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第三章
≪Ⅱ≫恐れるな【1】
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≪Ⅱ≫恐れるな
「あの……ヴォル?皇帝様って……、あのお城の中にいらっしゃるのですか?」
「そうだ」
あ~……、やっぱり。って言うかこの人、いったい何者なのですか?皆が知っているって言う事は、かなりの有名人ですよね?たんなるお金持ちで執事さんがいる訳ではなく、物凄い何かがあるのですよねっ?
「どうした、メル」
いつまでも後ろを振り返っている私に、ヴォルは不思議そうに問い掛けます。いえいえ、私は詳細を何も聞いていませんから。どうしたの前に理解不能なのですよ、この状況。
「あの……もう聞いても良いのですか?」
ヴォルの素性を知らないままにこんな遠くの町へ来てしまった私ですが、何故か私の本能が危険だと言っています。──まぁ、あまり普段は役に立たない本能ですけど。
「すぐに分かる」
あぁ……、やはり教えてはくれないのですね。そのまま真っ直ぐ視線を前に向けてしまったヴォルにならい、私も前を向きます。こう言う場合、ヴォル自らが口を開いてくれるまで待つしかありません。でも、かなり気が重くなってきました。
そんな私の心情とは関係なく、ウマウマさんは真っ直ぐお城に向かいます。お城の前にはまた別の兵士が並んでいます。
「お帰りなさいませ」
恭しく頭を下げる方々。あはは……やっぱり私、帰りたくなってきました。
「メル」
お城の入り口でウマウマさんから降ります。ヴォルが当たり前のように私に手を差し伸べてくれました。あれ?何か、視線を感じます。ヴォルに手伝ってもらい、ウマウマさんを降りた私。辺りを見回し、息を呑みました。
凄く見られています。しかも、大勢の方々から。お城にはたくさんの人がいるのは分かりますが、何故か私が見られている気がします。
「どうした、メル」
思わずヴォルの服を掴んでしまった私です。そして周囲を一瞥した後、ヴォルは何でもないように告げます。
「野次馬だ。気にするな」
いえいえ、物凄く気になるのですがっ。皆さんがヴォルの帰りを待っていた事は何となく分かりますが、私はどういう扱いになっているのでしょうか。
「わ……私、場違いではありませんか?」
綺麗な装いの女性が多く見えます。見たところ、ただのお手伝いの方々ではないでしょう。ヴォルに熱い視線を向け、逆に私へ刺すような視線を向けてきますから。
「ここにメルを連れてきたのは俺だ。場違いなどではない」
挙動不審の私とは違い、はっきり断言するヴォルでした。
しかしながらそうは言われましても、明らかに私に対しての敵意を向けられている気がヒシヒシとしますよ。これは、片眼鏡の視線の比ではありません。
「前を見ろ。恐れるな」
埃一つ落ちていない廊下を真っ直ぐ歩きながら、ヴォルは隣に並ぶ私へと視線を落としました。
いえいえ、無理を言いますね。一介の小さな農村出身の小娘が、こんな大勢の視線を相手にどう闘えと?怖いに決まっているではないですか。
私は無意識ながら、すがるように腕輪に触れていました。
「あの……ヴォル?皇帝様って……、あのお城の中にいらっしゃるのですか?」
「そうだ」
あ~……、やっぱり。って言うかこの人、いったい何者なのですか?皆が知っているって言う事は、かなりの有名人ですよね?たんなるお金持ちで執事さんがいる訳ではなく、物凄い何かがあるのですよねっ?
「どうした、メル」
いつまでも後ろを振り返っている私に、ヴォルは不思議そうに問い掛けます。いえいえ、私は詳細を何も聞いていませんから。どうしたの前に理解不能なのですよ、この状況。
「あの……もう聞いても良いのですか?」
ヴォルの素性を知らないままにこんな遠くの町へ来てしまった私ですが、何故か私の本能が危険だと言っています。──まぁ、あまり普段は役に立たない本能ですけど。
「すぐに分かる」
あぁ……、やはり教えてはくれないのですね。そのまま真っ直ぐ視線を前に向けてしまったヴォルにならい、私も前を向きます。こう言う場合、ヴォル自らが口を開いてくれるまで待つしかありません。でも、かなり気が重くなってきました。
そんな私の心情とは関係なく、ウマウマさんは真っ直ぐお城に向かいます。お城の前にはまた別の兵士が並んでいます。
「お帰りなさいませ」
恭しく頭を下げる方々。あはは……やっぱり私、帰りたくなってきました。
「メル」
お城の入り口でウマウマさんから降ります。ヴォルが当たり前のように私に手を差し伸べてくれました。あれ?何か、視線を感じます。ヴォルに手伝ってもらい、ウマウマさんを降りた私。辺りを見回し、息を呑みました。
凄く見られています。しかも、大勢の方々から。お城にはたくさんの人がいるのは分かりますが、何故か私が見られている気がします。
「どうした、メル」
思わずヴォルの服を掴んでしまった私です。そして周囲を一瞥した後、ヴォルは何でもないように告げます。
「野次馬だ。気にするな」
いえいえ、物凄く気になるのですがっ。皆さんがヴォルの帰りを待っていた事は何となく分かりますが、私はどういう扱いになっているのでしょうか。
「わ……私、場違いではありませんか?」
綺麗な装いの女性が多く見えます。見たところ、ただのお手伝いの方々ではないでしょう。ヴォルに熱い視線を向け、逆に私へ刺すような視線を向けてきますから。
「ここにメルを連れてきたのは俺だ。場違いなどではない」
挙動不審の私とは違い、はっきり断言するヴォルでした。
しかしながらそうは言われましても、明らかに私に対しての敵意を向けられている気がヒシヒシとしますよ。これは、片眼鏡の視線の比ではありません。
「前を見ろ。恐れるな」
埃一つ落ちていない廊下を真っ直ぐ歩きながら、ヴォルは隣に並ぶ私へと視線を落としました。
いえいえ、無理を言いますね。一介の小さな農村出身の小娘が、こんな大勢の視線を相手にどう闘えと?怖いに決まっているではないですか。
私は無意識ながら、すがるように腕輪に触れていました。
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