124 / 515
第三章
5.危険、か【2】
しおりを挟む
「私、ヴォルの助けになりたいと思っています。……初めは形だけの結婚相手なんて嫌だと思っていましたけど、今はそうじゃないです。私がいる事でヴォルが助かるのなら、それでも良いと思っていますから」
無理矢理連れて来た事を悔やんでいるのなら、それはもう必要のない事なのです。私は今、その役目を受けるつもりですから。
「……そうか」
「そうなのです。今更ヴォルが何者とか聞かされても、ヴォルはヴォルです。皇帝様の息子でも、精霊さんに好かれた者って言う凄い人でも同じです。私にとってのヴォルは何も変わりません」
少し困ったような表情のヴォルですが、私は自分の中で結論を出したのです。
さすがに皇帝様の息子という事実には驚きましたけど、そんな事でヴォルに対しての態度を変えるものにはなりません。
「俺を買い被りすぎかもしれないぞ」
「それなら、ヴォルの演技が上手だって事ですね。だって私は、ここまで来る間のヴォルを見て接しての判断なのですから」
「演技?……そうか。やはり、メルを選んで良かった」
フッと表情を緩めるヴォルです。
見目が良いのですから、そういう事を何気にされるとドキッとしちゃうではないですか。でもここに来てからヴォルの表情が僅かに砕けたように思えるのは、私の気のせいでしょうか。
もしかしたら色々と私に話さずにいた事で、少なからず緊張していたのかもしれませんね。
「実はヴォルって、意外と表情豊かだったりします?」
「何故だ」
「セントラルに来てから、旅の時より表情が砕けて見えますよ?」
ヴォルは気付いていなかったようで、私の指摘に驚いているようでした。
「……そうか。隠す事がなくなったからかもな。メルはこんな俺でも受け入れてくれる」
「はい?いえいえ、むしろ何も出来ない私の方がヴォルに受け入れられているのだと思います。色々使えなくてすみません」
そうです。私の方こそ、本当に申し訳ない状態でした。何の知識もないし、能力もない私なのですから。
「俺はメルに助けられている。……そうか。互いに、なのだな」
「あ……」
ヴォルの最後の一言にハッとしました。
そう言う事なのですか。人間関係って、本当に難しいですね。実際に私、大人としての人間関係は経験が薄いです。
立場をわきまえるって事を仕事柄していただけで、キチンとした大人の人付き合いをした事はないのですから。──単に相手に合わせていただけなので。
「良い事、なのですか?」
だからこそ、不安になります。自分が何処まで他者の中へ踏み込んで良いか、見極めが難しいのです。
「良いのだろう。俺もメルも、互いが互いに助けられている。それが嫌ではないのだから、悪い筈がない」
ヴォルは簡潔に言い切りました。
でもここまで自信満々に言われると、逆におかしくなってきてしまいます。悩んでいる自分が馬鹿らしくなるのもあるでしょうけど。
本当に、私に足りない部分をヴォルが補ってくれているようです。
無理矢理連れて来た事を悔やんでいるのなら、それはもう必要のない事なのです。私は今、その役目を受けるつもりですから。
「……そうか」
「そうなのです。今更ヴォルが何者とか聞かされても、ヴォルはヴォルです。皇帝様の息子でも、精霊さんに好かれた者って言う凄い人でも同じです。私にとってのヴォルは何も変わりません」
少し困ったような表情のヴォルですが、私は自分の中で結論を出したのです。
さすがに皇帝様の息子という事実には驚きましたけど、そんな事でヴォルに対しての態度を変えるものにはなりません。
「俺を買い被りすぎかもしれないぞ」
「それなら、ヴォルの演技が上手だって事ですね。だって私は、ここまで来る間のヴォルを見て接しての判断なのですから」
「演技?……そうか。やはり、メルを選んで良かった」
フッと表情を緩めるヴォルです。
見目が良いのですから、そういう事を何気にされるとドキッとしちゃうではないですか。でもここに来てからヴォルの表情が僅かに砕けたように思えるのは、私の気のせいでしょうか。
もしかしたら色々と私に話さずにいた事で、少なからず緊張していたのかもしれませんね。
「実はヴォルって、意外と表情豊かだったりします?」
「何故だ」
「セントラルに来てから、旅の時より表情が砕けて見えますよ?」
ヴォルは気付いていなかったようで、私の指摘に驚いているようでした。
「……そうか。隠す事がなくなったからかもな。メルはこんな俺でも受け入れてくれる」
「はい?いえいえ、むしろ何も出来ない私の方がヴォルに受け入れられているのだと思います。色々使えなくてすみません」
そうです。私の方こそ、本当に申し訳ない状態でした。何の知識もないし、能力もない私なのですから。
「俺はメルに助けられている。……そうか。互いに、なのだな」
「あ……」
ヴォルの最後の一言にハッとしました。
そう言う事なのですか。人間関係って、本当に難しいですね。実際に私、大人としての人間関係は経験が薄いです。
立場をわきまえるって事を仕事柄していただけで、キチンとした大人の人付き合いをした事はないのですから。──単に相手に合わせていただけなので。
「良い事、なのですか?」
だからこそ、不安になります。自分が何処まで他者の中へ踏み込んで良いか、見極めが難しいのです。
「良いのだろう。俺もメルも、互いが互いに助けられている。それが嫌ではないのだから、悪い筈がない」
ヴォルは簡潔に言い切りました。
でもここまで自信満々に言われると、逆におかしくなってきてしまいます。悩んでいる自分が馬鹿らしくなるのもあるでしょうけど。
本当に、私に足りない部分をヴォルが補ってくれているようです。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】姫将軍の政略結婚
ユリーカ
恋愛
姫将軍ことハイランド王国第四王女エレノアの嫁ぎ先が決まった。そこは和平が成立したアドラール帝国、相手は黒太子フリードリヒ。
姫将軍として帝国と戦ったエレノアが和平の条件で嫁ぐ政略結婚であった。
人質同然で嫁いだつもりのエレノアだったが、帝国側にはある事情があって‥‥。
自国で不遇だった姫将軍が帝国で幸せになるお話です。
不遇な姫が優しい王子に溺愛されるシンデレラストーリーのはずが、なぜか姫が武装し皇太子がオレ様になりました。ごめんなさい。
スピンオフ「盲目な魔法使いのお気に入り」も宜しくお願いします。
※ 全話完結済み。7時20時更新します。
※ ファンタジー要素多め。魔法なし物理のみです。
※ 第四章で魔物との戦闘があります。
※ 短編と長編の違いがよくわかっておりません!すみません!十万字以上が長編と解釈してます。文字数で判断ください。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
【本編完結済み】二人は常に手を繋ぐ
もも野はち助
恋愛
【あらすじ】6歳になると受けさせられる魔力測定で、微弱の初級魔法しか使えないと判定された子爵令嬢のロナリアは、魔法学園に入学出来ない事で落胆していた。すると母レナリアが気分転換にと、自分の親友宅へとロナリアを連れ出す。そこで出会った同年齢の伯爵家三男リュカスも魔法が使えないという判定を受け、酷く落ち込んでいた。そんな似た境遇の二人はお互いを慰め合っていると、ひょんなことからロナリアと接している時だけ、リュカスが上級魔法限定で使える事が分かり、二人は翌年7歳になると一緒に王立魔法学園に通える事となる。この物語は、そんな二人が手を繋ぎながら成長していくお話。
※魔法設定有りですが、対人で使用する展開はございません。ですが魔獣にぶっ放してる時があります。
★本編は16話完結済み★
番外編は今後も更新を追加する可能性が高いですが、2024年2月現在は切りの良いところまで書きあげている為、作品を一度完結処理しております。
※尚『小説家になろう』でも投稿している作品になります。
【完結】初恋の人に嫁ぐお姫様は毎日が幸せです。
くまい
恋愛
王国の姫であるヴェロニカには忘れられない初恋の人がいた。その人は王族に使える騎士の団長で、幼少期に兄たちに剣術を教えていたのを目撃したヴェロニカはその姿に一目惚れをしてしまった。
だが一国の姫の結婚は、国の政治の道具として見知らぬ国の王子に嫁がされるのが当たり前だった。だからヴェロニカは好きな人の元に嫁ぐことは夢物語だと諦めていた。
そしてヴェロニカが成人を迎えた年、王妃である母にこの中から結婚相手を探しなさいと釣書を渡された。あぁ、ついにこの日が来たのだと覚悟を決めて相手を見定めていると、最後の釣書には初恋の人の名前が。
これは最後のチャンスかもしれない。ヴェロニカは息を大きく吸い込んで叫ぶ。
「私、ヴェロニカ・エッフェンベルガーはアーデルヘルム・シュタインベックに婚約を申し込みます!」
(小説家になろう、カクヨミでも掲載中)
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
君に何度でも恋をする
明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。
「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」
「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」
そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。
ワイルド・プロポーズ
藤谷 郁
恋愛
北見瑤子。もうすぐ30歳。
総合ショッピングセンター『ウイステリア』財務部経理課主任。
生真面目で細かくて、その上、女の魅力ゼロ。男いらずの独身主義者と噂される枯れ女に、ある日突然見合い話が舞い込んだ。
私は決して独身主義者ではない。ただ、怖いだけ――
見合い写真を開くと、理想どおりの男性が微笑んでいた。
ドキドキしながら、紳士で穏やかで優しそうな彼、嶺倉京史に会いに行くが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる