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第十章
≪ⅩⅠ≫どうだと思っている【1】
しおりを挟む「んじゃ、繋ぐよ?」
「あぁ」
一通り消毒等の処置をしていたベンダーツさんが、ヴォルに声を掛けます。
怖くて横を向いていた私が視線を向けると、ヴォルの左腕は既に包帯が外されていました。現在その部分は出血もなく、多少ひきつったような傷跡が残っているだけです。
そうしてベンダーツさんが新しい義手をヴォルの肩口に押しあて、機械へ行うように留め具を用いて接続していきました。
勿論外した時と同様に、取り付ける先は人の身体です。金具を取り付ける度に、その部分からは血が溢れ出しました。
見ているだけで痛そうです。ゾワゾワと背筋が震え、心臓がギュッと痛くなってきました。
「じっと見てなくても良いのに……」
ベンダーツさんが呆れたように呟きます。
──分かってはいますよ、私だって。
でもヴォルの事ですから、可能な限りは何がどうなっているのか知っておきたいと思ったのでした。
ちゃんとこの目で、しっかり見ておかなければならないです。
現時点で痛いのはヴォルなのですから、これ以上彼に苦痛を与えないでいられるように考えて行動しなくてはなりませんでした。
「はい、取り付け完了。んじゃ、魔力を流してみて?」
最後の金具を取り付け終わったベンダーツさんが、静かに道具を置きながら告げます。
ヴォルの出血を目にしている事もあり、私は貧血を起こしそうな状態でした。
──お、終わったのですか?え……、魔力……?
ホッとしたのも束の間、ベンダーツさんの次なる指示に私は首を傾げます。でもそれも一瞬の事でした。
「ぐっ!」
突然苦しそうな声と共に、ヴォルの身体が強張ります。
かなりの苦痛を堪えているようで、全身に汗が吹き出してきました。
「ベンダーツさんっ?!」
私は思わず焦りをベンダーツさんに向けてしまいます。でも彼はじっとヴォルを見つめていました。
その様子から、どうやら初めからこうなる事が分かっていたようです。
「……しっかりヴォルを押さえていてね」
圧し殺したような声を掛けられました。
見ていて辛いのは、ベンダーツさんも同じようです。
私はそう感じ、ヴォルの固く握られた右手に触れました。彼の身体が細かく痙攣しています。
「きた……」
独り言のように呟くベンダーツさん。
私は彼の視線の先を追い、左肩の義手接続部分を見ました。
そこは金具取り付けの際の出血が残っていましたが、それ以上に内側から押し破るように蠢く何かがあります。
血管が浮き出たヴォルの肩の中を、何かが身体の方へ侵攻していました。
「義手素材だよ」
疑問をのせた涙目の私の視線に、ベンダーツさんが静かに答えてくれます。
──義手……素材、ですか?
確か、魔力を通す木材と言われていました。けれども見る限り、ヴォルが侵食されているように感じます。
「この木材も同じで、魔力を通すとそれを感じて自らの根を伸ばすんだ。共生の一種だけど、前の木材は明らかな寄生型。その分、魔力を受けて動かす事が出来るから……義手としては最高なんだけど、なにぶん消費魔力が大きい」
淡々と説明をしてくれるベンダーツさんですが、その視線の先は常にヴォルでした。
些細な変化も見逃さないようにと、苦痛に表情を歪めるヴォルを見つめています。
一度声を上げたヴォルですが、その後はただ歯を噛み締めて堪えているだけでした。
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