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第三章
8.誰も見ていない【2】
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「無理はするな。少し休むと良い」
ですが私のその様な浅はかな考えは、すぐにヴォルに見抜かれてしまいます。会場の中心から離れ、端の方に椅子を用意されてしまいました。
ん~…、でもこのまま退室するよりはマシかもしれませんね。それに、皇帝様の並びでなくて物凄く良かったです。
「すみません。ありがとうございます、ヴォル」
とりあえず勧められるまま椅子に腰掛け、詰めていた息をフゥ……と静かに吐き出しました。
息が詰まります。ここで負けてはいけないのでしょうけど、二週間そこそこの付け焼き刃の私には限界が見えています。それでも張り付けた笑顔を消してはダメですね。何気に私、今もかなり見られていますから。
それなのにもう前を向いている事が出来なくて、視線を落としてボンヤリと足元の床を見ていました。
あ、細くて綺麗な足です。んん?近付いてきました?
「ちょっと」
「はい?」
その鋭い声に、顔を上げながら思わず素で答えてしまいました。あ、この人……。
「本当にヴォルティ様の婚約者として公の場に顔を出すなんて、わたくし驚きましたわ」
「サーファ……さん」
見下ろすようにして鋭く告げられ、私は対応に困って固まってしまいました。
侍女見習いでお城に勤めている彼女は伯爵家のご令嬢で、初日のやり取りからヴォルに好意を抱いている人だと認識しています。
今日は貴族の方の集まりなので、お父様とご一緒なのでしょうか。
「でもさすがね。着飾ればそれなりに見られるかっこうになるじゃない」
「……ありがとうございます」
一瞬消えそうになった笑みを張り付け直し、姿勢を正します。そして凄く僅かにですが、彼女から誉めてもらえているのだと判断しました。
「誉めてないわよ。馬鹿じゃないの?」
サーファさんが語気を強めて言い捨てます。
ヒクッ──。穏便に済まそうとしている私も、ここまで明らかな敵意を向けられると顔がひきつってしまいます。あ~、ストレスですね。
「そんな見目でヴォルティ様の婚約者なんて、聞いて呆れるわ。ねぇ、わたくしと代わってくれない?わたくしなら容姿も地位もヴォルティ様に十分釣り合うわね。あの方は背が高いし見た目も良いから、子供を作るのには最高よね。わたくしとの子供なら、確実に美しく生まれてくるもの。……そうそう。精霊なんてつかなくて良いけど、魔力持ちならさらに言う事ないわ」
サーファさんの表情を見ている限りでは、端から見れば楽しそうにお喋りしているように見えるかもしれません。
けれども代わって、って……。本当にこの人、ヴォルの何処を見ているのですかね。人格とか好みとか、人それぞれの考え方があるのですけど。だいたい、ヴォルが選んで連れてきたのは私なのですが。
あまりのサーファさんの言い分に、私の怒りゲージが増していきます。
「ちょっと、聞いてるの?このわたくしが話してるのよ?今のわたくしは使用人じゃないの。貴女とは出自が違うのよ。ヴォルティ様の母上は別として、お父上は皇帝様なんですもの。わたくしの方が釣り合うに決まっているわ」
再度同じ言葉を告げました。──釣り合う、ですか。
会場の端で椅子に腰掛けて青い顔をしている私と、ウフフと高笑いする華やかなサーファさん。誰の目から見ても、ヴォルの隣に相応しいのはサーファさんに決まっています。
そんな事は初めから分かっていましたよ。
ですが私のその様な浅はかな考えは、すぐにヴォルに見抜かれてしまいます。会場の中心から離れ、端の方に椅子を用意されてしまいました。
ん~…、でもこのまま退室するよりはマシかもしれませんね。それに、皇帝様の並びでなくて物凄く良かったです。
「すみません。ありがとうございます、ヴォル」
とりあえず勧められるまま椅子に腰掛け、詰めていた息をフゥ……と静かに吐き出しました。
息が詰まります。ここで負けてはいけないのでしょうけど、二週間そこそこの付け焼き刃の私には限界が見えています。それでも張り付けた笑顔を消してはダメですね。何気に私、今もかなり見られていますから。
それなのにもう前を向いている事が出来なくて、視線を落としてボンヤリと足元の床を見ていました。
あ、細くて綺麗な足です。んん?近付いてきました?
「ちょっと」
「はい?」
その鋭い声に、顔を上げながら思わず素で答えてしまいました。あ、この人……。
「本当にヴォルティ様の婚約者として公の場に顔を出すなんて、わたくし驚きましたわ」
「サーファ……さん」
見下ろすようにして鋭く告げられ、私は対応に困って固まってしまいました。
侍女見習いでお城に勤めている彼女は伯爵家のご令嬢で、初日のやり取りからヴォルに好意を抱いている人だと認識しています。
今日は貴族の方の集まりなので、お父様とご一緒なのでしょうか。
「でもさすがね。着飾ればそれなりに見られるかっこうになるじゃない」
「……ありがとうございます」
一瞬消えそうになった笑みを張り付け直し、姿勢を正します。そして凄く僅かにですが、彼女から誉めてもらえているのだと判断しました。
「誉めてないわよ。馬鹿じゃないの?」
サーファさんが語気を強めて言い捨てます。
ヒクッ──。穏便に済まそうとしている私も、ここまで明らかな敵意を向けられると顔がひきつってしまいます。あ~、ストレスですね。
「そんな見目でヴォルティ様の婚約者なんて、聞いて呆れるわ。ねぇ、わたくしと代わってくれない?わたくしなら容姿も地位もヴォルティ様に十分釣り合うわね。あの方は背が高いし見た目も良いから、子供を作るのには最高よね。わたくしとの子供なら、確実に美しく生まれてくるもの。……そうそう。精霊なんてつかなくて良いけど、魔力持ちならさらに言う事ないわ」
サーファさんの表情を見ている限りでは、端から見れば楽しそうにお喋りしているように見えるかもしれません。
けれども代わって、って……。本当にこの人、ヴォルの何処を見ているのですかね。人格とか好みとか、人それぞれの考え方があるのですけど。だいたい、ヴォルが選んで連れてきたのは私なのですが。
あまりのサーファさんの言い分に、私の怒りゲージが増していきます。
「ちょっと、聞いてるの?このわたくしが話してるのよ?今のわたくしは使用人じゃないの。貴女とは出自が違うのよ。ヴォルティ様の母上は別として、お父上は皇帝様なんですもの。わたくしの方が釣り合うに決まっているわ」
再度同じ言葉を告げました。──釣り合う、ですか。
会場の端で椅子に腰掛けて青い顔をしている私と、ウフフと高笑いする華やかなサーファさん。誰の目から見ても、ヴォルの隣に相応しいのはサーファさんに決まっています。
そんな事は初めから分かっていましたよ。
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