12 / 60
第1章──幼年期1~4歳──
012 魔力って凄い
しおりを挟む
「騒ぐなよぉ。フェル、マジでうるさい」
「だって、だって」
「だから静かにしろってぇの。大丈夫だ。お前の入れられた黒い箱を壊す時、俺が風の結界を張ったからな。音は漏れねぇし、震動なんかも伝わらねぇから」
混乱しながら叫ぶフェリシアの頭部を、グーリフは口先で弄りながら宥める。
大きい図体だが、グーリフは妙に優しいところがあるようだ。
「……何だか色々と、本当にありがとう、グーリフ」
「良いって事よ。で、どうする?……いや、どうしたい?俺はフェルとなら、ここから出られるぞ?」
「えっ?!で、でも、他の皆は……」
フェリシアが改めて感謝を伝えると、グーリフから思いがけない提案をされる。あまりの突然の申し出に、フェリシアは戸惑いを隠せなかった。
勿論、脱出はしたい。ここにいては確実に危険な事が分かるのだ。けれども、他にもたくさんの檻がある。確認まではしていないが、囚われている中にフェリシアと同じように、獣型に変えられてしまっているヒトもいるのではと思ってしまった。
「えっ、それ必要か?第一、俺はフェル以外を連れて行く気はないぞ?いちいち俺を見てビビるし、何もしてないのに泣き喚く。うるさいし、そもそも面倒だ」
ツンと拗ねたようにそっぽを向くグーリフは、もしかしたらフェリシアの時と同じように、他の皆にも声を掛けたのかもしれない。そして、結果的に拒絶されたのだ。
それでもフェリシアに声を掛けてくれたのだから、本当に心根が優しいのだろう。
「分かった、グーリフと行く。でもあのね……他の皆の、檻だけでも壊してくれない?」
「……何だか甘え上手だな、フェル。仕方ない。壊すだけだからな?」
そうと分かれば、フェリシアに迷いはなかった。
けれども、閉じ込められたままでは何かと危ないだろうから、各自で脱出出来るように檻を壊してもらいたい。
そうフェリシアが願うと、複雑そうな顔──馬面でも分かった──をしながらも、グーリフは了承してくれた。
そしてグーリフは立ち上がると、幾つかの檻を纏めて、先程と同じく軽々と角で破壊していく。
傍で見ている分には壮観な破壊だったが、中に入れられた様々な生き物達にとっては生きた心地がしなかっただろう。実際、チラリと見えた貂が、小さな体を丸めて震えていた。
更には何処からかアンモニア臭が漂ってくる。ヒトも動物も、恐怖で筋肉が弛緩してしまうのは同じなのだと判明した。──あまり知りたくはなかったが。
「こんなものか。おい、どうした、フェル」
「あ~、うん。シアの鼻の良さに驚いてた」
こうも激しい臭いを嗅いだのは、転生後初めてだった。──それ以前に、この狭い空間に大勢の生物が押し込められているので、それなりに臭ってはいたのだが。
鼻を押さえたくなったが、何しろ現状は四つ足の獣型である。肉球で上から押さえたところで、あまり効果が感じられなかった。
「まぁ、すぐにここから出るのだから問題ないだろ?んじゃ、フェル。行くか」
「えっ、ちょ……簡単に言ってくれるけど。シアってば獣型だから、よじ登れないし掴んでいられないんだけど」
ヒトの背丈以上もありそうな背中に、どうやって子犬のような形で乗れというのか。
思わずフェリシアは、見上げたずっと先にあるグーリフに文句を投げ付ける。
「そうなのか?どんくさいな。ってか、魔力があるだろぉ?」
「いや、待って。生後二日目だからっ。そんな、呼吸するように魔力使えないからっ」
当たり前のように告げられ、フェリシアは驚きを通り越して怒れてきた。
波瀾万丈の人生など望んでいないのに、何故だか静かに暮らせない。
「仕方ないな、御子様め。俺におんぶにだっこで恥ずかしくないのか?」
「いやいや、そんな事を言われても。生まれてすぐに何でも出来たら、それこそこんなとこにいないよ」
「まぁ、それもそうだな。俺も相手がヒトだからと、油断したのが失敗だった。うん、反省終わり。行くぞ」
「はやっ。でもOK。お腹も空いたし」
グーリフの揶揄に凹んでもいられない為、フェリシアは開き直る。
首から下がった黒い鎖が重いが、グーリフいわく、魔力を使えばフェリシアごと切り裂き兼ねないとの事だった。
さすがにこの場で真っ二つは勘弁なので、床に繋がった部分を壊してもらっているだけでも感謝しなくてはならない。
空腹に対しても、目の前に『餌』らしき何かの肉片が置いてあるが、そんなもの口にしていられないのだ。
「そうだな。ここの飼い葉は不味い。俺も最低限しか喉を通らなかった。ここを出て青い草を喰みたい」
「よぉし、それなら早いところ外に出ようっ」
意見が合ったので、早速グーリフに風の魔力で壁をぶち壊してもらう。
──さすがに他の生き物達には避難してもらい、あえて『賊1』が入って来た方とは逆側を破壊してもらった。
理由としては、賊と早々に合間見えたくはないし、他の生き物達の生存確率を少しでも上げる為である。
そして実際、グーリフの破壊は物凄かった。
風の魔力で作られた大きな半円形の刃は、前方の障害物を紙のように切り裂き、吹き飛ばす。圧倒的な力だ。
「凄いね、グーリフ。何で捕まったの?」
「……自分でもびっくりだ。俺の魔力、弱い奴の中で更に下だった筈なんだが」
半ば呆れつつ問い掛ければ、グーリフ自身も力の増加に驚いている様子である。
確かにフェリシアが名付ける前は『魔力……-E』だった為、今は普通ランクの上位に位置する『魔力……+D』だ。この変化に馴染むのは少し時間が必要となる。
「ま、まぁ、強くなったなら良いよね」
「そうだな、強くなったんだ。良いに決まってる」
二人して『ははは』と笑いながら、この現実をスルーした。
そして壁を壊したと同時に結界も解除された為、背後がバタバタと慌ただしくなる。賊がこの場に押し入ってくるのも時間の問題だ。
「それじゃ、行こうか」
「うん。グーリフ、お願い」
互いに視線を合わせ、頷き合う。
するとフェリシアの体がふわりと浮かび、グーリフの逞しい背中に乗せられた。その風は暖かく、昨日長兄や次兄にされた時と同じである。
再び懐かしく思えて涙が浮かびそうになり、初めてグーリフに名を呼ばれた時の感情がはっきりとした。あの愛称は、父親と同じ呼び方であったからである。
郷愁を感じる程この世界にいないし、実際に会ったのは僅か一日だ。それでもこの意味不明な現実より、心穏やかに──黒い影の襲撃などはあったが──過ごせた筈で。
駆けるグーリフの背中で、彼の風の魔力で守られながらも、フェリシアの顔に微笑みが浮かんだ。
「どうした、フェル。嬉しそうだな。まぁ、俺も久し振りに外を駆けるから、結構楽しいがな」
「うん、嬉しい。外に出られたのも、帰れるのも。全部、グーリフに出会えたおかげだよ」
「待て待て。言っただろ。俺が強化されたのは、フェルに名をもらったからだ。感謝されるのは、まぁ……気持ちが良いが、過剰にはいらねぇ」
逃走中のグーリフの背中でも、こんな穏やかな会話が出来ているフェリシアである。
賊のあじとは森の中だったようで、高速で木々の合間を駆け抜けるグーリフに、賊は追い掛けて来ているものの、中々追い付けなかった。
昼中なのに、かなり薄暗い森である。グーリフが走るここが未開の地であるだけなのか、小さな獣道はあるものの、大勢で進む事は困難なようだ。
「うん……。グーリフってば、ちょいワルな照れ屋さん?」
「ちょ、待っ。一言で俺を称するなよ。違うからなっ?」
徐々に後続との距離が離れていく様を見ている為、フェリシアの精神的に余裕が出てくる。
酷く焦ったようなグーリフの反応も面白く、彼の対人スキルの乏しさも明らかになった。
「は~い。でもグーリフってば、こんな木がたくさんの中を、良くこんなスピードで走れるね」
「んあ?そんなの、風の魔力を使えば簡単だぜ」
感心しながらフェリシアが問えば、当たり前のようにグーリフから返答がある。
聞けば、魔力を超音波のように飛ばし、障害物の先読みをしているようだ。その魔力の使い方に、フェリシアは逸る気持ちを隠せない。
「魔力って、凄いねっ」
尊敬の眼差しでグーリフを見つめるフェリシアだ。
一つの属性しか持っていないグーリフがこれ程凄いのだから、三つ使える筈のフェリシアはもっと凄い事が出来ると想像を膨らませる。
「そうだぞ?フェルも俺のように、自分の魔力を頑張って使いこなせるようにならないとなぁ」
誉められて嫌な気分になる者は珍しく、魔獣であるグーリフも嬉しそうに笑っていた。
そうこうする間に、少しずつ明るくなってくる。森を抜ける気配だ。
「そろそろだな。後ろからの追走も撒けたようだぞ?」
「うん。グーリフが早いから、随分前から誰もついてきてないよ」
「そうか?くくく、そう誉めるな。照れるじゃないかぁ」
「いよっ、さすがグーリフ!」
歩みをゆっくりにし、共に森を出る。
しかしながら、目の前に広がる広大な草原に唖然とするフェリシアだ。
そもそも、自分の住んでいた地が分からない。
「あ~……、絶望的な事実が判明したよ」
「何だ?今のところ、周囲に敵意はなさそうだが?」
「いや、本当にごめん。シア、何処から来たか知ってる?」
「……それ、俺に聞くか?」
「だよねぇ~」
冗談のような本気の話だ。
生まれて二日目のフェリシアが、家の敷地から出た事もなかった超箱入り娘が誘拐されたのである。現在地どころか、家がある土地の名前すら知らなかった。
今の時間は夕刻辺りなのだろう。太陽が沈みつつある赤く染まった空の下で、何もない草原地帯を魔獣と子狼が目的地不明の状況に佇む。
完全な迷子だった。
「だって、だって」
「だから静かにしろってぇの。大丈夫だ。お前の入れられた黒い箱を壊す時、俺が風の結界を張ったからな。音は漏れねぇし、震動なんかも伝わらねぇから」
混乱しながら叫ぶフェリシアの頭部を、グーリフは口先で弄りながら宥める。
大きい図体だが、グーリフは妙に優しいところがあるようだ。
「……何だか色々と、本当にありがとう、グーリフ」
「良いって事よ。で、どうする?……いや、どうしたい?俺はフェルとなら、ここから出られるぞ?」
「えっ?!で、でも、他の皆は……」
フェリシアが改めて感謝を伝えると、グーリフから思いがけない提案をされる。あまりの突然の申し出に、フェリシアは戸惑いを隠せなかった。
勿論、脱出はしたい。ここにいては確実に危険な事が分かるのだ。けれども、他にもたくさんの檻がある。確認まではしていないが、囚われている中にフェリシアと同じように、獣型に変えられてしまっているヒトもいるのではと思ってしまった。
「えっ、それ必要か?第一、俺はフェル以外を連れて行く気はないぞ?いちいち俺を見てビビるし、何もしてないのに泣き喚く。うるさいし、そもそも面倒だ」
ツンと拗ねたようにそっぽを向くグーリフは、もしかしたらフェリシアの時と同じように、他の皆にも声を掛けたのかもしれない。そして、結果的に拒絶されたのだ。
それでもフェリシアに声を掛けてくれたのだから、本当に心根が優しいのだろう。
「分かった、グーリフと行く。でもあのね……他の皆の、檻だけでも壊してくれない?」
「……何だか甘え上手だな、フェル。仕方ない。壊すだけだからな?」
そうと分かれば、フェリシアに迷いはなかった。
けれども、閉じ込められたままでは何かと危ないだろうから、各自で脱出出来るように檻を壊してもらいたい。
そうフェリシアが願うと、複雑そうな顔──馬面でも分かった──をしながらも、グーリフは了承してくれた。
そしてグーリフは立ち上がると、幾つかの檻を纏めて、先程と同じく軽々と角で破壊していく。
傍で見ている分には壮観な破壊だったが、中に入れられた様々な生き物達にとっては生きた心地がしなかっただろう。実際、チラリと見えた貂が、小さな体を丸めて震えていた。
更には何処からかアンモニア臭が漂ってくる。ヒトも動物も、恐怖で筋肉が弛緩してしまうのは同じなのだと判明した。──あまり知りたくはなかったが。
「こんなものか。おい、どうした、フェル」
「あ~、うん。シアの鼻の良さに驚いてた」
こうも激しい臭いを嗅いだのは、転生後初めてだった。──それ以前に、この狭い空間に大勢の生物が押し込められているので、それなりに臭ってはいたのだが。
鼻を押さえたくなったが、何しろ現状は四つ足の獣型である。肉球で上から押さえたところで、あまり効果が感じられなかった。
「まぁ、すぐにここから出るのだから問題ないだろ?んじゃ、フェル。行くか」
「えっ、ちょ……簡単に言ってくれるけど。シアってば獣型だから、よじ登れないし掴んでいられないんだけど」
ヒトの背丈以上もありそうな背中に、どうやって子犬のような形で乗れというのか。
思わずフェリシアは、見上げたずっと先にあるグーリフに文句を投げ付ける。
「そうなのか?どんくさいな。ってか、魔力があるだろぉ?」
「いや、待って。生後二日目だからっ。そんな、呼吸するように魔力使えないからっ」
当たり前のように告げられ、フェリシアは驚きを通り越して怒れてきた。
波瀾万丈の人生など望んでいないのに、何故だか静かに暮らせない。
「仕方ないな、御子様め。俺におんぶにだっこで恥ずかしくないのか?」
「いやいや、そんな事を言われても。生まれてすぐに何でも出来たら、それこそこんなとこにいないよ」
「まぁ、それもそうだな。俺も相手がヒトだからと、油断したのが失敗だった。うん、反省終わり。行くぞ」
「はやっ。でもOK。お腹も空いたし」
グーリフの揶揄に凹んでもいられない為、フェリシアは開き直る。
首から下がった黒い鎖が重いが、グーリフいわく、魔力を使えばフェリシアごと切り裂き兼ねないとの事だった。
さすがにこの場で真っ二つは勘弁なので、床に繋がった部分を壊してもらっているだけでも感謝しなくてはならない。
空腹に対しても、目の前に『餌』らしき何かの肉片が置いてあるが、そんなもの口にしていられないのだ。
「そうだな。ここの飼い葉は不味い。俺も最低限しか喉を通らなかった。ここを出て青い草を喰みたい」
「よぉし、それなら早いところ外に出ようっ」
意見が合ったので、早速グーリフに風の魔力で壁をぶち壊してもらう。
──さすがに他の生き物達には避難してもらい、あえて『賊1』が入って来た方とは逆側を破壊してもらった。
理由としては、賊と早々に合間見えたくはないし、他の生き物達の生存確率を少しでも上げる為である。
そして実際、グーリフの破壊は物凄かった。
風の魔力で作られた大きな半円形の刃は、前方の障害物を紙のように切り裂き、吹き飛ばす。圧倒的な力だ。
「凄いね、グーリフ。何で捕まったの?」
「……自分でもびっくりだ。俺の魔力、弱い奴の中で更に下だった筈なんだが」
半ば呆れつつ問い掛ければ、グーリフ自身も力の増加に驚いている様子である。
確かにフェリシアが名付ける前は『魔力……-E』だった為、今は普通ランクの上位に位置する『魔力……+D』だ。この変化に馴染むのは少し時間が必要となる。
「ま、まぁ、強くなったなら良いよね」
「そうだな、強くなったんだ。良いに決まってる」
二人して『ははは』と笑いながら、この現実をスルーした。
そして壁を壊したと同時に結界も解除された為、背後がバタバタと慌ただしくなる。賊がこの場に押し入ってくるのも時間の問題だ。
「それじゃ、行こうか」
「うん。グーリフ、お願い」
互いに視線を合わせ、頷き合う。
するとフェリシアの体がふわりと浮かび、グーリフの逞しい背中に乗せられた。その風は暖かく、昨日長兄や次兄にされた時と同じである。
再び懐かしく思えて涙が浮かびそうになり、初めてグーリフに名を呼ばれた時の感情がはっきりとした。あの愛称は、父親と同じ呼び方であったからである。
郷愁を感じる程この世界にいないし、実際に会ったのは僅か一日だ。それでもこの意味不明な現実より、心穏やかに──黒い影の襲撃などはあったが──過ごせた筈で。
駆けるグーリフの背中で、彼の風の魔力で守られながらも、フェリシアの顔に微笑みが浮かんだ。
「どうした、フェル。嬉しそうだな。まぁ、俺も久し振りに外を駆けるから、結構楽しいがな」
「うん、嬉しい。外に出られたのも、帰れるのも。全部、グーリフに出会えたおかげだよ」
「待て待て。言っただろ。俺が強化されたのは、フェルに名をもらったからだ。感謝されるのは、まぁ……気持ちが良いが、過剰にはいらねぇ」
逃走中のグーリフの背中でも、こんな穏やかな会話が出来ているフェリシアである。
賊のあじとは森の中だったようで、高速で木々の合間を駆け抜けるグーリフに、賊は追い掛けて来ているものの、中々追い付けなかった。
昼中なのに、かなり薄暗い森である。グーリフが走るここが未開の地であるだけなのか、小さな獣道はあるものの、大勢で進む事は困難なようだ。
「うん……。グーリフってば、ちょいワルな照れ屋さん?」
「ちょ、待っ。一言で俺を称するなよ。違うからなっ?」
徐々に後続との距離が離れていく様を見ている為、フェリシアの精神的に余裕が出てくる。
酷く焦ったようなグーリフの反応も面白く、彼の対人スキルの乏しさも明らかになった。
「は~い。でもグーリフってば、こんな木がたくさんの中を、良くこんなスピードで走れるね」
「んあ?そんなの、風の魔力を使えば簡単だぜ」
感心しながらフェリシアが問えば、当たり前のようにグーリフから返答がある。
聞けば、魔力を超音波のように飛ばし、障害物の先読みをしているようだ。その魔力の使い方に、フェリシアは逸る気持ちを隠せない。
「魔力って、凄いねっ」
尊敬の眼差しでグーリフを見つめるフェリシアだ。
一つの属性しか持っていないグーリフがこれ程凄いのだから、三つ使える筈のフェリシアはもっと凄い事が出来ると想像を膨らませる。
「そうだぞ?フェルも俺のように、自分の魔力を頑張って使いこなせるようにならないとなぁ」
誉められて嫌な気分になる者は珍しく、魔獣であるグーリフも嬉しそうに笑っていた。
そうこうする間に、少しずつ明るくなってくる。森を抜ける気配だ。
「そろそろだな。後ろからの追走も撒けたようだぞ?」
「うん。グーリフが早いから、随分前から誰もついてきてないよ」
「そうか?くくく、そう誉めるな。照れるじゃないかぁ」
「いよっ、さすがグーリフ!」
歩みをゆっくりにし、共に森を出る。
しかしながら、目の前に広がる広大な草原に唖然とするフェリシアだ。
そもそも、自分の住んでいた地が分からない。
「あ~……、絶望的な事実が判明したよ」
「何だ?今のところ、周囲に敵意はなさそうだが?」
「いや、本当にごめん。シア、何処から来たか知ってる?」
「……それ、俺に聞くか?」
「だよねぇ~」
冗談のような本気の話だ。
生まれて二日目のフェリシアが、家の敷地から出た事もなかった超箱入り娘が誘拐されたのである。現在地どころか、家がある土地の名前すら知らなかった。
今の時間は夕刻辺りなのだろう。太陽が沈みつつある赤く染まった空の下で、何もない草原地帯を魔獣と子狼が目的地不明の状況に佇む。
完全な迷子だった。
0
あなたにおすすめの小説
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
構造理解で始めるゼロからの文明開拓
TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。
適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。
だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――!
――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる