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第十章
10.願いを一つだけ【5】
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「この義手……ヴォルの腕になる時は、また痛いのですか?」
私は前回一度だけ目にした事を思い出し、心配になってベンダーツさんへ問い掛けます。
そして取り外した際のヴォルを思うと、かなりの苦痛を感じていたようでした。出血も酷かったですし、声をあげない事の方が信じがたい状態だった気がします。
「ん~……正直、痛いねぇ。嘘ついても仕方ないから言うけど、神経を繋ぐ訳だからさ。痛くない筈がないよね?」
繋ぎ合わせた義手を持ち上げ、動作確認をしながらベンダーツさんが教えてくれました。
やっぱり──と想像していた通りの返答に、私は自分でも血の気が下がっていくのを感じます。けれども、そんな私を当たり前のように強く抱き締めるヴォルの腕がありました。
「余計な事を言うな、マーク」
想像しただけで心臓がギュッと痛くなります。
ヴォルは私を庇うようにその胸に抱き寄せますが、実際に痛いのはヴォルなのでした。
心配を掛けさせないようにとの配慮なのかもしれませんが、ベンダーツさんが嘘を言っている訳ではない事も分かります。
「俺は聞かれたから教えただけさ。ヴォルはメルの知識欲も奪う気か?」
片眉を持ち上げるようにして不満を表し、ヴォルを問い質すベンダーツさんでした。
このやり取りは以前にもあったと思いますが、ヴォルは過保護過ぎると私も思います。しかしながらヴォルの方は、ただじっとベンダーツさんを見つめ返すだけでした。
そしてヴォルは、視線を動かして口を開きます。
「……出来たのか」
「出来たよ?でも、俺の今の質問の答えを聞いてないんだけど」
ベンダーツさんの手元を確認し、話を変えたヴォルでした。それでもベンダーツさんはそれを良しとしないようです。
ヴォルの問い掛けに応じつつも、真っ直ぐ目を向けていました。このまま有耶無耶にはさせないとばかりの強い視線です。
「…………奪うつもりはない」
暫く睨み合っているような二人でしたが、渋々といった感じでヴォルが折れました。
「ん、分かったよ。じゃあ繋ぐから、ヴォルは横になってくれる?」
満足のいく答えをもらったからか、ベンダーツさんはにっこりと笑みを見せます。
その分ヴォルは不満そうでしたが、ゴロリと横たわった頭の先は何故か私の膝の上でした。
「あの……ヴォル?」
私は戸惑いをそのまま言葉に乗せます。
これから義手を繋ぐ処置をする筈なのですが、ベンダーツさんの指示では横たわるだけでした。
思い切り疑問符を頭上に浮かべている私です。
「ダメか?」
「いえ、ダメではないですけど……」
真面目にヴォルから問い返され、私はそれ以上何も言えずに口ごもってしまいました。
──ダメではなく、理由が分からないのですけど。
そもそも、ベンダーツさんの邪魔になってしまわないか心配でした。
「ったく、素直じゃないんだから。ヴォル……魔力が少なくなったとはいえ、メルに触れていると精神状態が良いんだろう?」
横になったヴォルの傍に移動し、義手関係の道具を広げながらベンダーツさんが問います。そして布を広げ、仕上げた義手を丁寧に置きました。
こうして着実に整っていく準備の最中、指摘されたヴォルの不機嫌そうな声が響きます。
「……それがどうした」
「くくくっ……、本当にそういうところは可愛いんだから。メル。俺としては問題ないから、ヴォルの苦痛を和らげる為に膝を貸してやってね?」
楽しそうに告げるベンダーツさんでした。
その内容に私は呆気にとられましたが、何気に視線を落として確認したヴォルは苦い顔をしています。
ベンダーツさんの言葉を、再度脳内リピートしてみました。
──何だ、そういう事ですか。
状況的に少しおかしいかもしれませんが、私は安堵してしまいました。
だってヴォルもちゃんと痛いと思っている事が分かって、しかもそれが嫌だと感じているようなのです。
そんな当たり前の事が、私はとても嬉しく感じられました。
私は前回一度だけ目にした事を思い出し、心配になってベンダーツさんへ問い掛けます。
そして取り外した際のヴォルを思うと、かなりの苦痛を感じていたようでした。出血も酷かったですし、声をあげない事の方が信じがたい状態だった気がします。
「ん~……正直、痛いねぇ。嘘ついても仕方ないから言うけど、神経を繋ぐ訳だからさ。痛くない筈がないよね?」
繋ぎ合わせた義手を持ち上げ、動作確認をしながらベンダーツさんが教えてくれました。
やっぱり──と想像していた通りの返答に、私は自分でも血の気が下がっていくのを感じます。けれども、そんな私を当たり前のように強く抱き締めるヴォルの腕がありました。
「余計な事を言うな、マーク」
想像しただけで心臓がギュッと痛くなります。
ヴォルは私を庇うようにその胸に抱き寄せますが、実際に痛いのはヴォルなのでした。
心配を掛けさせないようにとの配慮なのかもしれませんが、ベンダーツさんが嘘を言っている訳ではない事も分かります。
「俺は聞かれたから教えただけさ。ヴォルはメルの知識欲も奪う気か?」
片眉を持ち上げるようにして不満を表し、ヴォルを問い質すベンダーツさんでした。
このやり取りは以前にもあったと思いますが、ヴォルは過保護過ぎると私も思います。しかしながらヴォルの方は、ただじっとベンダーツさんを見つめ返すだけでした。
そしてヴォルは、視線を動かして口を開きます。
「……出来たのか」
「出来たよ?でも、俺の今の質問の答えを聞いてないんだけど」
ベンダーツさんの手元を確認し、話を変えたヴォルでした。それでもベンダーツさんはそれを良しとしないようです。
ヴォルの問い掛けに応じつつも、真っ直ぐ目を向けていました。このまま有耶無耶にはさせないとばかりの強い視線です。
「…………奪うつもりはない」
暫く睨み合っているような二人でしたが、渋々といった感じでヴォルが折れました。
「ん、分かったよ。じゃあ繋ぐから、ヴォルは横になってくれる?」
満足のいく答えをもらったからか、ベンダーツさんはにっこりと笑みを見せます。
その分ヴォルは不満そうでしたが、ゴロリと横たわった頭の先は何故か私の膝の上でした。
「あの……ヴォル?」
私は戸惑いをそのまま言葉に乗せます。
これから義手を繋ぐ処置をする筈なのですが、ベンダーツさんの指示では横たわるだけでした。
思い切り疑問符を頭上に浮かべている私です。
「ダメか?」
「いえ、ダメではないですけど……」
真面目にヴォルから問い返され、私はそれ以上何も言えずに口ごもってしまいました。
──ダメではなく、理由が分からないのですけど。
そもそも、ベンダーツさんの邪魔になってしまわないか心配でした。
「ったく、素直じゃないんだから。ヴォル……魔力が少なくなったとはいえ、メルに触れていると精神状態が良いんだろう?」
横になったヴォルの傍に移動し、義手関係の道具を広げながらベンダーツさんが問います。そして布を広げ、仕上げた義手を丁寧に置きました。
こうして着実に整っていく準備の最中、指摘されたヴォルの不機嫌そうな声が響きます。
「……それがどうした」
「くくくっ……、本当にそういうところは可愛いんだから。メル。俺としては問題ないから、ヴォルの苦痛を和らげる為に膝を貸してやってね?」
楽しそうに告げるベンダーツさんでした。
その内容に私は呆気にとられましたが、何気に視線を落として確認したヴォルは苦い顔をしています。
ベンダーツさんの言葉を、再度脳内リピートしてみました。
──何だ、そういう事ですか。
状況的に少しおかしいかもしれませんが、私は安堵してしまいました。
だってヴォルもちゃんと痛いと思っている事が分かって、しかもそれが嫌だと感じているようなのです。
そんな当たり前の事が、私はとても嬉しく感じられました。
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