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第1章──幼年期1~4歳──
005 なかわるいの?
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ともかく──そんなこんながあったものの、フェリシアはきょうだい達に邸内を案内してもらう。
先程フェリシアが誕生した場所『抱卵室』はこのラングロフ家内にあったようで、それなりの大きな屋敷には必ず用意されているようだ。──とはいっても邸宅の離れである。
「ここがシアの部屋です。内装や装飾品で何か不都合があればわたしに声を掛けてください。ちなみに隣がわたしの部屋ですからね」
「自分の部屋のアピールをするなんて、兄様は何を企んでいるんだろうね。襲う気なの?ロリコンなの?」
「シア、一人で男の部屋に行ったらダメ」
ガウリイルの言葉に、マルコとエリアスの追撃が入る。
交代で抱っこをされながらの邸内案内を受けているフェリシアだが、着替えたのが三階であった為に始まりは同じ階だった。しかしながらこのきょうだい、都度何かしらの衝突がある。
仲が悪いのとは違うようだが──ガウリイルの言葉にマルコが毒を吐き、それにエリアスのサポートがつくのだ。どちらに彼の軍配が上がるかはその度に違うのだけれど、このコントは必須のようである。
「そ、そんな事は……っ!あ、でも一人で異性の部屋に行ってはダメなのは確かですね」
「にいさまたち、なかわるいの?」
マルコの言葉に反論しようとしたのだろうが、ガウリイルはその前にエリアスに賛同した。
何だか、やはり複雑な仲のようで──思わずフェリシアは問い掛けてしまう。勿論、三人は揃って呆けた表情を見せた。
問われると思っていなかったのか、互いに顔を見合わせている。
「そうではありませんよ、シア」
「ぼくらはとても仲が良いきょうだいだよね」
「うん。おれはガウ兄もマル兄も好き」
一斉にフェリシアの問いを否定してきた。──この一体感はきょうだい故なのかと驚きを覚えつつも、三人が不仲ではない事は伝わってくる。
「よかった」
あまりにも揃った三人の言動に、フェリシアは思わず笑みが溢れた。そしてその表情のままに安堵の言葉を告げる。
きょうだい仲が悪いのならば、フェリシアとしても後々困った事になるのではと危惧したからだ。そして家族仲が良い事は、精神衛生上一番大切である。
だが、フェリシアから満面の笑みを向けられたきょうだいは撃沈した。
ガウリイルは彼女を抱いたまま赤面し、マルコは顔を両手で覆っている。けれども隠しきれていない頬は同じく真っ赤で、照れているのは確実だった。エリアスに至っては、三人の周囲を駆け回っている──フェリシアはその理由が分からないが。
そんな三者三様の反応に唖然としていたフェリシアだが、とりあえずエリアスに意識を向けた。
本人が分かっているのかは不明だが、フェリシアを抱いたガウリイルとマルコの周囲をかなりの速度で走っている。尾を追い掛ける犬のようであり、興奮状態の犬が行う行動にも似ていた。
しかしながら、このままでは少し危ないと判断せざるを得ない。走っているエリアスも危険だが、中心に立ち尽くす側としては、いつ引っ掛けられるか恐怖でもあった。
そこで、エリアスを落ち着かせるにはどうすべきか──と思考を巡らせたフェリシアは、ナディヤがヨアキムに取った動作を思い出す。
「エリアス、おすわり」
「っ?!」
直後、ピンと耳を立てたままその場にしゃがみこむエリアス。
やはりこのような『しつけ』は行き届いているようだ。元より、オオカミ種より弱者であるウサギ種のナディヤは、その身を守る為にこういったキーワードは必須なのだろうと推測される。
ところが、フェリシアの態度に驚いたのはガウリイルとマルコである。
「母様のようですね」
「小さな母様だよ、もう既に」
「なに、ガウにい。マルにいも」
硬直したガウリイルとマルコに、フェリシアはにっこりと笑みを向けた。──けれども笑顔でありながら、その瞳は笑っていない。
相手が僅か一歳児の幼女でありながら、ガウリイルとマルコは何も言えなくなっている。完全に気圧されていた。
「あれ、おれ……どうした?」
我に返ったように、エリアスがしゃがみこんだまま周囲を見回していた。
「エリにい。ひとのまわり、はしるの、あぶない」
「あ……、はい。ごめんなさい」
「ん」
素直に謝罪したエリアスに、フェリシアはにこっと笑みを返す。
直感で生きているように見えるエリアスは、実に単純明快で分かりやすかった。裏表がない為、深読みをしなくて良い。
「え……と。そんな感じで……次に行こうか、兄様」
「……そうですね。いつまで経っても案内が終わらないですからね」
マルコが若干引き気味にガウリイルに提案する形で、二人が邸内案内を再開した。エリアスはフェリシアの許しがあったからか、すぐに立ち上がる事が出来たようである。つまりは解除条件があるようだ。
それからは比較的普通の御屋敷見学だった。フェリシアにとっては目にする物が殆ど初めての為、スキル【神の眼】を読む事が忙しかったくらいである。
結果的にラングロフ邸は三階が主家の私室と浴室、二階は客間と執務室や食堂など。一階がキッチン及び、使用人の部屋と浴室のようだ。各階にトイレがあることから、意外に生活環境は悪くないとフェリシアは思う。
「一通り案内させて頂きましたが、どうでしたかシア。一度では覚えられないと思いますが、何度でもお教え致します。その都度聞いて下さいね」
「覚えていて損はないと思うんだ。自分の家で迷子なんて、洒落にならないからな」
「おれ、迷子にならない」
ガウリイルは笑顔でフェリシアにそう告げた。マルコは鼻で笑い、エリアスは何故か拳を固めている。
もしかすると『迷子』になったのはエリアスかも知れなかったが、フェリシアは微笑みでそれらをスルーする。下手に掘り返してはダメな気がしたのだ。
「うん。シア、おぼえた。だいじょうぶ」
自分で自分の愛称を口にする恥ずかしさを感じつつも、フェリシアはこれまで案内してくれたきょうだい達に笑みを返す。だが、ここで再び三人が揃って顔を赤らめたり挙動不審気味な反応を示した。
(何だ?さっきも思ったけど、普通きょうだいに照れたりするか?)
不可思議に思ったフェリシアは、最小サイズになっているガウリイルのステータスを再度確認する。
あくまでも確認作業の一貫であったのだが、それを見て思わず硬直してしまった。
≪名前……ガヴリイル・ラングロフ
状態……【魅了[中]】≫
まさかの異常状態である。
魅了とは、『ひとの心をひきつけてうっとりさせる』あれだ。
もしやと、マルコとエリアスにも視線を向ける。
≪名前……マルコ・ラングロフ
状態……【魅了[小]】≫
≪名前……エリアス・ラングロフ
状態……【魅了[大]】≫
やってしまった感が非常に強いが、フェリシアとしてはきょうだいに魅了を掛けたつもりは毛頭ないのだ。
そう。ただ『微笑んだ』だけで──
名前……フェリシア・ラングロフ
年齢……1歳
種別……ヒト科獣属オオカミ種
体力……E
魔力……E【火・雷・光】
スキル……【神の眼】【天使の微笑み】
加護……【女神の慈愛】
称号……【異世界の転生者】≫
自分のステータスを見て、フェリシアはゾッとした。
【天使の微笑み】とは、想像通りではあるが他者を魅了する能力である。しかも発動は『笑み』を向けるだけ。──「何だこれは」と叫びたくなる案件だった。
「にいさまたち……、だいじょうぶ?」
「あ、あぁ……大丈夫ですよ、シア。我が妹ながら、本当に天使のような愛らしさですね」
「あまりにもシアの微笑みが可愛らしいから、思わずぼくの意識が飛んでしまったようだ」
「シア、可愛い」
怖々問い掛けたフェリシアに、三人はデレてみせる。さすがにフェリシアは、これ以上言葉を紡げなかった。
実のきょうだいに対してでさえ、『これ』である。しかも特別何もしていないのに、勝手にスキルが増えるのは何故か分からなかった。そもそも、そう簡単に増えてしまって良いものなのだろうか。
「きゃーっ!」
その時、フェリシアの恐怖を抱えた思考を邪魔するかのように、窓の外から甲高い悲鳴が聞こえてきた。しかも、相手は女性のようである。
「にいさま!」
「分かっていますっ」
端的な言葉に、すぐさま反応してくれたのはガウリイルだ。
フェリシアを抱いているというのに、この六歳児はそう感じさせない軽快な動作で廊下を駆る。更にはフェリシアに動きの不安感を与えないような水平方向への流れる移動だ。
ガウリイルは風の魔法が得意である為、無意識下で飛んでいたのである。
元より一階にいたとはいえ、その速度は尋常ではなく──現場である中庭に到着した。
「っ」
視界に映った光景に、フェリシアは息を呑む。
そこにいたのは背に茶色い鳥型の翼のある女の子と、斧のような巨大な刃を振り下ろそうとしていた黒い影。
何故か黒い影にしか見えず、容姿も性別も全く認識出来なかった。
「させませんっ」
ガウリイルが片手を突きだして影に向ける。フェリシアを抱いている為、現在地以上近付く事に懸念を感じたようだ。
だがその距離──相手まで三十歩はある──程度では、ガウリイルの風魔力にとって障害など感じさせない。大きく空気がうねり、一抱え程の渦となって真っ直ぐに影に向かっていく。
そして大蛇のように武器を所持した影を丸呑みし、空へ上がっていった。
「すご……」
フェリシアは瞳を落ちそうな程見開きながら、初めて見る魔法効果に声を漏らす。
だが、宙で風の渦が消えた時、そこには何も残ってはいなかったのだ。
「逃がしましたか……。すみません、シア。少々手荒であった事を詫びます」
僅かに顔を歪めるガウリイルだったが、すぐに表情を柔らかく緩める。
そうして頭を下げたガウリイルに、フェリシアは手を伸ばして撫でた。咄嗟の状況にも関わらす彼女の要望を叶え、かつ被害者と思しき少女を確保出来たのである。
これを上出来と言わずして何だというのだ。
先程フェリシアが誕生した場所『抱卵室』はこのラングロフ家内にあったようで、それなりの大きな屋敷には必ず用意されているようだ。──とはいっても邸宅の離れである。
「ここがシアの部屋です。内装や装飾品で何か不都合があればわたしに声を掛けてください。ちなみに隣がわたしの部屋ですからね」
「自分の部屋のアピールをするなんて、兄様は何を企んでいるんだろうね。襲う気なの?ロリコンなの?」
「シア、一人で男の部屋に行ったらダメ」
ガウリイルの言葉に、マルコとエリアスの追撃が入る。
交代で抱っこをされながらの邸内案内を受けているフェリシアだが、着替えたのが三階であった為に始まりは同じ階だった。しかしながらこのきょうだい、都度何かしらの衝突がある。
仲が悪いのとは違うようだが──ガウリイルの言葉にマルコが毒を吐き、それにエリアスのサポートがつくのだ。どちらに彼の軍配が上がるかはその度に違うのだけれど、このコントは必須のようである。
「そ、そんな事は……っ!あ、でも一人で異性の部屋に行ってはダメなのは確かですね」
「にいさまたち、なかわるいの?」
マルコの言葉に反論しようとしたのだろうが、ガウリイルはその前にエリアスに賛同した。
何だか、やはり複雑な仲のようで──思わずフェリシアは問い掛けてしまう。勿論、三人は揃って呆けた表情を見せた。
問われると思っていなかったのか、互いに顔を見合わせている。
「そうではありませんよ、シア」
「ぼくらはとても仲が良いきょうだいだよね」
「うん。おれはガウ兄もマル兄も好き」
一斉にフェリシアの問いを否定してきた。──この一体感はきょうだい故なのかと驚きを覚えつつも、三人が不仲ではない事は伝わってくる。
「よかった」
あまりにも揃った三人の言動に、フェリシアは思わず笑みが溢れた。そしてその表情のままに安堵の言葉を告げる。
きょうだい仲が悪いのならば、フェリシアとしても後々困った事になるのではと危惧したからだ。そして家族仲が良い事は、精神衛生上一番大切である。
だが、フェリシアから満面の笑みを向けられたきょうだいは撃沈した。
ガウリイルは彼女を抱いたまま赤面し、マルコは顔を両手で覆っている。けれども隠しきれていない頬は同じく真っ赤で、照れているのは確実だった。エリアスに至っては、三人の周囲を駆け回っている──フェリシアはその理由が分からないが。
そんな三者三様の反応に唖然としていたフェリシアだが、とりあえずエリアスに意識を向けた。
本人が分かっているのかは不明だが、フェリシアを抱いたガウリイルとマルコの周囲をかなりの速度で走っている。尾を追い掛ける犬のようであり、興奮状態の犬が行う行動にも似ていた。
しかしながら、このままでは少し危ないと判断せざるを得ない。走っているエリアスも危険だが、中心に立ち尽くす側としては、いつ引っ掛けられるか恐怖でもあった。
そこで、エリアスを落ち着かせるにはどうすべきか──と思考を巡らせたフェリシアは、ナディヤがヨアキムに取った動作を思い出す。
「エリアス、おすわり」
「っ?!」
直後、ピンと耳を立てたままその場にしゃがみこむエリアス。
やはりこのような『しつけ』は行き届いているようだ。元より、オオカミ種より弱者であるウサギ種のナディヤは、その身を守る為にこういったキーワードは必須なのだろうと推測される。
ところが、フェリシアの態度に驚いたのはガウリイルとマルコである。
「母様のようですね」
「小さな母様だよ、もう既に」
「なに、ガウにい。マルにいも」
硬直したガウリイルとマルコに、フェリシアはにっこりと笑みを向けた。──けれども笑顔でありながら、その瞳は笑っていない。
相手が僅か一歳児の幼女でありながら、ガウリイルとマルコは何も言えなくなっている。完全に気圧されていた。
「あれ、おれ……どうした?」
我に返ったように、エリアスがしゃがみこんだまま周囲を見回していた。
「エリにい。ひとのまわり、はしるの、あぶない」
「あ……、はい。ごめんなさい」
「ん」
素直に謝罪したエリアスに、フェリシアはにこっと笑みを返す。
直感で生きているように見えるエリアスは、実に単純明快で分かりやすかった。裏表がない為、深読みをしなくて良い。
「え……と。そんな感じで……次に行こうか、兄様」
「……そうですね。いつまで経っても案内が終わらないですからね」
マルコが若干引き気味にガウリイルに提案する形で、二人が邸内案内を再開した。エリアスはフェリシアの許しがあったからか、すぐに立ち上がる事が出来たようである。つまりは解除条件があるようだ。
それからは比較的普通の御屋敷見学だった。フェリシアにとっては目にする物が殆ど初めての為、スキル【神の眼】を読む事が忙しかったくらいである。
結果的にラングロフ邸は三階が主家の私室と浴室、二階は客間と執務室や食堂など。一階がキッチン及び、使用人の部屋と浴室のようだ。各階にトイレがあることから、意外に生活環境は悪くないとフェリシアは思う。
「一通り案内させて頂きましたが、どうでしたかシア。一度では覚えられないと思いますが、何度でもお教え致します。その都度聞いて下さいね」
「覚えていて損はないと思うんだ。自分の家で迷子なんて、洒落にならないからな」
「おれ、迷子にならない」
ガウリイルは笑顔でフェリシアにそう告げた。マルコは鼻で笑い、エリアスは何故か拳を固めている。
もしかすると『迷子』になったのはエリアスかも知れなかったが、フェリシアは微笑みでそれらをスルーする。下手に掘り返してはダメな気がしたのだ。
「うん。シア、おぼえた。だいじょうぶ」
自分で自分の愛称を口にする恥ずかしさを感じつつも、フェリシアはこれまで案内してくれたきょうだい達に笑みを返す。だが、ここで再び三人が揃って顔を赤らめたり挙動不審気味な反応を示した。
(何だ?さっきも思ったけど、普通きょうだいに照れたりするか?)
不可思議に思ったフェリシアは、最小サイズになっているガウリイルのステータスを再度確認する。
あくまでも確認作業の一貫であったのだが、それを見て思わず硬直してしまった。
≪名前……ガヴリイル・ラングロフ
状態……【魅了[中]】≫
まさかの異常状態である。
魅了とは、『ひとの心をひきつけてうっとりさせる』あれだ。
もしやと、マルコとエリアスにも視線を向ける。
≪名前……マルコ・ラングロフ
状態……【魅了[小]】≫
≪名前……エリアス・ラングロフ
状態……【魅了[大]】≫
やってしまった感が非常に強いが、フェリシアとしてはきょうだいに魅了を掛けたつもりは毛頭ないのだ。
そう。ただ『微笑んだ』だけで──
名前……フェリシア・ラングロフ
年齢……1歳
種別……ヒト科獣属オオカミ種
体力……E
魔力……E【火・雷・光】
スキル……【神の眼】【天使の微笑み】
加護……【女神の慈愛】
称号……【異世界の転生者】≫
自分のステータスを見て、フェリシアはゾッとした。
【天使の微笑み】とは、想像通りではあるが他者を魅了する能力である。しかも発動は『笑み』を向けるだけ。──「何だこれは」と叫びたくなる案件だった。
「にいさまたち……、だいじょうぶ?」
「あ、あぁ……大丈夫ですよ、シア。我が妹ながら、本当に天使のような愛らしさですね」
「あまりにもシアの微笑みが可愛らしいから、思わずぼくの意識が飛んでしまったようだ」
「シア、可愛い」
怖々問い掛けたフェリシアに、三人はデレてみせる。さすがにフェリシアは、これ以上言葉を紡げなかった。
実のきょうだいに対してでさえ、『これ』である。しかも特別何もしていないのに、勝手にスキルが増えるのは何故か分からなかった。そもそも、そう簡単に増えてしまって良いものなのだろうか。
「きゃーっ!」
その時、フェリシアの恐怖を抱えた思考を邪魔するかのように、窓の外から甲高い悲鳴が聞こえてきた。しかも、相手は女性のようである。
「にいさま!」
「分かっていますっ」
端的な言葉に、すぐさま反応してくれたのはガウリイルだ。
フェリシアを抱いているというのに、この六歳児はそう感じさせない軽快な動作で廊下を駆る。更にはフェリシアに動きの不安感を与えないような水平方向への流れる移動だ。
ガウリイルは風の魔法が得意である為、無意識下で飛んでいたのである。
元より一階にいたとはいえ、その速度は尋常ではなく──現場である中庭に到着した。
「っ」
視界に映った光景に、フェリシアは息を呑む。
そこにいたのは背に茶色い鳥型の翼のある女の子と、斧のような巨大な刃を振り下ろそうとしていた黒い影。
何故か黒い影にしか見えず、容姿も性別も全く認識出来なかった。
「させませんっ」
ガウリイルが片手を突きだして影に向ける。フェリシアを抱いている為、現在地以上近付く事に懸念を感じたようだ。
だがその距離──相手まで三十歩はある──程度では、ガウリイルの風魔力にとって障害など感じさせない。大きく空気がうねり、一抱え程の渦となって真っ直ぐに影に向かっていく。
そして大蛇のように武器を所持した影を丸呑みし、空へ上がっていった。
「すご……」
フェリシアは瞳を落ちそうな程見開きながら、初めて見る魔法効果に声を漏らす。
だが、宙で風の渦が消えた時、そこには何も残ってはいなかったのだ。
「逃がしましたか……。すみません、シア。少々手荒であった事を詫びます」
僅かに顔を歪めるガウリイルだったが、すぐに表情を柔らかく緩める。
そうして頭を下げたガウリイルに、フェリシアは手を伸ばして撫でた。咄嗟の状況にも関わらす彼女の要望を叶え、かつ被害者と思しき少女を確保出来たのである。
これを上出来と言わずして何だというのだ。
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