。
──うぅ……、不可抗力なのですが。
「偽り……?寵愛が失われたとされた噂も、奥方を隠す為だとしたら……。確かに官僚達の動きが妙に活発だったからな。婚儀の後、ヴォルティ様派とペルニギュート様派との争いが激しくなったのも事実」
誰も聞いていないと思っているらしく、考えを纏める為の独り言が盛大でした。
大半が初耳の私にとっては、『そうだったのですか。さすが、政治に深く関わっている方と聞いただけの事はありますね』的な情報でした。
「いや、かといってこの娘がヴォルティ様の奥方かどうかは別としよう……。と言うか、この貧相な娘がか?顔立ちも容姿も並以下ではないか。立ち並んで見劣りがするにも程がある」
マジマジと私の顔を覗き込んだ後、軽く鼻で笑われます。
──今、物凄くバカにされました。
ヴォルと比べられれば私なんて、見目が普通で何の取り柄もないってのは認めますけどねっ。
「少し話しただけだが、人を疑う事を知らない田舎臭い天然娘ではないか。……この天然さが良いのか?……おぼこだからか?……貴族の令嬢方を無視し続けてきた男が選んだのが、コレ?」
ドカーン!!
ゼブルさんの嘲笑と大きな音が重なりました。
その前触れもなく大きな爆音に、身体がない今の私も思い切りビクッと肩を跳ねさせてしまいます。
「コレとは誰の事だ」
聞き覚えのある声でした。そしてそれは、静かですけど物凄く怒っているヴォルの声です。
ゼブルさんも相手が分かったのか、顔色が悪くなっているように見えました。
「ま……さか……っ」
驚愕に顔を歪ませるゼブルさんの目の前へ、砂埃を瞬時に風の魔力で吹き飛ばしたヴォルが現れます。勿論、当たり前のようにその後ろにはベンダーツさんが控えていました。
そう言えば、魔物討伐の方は終わったのでしょうか。──あ、私は勝手にヴォルの結界から出てきたのでした。
現在半ば囚われの身である私は、これが説教コースであると気付いてしまいます。しかも言い訳も出来ない今の私──幽体──でした。
「ったく、開いた扉の封印をご丁寧に再度閉めとくんじゃないっての。入り口が分からなくて手間取っちゃったじゃないか。オマケにヴォルに追い付かれて、俺の良いところなしって感じだし」
ブツブツと文句を続けるベンダーツさんですが、それよりもヴォルの纏う空気が怖いです。──そして何故か私と視線が合っていませんか?
気のせいだと思いたい私は、今は肉体がない幽霊の様な状態である事を改めて確認してしまいました。
見えない筈──と思いたい私は自分の身体の斜め上から、僅かに横へ移動します。
ダメです、確実に見えてます──ヴォルの視線が私から外れませんでした。
0
あなたにおすすめの小説
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】2人の幼馴染が私を離しません
ユユ
恋愛
優しい幼馴染とは婚約出来なかった。
私に残されたのは幼馴染という立場だけ。
代わりにもう一人の幼馴染は
相変わらず私のことが大嫌いなくせに
付き纏う。
八つ当たりからの大人の関係に
困惑する令嬢の話。
* 作り話です
* 大人の表現は最小限
* 執筆中のため、文字数は定まらず
念のため長編設定にします
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる