SEIREI ── せい れい ── 自然に好かれるオレはハッピーライフをおくる

まひる

文字の大きさ
10 / 53
2.異世界人の習性を実際に見てみた

2-3

しおりを挟む
 それにしても、図書館は思った以上に大きかった。
 二階までの吹き抜けタイプではあるが、それぞれの階には天井までぎっしりと蔵書が並べられている。更に一階の本棚は二階なかばまであり、各棚が三角形の辺を作るように幾つも並んでいるのだ。
 どうやって取るのだろうと思って見ていると、何人かの人が宙に浮いて書物を抜き取っていた。──さすがは異世界だ。

「リドツォルの図書館は、ペゼトゥートでも珍しい本があるんだ。あ、この町がリドツォル。この国がペゼトゥートね」

 歩きながら、団長さんは基礎的な事を教えてくれる。
 オレが異国から来たと思ってくれているだけあって、普通なら誰も聞かないような事だろう知識だった。というか──今気付いたが、何故か言葉遣いが初めよりだいぶ砕けてないか?

 そう感じて改めて団長さんを見れば、あの時入り口詰め所的な場所で着ていた鎧を身に付けていない。つまりは現在は勤務中ではなく、プライベートなのだという意味だろうか。
 それでも白い柔らかそうなシャツの襟はピシッとしていて、細かな刺繍まで入っている。明らかに金持ちというか、権力を持った人物である事が一目で分かる装いだ。

「で、農業主体ではあるんだけどね。ん?どうかした?」
「……いや」
「それで……あ、小麦が主要作物なんだ。ここの町はパンが美味しいよ」

 今更『馴れ馴れしくないか』と告げるのも何だし、教えてくれる知識はありがたい。
 セスが言っていた小麦名産ってのも、確かに町へ入る前には麦畑が拡がっているのを見ているから、その団長さんの言葉にも素直に頷けた。──パンが旨いのか。パスタは粉が違うけど、うどんとかあったら嬉しいな。

「それで、どんな本を探しているんだい?」

 改めて問われ、不意に心配になった。──これは新手の情報収集なのではないか。
 オレの目的を探って、何かやらかさないか見張られてるのではと不審に思ってしまう。

「あぁ、キミを疑っている訳ではないから。先程精霊様に嫌われてしまいそうだったから、キミを助ける事で俺を好きになってもらおうと思ってね」

 オレの視線から警戒されている事に気付いたのか、団長さんは眉尻を下げて困ったような笑みを浮かべた。
 なるほど。そう言われてみれば、ここの国では精霊に嫌われる事を恐れるのだった。──というか、セスは精霊というカテゴリーからは外れていると思うが。

「分かった」
「ありがとう。で、キミ……」
「トーリ」
「え?」
「キミじゃない。トーリだ」
「名前を呼ぶ事を許してくれるのかい?ありがとう、俺はヴォスト」
「ボ……、ボ……団長さんで良いか?」

 団長さんの手伝いを渋々ではあるが了承したら、オレを呼ぶ単語が気になってしまったのである。
 事情聴取の時に書類へ記入する為に名前を聞かれているのだから、知らない筈がないのだ。──もしかしてセスに問い掛けていたのと同じで、許可を得ないと名前を呼ぶ事が出来ないのか?
 そう思い至って名前を改めて告げれば、爽やかな笑顔で団長さんも名乗ってきた。
 けれども──生粋の日本人かつ英語の成績がいまいちなオレには、ボ?の発音が上手く出来ない。情けないが、『団長さん』と呼ぶ事を許してもらおう。

「あ……あぁ、発音が難しいのか。良いよトーリ、それでも」
「助かる」
「くくくっ。そういうところ、可愛いよな」

 圧し殺したように笑われたが、それ以上に気になる単語があった。──オレ、今『可愛い』とか言われなかったか?
 日本人は海外の人からしたら幼く見えると聞いた事はあるが、それは可愛いとか子供っぽいとかいう意味なのだろうか。

「オレ、十六だぞ」
「えっ……あ、ごめんね。気を悪くしたかな」
「いや、子供じゃないと言いたかっただけだ」
「うん………………そっかぁ。子供じゃない、ね」

 団長さんに年齢を告げれば、酷く驚いた顔をされた。やはりかなり年下に思われていたようである。
 だが、その後の何だか含んだような言葉も気になった。──何だよ、十六に見えないって言いたいのか?
 確かに、団長さんよりかなり背が低いとは思う。
 これでもクラスの平均身長はあったが、それでも百七十に届かないのだ。記憶ではその程度だとアメリカでは十四歳くらいの平均身長に値する為、日本人が若く見えるという感覚になるのだろう。

「あ、話がれたな。どんな内容の本を探してるんだっけ?」
「……とりあえずこの国の歴史と、マナーの本」
「なるほど。少し待ってな」

 年齢を告げたからか、先程よりも一段と口調が砕けた気がするのは気のせいだろうか。──いや、雑になったのか?
 それでもオレの本探しの手伝いはしてくれるようで、近くの人に話し掛けている。その人はここの所員さんなのか、団長さんの言葉を受けてにこやかに首肯しゅこうすると、ふわりと浮いて何処かへ飛び去った。──本当に凄いな、異世界。

「探してきてもらうから、少し待っててなトーリ」
「分かった」

 戻ってきた団長さんは、そう言いながら近くの読書スペースにオレを誘導してくれてる。
 けれどもオレはセス以外に改めて名を呼ばれ、何故だか少しだけくすぐったい気持ちだ。
 そんな変な感覚になり、ふとそれまで一言も話していないセスに気付く。だが肩へ視線を移せば当たり前のようにそこにいてくれて、大きな安心感に包まれたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...