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第九章
9.溶け合って【2】
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「そうか……。そう言う考えもあるのだな」
私の言葉を受けて少し思案顔になったヴォルでしたが、突然フッと笑みを溢したのです。
それは普段表情の変化が薄い分、物凄い破壊力でした。
不意をつくように間近で見てしまった私は、爆発しそうな程顔が熱くなります。
「どうした、メル。顔が赤い」
「い、言われなくても分かっています。……はぁ、熱いです」
冷静にヴォルに指摘され、私は肯定する事しか出来ませんでした。
必死に両手で頬を覆い隠したところで遅いですが、わざわざ指摘されるといたたまれなくなってしまいます。
「脱ぐか?」
「ぬ、脱ぎませんっ」
小首を傾げるヴォルは、自分の微笑みの効力を分かっていないようでした。
何でしょうか、この不毛なやり取り。二人してベッドに横たわっている状態で、更には腰の辺りに腕を回されている私です。
若干、ヴォルにからかわれている気がしてきました。
「ほら、起きますよ?私は今、とても元気なんです。前回は全く船内の見学が出来ませんでしたから、今度こそ色々見て回りたいのです」
軽くヴォルの腕を叩く事で促しつつ、私はすぐに実行可能な目標を告げます。
そして少しだけ力を緩めてくれたヴォルの大きな腕を身体の上から除け、私はやっとの事でベッドから起き上がりました。
いつまでも横になっていたらヴォルに流されてしまいますし、ベンダーツさんもすぐに戻ってくる筈です。
──流される自信があるって言うのも、自分的に再考すべきですけど。
「そうか。残念だ」
再び笑みを浮かべるヴォルでした。
残念って何ですか──聞きはしないですが、良い意味の感じがしません。
もしかして魔力回復が上手くいかず、身体が辛いのかもと不安になってしまいました。
「まさか、具合が悪い訳ではありませんよねっ?」
私は振り返って、再度ベッドに舞い戻ります。そして両手をベッドにつけ、ヴォルの顔を覗き込みました。
薄暗い室内ではっきりと顔色が識別出来ませんが、その瞳が僅かに見開かれます。勢い良く接近し過ぎました。
「問題ない」
フッと柔らかな表情をした彼に、私は安心して胸を撫で下ろします。
基本的にヴォルは自身の体調の事を周囲に告げないので、本当に動けなくなるまで私が気付けない場合が多いのでした。
「ちゃんと教えてくださいね?ヴォルは一人で全部抱えてしまうので、とても心配なのです」
念を押して告げます。
──そうかと言って、私自身が出来る事なんて極僅かなのですけど。
でも何も言われないと、それはそれで不満だったりするのでした。
「そうだな」
ヴォルは少しだけ瞳を細め、口元に僅かな弧を浮かべます。
これは小さな表情の変化ですが、ヴォルは出会った頃よりも随分と感情を見せてくれるようになりました。──まぁ、それもほんの少しの変化なのですけれど。
彼の事を知らない人からしてみれば、今のこの状態ですら無表情に見えるかもしれないです。それこそ時折見せる微笑みは爆弾的な威力がありますが、私はもっと──もっとたくさんのヴォルを知りたいのでした。
本当に際限なく、彼に関する事でどんどん自分が貪欲になっている気がします。でもその気持ちを止められませんでした。抑えられません。
彼と出会う前の私は、こんな気持ちになるなんて知るよしもありませんでした。
私の言葉を受けて少し思案顔になったヴォルでしたが、突然フッと笑みを溢したのです。
それは普段表情の変化が薄い分、物凄い破壊力でした。
不意をつくように間近で見てしまった私は、爆発しそうな程顔が熱くなります。
「どうした、メル。顔が赤い」
「い、言われなくても分かっています。……はぁ、熱いです」
冷静にヴォルに指摘され、私は肯定する事しか出来ませんでした。
必死に両手で頬を覆い隠したところで遅いですが、わざわざ指摘されるといたたまれなくなってしまいます。
「脱ぐか?」
「ぬ、脱ぎませんっ」
小首を傾げるヴォルは、自分の微笑みの効力を分かっていないようでした。
何でしょうか、この不毛なやり取り。二人してベッドに横たわっている状態で、更には腰の辺りに腕を回されている私です。
若干、ヴォルにからかわれている気がしてきました。
「ほら、起きますよ?私は今、とても元気なんです。前回は全く船内の見学が出来ませんでしたから、今度こそ色々見て回りたいのです」
軽くヴォルの腕を叩く事で促しつつ、私はすぐに実行可能な目標を告げます。
そして少しだけ力を緩めてくれたヴォルの大きな腕を身体の上から除け、私はやっとの事でベッドから起き上がりました。
いつまでも横になっていたらヴォルに流されてしまいますし、ベンダーツさんもすぐに戻ってくる筈です。
──流される自信があるって言うのも、自分的に再考すべきですけど。
「そうか。残念だ」
再び笑みを浮かべるヴォルでした。
残念って何ですか──聞きはしないですが、良い意味の感じがしません。
もしかして魔力回復が上手くいかず、身体が辛いのかもと不安になってしまいました。
「まさか、具合が悪い訳ではありませんよねっ?」
私は振り返って、再度ベッドに舞い戻ります。そして両手をベッドにつけ、ヴォルの顔を覗き込みました。
薄暗い室内ではっきりと顔色が識別出来ませんが、その瞳が僅かに見開かれます。勢い良く接近し過ぎました。
「問題ない」
フッと柔らかな表情をした彼に、私は安心して胸を撫で下ろします。
基本的にヴォルは自身の体調の事を周囲に告げないので、本当に動けなくなるまで私が気付けない場合が多いのでした。
「ちゃんと教えてくださいね?ヴォルは一人で全部抱えてしまうので、とても心配なのです」
念を押して告げます。
──そうかと言って、私自身が出来る事なんて極僅かなのですけど。
でも何も言われないと、それはそれで不満だったりするのでした。
「そうだな」
ヴォルは少しだけ瞳を細め、口元に僅かな弧を浮かべます。
これは小さな表情の変化ですが、ヴォルは出会った頃よりも随分と感情を見せてくれるようになりました。──まぁ、それもほんの少しの変化なのですけれど。
彼の事を知らない人からしてみれば、今のこの状態ですら無表情に見えるかもしれないです。それこそ時折見せる微笑みは爆弾的な威力がありますが、私はもっと──もっとたくさんのヴォルを知りたいのでした。
本当に際限なく、彼に関する事でどんどん自分が貪欲になっている気がします。でもその気持ちを止められませんでした。抑えられません。
彼と出会う前の私は、こんな気持ちになるなんて知るよしもありませんでした。
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