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第2章──少年期5~10歳──
047 気分転換の為の町の散策だったのに
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◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「あ、これ美味しそう」
「あぁ。んじゃ……おっちゃん、これを二つ」
「あいよ~」
小さな小屋で肉焼きを売っている店で、フェリシアの胃袋を直撃した匂いがあった。手を繋いで歩いていたグーリフは、すぐにそれを手慣れた感じで注文する。
店主はすぐに良い焼き色の串を選び、にこやかな表情で二本ともグーリフに手渡した。
フェリシアは串に刺した肉を受け取り、熱さにビクビクしながら噛み付く。噛んだ瞬間から甘い肉汁が口腔内に広がり、甘辛い味と合わさってとても美味しかった。
隣では同じように串に刺した肉を噛るグーリフ。その後ろには財布を仕舞うミアがいる。──当然、支払いはミアが行っているのだ。
ヨアキムとの面談の結果は、やはりというか駄目だった。グーリフの策で収集したミアの情報は、まるごと全部持っていかれたのである。
けれどもナディヤの作ってくれた魔道具は、しっかりフェリシアの装飾品の一部になっている。ペンダントと腕輪、イヤリングだ。体躯の小さなフェリシアに合わせ、小振りながら繊細な造りである。
「美味しいね、グーリフ」
「そうだな。たまにはこういう食い歩きも悪くねぇな」
和みながら町を散策しているが、出てくる前まではフェリシアがかなり落ち込んでいたのだ。
ヨアキムに話が通じなかった事もあるが、フェリシアが言い出した囮捜査に、全く関係のない子供がさせられる事となったからである。
ベルナールが報酬を支払った上で両親の承諾を得ていると言っていたが、いくら金品をもらおうとも命の危険さえある場所へ子供を送り出すのだ。そして軍人の子供でも、十歳未満にそれは酷だろう。
フェリシアはそれを聞いて、烈火の如くヨアキムに食い掛かった。だがもう決まった事だと一蹴されてしまい、ナディヤに泣き付く。──ナディヤはフェリシアの捜査を知っていてなお、守りの魔道具を作ってくれたのだ。
そしてヨアキムに対する不満をぶつけ、謝罪してくるまで二人して言葉を交わす事をやめようという同盟を組む。そこへエリアスも加わり、三人になったが。
だが結局それまでで、ヨアキムは毎日屋敷に戻ってくる訳ではないのだ。あれから半月程経つが、顔を合わせたのは僅か数回である。
その度に顔を叛けて無言で立ち去るフェリシアに、ヨアキムが何を思ったのかは分からなかった。──つまりは全く効果も成果もみえない。
そうして囮捜査自体どうなっているのかは分からないが、ミアが集めてくる情報には未だ犯人を捕獲したと上がっていなかった。
「……はぁ」
「何だ、また溜め息か?俺とのデートなのに、余所事を考えるとは心外だなぁ」
「あ、ごめんグーリフ。グーリフと一緒の散歩は楽しいんだけど……」
フェリシアの視線の先には同じくらいの子供達が遊んでいる。
それを見て、自然と誘拐事件を想像してしまったのだ。
「くくく、分かってるって。フェルが優しいことはな」
「ち、違うよ。……シアは優しいんじゃない。ただ、自己嫌悪してるだけだもん」
「あぁ、自分のせいでってか?」
<……それなら、少し鳥をまくか>
「え?」
グーリフに愚痴っていると、少し悪い顔をしてニヤリと笑う。
町の散策にきたフェリシアとグーリフの傍には、ミアの他に護衛として数人が周囲に散らばっていた。
<まく、って……どうして?>
<あぁ……。さっきから、こちらを伺っている視線があるんだ。護衛達とは違う、じっとりとした気分悪りぃヤツがな>
<そ、それって……>
<あぁ。もしかすると、釣れたのかもしれねぇ>
視線を正面に向けたまま、グーリフがスキル【以心伝心】で話してくる。
実際、珍しくグーリフが町に行こうと誘ってきた事に、フェリシアは酷く驚いていた。普段は気配やら音が面倒臭いとかで、ヒトが多い場所は行きたがらないのにである。
つまりはフェリシアの為に、誘拐犯を誘い出そうとしてくれたらしいのだ。
<わ、分かった>
「あ、グーリフ。あれも美味しそう」
「おぅ。鳥、あの黄色いやつ、二つな」
「はい、畏まりました」
目についた出店の商品に、フェリシアはわざと声をあげる。そしてグーリフは少しだけ後ろを振り返りつつ、ミアに買いに行くように告げた。
正直、ミアには悪いが仕方がない。もしかしたら、誘拐事件に関わる事が出来るのかもしれないのだ。フェリシアは自分の言葉が原因で、他の誰かの命が脅かされる事が酷く苦痛だったのである。
「あ、あっちにも美味しそうがあるっ」
「ちょ、待てよフェル」
あからさまな台詞を口にしながら、ミアから離れて走っていく。勿論グーリフもフェリシアについて行った。護衛達の慌てる様子が何となしに伝わってくる。
そして──急に呼吸を圧迫された。口元に何かが押さえ付けられているようで、それでも身体をグーリフの熱が包み込んでいるのが分かる。
何故か、それだけで安心出来た。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
気が付くと、狭い荷馬車の中。
フェリシアを抱き締めるグーリフの熱が、混乱する意識を宥めてくれる。
<グーリフ……>
<あぁ、気が付いたか>
<うん……。ここは、何処?>
<馬車の中で、たぶん誘拐犯の元へ連れていかれる最中だろうな>
<……周りにも、知らない子供がいるね>
<あぁ。俺達の他に三人。少し前まで泣いていたんだが、男に怒鳴り付けられて静かになった>
<そう……。ミアは大丈夫かな?>
<まぁ、拐われたのは俺達だけだからなぁ。たぶん護衛のやつらに抑えられてるだろうな>
騙し討ちをしてしまった事に罪悪感を感じるが、当初の目的通りに誘拐された事実が嬉しくもあった。
確実に危険へと首を突っ込んだのは分かっているが、グーリフの存在とナディヤの魔道具がフェリシアの心を支えている。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そしてどれ程の時間が経ったのか、漸く荷馬車が停車した。
「ほら、降りろ」
威圧的な物言いで、屈強な男が三人荷馬車を取り囲んでいる。
連れて来られた子供はフェリシアとグーリフの他、三人──つまりは合わせて五人だ。他の三人の子供達は、ベソベソ泣き顔のまま荷馬車を降りる。フェリシアはグーリフにくっついたまま、とりあえず指示に従う方針だった。
「こっちだ。ついてこい」
男達の指示に従い、馬車を降りた先にある別荘のような屋敷に向かう。そこで他の三人は着替えさせられていたが、フェリシアとグーリフは問題なかったのか、そのままの連れて来られた服装で良いらしい。
そして二階に上がるように指示をされ、右手の通路の先にある部屋へ押し込まれた。
壁際に並んで立つように告げられる。反論した子は、即座に男の持つ棒で殴られていた。反抗的な態度は、すぐにその場で潰されるようである。
そして少しそのまま待っていると、腹部に脂肪を蓄えたような男が使用人らしき男と部屋に入って来た。
≪名前……ウゲイン・ワカー
年齢……46歳
種別……ヒト科獣属キツネ種
体力…… D
魔力…… -D【水】
スキル……【虚偽】
称号……【加虐嗜好】≫
フェリシアの視界に、スキル【神の眼】の文字が反応する。
すぐにこれが誘拐事件の黒幕だと分かった。
<大丈夫か、フェル>
<あ……、うん。このお腹出たヒト、黒幕>
<あ~……。まぁ、しっかりと血の臭いがするからな>
フェリシアがスキル【神の眼】で分かると同様に、グーリフも己の鋭い嗅覚で察していたようである。
黄色い三角の耳と、ふさふさの尻尾。これだけなら可愛いのに、そこに付随するヒトの身体は思い切り中年肥りの男なのだ。
<もう少し体型に気を配れば良いのに>
<はぁ?フェル、ふさふさの尻尾だったら誰でも良いのか?>
<え?いや、違うけど……。あ、このヒト、スキル持ってる>
<何?>
<【虚偽】、だって。『真実ではないと知りながら、真実であるかのように故意によそおい、見せかける事が出来る』?え?何かチートじゃない?>
<きょぎ……虚偽か。あとは、ちいと?前にも聞いたな>
フェリシアは他者のステータスを読み取る事が出来るが、スキル持ちは稀な存在であるとスキル【神の眼】から教えられていた。
だがこの目の前の男──ウゲインは、詐欺師のようなスキル保持者である。
「こちらが新しい御品となります」
「……ふむ」
フェリシア達を連れてきた男の一人が、ウゲインに話し掛けた。
こちらを舐めるように観察するウゲイン。
「この色……銀、か?」
「まさか。下町にいたのですから、灰色のイヌ種ではないかと。それに、ラングロフの銀は男でしょう。娘が生まれたのは耳にしていますが、それこそ銀の女児はここ百年程ないようですから、伝説上の存在ですよ。あ、この芦毛ウマのガキはどうしても離れない為、やむを得ずこのままつれてきましたが」
ウゲインはフェリシアの纏う色に何か気付いたようだったが、誘拐犯はそれをすぐに否定する。
確かに、銀狼の女性は超激レアなのだ。──というか、グーリフの扱いが酷い。
「要人の子供でなければ良いが。一応調べておいてくれ。まぁ、今回も見目が良いのが揃ってるな。約束通りの金額だ」
「一人当たり五十……はい、確かに。では、今一度この娘について調べてご報告致します」
「うむ」
一人五十って、安くないだろうか。
フェリシアは先程の町散策で見聞きした金銭感覚から、野菜一籠の値段であると分かってしまった。だが即金で支払われるからか、誘拐犯に異論はないらしい。しかも新たに、フェリシアの素性調査まで請け負っていた。
余程の太客なのか、誘拐犯は金を受け取ると他に何も言及する事なく、足早に退室してしまう。残されたのは黒幕と思えるウゲインと、フェリシアを合わせた子供五人。
「売人の癖に、下調べくらいちゃんとしておけっ。金で買った品に、何故オレが我慢しなきゃならんのだっ」
吐き捨てるように告げるウゲイン。
先程の誘拐犯に対する不満らしいが、その後にこちら側へ向けた醜悪な顔は頂けなかった。
「あ、これ美味しそう」
「あぁ。んじゃ……おっちゃん、これを二つ」
「あいよ~」
小さな小屋で肉焼きを売っている店で、フェリシアの胃袋を直撃した匂いがあった。手を繋いで歩いていたグーリフは、すぐにそれを手慣れた感じで注文する。
店主はすぐに良い焼き色の串を選び、にこやかな表情で二本ともグーリフに手渡した。
フェリシアは串に刺した肉を受け取り、熱さにビクビクしながら噛み付く。噛んだ瞬間から甘い肉汁が口腔内に広がり、甘辛い味と合わさってとても美味しかった。
隣では同じように串に刺した肉を噛るグーリフ。その後ろには財布を仕舞うミアがいる。──当然、支払いはミアが行っているのだ。
ヨアキムとの面談の結果は、やはりというか駄目だった。グーリフの策で収集したミアの情報は、まるごと全部持っていかれたのである。
けれどもナディヤの作ってくれた魔道具は、しっかりフェリシアの装飾品の一部になっている。ペンダントと腕輪、イヤリングだ。体躯の小さなフェリシアに合わせ、小振りながら繊細な造りである。
「美味しいね、グーリフ」
「そうだな。たまにはこういう食い歩きも悪くねぇな」
和みながら町を散策しているが、出てくる前まではフェリシアがかなり落ち込んでいたのだ。
ヨアキムに話が通じなかった事もあるが、フェリシアが言い出した囮捜査に、全く関係のない子供がさせられる事となったからである。
ベルナールが報酬を支払った上で両親の承諾を得ていると言っていたが、いくら金品をもらおうとも命の危険さえある場所へ子供を送り出すのだ。そして軍人の子供でも、十歳未満にそれは酷だろう。
フェリシアはそれを聞いて、烈火の如くヨアキムに食い掛かった。だがもう決まった事だと一蹴されてしまい、ナディヤに泣き付く。──ナディヤはフェリシアの捜査を知っていてなお、守りの魔道具を作ってくれたのだ。
そしてヨアキムに対する不満をぶつけ、謝罪してくるまで二人して言葉を交わす事をやめようという同盟を組む。そこへエリアスも加わり、三人になったが。
だが結局それまでで、ヨアキムは毎日屋敷に戻ってくる訳ではないのだ。あれから半月程経つが、顔を合わせたのは僅か数回である。
その度に顔を叛けて無言で立ち去るフェリシアに、ヨアキムが何を思ったのかは分からなかった。──つまりは全く効果も成果もみえない。
そうして囮捜査自体どうなっているのかは分からないが、ミアが集めてくる情報には未だ犯人を捕獲したと上がっていなかった。
「……はぁ」
「何だ、また溜め息か?俺とのデートなのに、余所事を考えるとは心外だなぁ」
「あ、ごめんグーリフ。グーリフと一緒の散歩は楽しいんだけど……」
フェリシアの視線の先には同じくらいの子供達が遊んでいる。
それを見て、自然と誘拐事件を想像してしまったのだ。
「くくく、分かってるって。フェルが優しいことはな」
「ち、違うよ。……シアは優しいんじゃない。ただ、自己嫌悪してるだけだもん」
「あぁ、自分のせいでってか?」
<……それなら、少し鳥をまくか>
「え?」
グーリフに愚痴っていると、少し悪い顔をしてニヤリと笑う。
町の散策にきたフェリシアとグーリフの傍には、ミアの他に護衛として数人が周囲に散らばっていた。
<まく、って……どうして?>
<あぁ……。さっきから、こちらを伺っている視線があるんだ。護衛達とは違う、じっとりとした気分悪りぃヤツがな>
<そ、それって……>
<あぁ。もしかすると、釣れたのかもしれねぇ>
視線を正面に向けたまま、グーリフがスキル【以心伝心】で話してくる。
実際、珍しくグーリフが町に行こうと誘ってきた事に、フェリシアは酷く驚いていた。普段は気配やら音が面倒臭いとかで、ヒトが多い場所は行きたがらないのにである。
つまりはフェリシアの為に、誘拐犯を誘い出そうとしてくれたらしいのだ。
<わ、分かった>
「あ、グーリフ。あれも美味しそう」
「おぅ。鳥、あの黄色いやつ、二つな」
「はい、畏まりました」
目についた出店の商品に、フェリシアはわざと声をあげる。そしてグーリフは少しだけ後ろを振り返りつつ、ミアに買いに行くように告げた。
正直、ミアには悪いが仕方がない。もしかしたら、誘拐事件に関わる事が出来るのかもしれないのだ。フェリシアは自分の言葉が原因で、他の誰かの命が脅かされる事が酷く苦痛だったのである。
「あ、あっちにも美味しそうがあるっ」
「ちょ、待てよフェル」
あからさまな台詞を口にしながら、ミアから離れて走っていく。勿論グーリフもフェリシアについて行った。護衛達の慌てる様子が何となしに伝わってくる。
そして──急に呼吸を圧迫された。口元に何かが押さえ付けられているようで、それでも身体をグーリフの熱が包み込んでいるのが分かる。
何故か、それだけで安心出来た。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
気が付くと、狭い荷馬車の中。
フェリシアを抱き締めるグーリフの熱が、混乱する意識を宥めてくれる。
<グーリフ……>
<あぁ、気が付いたか>
<うん……。ここは、何処?>
<馬車の中で、たぶん誘拐犯の元へ連れていかれる最中だろうな>
<……周りにも、知らない子供がいるね>
<あぁ。俺達の他に三人。少し前まで泣いていたんだが、男に怒鳴り付けられて静かになった>
<そう……。ミアは大丈夫かな?>
<まぁ、拐われたのは俺達だけだからなぁ。たぶん護衛のやつらに抑えられてるだろうな>
騙し討ちをしてしまった事に罪悪感を感じるが、当初の目的通りに誘拐された事実が嬉しくもあった。
確実に危険へと首を突っ込んだのは分かっているが、グーリフの存在とナディヤの魔道具がフェリシアの心を支えている。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そしてどれ程の時間が経ったのか、漸く荷馬車が停車した。
「ほら、降りろ」
威圧的な物言いで、屈強な男が三人荷馬車を取り囲んでいる。
連れて来られた子供はフェリシアとグーリフの他、三人──つまりは合わせて五人だ。他の三人の子供達は、ベソベソ泣き顔のまま荷馬車を降りる。フェリシアはグーリフにくっついたまま、とりあえず指示に従う方針だった。
「こっちだ。ついてこい」
男達の指示に従い、馬車を降りた先にある別荘のような屋敷に向かう。そこで他の三人は着替えさせられていたが、フェリシアとグーリフは問題なかったのか、そのままの連れて来られた服装で良いらしい。
そして二階に上がるように指示をされ、右手の通路の先にある部屋へ押し込まれた。
壁際に並んで立つように告げられる。反論した子は、即座に男の持つ棒で殴られていた。反抗的な態度は、すぐにその場で潰されるようである。
そして少しそのまま待っていると、腹部に脂肪を蓄えたような男が使用人らしき男と部屋に入って来た。
≪名前……ウゲイン・ワカー
年齢……46歳
種別……ヒト科獣属キツネ種
体力…… D
魔力…… -D【水】
スキル……【虚偽】
称号……【加虐嗜好】≫
フェリシアの視界に、スキル【神の眼】の文字が反応する。
すぐにこれが誘拐事件の黒幕だと分かった。
<大丈夫か、フェル>
<あ……、うん。このお腹出たヒト、黒幕>
<あ~……。まぁ、しっかりと血の臭いがするからな>
フェリシアがスキル【神の眼】で分かると同様に、グーリフも己の鋭い嗅覚で察していたようである。
黄色い三角の耳と、ふさふさの尻尾。これだけなら可愛いのに、そこに付随するヒトの身体は思い切り中年肥りの男なのだ。
<もう少し体型に気を配れば良いのに>
<はぁ?フェル、ふさふさの尻尾だったら誰でも良いのか?>
<え?いや、違うけど……。あ、このヒト、スキル持ってる>
<何?>
<【虚偽】、だって。『真実ではないと知りながら、真実であるかのように故意によそおい、見せかける事が出来る』?え?何かチートじゃない?>
<きょぎ……虚偽か。あとは、ちいと?前にも聞いたな>
フェリシアは他者のステータスを読み取る事が出来るが、スキル持ちは稀な存在であるとスキル【神の眼】から教えられていた。
だがこの目の前の男──ウゲインは、詐欺師のようなスキル保持者である。
「こちらが新しい御品となります」
「……ふむ」
フェリシア達を連れてきた男の一人が、ウゲインに話し掛けた。
こちらを舐めるように観察するウゲイン。
「この色……銀、か?」
「まさか。下町にいたのですから、灰色のイヌ種ではないかと。それに、ラングロフの銀は男でしょう。娘が生まれたのは耳にしていますが、それこそ銀の女児はここ百年程ないようですから、伝説上の存在ですよ。あ、この芦毛ウマのガキはどうしても離れない為、やむを得ずこのままつれてきましたが」
ウゲインはフェリシアの纏う色に何か気付いたようだったが、誘拐犯はそれをすぐに否定する。
確かに、銀狼の女性は超激レアなのだ。──というか、グーリフの扱いが酷い。
「要人の子供でなければ良いが。一応調べておいてくれ。まぁ、今回も見目が良いのが揃ってるな。約束通りの金額だ」
「一人当たり五十……はい、確かに。では、今一度この娘について調べてご報告致します」
「うむ」
一人五十って、安くないだろうか。
フェリシアは先程の町散策で見聞きした金銭感覚から、野菜一籠の値段であると分かってしまった。だが即金で支払われるからか、誘拐犯に異論はないらしい。しかも新たに、フェリシアの素性調査まで請け負っていた。
余程の太客なのか、誘拐犯は金を受け取ると他に何も言及する事なく、足早に退室してしまう。残されたのは黒幕と思えるウゲインと、フェリシアを合わせた子供五人。
「売人の癖に、下調べくらいちゃんとしておけっ。金で買った品に、何故オレが我慢しなきゃならんのだっ」
吐き捨てるように告げるウゲイン。
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