SEIREI ── せい れい ── 自然に好かれるオレはハッピーライフをおくる

まひる

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1.異世界転生なんて本当にあるんだ

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「そんな訳だから、肉体のない世界に戻せない。地縛霊になりたいのではないだろう?」
「だからぬし様、言い方。恩人様は現状が魂のような存在でして、そのまま彼方あちらへ戻っても存在を維持する事が叶いません」
「仕方がないから第二案として。わたしの管理している別世界でなら、キミの姿をそのまま再構築可能だ。赤子からやり直したいならば、それも聞こう」
「といった事情なのです。誠に申し訳ありませんが、別世界……いわゆる異世界への転生でも宜しいでしょうか」

 さくさくと話が進められている。オレの関与しないところで、大半の事情が決まっていた。
 別世界──異世界転生だと?そんなものはテレビの中で観るから楽しいのであって、現代人の生活水準を大幅に落とすだろう見知らぬ現地人になれだって──そんなの冗談じゃない。

「あぁ、それも難しいですか」
彼処あそこは基本的に魔法だからな。一応生活に著しい不都合がない程度の恩恵は与えるが」
「ぁ、や……待ってください。ちょっとそんな怒涛どとうの勢いで選択を迫られても、オレだって考える時間というか心を整理する猶予が欲しいですよ」
「また我が儘だね」
ぬし様、ちょっと黙って下さい。恩人様の怒りはごもっともでございます。ですが、この空間自体が仮の宿なのです。既に一月ひとつき経過してもおりまして、同時に恩人様の現在の状態も同様の時間をております。魂だけの状態で記憶と精神を維持する事は、正直、あと数日が限度でございます」

 はっきりと告げられた、オレの未来だった。
 戻る事は出来ず、進むしかない現状。──オレ、詰んでない?

「恩人様にこの様な仕打ちは、手前としてもとても心苦しいのです。その為、ぬし様に無理を言ってこの場を維持して頂いております。本来ならば十分御納得頂ける時間を差し上げたいのですが……」
「キミの魂が先に限界を迎えそうだ。魂のに負った損傷は修復したのだが、これまでの会話でキミは『死』を認識してしまっている。このままでは消滅するぞ?」
「……や、もう何だか終わってない?」
「ま、まだでございます、恩人様。親兄弟のいない世界への不安がありますなら、手前がお供させて頂いても宜しいでしょうかっ」
「え、お前勝手に……」
「そも手前の為に恩人様は命をなげうって下さったのです。このまま恩人様だけに負荷をいる事は、手前も収まりがつきません。ぬし様っ、どうか御願いでございます」
「え~、そんな結論なのぉ?」

 オレが『終わり』だと思っているのに、声とイタチはそうではないらしい。
 まぁ実際、知り合いの誰もいない異世界に行かなきゃならないってオレは、このまま消えてしまっても仕方ないかくらいに思っていた。だからといってベイビースタートなんて、記憶のある状態でキツい。
 声がオレの魂を修復した事で、記憶を消して輪廻転生っていう普通の歯車から外れたんだそうだ。そうなるともう現実のオレは既にいないんだし、転生とかちょっと面倒に思えちゃって。

 でも、このイタチは違うようだ。

 こんな結論しか出せないオレに恩義を感じてくれて、一緒に異世界にも行ってくれるらしい。──何か、嬉しいかも。

「あぁ、キミの心も決まったようだね。それなら、思い残す事はないかい?」
「あ~……」
「こっちの世界のキミの繋がりに、別れを告げたい?」

 頭をよぎった事が筒抜けなのは、良し悪しだと思う。
 けれども口では中々に言いづらい事で、恥ずかしいし──つらい現実を突き付けられる事になるかもしれないと、及び腰になった。

「既に肉体がないのだから、夢という形でしかも短時間で良いのならね」
「……ありがとうございます。では両親と……、あの先輩に」
「もう思い切り、原因となった人間に文句を言ってやりましょうよ」

 心が筒抜けなのだから、オレの経緯も怒りも知られている。──両親には申し訳ない事をしたという感情しかないがな。
 そうしてオレは、声──創造神的な壮大な存在だった──から二度の夢渡りを許された。

 ※ ※ ※ ※ ※

「あぁ……、刀利とうりっ」
「お前、何で……」
「あ~………………母さん、父さん。今まで育ててくれてありがとう。それと、先にってしまう親不孝者でごめんなさい。兄さんと三人で仲良くね」
「まっ、待って刀利っ」
「刀利、待ちなさい。そんな言葉だけで先にいなくなってしまうなんて、父さんは許さないぞっ」
「ん、ごめん。オレ、父さんと母さんの子供で良かった。幸せだったよ。本当にありがとう、大好きだったよ」
「刀利っ、いや……待って!」
「くっ……私達も、刀利が我が子でとても幸せだったよ。生まれてきてくれて、ありがとう」
「ん……」

 わずか数分では、本当に感謝の言葉しか告げられなかった。
 父さんと母さんの夢を繋げて、更にオレという異物を繋げるからって理由。二人に大きな負担になるんだって聞かされて、そりゃそうだよなって納得出来ちゃうオレは、結構精神状態が振り切れてたんだ。

 けれども──再び真っ白な空間に戻ってきたオレは、滂沱ぼうだの涙を流していた。
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