「結婚しよう」

まひる

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第三章

5.危険、か【2】

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「私、ヴォルの助けになりたいと思っています。……初めは形だけの結婚相手なんて嫌だと思っていましたけど、今はそうじゃないです。私がいる事でヴォルが助かるのなら、それでも良いと思っていますから」

 無理矢理連れて来た事を悔やんでいるのなら、それはもう必要のない事なのです。私は今、その役目を受けるつもりですから。

「……そうか」

「そうなのです。今更ヴォルが何者とか聞かされても、ヴォルはヴォルです。皇帝様の息子でも、精霊さんに好かれた者って言う凄い人でも同じです。私にとってのヴォルは何も変わりません」

 少し困ったような表情のヴォルですが、私は自分の中で結論を出したのです。
 さすがに皇帝様の息子という事実には驚きましたけど、そんな事でヴォルに対しての態度を変えるものにはなりません。

「俺を買い被りすぎかもしれないぞ」

「それなら、ヴォルの演技が上手だって事ですね。だって私は、ここまで来る間のヴォルを見て接しての判断なのですから」

「演技?……そうか。やはり、メルを選んで良かった」

 フッと表情を緩めるヴォルです。
 見目が良いのですから、そういう事を何気にされるとドキッとしちゃうではないですか。でもここに来てからヴォルの表情がわずかに砕けたように思えるのは、私の気のせいでしょうか。
 もしかしたら色々と私に話さずにいた事で、少なからず緊張していたのかもしれませんね。

「実はヴォルって、意外と表情豊かだったりします?」

「何故だ」

「セントラルに来てから、旅の時より表情が砕けて見えますよ?」

 ヴォルは気付いていなかったようで、私の指摘に驚いているようでした。

「……そうか。隠す事がなくなったからかもな。メルはこんな俺でも受け入れてくれる」

「はい?いえいえ、むしろ何も出来ない私の方がヴォルに受け入れられているのだと思います。色々使えなくてすみません」

 そうです。私の方こそ、本当に申し訳ない状態でした。何の知識もないし、能力もない私なのですから。

「俺はメルに助けられている。……そうか。互いに、なのだな」

「あ……」

 ヴォルの最後の一言にハッとしました。
 そう言う事なのですか。人間関係って、本当に難しいですね。実際に私、大人としての人間関係は経験が薄いです。
 立場をわきまえるって事を仕事柄していただけで、キチンとした大人の人付き合いをした事はないのですから。──単に相手に合わせていただけなので。

「良い事、なのですか?」

 だからこそ、不安になります。自分が何処まで他者の中へ踏み込んで良いか、見極めが難しいのです。

「良いのだろう。俺もメルも、互いが互いに助けられている。それが嫌ではないのだから、悪い筈がない」

 ヴォルは簡潔に言い切りました。
 でもここまで自信満々に言われると、逆におかしくなってきてしまいます。悩んでいる自分が馬鹿らしくなるのもあるでしょうけど。
 本当に、私に足りない部分をヴォルが補ってくれているようです。
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